著者
安田 一郎 渡邊 朝生 日比谷 紀之 川崎 清
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究では「北太平洋中層水の元である亜寒帯水の亜熱帯への中層への流入が変化することにより、黒潮・黒潮続流の表層海流系を長期的に変化させる」という作業仮説を立て、データ解析・数値モデル実験・観測を行った。まず、(1)流速等観測資料を整理することにより、親潮水が西岸境界流として南下し風成循環境界を横切って亜熱帯循環域に流入する過程と亜寒帯前線に沿う渦混合過程の2つの過程を通じて、計10Svもの亜寒帯水が亜寒帯から亜熱帯へ輸送されることが明らかとなった。(2)北太平洋水平1/4度の3層モデルを用いて、オホーツク海における中層の層厚を観測データに合うように深層から中層へ等密度面を横切る輸送3Svを与えた結果、ほぼ同じ量の海水が西岸境界付近の親潮を通じて循環境界を横切り、亜熱帯循環域に流入することが明らかとなった。オホーツク海周辺海域での強い潮汐混合に伴う等密度面を横切る湧昇とオホーツク海低渦位水の形成・親潮南下・亜寒帯から亜熱帯への中層水輸送の関係を理論的に解明することができた。(3)黒潮続流域において、垂下式超音波流速計・走行式水温塩分プロファイラによる詳細な観測を行い、黒潮続流中層に、波長約200kmの前線波動が存在し、この波動が下流方向に向かって振幅を増加・砕波することによって2つの異なる水塊が効率良く混合することが明らかとなった。
著者
北 潔 原田 繁春 三芳 秀人 渡邊 洋一 網野 比佐子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

我々は回虫などの寄生虫と宿主であるヒトのミトコンドリアを用いて酸素適応機構の解明を目的として研究を進めている。その結果、寄生虫ミトコンドリアにおいて多様な嫌気的呼吸鎖が機能している事が判って来たが、中でも回虫で見い出したNADH-フマル酸還元系は多くの寄生虫に存在し、宿主体内の環境で中心的な役割を果している事が明らかになった。この系は複合体I(NADH-ユビキノン還元酵素)、ロドキノンおよび複合体II(ロドキノール-フマル酸還元酵素:RQFR)の3成分から構成され、NADHから最終電子受容体であるフマル酸への電子伝達を触媒している。その生理的意義は嫌気的グルコース分解系の最終ステップとして、無酸素下でも複合体Iの共役部位を駆動する事によりATPを合成できる点にある。そこで本研究ではNADH-フマル酸還元系の分子構築とその生理機能の特徴を明らかにする目的で研究を行っている。本年度は回虫ミトコンドリアを用い、以下の結果を得た。1)複合体I(NADH-ユビキノン還元酵素)および複合体II(RQFR)の分子構築と電子伝達機能に関しては、複合体Iの精製を目的として可溶化条件とこれに続くカラムクロマトグラフィーの条件を検討し、最適な界面活性剤を見い出した。また複合体IIに関してはその結晶化を試み、再現性の良い結晶化条件を見い出した。この条件で得られた結晶は3Åを切る解像度を与え、その解析からFAD、〓-イオウクラスター、ヘムの補欠分子族の位置関係を決定する事ができた。これらの分子間の距離と配置はそれぞれロドキノールからフマル酸への複合体内での電子伝達を可能にするものであった。2)ロドキノンおよびユビキノンの生合成機構と生理的役割に関しては、水酸化を触媒するCLK-1について調べる目的で組み換えタンパク質を合成し、抗体を作成中である。3)生活環における呼吸酵素群の発現制御機構に関しては、ウサギを用いて感染後の第三期幼虫ミトコンドリアの呼吸鎖の変動を調べる系を確立した。
著者
松岡 久和 木南 敦 潮見 佳男 藤原 正則 平田 健治 川角 由和 中田 邦博 森山 浩江 多治川 卓郎 油納 健一 渡邊 力 山岡 真治 廣峰 正子 吉永 一行 瀧久 範 村田 大樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

各人がおびただしい数の関連業績を研究成果として挙げ、それを基礎に共同研究として、民商法雑誌に2度の特集を組んだほか、ヨーロッパにおける不当利得法の比較の概観につき飜訳を発表した。こうした比較法の動向の研究をふまえ、日本私法学会第75回大会において、シンポジウム『不当利得法の現状と展望』において、成果を学会に問う形でまとめた。
著者
有馬 拓也 福元 俊 鹿嶋 雅之 佐藤 公則 渡邊 睦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.470, pp.1-6, 2010-03-08
参考文献数
5
被引用文献数
2

現在の家電製品等のシステムは,利用者が意識的・意図的に動かすものである.その結果,一部の利用者の意思のみが反映される場合がある.複数の利用者の内部状態を推定し,これらの総意によってシステムを制御すれば最大多数の最大幸福が実現できると考えられる.そこで,非拘束状態で撮影した映像から明度ヒストグラムとオプティカルフローを抽出し,部分空間法を用いた各個人の挙動認識を行うことにより各々の内部状態を推定し,それらを統計処理することでシステムの制御を行う手法を考案した.今回は,内部状態が挙動として表出しやすくかつ動作の個人差が少ない「暑い」「寒い」という状態を推定対象とし,多数決により制御目標を決定する方式を採用した.屋内環境における複数人での評価実験を行い,有効性を確認した.
著者
渡邊 晃
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

移動透過性とアドレス空間透過性の機能を統合し実装を完了した. FreeBSDで開発済みのGSCIPの基本部分をWindowsへ移植し, 安定動作することを確認した. 管理装置の実装を行い基本部分の動作を検証した. CVS(Concurrent Versions System)を用いて管理を実施中であり, ソースコード公開に向けての準備をほぼ完了した. 国内学会の口頭発表13件, 国際会議口頭発表2件, 論文誌掲載2件を達成した.
著者
佐々木 伸一 渡邊 欣雄 池上 良正 黄 強 志賀 市子 河合 洋尚 曹 建南
出版者
京都外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、1990年代以降中国各地において顕著に見られる宗教復興の諸状況について人類学的なフィールド調査を行い、そこで得られた民族誌的資料をもとに、宗教を「象徴資本」として活用する国家や地方エリートの政策的側面と、それに対する宗教、とりわけ民俗宗教の職能者や信者たちとの複雑多岐にわたる相互作用によって構築される側面に焦点をあてつつ分析を行った。その結果、中国における宗教実践構築の諸相、及び宗教の象徴資本化の歴史性や政治性を明らかにした。
著者
渡邊 智恵
出版者
日本赤十字広島看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

能登半島地震で被災を受けたA町の住民を対象として、発災直後、1年後、2年後、3年後の健康状態を調査した。住民台帳から無作為抽出をした1000人の住民にGHQとともに基本属性に関するアンケート調査(郵送)を行った。525名から回答があり、そのうち有効回答は383名であった。本調査の結果、発災から時間経過とともに、健康状態は良くなっている人が多いが、治療中の疾患ある人については悪化している人もおり、災害後の時間経過に沿って個別的なケアが必要であることが明らかになった。能登半島地震後においては、特に発災~1年間は健康状態に対するケアが必要であるが、2年目以降については健康状態が改善傾向にあることがわかった。さらに、上記の回答者から健康維持群、健康改善群、健康悪化群に分類し、健康状態が変化した要因について聞き取り調査により明らかにした。
著者
渡邊 啓貴 滝田 賢治 羽場 久美子 田中 孝彦 小久保 康之 森井 裕一
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

平成19年度は、研究代表者・分担者はそれぞれ3年計画の趣旨に沿って3年目の計画を無事に終了した。研究代表者、渡邊啓貴は、フランスに渡航し、フランスの立場について、パリ政治学院、フランス国際問題研究所、在フランス日本大使館を訪問、意見交換・情報収集を行った。また、韓国では梨花女子大学、延世大学、マレーシアではマレーシア大学、戦略研究所、経済研究センターをそれぞれ訪問し、意見交換・情報収集を行った。研究分担者、羽場久美子は、ロシア(ウラジオストク、アカデミー歴史学研究所)、ドイツ(ベルリン、フンボルト大学)、同小久保康之はベルギー、同滝田賢治は、米国(ワシントンDC)、同森井裕一は、ドイツを訪問し、研究課題に即したネットワーク形成と情報収集を行った。平成19年10月下旬には、パスカル・ペリノー教授(パリ政治学院・フランス政治研究所所長)、12月初旬には、ジャン・ボベロ教授(Ecole Pratique des hautes etudes)を招聘し、シンポジウムや研究会合を開催した。(10月23日「サルコジ政権の誕生と行方」(於日本財団)、12月11日科研メンバーとの会合(日仏会館))いずれも盛会で、フロアーなどからも多くの質問が出され、積極的な議論が行われた。以上のように研究計画第3年度としては、予定通りの実り大きな成果を上げることが出来、最終年度を締めくくることが出来たと確信している。
著者
渡邊 和彦
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.36, no.9, pp.779-787, 1993

海外各国で最近10年間に出版された「日本研究書」の出版点数の推移,分野別,テーマ別に眺めた出版傾向等を概観すると,英語圏のイギリスと米国の学術出版書がやはり多く,日本で英文出版される「ブックス·オン·ジャパン」や現代日本作家の英訳本等と並んで,広く「日本」への関心を換起している。特にイギリスでは,おもに社会科学分野における本格的な「日本研究書」がめざましく増えている。まず,イギリス人の「日本研究」の先駆者たちの名著を出版文化史の上で辿り,本年刊行の最新刊「ケンブリッジ日本百科事典」刊行に至るまでを,イギリスにおける「日本研究」の旺盛な展開として跡づけてみたい。
著者
桐谷 佳恵 内藤 正志 内田 和宏 赤司 卓也 杉山 和雄 渡邊 誠 小野 健太
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1-10, 2005-05-31
参考文献数
8
被引用文献数
2

災害時や渋滞時には、交通情報を可変的に表示できる情報板が必要となる。本研究は、現状の高解像度LED式道路交通情報板の半数以下のLED数で迂回路を表示できる可変情報板のデザイン指標を得ることを目的としている。具体的には、地図構成要素の形状と色彩に関する指標である。直交表による実験計画法を用いて、「表示板の見やすさ」、「迂回路表示のわかりやすさ」など、表示板の見やすい表現を模索し, デザイン要件を決定した。その結果、道路形状、迂回路形状と表示方式、地名表示、ルートマーク、現在地表示、文字表示の仕方、文字や道路及び背景の色彩、などについての基本指標が明らかになった。本研究から得られたデザイン指標は、新しい道路情報提供を実現する情報板作成に貢献し、従来よりも低コストの可変情報板作成の可能性を示すものとなる。
著者
渡邊 仁 松本 與作
出版者
日本建築学会
雑誌
建築雑誌 (ISSN:00038555)
巻号頁・発行日
no.611, pp.391-395, 1936-04
著者
木下 博雄 渡邊 健夫 格内 敏 YASHIRODA Yoko YOSHIDA Yukiko KAMEMURA Kazuo 新部 正人
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、次世代リソグラフィ技術である極端紫外線露光法を2009年までに実用化するために、その課題の一つであるマスク基板の無欠陥化を目標とする。このため、多層膜が形成されたガラス基板上の欠陥を露光光と同一のEUV光で直接観察し、さらにミラウ型の位相差干渉顕微鏡の構築により、サブナノメートル(0,03nm)の微細な表面界面の3次元像の形成を実現させる。当該研究機関において、1)EUV顕微鏡の製作、2)ビームスプリッタの製作技術、3)プログラム欠陥をもつ位相欠陥マスクの製作と評価、を進めた。1)については、形状精度、表面粗さともに、0.3nm以下を満足させるNA0.3、30倍のシュバルツシュルト光学系を入手し、ニュースバルビームライン3に設置した。2)については、厚さ100nm以下のメンブレン構造とせねばならないことから、膜応力の低減、均一化など、さまざまな改良を進めているが、未だに干渉実験に供するものが出来上がっていない。3)のプログラム欠陥に対しては、HOYAの協力を求め、高さ5nm、幅90nm〜500nmの凹凸欠陥をもつガラス基板に多層膜を形成したマスクにて評価を進めた。この結果、凹、凸とも5nmの高さで90nmの幅をもつ立相欠陥の観察に世界で初めて実現できた。本研究課題の位相差型顕微鏡の開発は、ビームスプリッタの製作の困難さから、現時点では実現できなかった。しかしながら、極端紫外線領域での顕微鏡により位相欠陥の観察が可能となり、ほぼ初期目標を満足させることが出来たと考えている。この種の位相欠陥の観察として、ゾーンプレートを用いる方式も米国Berkeley研究所で行われているが、本方式が解像度、観察領域ともに優れている。今後、この成果は、極端紫外線リソグラフィ用のマスク評価として、HOYA、旭硝子、Seleteの国内機関の他、Samsung電子等に解放し、利用研究が進められる。
著者
永井 順也 伊藤将志 渡邊 晃
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告高度交通システム(ITS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.107, pp.39-44, 2008-10-30

地震等の災害時には,被災情報の配信や安否確認などの情報通信の必要性が高まる.混乱している被災者に確実な情報を与え,正しい行動をうながすことは二次災害の防止に役立つ.そのため,破壊されたネットワークの復旧や,新たなネットワークの構築など通信網の早急な整備が必要となる.特に断線による障害はネットワークが有線接続しているために発生する.そこで,被災地に無線メッシュネットワークを構築して,障害に強いインフラ網として利用する方法が研究されている.本研究では公衆無線 LAN の AP 自体に無線メッシュネットワーク機能を追加し,通常時は一般の AP として,高速で安定した有線経路を使い,被災時に有線や AP に障害が起こると AP が必要に応じて無線メッシュネットワークに移行し,即座にネットワークを復旧させる方法を提案する.At the time of disaster, such as an earthquake, the demand of information such as the safety confirmation rises. It is very important of prevention of secondary damage to give disaster victims accurate information and press a correct action. Thus, it is necessary to rebuild a broken network or build a new network immediately. Especially, the trouble by disconnection is caused by cable connection. Therefore, the method of making infrastructure strong for troubles by building the Wireless Mesh Network has been studied. In this paper, we propose a robust wireless LAN system, which can be smoothly recovered from the destruction state when access points or wires connecting access points are broken by the disaster. In this system, we add functions of the Wireless Mesh Network into the access point used as public wireless LAN.
著者
廣野 喜幸 石井 則久 市野川 容孝 金森 修 森 修一 山邉 昭則 渡邊 日日 関谷 翔 高野 弘之 花岡 龍毅
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

国際比較の観点から、公衆衛生・医学研究に関する日本の医療政策の形成過程の特徴を明らかにするため、医学専門雑誌、審議会の議事録や裁判記録等の資料分析を中心に調査し、その成果を論文・口頭で発表した。また各年度、医学・医療行政の専門家に対してインタビュー形式の調査を実施した。調査を通じて積極的な意見交換を行いながら、日本の医療行政の仕組みやワクチン・インフルエンザ等の政策の歴史の把握、最新情報の収集に努めた。
著者
秋山 励 高田 英裕 山中 唯生 大熊 晴之 末次 康江 金岡 敏弘 熊木 哲 石原 和哉 花見 充雄 松村 哲哉 渡邊 哲哉 味岡 佳英 松田 吉雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. FTS, フォールトトレラントシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.476, pp.31-36, 2001-11-22

64MビットDRAM内蔵オンチップMPEG-2エンコーダLSIを開発した.大規模・高速なLSIをインプリメントするために, マルチクロックの階層的スキュー管理, クロストークノイズを考慮したタイミング検証, デカップリングキャパシタによる電源のIRドロップ対策を実施した.その結果, 162MHz動作ブロックにおいて, クロストークノイズを考慮した検証で目標性能の263MHz@1.5Vを満足させると共に, IRドロップを166mVに抑えることを可能とした.
著者
前田 雄一郎 成田 哲博 甲斐荘 正恒 渡邊 信久
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2008

蛋白質アクチンは高等生物の細胞に最も多量に含まれ多くの重要な細胞機能を担う。筋細胞中では数珠のように連結した重合体として筋収縮とその調節に関与し、他方一般細胞では他の蛋白質の助けを借りて重合と脱重合を繰り返す循環的分子運動によって細胞を動かす。本研究でははじめてアクチン重合体の原子構造を解明し、またアクチンと他の蛋白質の複合体構造を解明した。それら構造情報を基に機能発現メカニズムの理解を進めた。