著者
田中 愛治 河野 勝 清水 和巳 山田 真裕 渡部 幹 西澤 由隆 栗山 浩一 久米 郁男 西澤 由隆 長谷川 真理子 船木 由喜彦 品田 裕 栗山 浩一 福元 健太郎 今井 亮佑 日野 愛郎 飯田 健
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、全国の有権者から無作為抽出した対象者(サンプル)に対し、ノート・パソコンを用いた世論調査(CASI方式)を日本で初めて実施した。さらに、ノート・パソコンによるCASI調査に、認知心理学的視点を加えた政治経済学実験の要素を組み込み、実験を導入した世界初のCASI方式全国世論調査に成功した。これにより、政治変動をもたらす日本人の意志決定のメカニズムの解明を可能にし得る新たな研究を踏み出した。
著者
鈴木 晃仁 脇村 孝平 飯島 渉 橋本 明 杉田 聡 渡部 幹夫 山下 麻衣 渡部 幹夫 山下 麻衣 猪飼 修平 永島 剛
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

19世紀後半から20世紀前半にかけての日本における「健康転換」を、当時の先進国と日本の植民地を含めた広域の文脈で検討した。制度・行政的な側面と、社会的な側面の双方を分析し、日本の健康転換が、前近代社会としては疾病構造の点では比較的恵まれている状況で、市場が優越し公共の医療が未発達である状況において、欧米の制度を調整しながら受容したものであったことを明らかにした。
著者
渡部 幹 寺井 滋 林 直保子 山岸 俊男
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.183-196, 1996-12-10 (Released:2010-06-04)
参考文献数
42
被引用文献数
19 20

最小条件集団における内集団バイアスの説明のために提出されたKarpら (1993) の「コントロール幻想」仮説を囚人のジレンマに適用すると, 囚人のジレンマでの協力率が, プレイヤーの持つ相手の行動に対するコントロール感の強さにより影響されることが予測される。本論文では, 人々の持つコントロール感の強さを囚人のジレンマでの行動決定の順序により統制した2つの実験を行った。まず第1実験では以下の3つの仮説が検討された。仮説1: 囚人のジレンマで, 相手が既に協力・非協力の決定を終えている状態で決定するプレイヤーの行動は, 先に決定するプレイヤーの行動により異なる。最初のプレイヤーが協力を選択した場合の2番目のプレイヤーの協力率は, 最初のプレイヤーが非協力を選択した場合の2番目のプレイヤーの協力率よりも高い。仮説2: 先に行動決定を行うプレイヤーの協力率は, 同時に決定を行う通常の囚人のジレンマにおける協力率よりも高い。仮説3: 2番目に決定するプレイヤーの協力率は, 相手の決定が自分の決定の前に知らされない場合でも, 同時に決定を行うプレイヤーの協力率よりも低い。以上3つの仮説は第1実験の結果により支持された。3つの仮説のうち最も重要である仮説3は, 追実験である第2実験の結果により再度支持された。
著者
森本 裕子 渡部 幹 楠見 孝
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.108-119, 2008-11-30 (Released:2017-02-10)

We investigated how differently people punish a free-rider in three experiments. Experiment 1 was conducted to examine how individual levels of trust and self-fairness influence their punishing behavior in a 5-person social dilemma. The results showed that trustful and unfair people, as well as distrustful and fair people, punish a free-rider more. To account for these results, we carried out a vignette-type study in Experiment 2, in which participants rated how likely they were to engage in a variety of punishing behaviors that typically happen in the real world. A factor analysis indicated that people usually assign two different types of meanings to punishing behaviors. One is "Vengeance," which unfair people, regardless of their levels of trust, tend to inflict; the other is "Warning," which tends to be favored by fair people. The results of Experiment 3, another vignette study, showed that observers also consider Vengeance as unfair and Warning fair. These findings imply that participants assigned one of the two meanings to their punishments in Experiment 1 depending on their levels of trust.
著者
渡部 幹 寺井 滋 林 直保子 山岸 俊男
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.183-196, 1996
被引用文献数
2 20

最小条件集団における内集団バイアスの説明のために提出されたKarpら (1993) の「コントロール幻想」仮説を囚人のジレンマに適用すると, 囚人のジレンマでの協力率が, プレイヤーの持つ相手の行動に対するコントロール感の強さにより影響されることが予測される。本論文では, 人々の持つコントロール感の強さを囚人のジレンマでの行動決定の順序により統制した2つの実験を行った。まず第1実験では以下の3つの仮説が検討された。仮説1: 囚人のジレンマで, 相手が既に協力・非協力の決定を終えている状態で決定するプレイヤーの行動は, 先に決定するプレイヤーの行動により異なる。最初のプレイヤーが協力を選択した場合の2番目のプレイヤーの協力率は, 最初のプレイヤーが非協力を選択した場合の2番目のプレイヤーの協力率よりも高い。仮説2: 先に行動決定を行うプレイヤーの協力率は, 同時に決定を行う通常の囚人のジレンマにおける協力率よりも高い。仮説3: 2番目に決定するプレイヤーの協力率は, 相手の決定が自分の決定の前に知らされない場合でも, 同時に決定を行うプレイヤーの協力率よりも低い。以上3つの仮説は第1実験の結果により支持された。3つの仮説のうち最も重要である仮説3は, 追実験である第2実験の結果により再度支持された。
著者
大薗 博記 吉川 左紀子 渡部 幹
出版者
The Japanese Society for Cognitive Psychology
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.157-166, 2006

進化論的枠組みで顔の再認記憶について検討したこれまでの研究は,人は協力者として呈示された顔より非協力者として呈示された顔をより再認しやすいことを明らかにした(Mealey,Daood,& Krage,1996; Oda,1997).しかし,顔を憶えているだけではなく,その人物の協力性までも記憶されているかは明らかにされてこなかった.本研究では,まず60人の実験参加者に,未知顔の写真を1回限りの囚人のジレンマ・ゲームにおける (偽の) 選択 (協力/非協力) とともに呈示した.そして1週間後,元の写真に新奇写真を混ぜてランダムに呈示し,その顔を1週間前に見たか否かと,その人物と取引したいか否かを尋ねた.その結果,顔の再認課題では,先行研究とは一貫せず,協力者と非協力者の写真は同じ程度に再認された.一方,協力者に対して非協力者に対してよりも,より「取引したい」と答える傾向があった.興味深いことに,この傾向は憶えられていた顔に対してだけでなく,憶えられていなかった顔に対しても見られた.この結果は,潜在的記憶が協力者と非協力者を見分けるのに寄与していることを示唆している.
著者
大薗 博記 吉川 左紀子 渡部 幹
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.157-166, 2006-03-31 (Released:2010-10-13)
参考文献数
29

進化論的枠組みで顔の再認記憶について検討したこれまでの研究は,人は協力者として呈示された顔より非協力者として呈示された顔をより再認しやすいことを明らかにした(Mealey,Daood,& Krage,1996; Oda,1997).しかし,顔を憶えているだけではなく,その人物の協力性までも記憶されているかは明らかにされてこなかった.本研究では,まず60人の実験参加者に,未知顔の写真を1回限りの囚人のジレンマ・ゲームにおける (偽の) 選択 (協力/非協力) とともに呈示した.そして1週間後,元の写真に新奇写真を混ぜてランダムに呈示し,その顔を1週間前に見たか否かと,その人物と取引したいか否かを尋ねた.その結果,顔の再認課題では,先行研究とは一貫せず,協力者と非協力者の写真は同じ程度に再認された.一方,協力者に対して非協力者に対してよりも,より「取引したい」と答える傾向があった.興味深いことに,この傾向は憶えられていた顔に対してだけでなく,憶えられていなかった顔に対しても見られた.この結果は,潜在的記憶が協力者と非協力者を見分けるのに寄与していることを示唆している.
著者
鈴木 晃仁 脇村 孝平 杉田 聡 橋本 明 飯島 渉 杉田 米行 加藤 茂生 廣川 和花 渡部 幹夫 山下 麻衣 永島 剛 慎 蒼健 ヨング ジュリア 香西 豊子 逢見 憲一 田中 誠二
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

疾病・病者・医者の三つのエージェントが会して構成される「医療」という動的な場は、どのような歴史的な構造を持つのか。疾病環境の変化、人々の病気行動の変化、そして医療者の科学と技術の変化の三つの相からなる医療の構造変化は、近現代の日本の変化とどのような関係があり、世界の中の変化とどう連関したのか。これらの問いが、急性感染症、スティグマ化された疾患、帝国医療の主題の中でとらえられた。
著者
山岸 俊男 結城 雅樹 神 信人 渡部 幹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の最大の成果は、自集団の成員を優遇する内集団ひいき現象を生みだす直接の心理機序が集団内部における自己の評判に対するセンシティビティーにあることを一連の最小条件集団実験を通して明らかにすることで、集団行動の進化的基盤に対する二つの説明原理である集団選択と間接互恵性の間の論争に対して、後者を支持する実証的知見を組織的に提供した点にある。
著者
清水 和巳 大和 毅彦 瀋 俊毅 芹澤 成弘 大和 毅彦 渡部 幹 清水 和巳 渡部 幹
出版者
早稲田大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

「社会関係資本の機能と創出」に関して主要な成果を概略的に記す。1. 社会関係資本の尺度として従来、General Social Survey (GSS)のネットワークに関する項目が使用されていたが、この尺度が人々の信頼・協力行動を予測しうるとは言えない。われわれは、ある社会の社会関係資本の水準を測るには、上記のようなデモグラフィックデータだけではなく、実際の行動実験における信頼・協力行動のデータをとり、その二つの関係をしなくてはならないことを示した。例えば、中国の経済発展状況が異なる様々な都市で、公共財実験・信頼ゲーム実験などを行った結果、被験者の信頼・協調が性別や年齢だけではなく、協力行動の有無、リスクや公平に対する選好、他人への期待に影響されることがわかった。2. 信頼に基づく人間の協力行動の生化学的な基礎としてミクログリアが重要あることが示唆された。実験において被験者に脳内免疫細胞であるミクログリアの活性を抑えるミノサイクリンという抗生物質を投与し,他者への信頼が重要となる経済取引実験を行ってもらい,偽薬群と比較したところ,実薬投与群は他者の信頼性判断により敏感になることがわかった。特に、ミクログリアの活性は盲目的な信頼を抑制し、きちんとした判断に基づいた信頼。居力高校を促進する可能性があることが示唆された。3. 囚人のジレンマ・鹿狩りゲームはそれぞれ、協力・協調の失敗を引き起こす状況として広く知られている。われわれは、これらのゲームを繰り返し行う状況下で協力・協調を導くと期待できる三つの仕組み(device)、すなわち、(1)協力・協調の難易度の段階的変化、(2)変化の内生性、(3)目標値の調整、について理論・実験により考察した。その結果、この仕組みが一種の社会関係資本として機能し、人々の協調・協力を促すことが確認された。これらの仕組みは、匿名性の高い現代社会において解決が難しいジレンマ、また、権力の干渉の余地の小さい国家間の問題や個人裁量の範囲内の問題にも適用可能と考えられ、それゆえ外的妥当性が高く、応用範囲も広いと考えられる。
著者
山岸 俊男 渡部 幹 林 直保子 高橋 伸幸 山岸 みどり
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.206-216, 1996
被引用文献数
2

An experiment was conducted to test three hypotheses concerning effects of social uncertainty and general trust on commitment formation, hypotheses derived from Yamagishi & Yamagishi's (1994) theory of trust. First two hypotheses were supported, while the last one was not. First, increasing social uncertainty facilitated commitment formation. Second, low general trusters formed mutually committed relations more often than did high trusters. Finally, the prediction that the effect of general trust on commitment formation would be stronger in the high uncertainty condition than in the low uncertainty condition was not supported. Theoretical implications of these findings for the theory of trust advanced by Yamagishi and his associates are discussed.
著者
フィリップ ボナシーチ 渡部 幹
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.33-52, 2003-03-31 (Released:2009-01-20)
参考文献数
22

個人の意思決定に関する、少数のシンプルかつ妥当な仮定から、負結合の交換ネットワークにおける権力の分布を予測するための構造的・代数的理論を示す。まず、示されたモデルから、複数の式が生成されることを論じる。そして、それらの式の解の特性から、交換ネットワークの類型化を示す。式の解には4つの可能性がある:(1)ネットワーク内のいくつかのポジションがすべての権力を持つような解が1つ存在する場合、(2)全てのポジションが同じ権力を持つような解が1つ存在する場合、(3)解が無限に存在し、構造的な分析では権力の分布を決定できない場合、(4)解がなく、権力が安定しない場合。 次に、通常、実験で検討されるような交換ネットワークよりもさらに多くの種類のネットワークに適用できるように、このモデルの様々な拡張を提唱する。提示されたモデルを、そのまま使用するか、わずかに変えるだけで、ネットワーク内の交換資源の価値が異なっている場合、ポジションによって行える交換の回数が異なる場合、交換が発生するためには3人またはそれ以上の参加者が必要な場合、の3つの状況において、権力の予測が可能となることを示す。
著者
渡部 幹夫 酒井 シヅ 杉山 章子 鈴木 晃仁 永島 剛
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

第二次世界大戦後占領下の日本において行なわれた、行政制度の法的な改正は多岐にわたる。GHQ公衆衛生福祉局サムス准将の主導により行なわれた保健医療制度の変革は、占領国の法律を超える積極的な予防医学的な法の精神で作られたようである。しかし今回の研究により、その法を実際に施行した日本の混乱と新たな問題の発生が明らかとなった。
著者
渡部 幹 山本 洋紀 清水 和巳 番 浩志 山本 洋紀 清水 和巳
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

制度の維持と変容を司る心理変数について、それらがどのような役割を果たしているか、そしてそれが制度とどのように関係しているかについて、3つの実験シリーズを行った。それぞれ、公共財における懲罰行動の分類とその行動に対する評価、他者の信頼性を判断する際の脳の賦活動、公正分配の規定要因、についての研究を行った。その結果、交換ネットワークの流動性や懲罰についての共有理解がそれらに影響を及ぼし、制度の生成基盤になる可能性が示された。
著者
渡部 幹
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

社会的交換ネットワークの変容とその規定要因となる心理的特性--公正感と信頼感--に焦点を当てた実験研究を行った。社会的交換状況において不公正分配をされた者が、その状況から脱出しようとする傾向を持つこと、そしてそれによりネットワーク構造全体が変容しうることを確かめるための実験を行った。20名程度の実験参加者がコンピュータを介して、資源の取引を行うという状況を作る。この実験では、すべての参加者が相手に対して不利になるようにあらかじめ設定されており、参加は必然的に、取引相手から搾取され、不公正な分配を受け入れなくてはならない状況におかれる。実験では、このような状況にいる参加者が、公平な分配を受けている場合に比べ、コストをかけてでも取引相手からの離脱を望むかどうかを検討した。予測通り、不公正な分配を受けた参加者は、公正な分配を受けた参加者よりも、交換状況から脱出する傾向の強いことが示された。この結果は、2002年12月に米国で行われた研究会にて発表され、その際の議論をもとに、現在、結果のより詳しい分析を進めている。また、不公正・公正な分配そのものを左右する心理的要因を探るために、最後通牒ゲームと独裁ゲームを用いた研究を行った。これらのゲームは、見知らぬ他者と自分との報酬分配に関するもので、公正な報酬分配を行う者に特徴的な感情や行動傾向との関連性を調べるために、日本人被験者を用いた実験が行われた。この結果、「他者一般への共感能力」の高い者が自発的な公正分配を行う傾向の高いことが見出された。この結果は、2001年8月のアメリカ社会学会、2001年10月の日本社会心理学会にて報告された。この他にネットワーク変容に影響を及ぼすもうひとつの規定要因である信頼感について、その醸成に関する実験研究も行われた。この理論的概要と結果は、土木学会誌および2002年の日本社会心理学会にて報告されている。