著者
武岡 春奈 田中 里枝 林 武文
出版者
関西大学総合情報学部
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.21-37, 2011-01-21

色立体視は,背景と2 色以上の領域で構成される平面パタンにおいて,特定の色が進出あるいは後退して知覚される現象である.そのメカニズムは,眼球光学系の軸外色収差に基づく両眼立体視とされているが,それだけでは十分に説明出来ない現象も報告されている.本研究では,軸外色収差による両眼視差量を実験により求め,背景色による奥行きの逆転現象と奥行き量の変化について調べた.また,精密模型眼を用いて光線追跡による数値シミュレーションを行い,実験結果を定量的に説明できることを示した.さらに,自然視の色立体視で顕著な個人差の原因について,シミュレーション結果に基づく考察を加えた. Chromostereopsis is a visual perception where a specifi c color is perceived closer to or farther from the observer than the other colors in a plane pattern that consists of at least two colors with a background color. The mechanism responsible for this phenomenon is considered to be binocular stereopsis by chromatic aberration of the eyeball optical subsystem; however, previous quantitative evaluations have been unsatisfactory. In this paper, we experimentally and numerically study a reversal phenomenon of the depth by background color and a change in the magnitude of this depth. Furthermore, we discuss individual differences in the depth perception in the chromostereopsis on the basis of numerical simulation results.
著者
岡田 益吉 小柳津 広志 田中 雄二郎 武田 裕 家 泰弘 及川 昭文
出版者
筑波大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1992

科学研究費補助金は,その発足以来,大学等の研究機関における学術研究を,基礎研究から試験的研究まで幅広く支援してきている。また,分野も文学,歴史,法学などの人文・社会科学から理学,工学,医学などの自然科学までのすべての専門分野にまたがっており,今や日本の学術研究を支える基盤的経費として位置付けることができる。近年,学術活動を支える研究環境の整備,とりわけ,学術研究の振興の要となる科研費の拡充が緊急の課題となっており,これに伴い学術審議会等から科研費の配分審査体制の一層の改善・充実が求められている。これらを受けて研究種目の改編や分科・細目表の改正等が行われてきているが,科研費における学術研究の進展に寄与するためには,科研費による学術研究の実態を分析しその動向等について詳細な基礎データの整備・収集・分析を行うことが必要である。このため,平成5年度は下記のとおり調査研究を行った。(1)科研費の審査員に対するアンケート調査科研費の一般研究等の審査は書面による第一段審査と合議による第二段審査の二段審査制により行われているが,平成5年度の審査に携わった第一段審査員及び第二段審査員並びに平成6年度の審査に携わった第二段審査員に対して,配分審査方法と実際に審査を行った際の問題点等について,アンケート調査を行った。(2)各大学の研究者に対するヒアリング調査メンバーが手分けをして,大学等の研究者から,科研費における学術研究の実態,科研費に関する要望,本研究課題で検討中の配分審査方法の改善案等に対する意見等について,ヒアリング調査を行った。(3)アンケート調査・ヒアリング調査の集計・分析2年間のアンケート調査・ヒアリング調査等の結果を集計・分析し,研究成果報告書を取りまとめた。
著者
田中 恒雄
出版者
紙パルプ技術協会
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.813-820, 1995-05-01 (Released:2009-11-16)
参考文献数
41

In order to expect the feasible printing conditions to obtain high definition image by modern printing technology, physical properties of paper surfaces relating ink transfer are mainly discussed due to the experimental data accumulated thus far. The macroscopic structures of paper surfaces depending on the porosity, the smoothness, the compressibility and so on, are responsible for the tone rendering by small halftone ink dots the size of which reaches about 10 μm. To control the dot gain to be minimum is essential in the high definition printing process. However, the dot gain formation seems prone to be made by the rheological properties of printing ink rather than by the properties of paper surfaces mentioned above. Also, the thickness control of ink film is much more important in the process as compared to that in the ordinary halftone reproduction process.
著者
緒方 一喜 田中 生男 小川 智儀
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.241-245, 1975
被引用文献数
7

Field surveys of the distribution of domiciliary cockroaches were conducted in Tokyo and Kawasaki during the period between 1972 to 1974. In Tokyo, dead cockroaches collected from various types of buildings following insecticide treatment by pest control operators were brought to the laboratory and identified. Among a total of 286 buildings surveyed, 172 (60.1%) were restaurants and snacks, 25 (8.7%) offices, 14 (5.0%) food factories, 12 (4.2%) residences and 12 (4.2%) supermarkets. A total of 2,802 cockroaches was collected including Blattella germanica (93.7%), Periplaneta fuliginosa (4.8%), P. japonica (0.5%), P. americana (0.8%) and P. australasiae (0.2%). However, the findings cannot be taken to represent the general tendency of cockroach infestation in Tokyo since a disproportionately high number of restaurants and offices, which are the principal clients of pest control services, were surveyed. A correlation between the type of structural property and established cockroach species was examined and a dominance of B. germanica was shown in all cases. This was especially striking in the case of structures constructed within the past 5 years. In Kawasaki, a total of 145 cockroach adhesive traps were set in offices, restaurants, stores, apartments, residences and farm houses on two occasions in both summer and winter. Species compositon of trapped 1,755 individuals was B. germanica (78.6%), P. fuliginosa (20.7%) and P. japonica (0.7%). B. germanica was dominant over P. fuliginosa in offices, apartments, restaurants and stores, while the opposite was true for residences. In farm houses, P. fuliginosa was most abundant followed by P. japonica. A distinct tendency for the abundance of B. germanica in urban buildings, P. fuliginosa in residences and P. japonica in farm houses was observed. Furthemore, P. japonica has never been trapped during winter, suggesting that they had entered diapause.
著者
矢橋 晨吾 雨宮 悠 高 錫九 高橋 悟 田中 弥寿男
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.129-134, 1992-03-25
被引用文献数
1

以上の結果を総合的にまとめると以下のとおりになる.保水性及び通気性が良好であることは植物の生育にとって重要な条件であり,鹿沼土がこれらの条件を満たすのは,大粒径ほど多量に微細間隙を持ち保水性を高める一方,鹿沼土粒子が形成する粒間大間隙が通気性に大きく寄与していることが保水特性ならびに通気性の測定より明らかになった.さらに,単一混合する場合もなるべく粒径の大きいものを用いるのが良いことも明らかになった.今日,採取したものを風乾させ袋詰めにされ,園芸店において市販されているが,以上のことを考慮にいれ,今後鹿沼土を合理的に利用するには,袋詰めにする前において粒径及び間隙により分類し,植物により使い分ければ一層の効果が得られるものと考える.
著者
田中 愛久 黒柳 奨 岩田 彰
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.688, pp.175-182, 2001-03-16
被引用文献数
10

大規模ニューラルネットワークを家電製品のレベルでシステムとして組み込むことを考えた場合、組み込みプロセッサ上でのソフトウェアとしてでは実時間応答が困難であることが予想される。そこで、ニューラルネットワークをハードウェア化することで、低コストでの高速化を実現する。またFPGAを用いることで動的なネットワーク構造の変化を目指した。低コストでの実現を目指し、ネットワーク全体の回路規模を抑えるために1ニューロンあたりの回路規模を抑えるハードウェア化手法で回路設計を行い、非常に小型のニューロンを設計できた。また、独立したシステムとしての運用のため、ニューラルネットワーク最大の特徴である学習のハードウェア化も行った。
著者
田中 秀和
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.139, no.3, pp.93-98, 2012 (Released:2012-03-10)
参考文献数
29

神経回路ができるとき,神経突起が標的細胞と接着することでシナプス結合が成立する.神経回路が成立したあとでも,シナプス形成過程の一部をくりかえすことで,シナプスの強化・抑圧やつなぎかえが起きる.我々は,これらの過程に接着分子カドヘリンが関与する可能性を検討してきた.研究を進める中で,カドヘリンが思いのほかダイナミックにシナプスの生理機能にかかわることがわかり,さらにその過程で新たなシグナル伝達経路も見いだされた.こうしてわかってきた事実は,神経回路のなりたちや可塑性に新たな視点を与えるばかりでなく,カドヘリンが神経伝達物質の放出機構や受容体の機能調節に深くかかわっている可能性も示唆している.またカドヘリン遺伝子の異常は,自閉症などの疾患感受性に関連しており,シナプスの接着・リモデリング関連分子は,新たな治療標的として薬理学への貢献が期待される.
著者
田中 義人
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.302-305, 2003

私達は,高校初学年に於いて必修をめざして,物理を基礎とし,物理,化学,生物,地学を短括した新しい科目である包括的理科を提案している。包抵的理科のめざすものは,科学的概念が自然現象を理解するのにとどまらず,科学的概念が日常生活において,読み・書き・そろばんと同様不可欠であることを示すことにある。包括的理科を実現するためには,定性から定量への数量化が重要となる。本論文では,以上についての具体例を通して包括的理科が全ての高校生にとって必修に値することを述べる。