著者
糖尿病診断基準に関する調査検討委員会 清野 裕 南條 輝志男 田嶼 尚子 門脇 孝 柏木 厚典 荒木 栄一 伊藤 千賀子 稲垣 暢也 岩本 安彦 春日 雅人 花房 俊昭 羽田 勝計 植木 浩二郎
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.450-467, 2010 (Released:2010-08-18)
参考文献数
54
被引用文献数
11

概念:糖尿病は,インスリン作用の不足による慢性高血糖を主徴とし,種々の特徴的な代謝異常を伴う疾患群である.その発症には遺伝因子と環境因子がともに関与する.代謝異常の長期間にわたる持続は特有の合併症を来たしやすく,動脈硬化症をも促進する.代謝異常の程度によって,無症状からケトアシドーシスや昏睡に至る幅広い病態を示す.
著者
石川 直将 高橋 伸佳 河村 満 塩田 純一 荒木 重夫
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.232-237, 2008-08-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
15

Marchiafava-Bignami病 (以下, MBD) 自験8症例において, 急性期および慢性期の症候と病巣について検討した.8例中6例は意識障害にて発症し, 慢性期に構音障害と半球離断症候を呈し, 画像検査にて脳梁に限局した病変を認めた.これらは従来報告されているMBDの臨床像と一致していた.一方, 発症時に意識障害を呈さない例が2例みられた.これは, 発症時の意識障害の存在が必ずしもMBDの診断に必須ではないことを示している.また, 2例では肢位の異常, 固縮などの錐体外路症状がみられ, そのうちの1例ではMRIで両側の被殻に病変が認められた.同様の症例の報告は過去に4例のみであるが, この症候もMBDの症候の1つとして注目される.慢性期には意識障害, 前頭葉症状は消失するが, 錐体路症状が構音障害, 半球間離断症候とともに長期にわたり持続することが示された.以上から, MBDの臨床像は急性期, 慢性期ともに従来考えられていたよりも多彩である可能性がある.従って, アルコール多飲者が急性の構音障害, 歩行障害, 痙攣などを呈し, 局所徴候が明らかでない場合には, MBDの可能性も考え, 画像検査で脳梁病変の有無を確認する必要があると思われた.
著者
荒木 一視
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.460-475, 1992-06-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
22
被引用文献数
5 6

Since World War II Japanese villages have been transformed dramatically. With the shortage of agricultural labor in Japan, villages today have been hurt by the problems of an aging labor force. The Japanese government tried to reorganize the agricultural structure after World War II. But many farmers who hold small cultivated plots have maintained their operations. Under such conditions, it is important to research agricultural change from the point of view of how cultivation is maintained. Nevertheless, at this point in time, few investigations have provided detailed case studies. In particular, it is rare to find a case reported from the view of agricultural production from the agricultural labor side. This paper aims to clarify the mechanism of agricultural continuance by means of a detailed case study in Takamiya-cho, a village in Hiroshima Prefecture. The methodology is as follows. In the previous studies on the shortage of supply of agricultural labor, in addition to many discussions of part-time farmer, two main labor supply source systems have been discussed. One of them is the “weekend farmer” who lives outside his home village and returns to the village to help with his family's farm in the busy farming seasons or on weekends. The other is the trust system of agricultural lands and works. The former is a phenomenon that occurs in individual farm households, but the latter is a system that occurs in groups of farm households. This study investigates how these two systems function in a village with an aged population. Three types of farmer can be classified according to the labor supply situation. The first type is the successor who lives with his aged parents and works in the non-agricultural sector. Where this type of farm household is prevalent, cultivation can be continued because the agricultural labor force will be reproduced even with part-time farming. In such a situation only rice will be cultivated, by a small labor force using agricultural machinery. In the second type, the agricultural labor force is supplied by “weekend farmers.” In this type cultivation is maintained by the labor supply system in each farm household itself. The labor supply of “weekend farmers” is available for mechanized agriculture, but serious problems will occurred in the near future, because there is little probability of reproducing the agricultural labor force. In the third type, the labor force is supplied by an agricultural trust. This type is a labor supply system that works in groups of farm households. This type of labor supply is available not merely in villages with an aged population but also in villages where part-time farming is predominant.
著者
柴垣 広太郎 三代 剛 福山 知香 高橋 佑典 古谷 聡史 大嶋 直樹 川島 耕作 石村 典久 長瀬 真実子 荒木 亜寿香 門田 球一 石原 俊治
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1287-1298, 2021-09-25

要旨●H. pylori未感染者に発生するラズベリー様腺窩上皮型胃腫瘍とH. pylori既感染者に発生する腺窩上皮型胃癌の臨床病理学的特徴を検討した.前者は萎縮のない胃底腺領域に発生する発赤小隆起で,いわゆるラズベリー様外観を呈し,NBI拡大観察で不整な乳頭状/脳回様構造を呈した.後者は萎縮粘膜に発生する粗大な発赤隆起で,前者より大きく形態も歪であった.NBI拡大観察で乳頭状/脳回様構造を呈したが,形態不整は高度であった.病理組織学的には,前者はよく分化した上皮内病変で,WHO分類では多くがlow-grade dysplasia相当であったが,Ki-67 labeling indexは異型度によらず高値を示した.後者は構造異型・細胞異型が高度で,脱分化や脈管侵襲も認められ,胃型胃癌としての高い悪性度を示した.
著者
池田 弘 櫻間 教文 黒住 順子 大森 一慶 荒木 俊江 真鍋 康二 福島 正樹
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.115-122, 2019 (Released:2019-02-28)
参考文献数
27
被引用文献数
1

銅欠乏症による種々の血球減少症を併発した透析患者5例を経験した. 男女比は1 : 4, 平均年齢は76歳, 平均透析歴は5.2年, 原疾患は糖尿病2例, 多発性囊胞腎1例, 腎硬化症1例, 不明1例, 併存症は誤嚥性肺炎3例, 脳神経障害2例, アクセス感染2例, 大腸癌術後の低栄養状態1例, 化膿性脊椎炎1例であった. 1例で経腸栄養, 4例で亜鉛製剤投与が行われていた. 診断時の血中銅, セルロプラスミンの平均濃度は26.6μg/dL, 12.6mg/dLで, 汎血球減少症2例, 貧血+血小板減少2例, 貧血のみ1例であった. 3例に硫酸銅, 1例に純ココア, 1例に銅サプリ投与を行い, 全例, 血球減少が改善した. 透析患者ではリン制限に伴う銅摂取量減少, 亜鉛補充による腸管での銅吸収抑制から健常人より銅欠乏をきたしやすいと考えられる. ESA抵抗性の貧血や複数系統にわたる血球減少症をみたときは, 銅欠乏も念頭において診療を行う必要があると考えられた.
著者
小川 渉 荒木 栄一 石垣 泰 廣田 勇士 前川 聡 山内 敏正 依藤 亨 片桐 秀樹
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.561-568, 2021-11-30 (Released:2021-11-30)
参考文献数
31

本報告ではインスリン抵抗症の新たな疾患分類と診断基準を提唱する.インスリン抵抗症は,インスリン受容体またはその情報伝達に関わる分子の機能障害により高度のインスリン作用低下を呈する疾患と定義し,遺伝子異常によって起こる遺伝的インスリン抵抗症と,インスリン受容体に対する自己抗体によって起こるB型インスリン抵抗症の2型に分類する.遺伝的インスリン抵抗症にはインスリン受容体遺伝子異常によるA型インスリン抵抗症やDonohue/Rabson-Mendenhall症候群,PI3キナーゼ調節サブユニット遺伝子異常によるSHORT症候群,AktやTBC1D4の遺伝子異常などによるものに加え,原因遺伝子が未同定のものも含む.B型インスリン抵抗症は,インスリン受容体に対する自己抗体により高度のインスリン作用低下を呈する疾患と定義され,受容体刺激性抗体によって低血糖のみを示す例はB型インスリン抵抗症には含めない.
著者
荒木 威 石川 善英 岡崎 仁 谷 慶彦 豊岡 重剛 佐竹 正博 三輪 梅夫 田所 憲治 日赤グリコアルブミン検査研究グループ
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.337-343, 2011 (Released:2011-06-08)
参考文献数
20
被引用文献数
1

2009年4月1ヵ月間の全国の献血者414,909人のグリコアルブミン(GA)値と性別,年代及びBMIとの関連を解析した.男女とも年代が上がるに従い,GA値16.5%以上の人の比率,平均GA値が上昇した.若年層の平均GA値は正常範囲内にあるが,BMIが高いほど低下した.30歳代以上では,BMIが低い群でも加齢とともに平均GA値は上昇し,BMIが高い群においては平均GA値及びGA値16.5%以上の比率が増加した.BMIが30以上の状態を続けると,30歳以降に糖尿病に移行する危険性が高いことが示唆された.一方,GA値16.5%以上の群では,普通体重・低体重が約6割を占め,普通体重以下でかつ献血可能な集団でも境界型が疑われる人が多く存在することが明らかとなった.献血時のGA検査は糖尿病の早期発見の機会を増やし,特定健診等でのHbA1cなどの糖尿病関連検査とともに糖尿病予防に有用な手段になると考えられた.
著者
荒木 由希 Araki Yuki
出版者
金沢大学大学院人間社会環境研究科
雑誌
人間社会環境研究 = Human and socio-environmental studies (ISSN:18815545)
巻号頁・発行日
no.36, pp.45-61, 2018-09-28

きもの産業はピークの2兆円産業から6分の1にまで縮小している。 本稿はその縮小原因を.先行研究から分析し. (1)生活スタイルの変化,(2)高付加価値化戦略,(3)産業の組織構造の問題の 3点に整理した。 生活スタイルの変化による需要減少に伴い, 生き残りをかけてきもの産業がとった戦略は. 高付加価値戦略, フォ ーマル路線戦略であった。 しかし. いまや消費者のニ ーズ は高級路線から変化している。 それにもかかわらず. きもの業界は, きもの=高級品という図式 に固執し. ますます消費者ニー ズと乖離する「高付加価値化の罠」とも呼ぶぺき状況にある。 本 稿では. ぎもの産業が高付加価値化の罠に陥った理由に,「伝統」という要素が深く関わってい るのではないかという仮説を立てた。 そして先行研究整理を通じ. 生産流通過程において.高級 化路線をもたらす分業システムが硬直的に垂直統合されており, 簡単には変えられず従来の高級 路線に縛られているために, きもの産業が「高付加価値化の罠」から脱却できないとのロジック を析出した。 これはドメスティックな消費慣習に依存して, それを破壊してまで新しい市湯機会 にチャレンジすることを躊躇する日本のものづくり産業全般の業界状況と重なる話である。 こ れまでに各種の対策が提言されているが, 国や自治体の一律的な政策は, 主因である構造的な問 題が未解決のままであり. 現場で機能していないことが多い。 きものを生産する現場は, 日本全 国各地に存在し,その地域と風土を活かしたきもの作りを行っている。そこで,地域特異性を考慮した. きもの産業の構造の再編成の重要性と有効性を,今後の検討課題として整理する。
著者
卜部 繁俊 佐藤 航平 堀 朋子 川﨑 寛子 荒木 智徳 竹下 茂之 楠本 浩一郎 大畑 一幸 重野 賢也
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.145-151, 2018 (Released:2018-02-20)
参考文献数
25

症例1は74歳男性.2015年6月,胃癌に対し胃全摘術及びRoux-en-Y再建術施行.高度逆流症状を呈し,上部消化管内視鏡検査にて食道内に胆汁を含む黄色の腸管内容物貯留と逆流性食道炎が認められた.膵酵素阻害薬や蠕動促進薬も効果不良であったが六君子湯追加により摂食可能となり退院し得た.症例2は75歳男性.2011年11月,胃癌に対し腹腔鏡下幽門側胃切除術及びBillroth-Ⅰ再建術を施行.嘔吐・吃逆,摂食不良,体重減少を呈し,術後5年の時点で当科紹介.同様に逆流性食道炎と診断され,六君子湯追加で軽快した.六君子湯の効果として消化管運動改善や食欲増進の他,胆汁吸着作用が報告されており,胃切除術後逆流性食道炎の症状改善に寄与すると考えられる.
著者
川島 高峰 三浦 小太郎 宋 允復 荒木 和博 加藤 博 海老原 智治
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

北朝鮮帰還事業の前史は朝鮮戦争前後に遡ることが確認できた。当初、北朝鮮残留邦人の帰還交渉として開始した日本側の申出を北朝鮮側が在日朝鮮人の帰国運動へ転換していく過程であった。それは当時国交のなかった東アジア社会主義圏との間での邦人帰還交渉の一連に位置づけられ、邦人拉致工作の前史としてみた場合、その原型はシベリア抑留をめぐる日ソ間交渉にあり、これが日中、日朝で類似した戦略構造で繰り返されたものであった。
著者
荒木 肇 藤井 崇
出版者
日本農作業学会
雑誌
農作業研究 (ISSN:03891763)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.11-20, 2013-03-20
参考文献数
28
被引用文献数
1

新潟大学農学部村松ステーション(黒ボク土)で,プラスチックハウスでの土壌特性の変化とトマト収量に及ぼす不耕起とヘアリーベッチ(以下HV)マルチの影響を調査した.1998年10月5日にHVを5 kg/10aの密度で播種し,1999年4月にHV生育場所にハウスを設置し,5月13日に刈り倒して残渣マルチとした.ハウス内の 4 試験区に,台木'影武者'に接ぎ木した'桃太郎T93'を5月14日に定植し,9月30日まで栽培した.試験区は①耕起,②不耕起,③耕起後にHV を敷く(耕起-HV),および④不耕起にHV を敷く(不耕起-HV)の4種とした.プラスチックハウスへの不耕起とHV の導入について,土壌環境からみると,不耕起では高い土壌硬度を示すが,不耕起-HV では土壌硬度を低下させ,土壌3相の構成比率の変化を緩和することが明らかになった.トマト収量は耕起-HV で最大となり,ついで耕起と不耕起-HVで,不耕起では減少した.HV マルチはトマト生育初期にトマト植物体中の硝酸含有量を高め,それが生育促進と収量増加に結びつくと考えられた.
著者
細井 昌子 安野 広三 早木 千絵 富岡 光直 木下 貴廣 藤井 悠子 足立 友理 荒木 登茂子 須藤 信行
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.445-452, 2016

線維筋痛症は病態が未解明な部分が多いが, 独特な心理特性, 免疫学的異常, 脳機能異常, 自律神経機能異常など多面的な病態が近年の研究で報告されている. 本稿では, 九州大学病院心療内科での治療経験をもとに, ペーシングの異常, 受動的な自己像が構築される背景と過剰適応・過活動, 安静時脳活動の異常について, 線維筋痛症における心身相関と全人的アプローチの理解促進のために, 病態メカニズムの仮説について概説した. 線維筋痛症では, default mode networkと呼ばれる無意識的な脳活動が島皮質と第2次感覚野と強く連結しているといわれており, これが中枢性の痛みとして, 過活動に伴う筋骨格系の痛みや自律神経機能異常といった末梢性の痛みと合併し, 複雑な心身医学的病態を構成していると考えられる. ペーシングを調整し, 意識と前意識や無意識の疎通性を増すための線維筋痛症患者に対する全人的アプローチが多くの心身医療の臨床現場で発展することが望まれる.
著者
黒澤 崇浩 水谷 圭一 笹生 拓児 有坂 憲行 宮本 健宏 阪口 啓 荒木 純道
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SR, ソフトウェア無線 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.41, pp.73-80, 2010-05-13
被引用文献数
1

近年,無線マルチホップ中継ネットワークが接続性や柔軟性などの利点から注目を集めており,センサネットワークやユーティリティーネットワークなどへの応用が期待されている.この無線マルチホップ中継ネットワークをセカンダリシステムとして運用する場合,プライマリシステムと周波数共用を行わなければならない.周波数利用効率を高めるためには,スペクトラムセンシングによりプライマリの電波使用状況を認識し,セカンダリの使用する帯域を割り当てる必要がある.本研究では、950MHz帯アクティブ系小電力無線システムにおいてFFTを用いたスペクトラムセンシング機能を設計し,MIMO中継プロトタイプハードウェアに本機能を実装したので報告する.