著者
荒木 敦子 伊藤 佐智子 宮下 ちひろ 湊屋 街子 岸 玲子
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.313-321, 2018 (Released:2018-09-29)
参考文献数
60
被引用文献数
1 1

In recent years, the birthrate has been continuously declining in Japan. The main causes of the decline are social factors. On the other hand, there is increasing evidence that many environmental chemicals show endocrine disrupting properties. Thus, we hypothesized that exposure to these chemicals would also be a causal for the fertility crisis. In this review, we examined current evidence that focused on environmental chemical exposure in utero and its association with reproductive hormones in children. We have included the findings from a prospective birth cohorts, the Hokkaido Study on Environment and Children’s Health Sapporo cohort. According to the literature, environmental chemical levels in utero, such as polychlorinated biphenyl, dioxins, perfluorinated chemical substances, phthalates, and bisphenol A were somewhat associated with the levels of reproductive hormones, such as testosterone, estradiol, progesterone, inhibin B, and insulin-like factor-3 in cord blood, in early childhood and adolescence. The literature also suggests the association between exposure to these chemicals and brain-sexual differentiation or the anogenital distance, which suggests the disruption of androgen shower during the developmental stage in the fetal period. There are still knowledge gaps on whether these hormones at an early stage affect the pubertal development and reproductive functions in later life. In addition, alternative chemicals are produced after banning one type. The health effects of alternative chemicals should be evaluated. Effects of exposure to a mixture of the chemicals should also be examined in future studies. In conclusion, the prevention of environmental chemical hazards in relation to human reproductive function is important. It would be one of the countermeasures to the falling birthrate caused by fertility issues.
著者
山下 未来 荒木田 美香子
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.201-213, 2006 (Released:2006-12-15)
参考文献数
77
被引用文献数
20 22 3

Presenteeismの概念分析及び本邦における活用可能性:山下未来ほか.大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻―本研究の目的は,presenteeismという概念を明らかにし,定義を示すことによって,本邦の産業保健における活用可能性を検討することである.Rodgersの概念分析法を参考にシステマティックレビューを行った.“presenteeism”をキーワードにMEDLINE,PsycINFO,医学中央雑誌で検索を行い,文献を抽出した.概念の分析は,文献の中でpresenteeismがどのように使われているかについて,定義,先行要因,帰結を抽出し,検討を行った.1955年から2005年に報告された計44文献を分析対象とした.抽出された各定義からpresenteeismの4属性を明らかにし,「presenteeismとは,出勤している労働者の健康問題による労働遂行能力の低下であり,主観的に測定が可能なものである」と定義した.presenteeismの先行要因は職場要因と個人要因に分類され,健康問題を抱えた労働者の出勤するか否かの判断に影響を与えていた.presenteeismの帰結は,quality of life(QOL)及び健康状態の悪化,健康関連コストの増加,他の労働者への悪影響,労働災害の増加,製品やサービスの質の低下が挙げられ,presenteeismを生じている状態の改善は産業保健が取り組むべき課題であることが明らかとなった.したがって,presenteeismの本邦の産業保健における活用可能性は,1)presenteeismの測定とその要因を検討すること,2)適切な休業取得を阻害する要因を検討すること,3)産業保健計画および評価に活用することが挙げられた.本邦でpresenteeismを測定するためには,測定目的に適した欧米の質問紙の導入や新たな尺度の開発が必要である.presenteeismのアセスメントを保健活動へ反映させるためには,個人のpresenteeismの程度だけでなく,組織全体としても捉えること,また,労働者の健康問題と,職場要因や個人要因との相互作用を考慮に入れることが必要である.更に,presenteeismはその労働損失の程度を金銭単位へと換算することが可能であり,保健活動の必要性や根拠を示すエビデンスとなることが示唆された. (産衛誌2006; 48: 201-213)
著者
荒木 智宏
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン (ISSN:21860661)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.205-215, 2019 (Released:2019-12-01)
参考文献数
53
被引用文献数
1

長い助走期間を終えて,宇宙での光通信はようやく実用段階に到達した.本論文では,まず宇宙光通信のれい明期からの歴史について概説する.次に,世界の宇宙光通信の研究開発動向について距離別に分類し述べる.更に,宇宙光通信を実現するための技術及び課題を,主に大容量通信技術の観点から紹介する.その中で,特に送受信技術については,IoT 時代を支える大容量通信技術である光ファイバ通信システム・デバイス技術の成果を活用していることを,国際標準化の動向とともに紹介する.
著者
荒木 一視
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.239-267, 2014 (Released:2015-03-31)
参考文献数
228
被引用文献数
2 2

明治期以降の日本の食料供給を,穀物の海外依存に着目して検討するとともに,それに対する地理学研究を振り返った.食料の海外依存は最近始まったことではなく,明治中期以来,第二次大戦にかけても相当量を海外に依存していた.それに応じ1940年代まで,食料は地理学研究の1つの主要な対象で,農業生産だけではなく多くの食料需給についての論考が展開されていた.戦時期の議論には,問題のある展開も認められるが,食料供給に関する高い関心が存在していたことは事実である.しかし,その後の地理学においてこれらの成果が顧みられることは無く,今日に至るまで食料への関心は希薄で,研究の重心は国内の農業に収束していった.明治期以降もっとも海外への依存を高めている今日の食料需給を鑑みるに,当時の状況と地理学研究を振り返ることは,有効な含意を持つと考える.
著者
山本 哲 荒木 あゆみ 算用子 裕美 小澤 敏史 金井 ひろみ 池田 久實 高本 滋
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.105-111, 2017-04-20 (Released:2017-05-11)
参考文献数
15

採血副作用における血管迷走神経反応(VVR)は,その低減化に向けて様々な防止策が講じられている.VVRの発症機転はよく解明されていないが,不安や痛み等の精神的な要因,循環血液量の減少による生理学的要因などが推定されている.今回我々は循環血液量の減少を伴わない採血前検査で発生するVVRに焦点をあて,精神的な要因により発症するVVRの特徴について検討した.本採血前のVVRを2群(検査前群と検査後群)に分類し,本採血以降のVVRと比較検討した.その結果,本採血前のVVRでは,体格が小柄で比較的やせ気味の10代の若年男性が多く含まれ,女性では3人に1人は体重50kg未満という特徴が見られた.これらのVVRでは重症例も多くあり軽視すべきではなく,採血基準を体重50kg以上に制限することで女性のVVRは減少すると推定される.
著者
井上 雄吉 荒木 一富 西田 勇人 藤田 明美 藤本 万理 青山 麗子
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.496-509, 2010-12-31 (Released:2012-01-05)
参考文献数
41
被引用文献数
2

表出障害が主体の失語症に対する低頻度反復経頭蓋磁気刺激 (rTMS) の効果について検討した。対象は左大脳半球の主に慢性期脳血管障害 20 例 (梗塞 12 例,出血 8 例,全例右利き) で,発症から rTMS 開始までが 68~2793 日 (平均 591.6 日) であった。rTMS は健側右半球の Broca 野相同部位の Brodmann 45 野に,運動閾値の 90 %の強度で,1Hz,900 発刺激を計 10 セッション行った。評価は表出面を中心に,40 個の絵の呼称や短縮版 WAB,標準失語症検査 (SLTA) で行い,rTMS 前後の局所脳血流量 (rCBF) も調べた。結果は,絵の呼称では脳梗塞例全体で rTMS 施行 2 週後から有意の改善を認め,効果は終了 4 週後も持続し,SLTA でも有意の改善を認めた。脳出血例では有意の変化はなかった。脳梗塞例では rTMS 後に左基底核 rCBF の有意の増加を認めた。健側半球の低頻度 rTMS は,特に左基底核が保たれた慢性期脳梗塞に有効であり,失語症の改善に左基底核の関与が示唆された。
著者
荒木 康弘
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.26, no.10, pp.10_51-10_57, 2021-10-01 (Released:2022-02-25)

新型コロナウイルスワクチンは世界で接種が進んでいるが、その需要は完全には満たされておらず、今後も新たなワクチンの開発が期待されるところである。日本では3種類のワクチンが使用されているが、これらはいずれもプラセボ対照臨床試験で高い有効性が示され承認されたものであるが、変異株の流行と公的ワクチン接種プログラム等により、新たなワクチンの開発環境は従前と変わり、前述のプラセボ対照臨床試験の実施は困難になりつつある。そのため国際的には、プラセボ対照臨床試験でワクチンの発症予防効果を確認することが困難な場合、新たなワクチンと既承認ワクチンとの間で免疫原性を比較し、有効性の評価をする方法についてコンセンサスが得られている。今後の新型コロナウイルスワクチンの開発・評価にあたっては、ワクチンをすでに接種した者への追加接種の有効性など、新たに生じる課題に対応していく必要がある。
著者
荒木 詳二
出版者
群馬大学社会情報学部
雑誌
群馬大学社会情報学部研究論集 (ISSN:13468812)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.231-248, 2006

In dieser Abhandlung wird versucht, darauf zu antworten, wie und wann die romantische Liebe in Europa entstanden ist und sich verbreitet hat, wie sie die damaligen Dichter in den Romanen geschildert haben, und wie und wann diese europaische Liebe in Japan eingefuhrt und aufgenommen wurde. Wahrend die romantische Liebe in Europa in der zweiten Halfte des 18. Jahrhundertes unter dem Einfluss der Empfindsamkeit entstanden ist, wurde sie in Japan Ende des 19. Jahrhundertes durch den amerikanischen Protestantismus eingefuhrt und kam besonders bei den jungen Christen in Mode, aber sie wurde damals oft mit der platonischen Liebe gleichgesetzt. Trotz verschiedener Unterschiede kann man als einige gemeinsame Punkte folgendes nennen, dass die romantische Liebe zur Grundung der modernen Familie beigtragen hat, durch die Lekture der Romane oder der Zeitschriften bekannt gemacht wurde und nach und nach fur unentbehrlich bei der Ehebeschlieβung und auch in der Familie gehalten wurde. Weiterhin ist zu erwahnen, dass die moderne Familie entsprechend der Entwickelung des Kapitalisumus und dem Aufstieges des Burgertums zustande kam, aber eigentlich ein patriarchalisches System ist und deshalb die geschlechtliche Diskriminisierung verursacht hat.
著者
荒木 俊之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.105-115, 2019 (Released:2019-03-20)
参考文献数
4
被引用文献数
1

本稿では,大阪府北部地域における7市(豊中市,池田市,吹田市,高槻市,茨木市,箕面市,摂津市)の地域防災計画を取り上げて,自然的,社会経済的な視点からみた地域特性が,予防対策や応急対策などの災害対策,被害想定や対策を行う想定地震などに考慮され,目次構成や想定災害に示されているかどうかを検討した.7市では,災害応急対策,中でも,事故災害に対する対策,そして,対策を行う想定地震に相違がみられた.想定地震の相違は,各市が想定する際の考え方の違いによるものであり,自然災害に対しては,自然的な視点からみた地域特性を踏まえて項目立てされている.事故災害に対する対策では,社会経済的な視点から類似性のある地域特性を有していても,各市の判断により,地域特性を考慮した項目立てがなされない場合がみられた.
著者
荒木 和憲 伊藤 幸司 榎本 渉 須田 牧子 後藤 真
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成30年度に引き続き,研究代表者と研究分担者が5つの作業チームに分かれて研究を進めた。「東アジア交流史関係史料」の検出・データ化作業は,荒木班・榎本班・伊藤班・須田班が行った。具体的には,榎本班は中世前期の記録・典籍類(刊本),伊藤班は九州に所在する中世後期の文書類(刊本),荒木班は九州以外に所在する中世後期の文書・記録類(刊本),須田班は禅宗関係史料(東京大学史料編纂所謄写本)を分析し,10~16世紀における「東アジア交流史関係史料」を検出した。検出した史料については,基本情報(年月日・作成者・受信者・史料名・典拠など)だけでなく、本文の全文テキスト(一部は抄出)を作成し,かつ当該史料の生成・授受にかかわる地域・階層などのメタデータを付与した。各班で作成したデータは,研究代表者である荒木がとりまとめ作業,校正,データの整合性チェックを行った。こうして作成したデータは,平成30年度末の時点では約4,600件であったが,令和元年度末には約7,000件に増加した。また,紙媒体での報告書(『東アジア交流史関係史集成(稿)』)の編集作業を同時に進捗させており,原稿量は令和元年度末の時点で約1,300頁(A4版・2段組)に達した。一方,後藤班は,ファセット検索システムの運用改善を進めた。当該システムは,ユーザーがさまざまな切り口から高度で有意な情報を引き出すことを意図したもので,今年度内に国立歴史民俗博物館の「総合資料学情報基盤システム」(https://khirin-ld.rekihaku.ac.jp/)における試験公開を行っており,校正済のデータについての基礎検索が可能である。
著者
荒木 浩
出版者
文学通信
雑誌
古典の未来学 : Projecting Classicism

序論 〈投企する古典性 : Projecting Classicism〉から「古典の未来学」へ / 荒木 浩一、研究の現在と消えゆく未来 : コロナ禍と『なぐさみ草』二、『なぐさみ草』の投企性から〈未来学〉へ三、〈投企=Projecting〉する古典性とは四、本論集の企画と構想 五、「古典の未来学」へⅠ 投企する古典性第1部 古典を見せる/古典を活きる1-1 古典を見せる : 展示という方法第1章 女子大で古典を展示するということ : 実践報告とそれに基づく若干の考察 / 中前正志一、はじめに二、古典籍展示履歴三、見られてなんぼの展示四、わたし、ふじのちゃん。五、京女に久米の仙人が落ちてきた!?六、あることないこと二人の会話をでっち上げる七、おわりに第2章 美術で楽しむ古典文学 : 「徒然草」展の事例報告 / 上野友愛一、はじめに二、企画の経緯三、海北友雪筆「徒然草絵巻」の展示四、現代語訳の作成五、来館者からの声六、おわりにColumn 1 文化をつなげる場としての展覧会 : ロンドン大学SOAS大英博物館の国際共同研究プロジェクトを事例として / 石上阿希一、はじめに二、国際共同プロジェクト三、国際春画研究プロジェクトの場合四、大英博物館春画展のその後1-2 古典を活きる : 韻文の創作とその展開第3章 即興と記憶 : 中世和歌連歌における「擬作」「本歌」「寄合」をめぐって / 土田耕督一、序二、「擬作」と本歌取 : 和歌における即興性:〈予見/準備〉としての記憶三、本歌取と「寄合」 : 連歌における即興性 ①:詞の〈自動補完〉プログラム四、「当座の感」と「心付」 : 連歌における即興性 ②:〈表現〉という反応五、結 〈随意〉創作の位置第4章 琉球における和歌の受容と展開 / 屋良健一郎一、はじめに二、琉球人の和歌習得三、近世琉球人の作品四、和歌と琉歌五、琉球人と和歌六、おわりに第5章 世紀転換期日本および西洋における俳句の詩的可能性の拡大 : 出版、翻訳、再評価 / 前島志保一、「俳句」理解への取り組みの世界同時性二、従来の俳句鑑賞の継承三、新しい俳句鑑賞傾向・1デノテーションの復権四、新しい俳句鑑賞傾向・2作者の感情表出として五、新しい俳句鑑賞傾向・3コノテーションへの注目六、拡大される俳句の詩的可能性第6章 教科書から実践的な俳句学まで / グエン・ヴー・クイン・ニュー一、はじめに二、古に学ぶから今を生きるまで三、豊かな言葉文化論の地位づけ四、新しく面白い俳句学五、まとめColumn 2 時をかける和歌 : おみくじと占い / 平野多恵一、はじまりは、短大の授業二、室町時代の和歌占い : 阪本龍門文庫蔵『歌占』の実践三、江戸時代の和歌占い : 『晴明歌占』の実践と展開四、「天祖神社歌占」 : 神社と大学の合同プロジェクト五、おわりに : 和歌を生きる第2部 投企する古典性/古典との往還第7章 身を投げる/子を投げる : 孝と捨身の投企性をめぐって / 荒木 浩一、捨身の投企性 : 清水の舞台を発端に二、薩埵王子「捨身飼虎」と雪山童子「施身聞偈」の類比とずれ三、『三宝絵』上巻の本生譚が描く生と死四、孝と捨身と死の描写五、「孝」思想と死なない子六、身を投げる?子を投げる? : 仏陀の妻と一子七、『金光明最勝王経』の虎と義母第8章 透明な声、隔たりの消失 : 古典世界において〈一つ〉の世界はいかに想像されたか / 山藤夏郎一、序二、一つの声の分裂という歴史像三、文字以前の理想化 : 「太古」表象のパターン四、文字の原理 : 「分ける」ということ五、「太古」の世界では動物とも意思の疎通が可能だった?第9章 古代からの道行き : 『行人』 / 野網摩利子一、はじめに二、古代の悲恋をふまえて三、約束の再設定と違反四、嵌められた物語への抵抗五、古代歌謡による小説の加速第10章 『豊饒の海』縁起絵 : 『浜松中納言物語』、夢と転生、そして唯識思想 / 河東 仁一、はじめに二、『春の雪』三、『奔馬』四、『暁の寺』五、『天人五衰』六、縁起論七、おわりに第11章 北京人文科学研究所の蔵書から考える「投企する古典性」 / 河野貴美子一、はじめに二、『北京人文科学研究所蔵書目録』及び『続目』にみる古典籍の蒐集と研究三、『北京人文科学研究所蔵書目録 再続』にみる典籍の蒐集四、おわりにColumn 3 出版社の立ち上げと、これから / 岡田圭介一、二〇一七〜一八年二、二〇一九年三、二〇二〇年四、学術メディアとして【付】貸借対照表及び損益計算書第3部 古典を問う/古典を学ぶ第12章 「投企」のカタチ : 教室の「古典」 / 竹村信治一、はじめに二、「古典は本当に必要なのか」三、古典?四、「投企」のカタチ : その前に五、おわりに第13章 未来に活かす古典 : 「古典は本当に必要なのか」論争の総括と展望 / 飯倉洋一一、はじめに二、古典不要派の主張三、古典不要派の主張1 優先度四、古典不要派の主張2 芸術科目五、古典不要派の主張3 現代語訳六、古典不要派の主張4 ポリティカルコレクトネス七、国語力の一部としての古文・漢文八、古典知の可能性九、資本としての古典一〇、おわりに : 遺産としての古典 第14章 古典を必修にするために / 渡部泰明一、問題のありか二、基礎科目としての古典三、リテラシーを育成する科目としての古典第15章 くずし字を知ること : 日本古典文学の基礎学を考える / 渡辺麻里子一、はじめに二、弘前におけるくずし字普及活動三、くずし字の伝え方四、古典文学の基礎学五、おわりに : 現代人にとっての古典Column 4 古典との出会い方 / 中野貴文一、―月が綺麗ですね―二、―今、あなたと同じ月を見ている―三、―さらば愛しき古典よ―四、―古典文学を自由化する―Column 5 宣伝される大衆僉議 : 中世一揆論の再構築 / 呉座勇一一、はじめに二、強訴とは何か三、強訴の呪術性四、大衆僉議は神秘的か五、豪雲説話を読みなおす六、大衆僉議の宣伝性七、おわりに第4部 古典を観る/古典を描く第16章 筍と土蜘蛛 : 古典がジャンルを越えるとき / 山本陽子一、はじめに二、豊国祭礼図屛風のタケノコ三、孟宗はどこか四、さまざまな孟宗五、異色だらけの「土蜘蛛草紙絵巻」六、東博本の化物たち七、東博本の詞書八、東博本が典拠としたもの九、東博本の典拠の制約一〇、人形芝居ならば一一、人形芝居と東博本一二、ジャンルを越えて広がるとき第17章 頼光の杖 : 混沌にして豊穣な絵巻模写の世界へ / 楊 暁捷一、鬼が岩屋への道二、模写ということ三、諸本を探る四、模り写すことの限界五、多様な展開六、変化が物語るもの七、模写を読み解く第18章 語り物文芸の視覚化 : 説教源氏節の性格と意義 / 深谷 大一、はじめに二、説教源氏節の名称三、説教源氏節の創設者四、新内節・説経節・説経祭文五、説経節の大衆化六、草創期の説教源氏節七、草創期の人形遣いと人形戯八、明治初頭の岡本諸座九、明治一五年頃の岡本諸座一〇、説教源氏節芝居一一、一座の構成と入場料 一二、説教源氏節(芝居)の伝播一三、説教源氏節の音曲としての性格一四、娘義太夫への対抗意識一五、明治三四、三五年頃の岡本諸座一六、結び第19章 故事を遊ぶ : 「戯画図巻」という文芸 / 齋藤真麻理一、「戯画図巻」の登場二、室町物語と「戯画図巻」 : 『富士の人穴の草子』三、当代性の反映 : 「戯画図巻」観音の射的四、明代版本の受容 : 張果老のすがた五、むすびに代えて第20章 風景を捉える川合玉堂の眼差し : 大衆性と同時代性と / 三戸信惠一、 川合玉堂と「大衆性」二、 明治二八年の「鵜飼」 : 山水画の構図、名所絵版画の視点三、 明治三九年の「渓山秋趣」 : 『日本名山図会』の眼差しを求めて四、 大正三年の「駒ヶ岳」 : 『日本風景論』が提示した新たな眼差しの枠組み五、 昭和期の動向 : 写真との関わり第21章 洋画家・岸田劉生の初期の制作にみる古典性の投企 : 美術の複製メディアを手がかりに / 前川志織一、はじめに二、明治後半期から大正初期にかけての複製による美術の受容三、劉生の初期の制作と複製としての美術四、おわりに第22章 柳田國男『遠野物語』の「戦争物語」への変奏 : 村野鐵太郎監督の映画「遠野物語」を中心に / 金 容儀一、はじめに二、特化される「オシラサマ」伝承三、映画「遠野物語」の民俗世界四、娘と馬の幻想的な「悲恋物語」五、「遠野物語」から「戦争物語」への増幅と変奏六、おわりに第5部 古典を展(ひら)く/古典を翻す第23章 「日本文学史」の今後一〇〇年 : 『日本「文」学史』から見通す / ヴィーブケ・デーネーケ×河野貴美子一、「国文学」のパラダイムを問い直す二、『日本「文」学史』の構想と構造三、『日本「文」学史』第三冊「文」から「文学」へ : 東アジアの文学を見直す The Path from "Letters" to "Literature" :A Comparative History of East Asian Literatures の挑戦四、『日本「文」学史』からの展望五、二一世紀の人文知とは─世界の古典学から考える The Humanities in the 21st Century: Classical Studies in and for the WorldColumn 6 投げ出された言葉を繋ぎ止めるために : 翻訳の準備的作業としての「概念史」 / 河野至恩一、「投企」と翻訳二、「投げ出された言葉」の翻訳論三、翻訳の方法と「概念史」四、翻訳の準備的作業としての概念史 : 二つのモデル第24章 投企された「英訳方丈記」 : 夏目漱石の「作家論」から「天才論」へ / ゴウランガ・チャラン・プラダン一、はじめに二、「投企」という概念について三、「英訳方丈記」にみる漱石の作家論四、「英訳方丈記」の作家論の形成について五、投企された「英訳方丈記」の作家論六、終わりに向けて第25章 古典の翻訳 : 大衆性と視覚性を問う / 李 愛淑一、はじめに二、大衆性を問う三、視覚性を問う四、世界文学としてColumn 7 投企する文学遺産 : 有形と無形を再考して / エドアルド・ジェルリーニ一、古典性という「価値」二、文化遺産から文学遺産へ三、有形と無形の相互投企四、現代を相対化する文学遺産第6部 古典と神話/古典と宗教第26章 古事記の〈天皇像〉 : 「詔」の分析をとおして / アンダソヴァ・マラル一、はじめに二、オホクメと神武の求婚三、天皇と出雲の神々四、気比大神五、景行天皇とヤマトタケル六、目弱王と忍歯王七、結論 : 「詔」からみる古事記の天皇像第27章 一三世紀の失敗した宗教議論 : 『広疑瑞決集』の政治議論を中心に / ダニエル・シュライ一、『広疑瑞決集』 の議論はなぜ失敗したのか二、議論の失敗の原因は何か三、宗教的な議論四、政治論の背景五、政治の議論六、引用文の確認七、解決失敗の理由についての一考Ⅱ 特論 : プロジェクティング・プロジェクト第1部 「投企する太平記 : 歴史・物語・思想」から第1章 点描 西源院本『太平記』の歴史 : 古写本から文庫本まで / 和田琢磨一、はじめに二、元禄二年 : 『参考太平記』の作成三、大正八年三月 : 〈影写本〉の作成四、昭和一〇年五月二五日 : 刀江書院本刊行の背景五、平成二六年 : 岩波文庫本刊行開始六、おわりに第2章 「太平記史観」をとらえる / 谷口雄太一、はじめに二、「太平記史観」を定義する三、それが「太平記史観」だと気付くまで四、「太平記史観」批判の現在五、「太平記史観」超克の未来六、おわりに第3章 『太平記』に見る中国故事の引用 / 亀田俊和一、はじめに二、中国故事引用の頻度・分布三、大規模引用の意図四、観応の擾乱期における大規模引用の検討五、『太平記』の編纂過程と中国故事引用六、おわりに第4章 『太平記』の近世的派生/転生 : 後醍醐・楠像を軸に / 井上泰至一、はじめに : 足利将軍木像の梟首二、歴史読み物としての『太平記』の派生書 : その様式の変遷から三、後醍醐天皇像 : 失政者はいつ理想の天皇となったのか四、楠像の変遷 : 諫臣から忠臣へ五、史学とは「史料」を使った投企的読みではないのか?第5章 以津真天の変容 : 〈創作的解説〉の時代を中心に / 伊藤慎吾一、『太平記』中の妖怪記事二、前近代の以津真天三、現代の以津真天四、創作的解説五、いつまでんの誕生六、〈世界〉から乖離したキャラクター七、不必要な情報共有八、おわりに第2部 「日本漢文学プロジェクト」から第6章 「和漢」型の漢詩詞華集の流行と近代日本における古典の教養 : 結城蓄堂『和漢名詩鈔』と簡野道明『和漢名詩類選評釈』 / 合山林太郎一、はじめに二、「和漢」型漢詩詞華集の性質三、中国・日本の詩をともに載せることの意義と背景四、注解・訓読の付与と独自の書型五、前代の漢詩文化とのつながり六、勧学の詩の重視とその背景七、辺塞詩の収載と日露戦争の記憶八、おわりに第7章 元号「令和」 : 時間の表象と政治の隠喩 / 葛 継勇一、はじめに二、「梅花の歌」序の出典三、元号の選定と出典四、『万葉集』の性格五、元号にみられる隠喩的な時間六、おわりにⅢ Projecting Classicism in Various LanguagesChapter 1"Distance Reading, Migration of the meaning and Metempsychosis through Translation: Is "World Literature or Global Art" Possible? : Comparative Literature and Art in the Context of the Globalization" / 稲賀繁美Chapter 2"Projecting Classicism in Classical Kabuki Theatre : A Gender Perspective" / ガリア・ペトコヴァあとがき / 荒木浩共同研究会開催一覧執筆者一覧キーワード索引
著者
今井 浩三 中村 卓郎 井上 純一郎 高田 昌彦 山田 泰広 高橋 智 伊川 正人 﨑村 建司 荒木 喜美 八尾 良司 真下 知士 小林 和人 豊國 伸哉 鰐渕 英機 今井田 克己 二口 充 上野 正樹 宮崎 龍彦 神田 浩明 尾藤 晴彦 宮川 剛 高雄 啓三 池田 和隆 虫明 元 清宮 啓之 長田 裕之 旦 慎吾 井本 正哉 川田 学 田原 栄俊 吉田 稔 松浦 正明 牛嶋 大 吉田 進昭
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)『学術研究支援基盤形成』
巻号頁・発行日
2016

①総括支援活動 : 前年度立ち上げたホームページ(HP)に改良を加えて公募の円滑化を進めた。モデル動物作製解析の講習や若手研究者の交流促進を推進する技術講習会を開催した。成果ワークショップを開催し本活動の支援成果をアピールした。②モデル動物作製支援活動 : 相同組換えやゲノム編集など支援課題に応じた最適な胚操作技術を用いて、様々な遺伝子改変マウスおよびラットを的確かつ迅速に作製し、学術性の高い個体レベルの研究推進に資する研究リソースとして提供した。件数は昨年度より大幅に増加した。③病理形態解析支援活動 : 昨年より多い35件の病理形態解析支援を7名の班員で実施した。研究の方向性を決定づける多くの成果が得られた。論文の図の作成にもかかわり、論文が受理されるまで支援を行った。その結果、より高いレベルの科学誌にも受理された。④生理機能解析支援活動 : 疾患モデルマウスの行動解析支援を実施するとともに、諸動物モデルでの規制薬物感受性解析、光遺伝学的in vivo細胞操作、意志決定に関与する脳深部機能解析、等の支援を展開した。⑤分子プロファイリング支援活動 : 依頼化合物の分子プロファイリング316件、阻害剤キット配付86枚、RNA干渉キット配付・siRNAデザイン合成83件、バーコードshRNAライブラリーによる化合物の標的経路探索15件、を実施し、より多くの研究者の利便性を図った。
著者
坂本 信道 西村 慎太郎 三ツ松 誠 鈴木 喬 柏原 康人 小山 順子 中川 博夫 小林 健二 三野 行徳 有澤 知世 恋田 知子 荒木 優也 太田 尚宏
出版者
人間文化研究機構国文学研究資料館
雑誌
国文研ニューズ = NIJL News (ISSN:18831931)
巻号頁・発行日
no.50, pp.1-16, 2018-01-24

●メッセージ平安時代人の散歩――国際化と辞書――●研究ノート明治27年の長塚村大字渋川の人びと――原発事故帰還困難区域の歴史資料を読む――平田国学と和歌●書評ブックレット〈書物をひらく〉2入口敦志著『漢字・カタカナ・ひらがな 表記の思想』ブックレット〈書物をひらく〉5恋田知子著『異界へいざなう女 絵巻・奈良絵本をひもとく』●トピックス「ないじぇる芸術共創ラボ NIJL Arts Initiative」について第10回日本古典文学学術賞受賞者発表第10回日本古典文学学術賞選考講評バチカン図書館所蔵マリオ・マレガ収集文書群の調査と活用 ローマでのくずし字講座と講演会の開催について大学共同利用機関シンポジウム2017 「研究者に会いに行こう!――大学共同利用機関博覧会――」平成29年度「古典の日」講演会第41回国際日本文学研究集会総合研究大学院大学日本文学研究専攻の近況●表紙絵資料紹介武蔵国多摩郡連光寺村富沢家文書「諸用扣(留)」
著者
荒木 宏之 古賀 憲一 荒牧 軍治 二渡 了
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境システム研究 (ISSN:09150390)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.32-37, 1990-08-10 (Released:2010-03-17)
参考文献数
9

The water management systems in channel network in the Saga Plains have a long history. The functions, drainage and irrigation etc., are gradually changing for 400 years with social systems such as modernizing of agriculture and urbanization etc. An integrated water management based on inhabitants' consciousness and water quality is necessary for environmental conservation. For the sake of appropriate environmental conservation of the creeks, 1) historical change of the water management is classified, 2) relationships between the change of water management and social systems are revealed, 3) inhabitants' consciousness is surveyed by the questionnaire. As a result, the change of water management is classified into three processes, that is, the developing process (-1600), the completion process (1600-1940), and the declining process due to water pollution (1940-present). From the result of the questionnaire, important experiences during childhood, such as drinking the water of creeks and swimming, influence inhabitants' consciousness viz, familiarity to the creeks. Especially, the influence appeared strongly on middle-aged inhabitants who were in childhood earlier in the third process. It is necessary to sustain the traditional experiences for conserving the environment.
著者
中村 二郎 神谷 英紀 羽田 勝計 稲垣 暢也 谷澤 幸生 荒木 栄一 植木 浩二郎 中山 健夫
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.667-684, 2016-09-30 (Released:2016-09-30)
参考文献数
16
被引用文献数
11

アンケート調査方式で,全国241施設から45,708名が集計され,2001~2010年の10年間における日本人糖尿病患者の死因を分析した.45,708名中978名が剖検例であった.1)全症例45,708名中の死因第1位は悪性新生物の38.3 %であり,第2位は感染症の17.0 %,第3位は血管障害(慢性腎不全,虚血性心疾患,脳血管障害)の14.9 %で,糖尿病性昏睡は0.6 %であった.悪性新生物の中では肺癌が7.0 %と最も高率であり,血管障害の中では慢性腎不全が3.5 %に対して,虚血性心疾患と脳血管障害がそれぞれ4.8 %と6.6 %であった.虚血性心疾患のほとんどが心筋梗塞であり,虚血性心疾患以外の心疾患が8.7 %と高率で,ほとんどが心不全であった.脳血管障害の内訳では脳梗塞が脳出血の1.7倍であった.2)年代別死因としての血管障害全体の比率は,30歳代以降で年代による大きな差は認められなかった.糖尿病性腎症による慢性腎不全は,30歳代で,心筋梗塞は40歳代で,脳血管障害は30歳代で比率が増加し,それ以降の年代において同程度であった.50歳代までは脳出血,60歳代以降では脳梗塞の比率が高かった.悪性新生物の比率は,50歳代および60歳代でそれぞれ46.3 %および47.7 %と高率であり,50歳代以降で悪性新生物による死亡者全体の97.4 %を占めていた.感染症のなかでも肺炎による死亡比率は年代が上がるとともに高率となり,70歳代以降では20.0 %で,肺炎による死亡者全体の80.7 %は70歳代以降であった.糖尿病性昏睡による死亡は,10歳代および20歳代でそれぞれ14.6 %および10.4 %と高率であり,それらの年代では悪性新生物に次いで第2位であった.3)血糖コントロールの良否と死亡時年齢との関連をみると,血糖コントロール不良群では良好群に比し1.6歳短命であり,その差は悪性新生物に比し血管合併症とりわけ糖尿病性腎症による腎不全で大きかった.4)糖尿病罹病期間と血管障害死の関連では,糖尿病性腎症の73.4 %が10年以上の罹病期間を有していたのに対して,虚血性心疾患および脳血管障害では10年以上の罹病期間を有したのはそれぞれ62.7 %と50 %であった.5)治療内容と死因に関する全症例での検討では,食事療法単独18.8 %,経口血糖降下薬療法33.9 %,インスリン療法41.9 %とインスリン療法が最も多く,とりわけ糖尿病性腎症では53.7 %を占め,虚血性心疾患での38.9 %,脳血管障害での39 %に比べて高頻度であった.6)糖尿病患者の平均死亡時年齢は,男性71.4歳,女性75.1歳で,同時代の日本人一般の平均寿命に比して,それぞれ8.2歳,11.2歳短命であった.しかしながら,前回(1991~2000年)の調査成績と比べて,男性で3.4歳,女性で3.5歳の延命が認められ,日本人一般における平均寿命の伸び(男性2.0歳,女性1.7歳)より大きかった.
著者
水流添 覚 山元 章 平島 義彰 福田 一起 梶原 伸宏 西田 周平 下田 誠也 荒木 栄一
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.837-842, 2014-11-30 (Released:2014-12-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

症例は65歳の2型糖尿病男性で経口薬・インスリン併用中だが,高血糖,肥満が是正されないためSGLT2阻害薬を導入すべく入院となった.メトホルミン,利尿薬内服を中止の上でイプラグリフロジン50 mg開始.血糖改善は良好で2日目から約10 %のインスリン減量を実施.3日目に全身性皮疹,腎機能障害(Cr 1.6 mg/dl),ケトーシス(3-OHBA 626 μmol/l),軽度代謝性アシドーシス(PH 7.348, HCO3- 18.3 mmol/l)に加え高度高K血症(7.3 mEq/l)を来した.症例は高K既往,K高含有食品(昆布)常用,ARB内服など高Kを呈しやすい素地があった.これに利尿薬中止,SGLT2阻害薬開始後の腎機能低下,アシドーシス,インスリン作用不足によるK細胞外シフトが加わり高Kを発症したと推察する.高Kを呈しやすい背景の患者へのSGLT2阻害薬導入ではK値に注意を要する.

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著者
荒木 不二洋 杉浦 光夫 藤原 大輔 加藤 順二 一松 信
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.183-191, 1968-08-20 (Released:2008-12-25)
参考文献数
3
著者
清水 基之 田中 英夫 高橋 佑紀 古賀 義孝 瀧口 俊一 大木元 繁 稲葉 静代 松岡 裕之 宮島 有果 高木 剛 入江 ふじこ 伴場 啓人 吉見 富洋 鈴木 智之 荒木 勇雄 白井 千香 松本 小百合 柴田 敏之 永井 仁美 藤田 利枝 緒方 剛
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.271-277, 2023-08-31 (Released:2023-09-21)
参考文献数
22

目的:日本の新型コロナウイルス第6波オミクロン株陽性者の致命率を算出し,これを第5波デルタ株陽性者と比較する.方法:2022年1月に7県3中核市3保健所で新型コロナウイルス感染症と診断され届出られた40歳以上の21,821人を,当時の国内での変異型流行状況からオミクロン株陽性者とみなし,対象者とした.死亡事実の把握は,感染症法に基づく死亡届によるpassive follow up法を用いた.2021年8月~9月にCOVID-19と診断された16,320人を当時の国内での変異株流行状況からデルタ株陽性者とみなし,同じ方法で算出した致命率と比較した.結果:オミクロン株陽性者の30日致命率は,40歳代0.026%(95%信頼区間:0.00%~0.061%),50歳代0.021%(0.00%~0.061%),60歳代0.14%(0.00%~0.27%),70歳代0.74%(0.37%~1.12%),80歳代2.77%(1.84%~3.70%),90歳代以上5.18%(3.38%~6.99%)であった.デルタ株陽性者の致命率との年齢階級別比は,0.21,0.079,0.18,0.36,0.49,0.59となり,40歳代から80歳代のオミクロン株陽性者の30日致命率は,デルタ株陽性者のそれに比べて有意に低かった.また,2020年の40歳以上の総人口を基準人口とした両株の陽性者における年齢調整致命率比は0.42(95%信頼区間:0.40-0.45)と,オミクロン株陽性者の致命率が有意に低値を示した.結論:日本の50歳以上90歳未満のCOVID-19第6波オミクロン株陽性者の致命率は,第5波デルタ株陽性者に比べて有意に低値であった.
著者
古田 弥生 木下 奈穂 杉本 博是 荒木 浩
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.367-371, 2018 (Released:2018-12-28)
参考文献数
19

乳がんの皮膚浸潤は出血や臭気を伴う滲出液のため,患者のQuality of Lifeを低下させる.局所処置療法としてMohsペーストや亜鉛華デンプン外用療法がある.Mohsペーストは正常組織の変性壊死による疼痛の有害作用があること,亜鉛華デンプン外用療法は止血・止臭効果が不十分という問題点がある.その問題点を改善した,紫雲膏・亜鉛華デンプン・メトロニダゾール(MNZ)療法の皮膚浸潤を伴う乳がん患者に対する,出血,臭気の緩和効果について報告する.症例は86歳女性.乳がんの皮膚浸潤に対して紫雲膏・亜鉛華デンプン・MNZ療法を行い,出血,感染兆候,臭気,滲出液,壊死組織が処置により客観的に改善し,ガーゼ交換の頻度は日に1回,処置は簡便であることが確認できた.紫雲膏・亜鉛華デンプン・MNZ療法は皮膚浸潤を伴う乳がん患者に対する,出血,臭気の緩和効果に有用で,従来の方法に加えて局所処置療法の一つになりうる可能性がある.