著者
榎本 由貴子 吉村 紳一 高木 俊範 辻本 真範 石澤 錠二 岩間 亨
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
Journal of Neuroendovascular Therapy (ISSN:18824072)
巻号頁・発行日
vol.8, no.5, pp.251-258, 2014 (Released:2015-02-03)
参考文献数
24
被引用文献数
2 3

要旨: 【目的】緊急脳血管内治療時における抗血小板薬のローディングドーズ投与後の血小板反応性の経時的変化をVerifyNow system を用いて測定し,予定治療症例と比較検討する.【方法】2011 年6 月から2013 年12 月の間にクロピドグレル300 mg とアスピリン200 mg のローディングドーズ投与を行った急性期脳主幹動脈閉塞症;acute 群13例と,クロピドグレル300 mg のローディングドーズ投与のみを行った予定治療群;elective 群10 例.投与前,投与6・24・48〜72 時間後にVerifyNow を用いてaspirin reaction unit(ARU),P2Y12 reaction unit(PRU),% inhibition を測定し,その経時的変化を検討するとともに,24 時間後の低反応性(PRU>230,% inhibition<26%,ARU>550)に関連する因子について検討した.【結果】クロピドグレルの効果はelective 群では24 時間後に十分得られていたが,acute群では48 時間後以降も不十分であった.一方,アスピリンの効果は内服6 時間後には十分発現されていた.クロピドグレル低反応性(15/23 例:65.2%)はacute 群(p=0.0018)とbody mass index(p=0.005)に関連が認められた.アスピリン低反応性はacute 群の13 例中3 例(23.1%)に認め,年齢(79±1.73 vs 68.5±14.5,p=0.049)のみ関連が認められた.【結論】ローディングドーズ投与法は早期に効果が発現される投与法であるが,急性期脳梗塞においてはクロピドグレルの効果が発現されにくい可能性が示唆された.
著者
辻谷 将明 左近 賢人
出版者
Japanese Society of Applied Statistics
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.15-29, 2005-08-30 (Released:2009-06-12)
参考文献数
34
被引用文献数
2

従来,生存時間解析ではCox比例ハザードモデルが広範に活用されてきた.特に,共変量の値が時間とともに変動する時間依存型データが含まれる場合,その近似解法としてMayo updatedモデルやヨーロッパnew versionモデルが広範に活用されてきた.しかし,それらのモデルには,べースライン生存関数やベースライン累積ハザード関数の推定などに問題点が残されている.本稿では,部分ロジスティック回帰モデルを援用した部分ロジスティックモデルおよびニューラルネットモデルを提案し,ブートストラップ法による統計的推測を系統的に行う.実際例として,PBC(原発性胆汁性肝硬変)データを取上げる.肝移植を念頭においた,観測期間の任意時点における6ヶ月後の条件付き生存率の予後予測を通じ,提案手法を既存手法と数値的に比較する.
著者
安彦 善裕 齊藤 正人 長澤 敏行 永易 裕樹 古市 保志 辻 昌宏
雑誌
北海道医療大学歯学雑誌 (ISSN:18805892)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.25-32, 2010-06

糖尿病患者における口腔粘膜の創傷治癒が遅延するメカニズムについて、口腔粘膜の創傷治癒とそれに影響を及ぼす因子、糖尿病での血流・血管新生、免疫能の変化、糖尿病での唾液量と成分の変化、糖尿病での成長因子の変化、糖尿病患者の心理的ストレスに分けて考察した。創傷治癒遅延には様々な現象が関わると考えられ、これらの現象が影響しあい遅延を引き起こしているものと考えられる。
著者
瀧田 航平 鈴木 奨 呉 健朗 堀越 和 中辻 真 宮田 章裕
雑誌
ワークショップ2017 (GN Workshop 2017) 論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.1-6, 2017-11-09

発展を続ける情報分野を支える技術の 1 つである対話型エージェントは,今後もより多くの場面で活躍が期待されている.一方でエージェントとの無機質な対話に親しみを感じないユーザには,このような対話型エージェントは受け入れてもらえない可能性が懸念される.この問題を解決するために我々は,ユーザの発言の一部をわざと間違えて聞き返す,ボケて返す対話型エージェントを提案してきた.我々は,このエージェントに適切なキャラクタ性を付与することで,ユーザが感じる親しみを増加させることができると考えている.この仮説を検証するため,本稿では,特定のカテゴリに属する単語のみを返答させることによって,エージェントにキャラクタ性を付与するアプローチを提案し,この概念をプロトタイプシステムとして実装した.検証実験の結果,現時点では,ユーザが感じる親しみの有意な向上は認められなかったが,エージェントにキャラクタ性を持たせることには成功したことが確認できた.
著者
湊 翔平 辻 健 野口 尚史 白石 和也 松岡 俊文 深尾 良夫 ムーア グレゴリー
出版者
物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.509-520, 2009-10

地震波海洋学において,海水中の微細な温度構造を推定するために,高速波形計算法と焼きなまし法を組み合わせたフルウェーブフォームインバージョン手法を開発した。焼きなまし法を利用することで,初期モデル依存の少ないインバージョンが可能となった。このインバージョン手法を,紀伊半島沖黒潮流軸周辺で取得された反射法地震探査データに適用した。この反射法地震探査データは,南海トラフの内部構造の解明を目的とした3次元探査の一部であり,黒潮の流軸を横切るように取得されている。インバージョンで得られた海水中の2次元音波速度構造から,海水中に高速度層と低速度層が互層状に分布し,これらの互層構造が海岸から黒潮の流軸に向かって傾いていることが判明した。経験式を用いて音波速度を温度に変換することで,最終的に海水中の2次元温度構造を得た。しかし結果の一部では,これまで知られている観測結果よりも層厚が薄く,層間の速度変化が大きい構造が卓越した。この原因を調べるために,インバージョンに対するノイズの影響を検証した。有限差分法で計算した擬似観測記録にホワイトノイズを加えてインバージョンを実施した結果,S/N比が小さい場合,速度変化が現れる深度はほぼ正しいものの,その速度コントラストは真のモデルより大きくなる傾向が認められた。シミュレーション結果の検討から,今回の紀伊半島沖のデータをインバージョンして得られた音波速度構造が,ホワイトノイズの影響によって実際の構造よりも音波速度コントラストが大きく解析されている可能性が示唆される。
著者
辻 誠 上本 康喜 河﨑 哲也 石塚 泰雄 井澤 武史
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.523-528, 2017-08-20 (Released:2017-09-20)
参考文献数
18

5歳齢,避妊雌のアビシニアンが間欠的な嘔吐を示して来院した.上部消化管内視鏡検査を実施したところ,幽門洞に表面の滑沢な隆起病変が認められた.内視鏡生検を行い,リンパ球クローン性解析は陰性であったが,細胞診と病理組織検査の結果,胃のヘリコバクター感染と胃小細胞型B細胞性リンパ腫と診断された.抗がん剤は用いず,ヘリコバクター除菌療法によって30日間の治療を行った結果,症状は消失しリンパ腫は完全寛解に至った.1年後の病理学的検査において,ヘリコバクターの軽度の持続感染がみられたものの,胃粘膜のリンパ腫の再発は認められなかった.
著者
藤岡 祐介 真野 智生 荒木 周 橋詰 淳 辻本 昌史 須賀 徳明 冨田 稔 安井 敬三 長谷川 康博 柳 務
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.15-22, 2009 (Released:2009-02-24)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

50歳以下で発症した若年性脳梗塞において,臨床特徴を検討した.対象は2002年1月から2006年12月までの5年間に当院に入院した急性期脳梗塞患者の連続2,080例である.このうち若年群は93例(4.5%)で,年齢は最低が15歳,平均は42.4歳であった.高血圧,糖尿病,心房細動を有する頻度,アテローム血栓性脳梗塞の割合はそれぞれ非若年群で有意に高かった.一方,喫煙の頻度,発症時に頭痛を伴う割合,動脈解離,血管炎をはじめとするその他の脳梗塞や原因不明の脳梗塞の割合は若年群で有意に高かった.退院時mRSは若年群で有意に低かった.発症後3時間以内の来院およびrt-PA使用の頻度は若年群と非若年群で有意差を認めなかった.若年の心原性脳塞栓症では非弁膜症性心房細動の割合は低く,何らかの先天性心疾患を有する割合が高かった.また,動脈硬化性脳梗塞は40歳を境に急増しており,動脈硬化性脳梗塞の若年化が示唆された.

1 0 0 0 OA 河海抄

著者
四辻善成
出版者

本居宣長が「ちうさくは河海抄ぞ第一の物なる」(『源氏物語玉の小櫛』冒頭)と激賞した『源氏物語』の代表的注釈書。貞治初年(1362)頃に足利将軍家へ献上され(中書本)、その後作者の四辻善成(1326-1402)自身の手で増補改訂が加えられた(覆勘本)。『河海抄』の現存諸本はこの両系統が入り交じったものしか残存しないが、掲出本では、さらに朱書で文字の批正が施されているほか、注文に典拠が明示され漢籍注が加えられている。累加された『文選』や『漢書』『後漢書』などの正史類のほか、『古文真宝前集』『千字文』のように初学者を対象とする漢籍や『白孔六帖』『唐類函』等の類書等からの引用など様々である。加注者は近世期の学者と思われ、『河海抄』が有職故実など関わる百科事典的な使われ方がなされていたこともうかがえる。(相田満)(2018.11)
著者
辻 宏子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.104-114, 2019 (Released:2019-07-05)
参考文献数
17

The purpose of this study is to reconsider and propose a framework for the category of geometric constructions in dynamic geometry environments. This framework is theoretically considered from the concept of “degree of freedom” for points, which concerns the essence of dynamic geometry environments, and then is empirically verified as to its validity and usefulness for the geometric constructions of the subjects. The conclusions of this study are 1) geometric constructions in dynamic geometry environments are classified into 5 types, and these types are related in terms of the state of recognition of geometrical figures, 2) the constructors moves type (2) and (3) and, it is necessary that we reconsider the 2 types and their relation. The results of this study contribute to promoting the utilization of technology in mathematics education in compulsory education.
著者
兒島 洋一 岸元 努 辻川 茂男
出版者
Japan Society of Corrosion Engineering
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.305-314, 1996-05-15 (Released:2009-11-25)
参考文献数
25
被引用文献数
1

The rate of uniform corrosion, the likelihood of pitting and crevice corrosion for aluminum, Al, in white wine were investigated in this paper. In commercial wines, the K2S2O5 is commonly added to induce free-SO2 which reduces the dissolved oxygen and acts as a fungicide in the wine. The spontaneous electrode potential of Al, ESP, in a deaerated wine containing less than 1ppm of free-SO2, at 25°C was measured to be about -600mV vs. SCE. Since the K2S2O5 is an oxidizing agent for the Al, the ESP was ennobled with the addition of K2S2O5 reaching -520mV with a concentration of 1000ppm K2S2O5. The uniform corrosion rate was measured to be 13μm/y at 25°C and this rate was found to depend on the temperature with an activation energy of 42kJ/mol. However, this rate was found to have no dependency on the electrode potential within the ESP range. The critical pitting potential, VC, PIT, measured in the wine containing 25ppm of Cl- was -370mV which was more noble than the ESP, and the pitting corrosion can not occur. The repassivation potential for the growing crevice corrosion, ER, CREV, was measured to be -530mV. It was also found that this potential does not depend on either the temperature or the concentration of K2S2O5. It was observed that the ESP became more noble than the ER, CREV with the addition of 800ppm K2S2O5 at 25°C. At a lower temperature, however, the ESP became more noble than the ER, CREV when a lesser amount of K2S2O5 were added. An effective method to decrease the rate of uniform corrosion is to reduce the holding temperature; however, to effectively prevent the crevice corrosion at these lower temperatures, the K2S2O5 concentration must be kept below 100ppm.
著者
大曽 基宣 津下 一代 近藤 尚己 田淵 貴大 相田 潤 横山 徹爾 遠又 靖丈 辻 一郎
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.15-25, 2020-01-15 (Released:2020-02-04)
参考文献数
33

目的 健康日本21(第二次)の目標を達成するため,各自治体は健康課題を適切に評価し,保健事業の改善につなげることを求められている。本研究は,健康日本21(第二次)で重視されるポピュレーションアプローチに着目して,市町村における健康増進事業の取組状況,保健事業の企画立案・実施・評価の現状および課題について明らかにし,さらなる推進に向けたあり方を検討することを目的とした。方法 市町村の健康増進担当課(衛生部門)が担当する健康増進・保健事業について書面調査を実施した。健康増進事業について類型別,分野別に実施の有無を尋ねた.重点的に取り組んでいる保健事業における企画立案・実施・評価のプロセスについて自記式調査票に回答してもらい,さらに参考資料やホームページの閲覧などにより情報を収集した。6府県(宮城県,埼玉県,静岡県,愛知県,大阪府,和歌山県)の全260市町村に調査票を配布,238市町村(回収率91.5%)から回答を得た。結果 市町村の健康増進事業は,栄養・食生活,身体活動,歯・口腔,生活習慣病予防,健診受診率向上などの事業に取り組む市町村の割合が高かった。その中で重点的に取り組んでいる保健事業として一般住民を対象とした啓発型事業を挙げた市町村は85.2%,うちインセンティブを考慮した事業は27.4%,保健指導・教室型事業は14.8%であった。全体では,事業計画時に活用した資料として「すでに実施している他市町村の資料」をあげる市町村の割合が52.1%と半数を占め,インセンティブを考慮した事業においては,89.1%であった。事業計画時に健康格差を意識したと回答した市町村の割合は約7割であったが,経済状況,生活環境,職業の種別における格差については約9割の市町村が考慮していないと回答した。事業評価として参加者数を評価指標にあげた市町村は87.3%であったのに対し,カバー率,健康状態の前後評価は約3割にとどまった。結論 市町村における健康増進・保健事業は,全自治体において活発に取り組まれているものの,PDCAサイクルの観点からは改善の余地があると考えられた。国・都道府県は,先進事例の紹介,事業の根拠や実行可能な運営プロセス,評価指標の提示など,PDCAサイクルを実践するための支援を行うことが期待される。
著者
小泉 亜希子 栗原 里奈 中山 みずき 熊谷 安希子 増田 健一 大辻 一也
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.95-100, 2019-10-10 (Released:2019-10-31)
参考文献数
4

涙やけは多くの家庭犬に認められ、その原因は流涙症とされている。われわれはドックフードを替えると涙やけの症状が変化するイヌに注目した。このイヌを被験犬としてフードと涙やけの関係について検討した。その結果、試験前に給餌されていたフード(フードP)から過去に涙やけを悪化させたフード(フードA)に切り替えると涙やけが悪化し、涙やけを改善したフード(フードB)を与えると涙やけが改善した。過去に観察されたドックフードによる涙やけの症状の変化が再現された。涙やけの原因の一つとして食物アレルギーが考えられることから、フードに使用されている原材料について調査した。その結果、いずれのフードにも食物アレルギー源となる可能性のある原材料が使用されていた。しかし、試験期間中、被験犬に食物アレルギーの症状は観察されなかった。そこで、涙やけに腸内環境が関係しているのではないかとの仮説を立て、便のpHを測定したところ、フードA給餌期間中に比べフードB給餌期間中の便のpHは低値を示した。さらに便中の総短鎖脂肪酸濃度を測定したところ、フードA給餌期間中に比べフードB給餌期間中の総短鎖脂肪酸濃度は高値となった。便のpHの低下は短鎖脂肪酸によることが示唆された。以上の結果から、涙やけを改善したフードBの給餌により、腸内環境が改善される可能性が示唆された。フードBは腸内環境改善を謳ったフードであり、ビートパルプ、オリゴ糖の他にビール酵母や野菜パウダーが添加されていた、しかし、今回の実験ではフードに配合されているどの原材料が涙やけの改善に関与したのかは特定できなかった。涙やけと腸内環境の関係の糸口として、涙液中の総IgE濃度を測定した。しかし値の変動が大きく一定の傾向は認められなかった。