著者
辻村 憲雄 吉田 忠義
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.497-508, 2007-09-15 (Released:2011-03-01)
参考文献数
24
被引用文献数
1 4

中性子線量当量 (率) 測定器の校正に使用する241Am-Be中性子線源について, 中性子放出角度分布の非等方性を計算によって評価した。ここでは, 球形の241AmO2が厚いBeに囲まれる線源モデルを仮定し, (1) AmO2表面でのα粒子のスペクトル, (2) 9Be (α, n) 反応によって発生する中性子のスペクトル, (3) 線源カプセルから漏洩する中性子のスペクトルと放出角度分布を, それぞれ順番に計算した。 (1) と (2) の計算ではα粒子の阻止能と9Be (α, n) 反応微分断面積 (JENDL/AN-2005) , (3) の計算ではモンテカルロ輸送計算コードMCNPを利用した。計算の結果, AmO2の粒径を3μmとした場合, 中性子の収率及びスペクトルがともに標準的な241Am-Be線源のものに良く一致することがわかった。また, 同じ粒径条件で算出した241Am-Be中性子線源の非等方性補正係数は, X3型線源で1.030, X4型線源で1.039となり, 文献から得られた実測値にともに良く一致した。更に, 線源カプセルの周囲に支持構造物がある場合の影響についても検討し, 中性子線量当量 (率) 測定器の校正業務において使用する非等方性補正係数を決定した。
著者
大辻 新恭 小田 伸午
出版者
関西大学大学院人間健康研究科院生協議会
雑誌
人間健康研究科論集 (ISSN:24338699)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.59-73, 2019

柔道は古来の武術と競技スポーツという二つの側面が保持されていたはずであったが、その普及に伴い柔道の競技的側面が肥大化した。その結果、現代柔道にはその指導理念、指導方法において武術性という視点とその応用が欠落していったのではないかと考えられる。そこで、本研究では、現代柔道における武術性の意味を、当身技に焦点を当て、それが武術性からこれまでどのように解釈され、扱われてきたのかを明らかにしたうえで、学校教育にどのように導入すべきかを提案することを目的とした。その結果、柔道における武術性は技術の捉え方をめぐる問題が存在すると考える。嘉納治五郎は柔術のとりわけ殺傷性が高い当身技といった技術を形で学ぶことで、安全性を確保しながらも、武術性を社会生活につながるための精神修養として捉え、教育としての柔道を確立しようとしたことにある。一方で、現代柔道に受け継がれた武術性は、特に学校管理下における教育としてその道徳的価値ばかり強調される。このことは、学校体育で武道が必修化された背景において、日本における伝統文化として武道を学ぶところに教育的意味があると考えられているからであろう。上記を踏まえて、当身技を形として中学校体育における柔道に取り込むことによって、現代では失われつつある柔道における武術性を学習することが可能になると考察した。
著者
辻 大介
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.29-39, 2003

私たちのおこなうコミュニケーションを,物理的・機械的な情報伝達とは十分に区別されるように記述できるかどうかが,理論社会学にとってはひとつの試金石となる.本稿ではその可能性をH.P.グライスの非自然的意味の理論に求める.それは,発話者が何ごとかを意味する(コミュニケートする)ということを,発話者のもつ自己参照的意図から分析するものである.それに対しては,コミュニケーションにおける言語規約的要素を重んじる立場と,自己参照的意図の無限背進を懸念する立場から,批判が提出されてきた.これらの批判は個別の論点をもつため,これまでは分け離して扱われることが多かったが,本稿ではそれらをあわせて考察することをとおして,最終的に,コミュニケーションにおける自己参照的意図と言語の規範性が根源的な関係をもつものであることを示し,グライス流の意図によるコミュニケーションの記述に,社会(学)的記述と呼ぶにふさわしい資格を与える.
著者
岡田 智 小林 玄 辻 義人 鳥居 深雪 飯利 知恵子 田邊 李江
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では,日本版WISC-Ⅳの解釈システムの構築のために,発達障害の子どもにWISC-Ⅳを実施し,検査中の行動観察,日常生活における生態学的情報についても収集した。統計解析と事例研究を用いて分析した結果,ASD及びADHD特性をWISC-Ⅳ測定値で判断することには限界があり,ワーキングメモリー指標がADHDの不注意を反映しにくいことなど解釈上での留意点が明らかになった。また,解釈の際には,WISC-Ⅳの測定値だけでなく,CHCモデルによる分析,また,ASD特性やADHD特性を踏まえた生態学的観点,検査中の行動や課題解決などの質的情報も含めた総合的解釈が重要であることが示唆された。
著者
高橋 淳 中辻 憲夫 笹井 芳樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

我々は、2005年5月から再生医科学研究所で樹立されたヒトES細胞(KhES-1,-2,-3)の解析を行っている。これらの細胞株からもドーパミン産生ニューロンが誘導され、培地中にドーパミンを放出しうることを確認した。パーキンソン病モデルカニクイザルの線条体に移植を行ったところ、3頭中1頭で腫瘍形成が認められた。このケースでは、PETスキャンにおいて腫瘍部位に限局して糖代謝の亢進が確認され、細胞分裂を示すfluorothimidineの取り込み上昇も認められた。組織診断では、未分化細胞の増殖が限局的にみられたが、奇形種を裏付ける骨・軟骨、皮膚、筋肉、消化管などの形成は認められなかった。fluorothimidine陽性部位に一致して、ES細胞のマーカーであるOct3/4陽性細胞の集積が認められた。移植細胞の解析を行ったところ、分化誘導期間の違いにより、腫瘍形成がみられたケースでは移植細胞の中にES細胞が混入していたのに対し、腫瘍形成がなかった2頭ではES細胞の混入はみられなかった。つまり、移植細胞へのES細胞混入が腫瘍形成の原因であると考えられた。また、MRIやPETは腫瘍形成を確認する上で有用な手段であることが確認された。これらの結果は現在投稿準備中である。移植細胞による腫瘍形成について、我々はマウスES細胞と正常マウスを用いて検討を加え、分化誘導後に神経系細胞のみを選別して移植することによって腫瘍形成が抑えられることを明らかにした(Fukudaら)。これらの研究によって、安全で効果的なES細胞移植を行うためには、神経幹細胞の純化が必要であることが明らかとなった。現在はヒトES細胞の選別方法開発に取り組んでいる。
著者
高橋 淳 中辻 憲夫 笹井 芳樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

我々は、ES細胞由来神経系細胞移植によるパーキンソン病治療法の開発を目指して研究を進めているが、臨床応用を目指すにはヒトと同じ霊長類を用いた実験が必要不可欠である。そこで、カニクイザルES細胞から誘導したドーパミン産生神経をカニクイザルパーキンソン病モデル脳に移植し、行動解析を行った。カニクイザルES細胞をPA6という間質細胞の上で約2週間培養すると、ほとんどの細胞が神経幹細胞様になる。この細胞をsphere法で培養しFGF2とFGF20を加えると、全体の約半数がニューロン、その4分の1がドパミン神経に分化するようになる。MPTPの静脈内投与でカニクイザルパーキンソン病モデルを作成し、その線状体にES細胞由来ドパミン産生神経(前駆細胞)を移植すると移植群においては徐々に神経脱落症状の改善がみられるようになり、移植後10週目に有意な改善が認められた。その後、F-dopaの取り込みをPETにて評価した。コントロール群においてはF-dopaの取り込みが低下しているのに対し、移植群においては有意な上昇がみられ、移植細胞がドーパミン神経として機能していることが確認された。PET後に脳切片の染色を行った。移植に先立ち細胞をBrdUでラベルしたが、移植群の線条体においてBrdU陽性細胞の生着がみとめられた。さらにTH陽性細胞やDAT陽性細胞も確認された。これらの多くはBrdUと共陽性であり、移植されたES細胞由来のドーパミン神経であると考えられた。また、腫瘍形成は認められなかった。カニクイザルES細胞から分化した中脳ドーパミン産生神経の移植によってカニクイザルパーキンソン病モデルの行動が改善したことは、同じ霊長類であるヒトにもこの方法が適応できる可能性を示唆する。ただし、実際の臨床応用の前には1年以上の長期経過観察によって、その効果と安全性の検証が行われなければならない。と同時に、ヒトES細胞からの中脳ドーパミン産生神経誘導とその移植実験が必要である。
著者
辻 王成 岡元 勉 野村 一俊 前川 清継
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.634-637, 2014-09-25 (Released:2014-11-11)
参考文献数
7

新規骨粗鬆症治療薬のデノスマブ(プラリア)はRANKリガンドを標的とするヒト型モノクローナル抗体である.海外で椎体および大腿骨近位部骨折発生リスクを有意に減少させており,本邦でも期待がもたれる.主な副作用として低カルシウム(Ca)血症がある.2013年7月~9月の期間,骨粗鬆症患者に対し,デノスマブ60mgを皮下注射し,カルシウム,天然型ビタミンD配合剤を併用し治療開始前と投与後1,2,4週に血液検査を行い,血清Ca値と骨吸収マーカーを測定し,実臨床での副作用と早期の治療効果判定を行った.国内第II,III相試験での低Ca血症の発生頻度はそれぞれ0.6%,0.8%であったが,本研究では1週後に12%,2週後に7%であった.原因として,本研究の対象患者の平均年齢が79.4歳と高く腎機能低下の影響が推測され,超高齢者には活性型ビタミンDの事前投与が望ましいと考える.また,投与2週間でTRACP-5bは62.1%低下しており,BP製剤を超える強力な骨吸収抑制効果を確認した.
著者
豊辻 宏旨 松崎 拓也 佐藤 理史
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第31回全国大会(2017)
巻号頁・発行日
pp.3G11, 2017 (Released:2018-07-30)

センター試験「化学」の正誤問題に対する自動解答システムを開発した。選択肢に対し意味解析を行い、生成された中間表現に基づき正誤判定を行う。まず、化学物質の知識と状態や操作を表す用言に関する知識をオントロジーとしてまとめた。さらに、並列や連体修飾など分野に非依存な言語現象を処理するため形式文法を実装した。形式文法にオントロジーに基づく意味表示を組み込むことで、誤った解析を防ぎつつ、意味解析を行える。
著者
辻 佐保子
出版者
日本西洋古典学会
雑誌
西洋古典學研究 (ISSN:04479114)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.68-82, 1979-03-29

Cet article fait partie d'une serie d'etudes consacrees au theme de la Resurrection du Christ, dont le premier article a ete deja, publie dans "Orient", XIII, 1977 ("Ce que l'iconographie des Saintes Femmes au Tombeau doit a l'art funeraire paien"). Dans ce second article, nous voulons examiner une representation fort originate et inome-vue du cote de l'art chretien-des trois personnages habilles en blanc qui s'evadent a, travers de deux portes entr'ouvertes, peintes en perspective et amenagees dans deux compartiments du cubiculum F de la nouvelle catacombe de Via Latina a Rome. La structure de ces ouvertures avec deux vantaux repliants et la presence de personnages au dessus de leurs seuils peuvent etre rapprochees de la representation semblable au decor d'interieur qu'on trouve souvent dans la peinture romano-campanienne. Mais, cette comparaison ne sufnt pas pour expliquer le geste precipite et l'expression d'etonnement que montrent nos trois personnages. L'un vu de dos, la jambe droite projetee en arriere, essaie d'ecarter les vantaux de la porte avec sa main droite et son epaule gauche. Deux autres se retournent un instant apres avoir traverse le seuil de la chambre funeraire. C'est surtout une serie de sarcophages, dite de "la porte d'Hades", recemment etudiee par B. Haarlov, y compris le celebre sarcophage de Velletri, qui nous aide a elucider la signification de ces personnages peu habituels. En effet, mise a part une simple porte sans figure humaine et en trois etats differents fermee, entr'ouverte ou brisee par force , on y trouve quelquesfois l'ombre du defunt ou des personnages mythologiques (Alcestis, Protesilaos) accompagnes des divinites psychopompes (Hercule, Hermes) , qui emergent de la porte entr'ouverte d'Hades. Une longue tradition iconographique depuis l'art etrusque nous montre que l'ouverture de la porte du tombeau signifie a la fois le depart vers le monde d'audela, et le retour a, la vie, la resurrection. Les ivoires paleochretiens autour de l'annee 400 ont adopte le meme motif de la porte en trois etats differents, pour le tombeau du Christ dans la scene des "Saintes Femmes au Tombeau" : elle est fermee dans l'ivoire de Munich, entr'ouverte dans celui de Milan et detruite dans celui de Londres. Surtout deux derniers etats doivent evoquer la sortie miraculeuse du Christ de son tombeau, a savoir une Resurrection par excellence qui garantie celle des chretiens en general. Mais dans tous les cas, la representation realiste, la resurrection corporelle du Christ est evitee. Elle n'apparait que plus tardivement sous l'influence des illustrations des Psaumes. Il est generalement admis que la representation de la resurrection des morts ne commence qu'a, partir du 9^e siecle-de meme que celle du Christ en corps-, et qu'elle est associee soit avecle "Crucifiement" (selon Mat. 27, 52), soit avec le "Jugement Dernier". Dans ces cas, les morts ressuscitent en deplacant les couvercles des sarcophages et ce n'est plus a travers de la porte de l'edifice ou de la chambre funeraire. Pourtant, le theme traditionnel de l'ouverture de la porte a ete utilise d'une autre maniere par ces artistes medievaux, a la fois pour l'iconographie de "l'Ascension" en tant que l'ouverture de la porte du Paradis (Adventus du rois de gloire, inspire par le psaume 23)et pour celle de la "Descente aux Limbes" en tant que la destruction de la porte d'Enfers. Nous reviendrons a ce probleme dans notre prochain article. Pour expliquer les gesticulations tres vives de nos trois personnages, nous avons essaye de les confronter avec quelques textes du Nouveau Testaments relatifs a la resurrection des morts, entre autres I Ep. Cor., IS, 51-52, qui insistent sur l'instantaneite("in momento in ictu oculi") de cette "transformation" du corruptible a l'incorruptible. Un des sermons prononce a la fete de Paques de Gregoire de Nazianz decrit longuement, en terme biologico-psychiatrique-qui evoque la scene du cours de l'anatomie decorant une des lunettes du cubiculum I de la meme catacombe-, cette resurrection instantanee et le retour subit de la memoire du passe a chaque homme. Ainsi, au son de la trompette, les trois morts ensevelis dans les trois arcosolia du cubiculum F ressuscitent instantanement. L'un se precipite vers la porte qui s'ouvre et deux autres, deja franchi le seuil, se retournent et regardent avec un air etonne l'interieur de la chambre qu'ils viennent de quitter. Bien que tres precoce, il doit s'agir ici d'une representation audacieuse de l'evasion de la chambre funeraire, c'est-a-dire la delivrance de la mort, utilisant le motif semblable a l'ouverture et a la sortie de la porte d'Hades, frequent sur les monuments funeraires paiiens d'un ou deux siecles anterieurs. D'ailleurs, Prudence, poete chretien contemporain influence par le vocabulaire de la litterature classique, ne dit-il pas qu' "apres le trepas, notre chair qui etait morte. Notre poussiere se rassemble en corps, et du tombeau renait notre forme d'autrefois" (Cathemerinon Liber, III, 193-95)?
著者
宇野 宏司 高田 知紀 辻本 剛三 柿木 哲哉
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_1609-I_1614, 2016
被引用文献数
3

太平洋に直面する徳島・高知沿岸では,繰り返される南海トラフ地震によって,大きな津波被害を受けてきた.同沿岸域では,2011年の東北地方太平洋沖地震で津波被害の大きかった三陸地方沿岸と同じリアス式海岸となっている区間も多く見られる.一方,東日本大震災では多くの神社が津波からの被災を免れたことが知られている.古い歴史を有する神社は地域とともに歩んできた重要な公共空間であり,現在の分布は,過去の大災害等によって淘汰された結果を示しているとも考えられる.こうした社会背景を踏まえ,本研究では徳島・高知沿岸神社の空間分布と南海トラフ地震の津波被災リスクについて検証した.
著者
辻善之助 編註
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
1942
著者
石井 大輔 齋藤 淳美 宮川 和也 辻 稔 武田 弘志
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.66-74, 2016-03-31

がん患者の代表的な身体的苦痛である慢性疼痛が,患者の精神症状を増悪することが懸念されている.「痛み」の伝達経路は,情動調節に重要な脳部位である帯状回や扁桃体に直接的または間接的に入力しているため,痛み刺激自体がストレスへの対処(ストレスコーピング)に影響を及ぼす可能性が示唆される.本研究では,慢性疼痛がストレスコーピングに及ぼす影響について,マウスの強制水泳試験を用いて行動学的に検討した.その結果,炎症性慢性疼痛は,ストレスコーピングに影響を及ぼさなかった.一方,神経障害性慢性疼痛は,強制水泳試験における無動時間の短縮,すなわち,ストレス刺激に対する受動的コーピングの障害を惹起した.なお,この条件下において,オープンフィールド試験における探索行動およびロータロッド試験における運動協調性には特筆すべき変化は認められなかった.また,神経障害性急性疼痛は,ストレスコーピングに影響を及ぼさなかった.これらの所見から,神経障害性慢性疼痛は,ストレス刺激に対する受動的コーピングに影響を及ぼすことが考えられる.
著者
辻 富基美 高橋 隼 篠崎 和弘
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.59-63, 2011 (Released:2011-06-30)
参考文献数
7

てんかん患者がもつ発作後精神病の予防にlamotrigineが有効であった3例を報告する。3症例は全て側頭葉てんかんと診断され、てんかんの発症から17~27年時に発作後精神病が出現した。発作型はいずれも複雑部分発作であり、十分な抗てんかん薬を投与したにもかかわらず、月1回以上の発作があった。精神病エピソードはこれまでに2~5回以上であったが、ラモトリギンの投与後10~12カ月の期間では精神病エピソードの再発がなかった。発作頻度はラモトリギンにより1症例は群発発作が消失し、2症例は発作頻度が減少した。この群発発作の消失、発作頻度の減少が発作後精神病の再発を予防した可能性がある。一般的にラモトリギンは精神病症状を引き起こす副作用の頻度が小さい。これらのことより、発作後精神病の予防ための抗てんかん薬として有用な可能性がある。
著者
北川 純一 高辻 華子 高橋 功次朗 真貝 富夫
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.143-149, 2013

「おいしさ」にとって重要な要素である「のどごし」の形成には、咽頭・喉頭領域の感覚が深く関与していると考えられる。しかしながら、咽頭・喉頭領域の感覚についての研究報告はあまり多くない。本稿では、これまでの研究によって明らかにされた咽頭および喉頭領域を支配する神経(舌咽神経咽頭枝と上喉頭神経)の味覚応答特性ついて紹介するとともに、近年、盛んに研究されているTRPチャネルファミリーとのどごし感覚の関連性を検討する。さらに、健康的な生活を過ごすために大切な摂食(嚥下)機能に対する咽頭・喉頭領域からの求心性情報の役割について考察する。
著者
山田 典一 松田 明正 荻原 義人 辻 明宏 太田 覚史 石倉 健 中村 真潮 伊藤 正明
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.233-238, 2012-08-25 (Released:2012-08-30)
参考文献数
9

●要 約:弾性ストッキングは静脈血栓塞栓症の理学的予防法の一つとして汎用されており一定の予防効果が報告されている.他の予防法と比較しても,出血性合併症のリスクがなく,簡便で比較的安価であることより,使用しやすいという利点がある.わが国でも以前より静脈血栓塞栓症予防法の一つとして用いられていたが,2004年の肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドラインの公表と,さらに同時期に肺血栓塞栓症予防管理料が保険診療報酬改定で認定されたことを契機に急速にその使用頻度が増加した.しかしながら,多くの前向き大規模研究が行われている薬物的予防法と比較すると未だ十分なエビデンスがあるとは言い難い.本項では,静脈血栓塞栓症に対する一次予防法としての弾性ストッキングの現時点でのエビデンスをレビューする.