著者
金澤 学
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 = Annals of Japan Prosthodontic Society (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.126-129, 2013-04-10
参考文献数
6
被引用文献数
2

現在の全部床義歯製作法には,臨床・技工操作ともに非常に煩雑で熟練した手技を要する.この問題点を解決するために,われわれはCAD/CAM技術を応用した全部床義歯製作法を考案した.この手法では,改良した旧義歯あるいはパイロットデンチャーをCTによりスキャンし,粘膜面と顎間関係を三次元データとしてPCに取り込む.CADソフトウェア上にて,新しい義歯をデザインした後,顔貌シミュレーションにより新義歯装着時の顔貌の確認を行う.必要があれば,Rapid Prototypingを用いて試適用義歯を作製し,義歯試適を行う.これにより,問題がなければ,マシニングセンタによりアクリルブロックを義歯床形態に切削加工し,人工歯を接着し最終義歯を完成する.
著者
潮平 健太 金子 秀雄 梶山 顕弘
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】臨床でしばしば観察される跛行の1つに,体幹の前傾や側方傾斜がある。これらの定量的評価に3次元動作解析装置が用いられるが,機器が高価で操作に熟練を要し,測定場所が限定される。そのため,近年は小型で軽量であり,測定場所の制約を受けにくい加速度や角速度センサが注目されている。しかし,角速度センサを用いて体幹傾斜を測定し,健常者の体幹傾斜がどの程度であるかを示した報告はない。そこで本研究では,角速度センサを用いて健常な若年者と高齢者における体幹傾斜角度の測定を試み,体幹傾斜角度の参考値を得ることと加齢による影響を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は,性別と体型によりマッチングさせた健常若年者20名(男性9名,年齢24±2歳,身長161.4±6.8cm,体重56.4±7.1kg,BMI21.6±2.1kg/m<sup>2</sup>:若年群)と独歩で日常生活が自立した地域在住の健常高齢者20名(男性9名,年齢68±3歳,身長159.6±7.5cm,体重56.0±7.3kg,BMI21.9±1.5 kg/m<sup>2</sup>:高齢群)とした。除外基準として,明らかな脊柱変形,整形外科的疾患または神経学的疾患を有する者とした。使用機器は,外形寸法40mm×20mm×30mm,質量約30gの角速度センサ(LOGICAL PRODUCT製:以下,センサ)を用い,10m歩行(加速・減速路3mの計16m)の体幹傾斜角度を測定した。測定手順は,椅座位にて体幹直立位で胸骨体に合わせて装着した胸部固定用ベルト(GoPro Chest Mount Harness WGCHM30)にセンサを貼付した。なお,センサの鉛直はデジタル水準器(アカツキ製作所DI-100M)を用いて確認した。センサ装着後,裸足にて快適速度での10m歩行を3回試行した。サンプリング周波数は500Hz,測定時間は30秒間とし,測定データに対してドリフト補正を行った。データ解析は,歩行開始5歩目~10歩目を解析区間とし,解析区間における最大側方傾斜角度,最大前傾角度,平均側方傾斜角度(1歩行周期毎の最大側方傾斜角度の平均),平均前傾角度として算出し,3試行の平均値を分析に用いた。統計処理はSPSS statistics 22(IBM)を用いた。若年群と高齢群の最大体幹傾斜角度,平均体幹傾斜角度の比較には対応のないt検定を用いた。有意水準は5%とした。【結果】前額面において,体幹の最大側方傾斜角度は若年群2.5±0.9°,高齢群3.9±1.3°,平均側方傾斜角度は若年群1.8±0.9°,高齢群3.2±1.2°,矢状面において,最大前傾角度は若年群3.5±4.1°,高齢群2.1±2.9°,平均前傾角度は若年群2.2±3.8°,高齢群0.93±2.9°であった。若年群と高齢群の最大側方傾斜角度,平均側方傾斜角度に有意差を認めた(p<0.05)が,最大前傾角度,平均前傾角度に有意差は認めなかった。【結論】角速度センサにより測定した歩行時の側方傾斜角度は先行研究に類似した値を示し,高齢者は若年者より側方傾斜角度が有意に増加していることがわかった。これらの結果から角速度センサは,体幹傾斜の定量的評価や加齢変化の識別に有用であることが示唆された。
著者
宇野 富徳 王 力群 三分一 史和 外池 光雄 金田 輝男
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.59-65, 2010-02-10 (Released:2010-11-17)
参考文献数
17

We investigated the olfactory “Kansei” information processing for two kinds of smells by measuring the brain activities associated with olfactory responses in humans. In this study, the brain activities related to discrimination and recognition of odors were examined using functional magnetic resonance imaging (fMRI). In experiment 1, odor stimuli (lemon-like and banana-like) were presented using a block design in a blinded manner, and the kind of fruits was identified by its odor. The frontal and temporal lobe, inferior parietal lobule, cingulate gyrus, amygdaloid body and parahippocampal gyrus were primarily activated by each odor based on conjunction analysis. In experiment 2, as a result of performing an oddball experiment using the odors of experiment 1, the active areas were mainly found in the temporal lobe, superior and inferior parietal lobule, insula, thalamus, supramarginal gyrus, uncus and parahippocampal gyrus. Moreover, these regions overlapped with the emotional circuit. These experimental results suggest that common brain activities accompany the discrimination and cognition associated with odor stimuli, which may underlie the olfactory responses relevant to the higher brain function and emotions associated with olfactory function.
著者
吉田 博 金西 計英
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.449-457, 2014

FDの義務化以降ミクロレベルでのFDとして,授業コンサルテーションを実施する高等教育機関が増加しつつある.それに伴い授業コンサルテーションの成果として,対象となる教員,または学生に与えた影響などの研究,さらにコンサルテーションを実施するコンサルタントのスキルに関する研究などがなされている.本論文は,授業コンサルテーションの新しい方法として,学生の変容に焦点を当て,授業担当教員とのインタラクションを実現する「学生討議型授業コンサルテーション,SDCC(Students' Discussion-based Class Consultation)」を試みた実践研究の報告である.SDCCは,コースの中間期に授業の改善点について,学生によるディスカッション,及び授業改善のためのアンケートを行い,これらのデータをもとにして授業改善を行う実践である.本実践研究では,SDCCが学生の授業参加に対する積極性,授業外学習に対する取り組みについて,ポジティブな影響を与えたことが明らかとなった.
著者
高井 真司 金 徳男
出版者
大阪医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

メタボリックシンドロームの臓器障害におけるキマーゼの役割を解明するため、高血圧ラットに高脂肪・高コレステロール食を負荷して高血圧と高脂血症を伴った新規非アルコール性脂肪肝炎(NASH)モデルを作製した。本NASHモデルの肝臓ではキマーゼが著明に増加し、キマーゼ阻害薬はNASHの発症および進行を予防し、生存率を有意に増加させた。ハムスターでも高脂肪・高コレステロール食を負荷して高血圧、高脂血症、糖尿病を伴う新規のNASHモデルを作製した。本モデルにおいても肝臓でキマーゼが増加した。メタボリックシンドロームによる合併症であるNASHの発症および進展にキマーゼが需要な役割を果たしていた。
著者
岩田 修一 陳 迎 金田 保則
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

データ駆動型の方法論の基礎を提示するため、データサイエンスの視点から検討した.材料データを記述するための変数群 : メタデータは複雑で、精度や粒度も多様であるため、それらの非均質性に適応可能な測度論を検討し、データシステムの基本的な枠組みとした.データは、測定対象の属する空間あるいはメタデータが張る空間の部分集合についての「何か」をはかった結果についての記述であり、部分集合の測度とよばれる.データ駆動型材料設計は、データを集積することによって、社会のニーズに対応した解空間を作成し、ニーズに最も適合した材料の組成、諸構造、特性、価格を特定する設計作業と定義した.測度については、観測・測定方法あるいは経済性の限界に依り不完全であるため、多様なデータ群を目的に沿って誤差を補正し不完全な部分をモデルや近似により補完し、ニーズに合うデータ群を探索(写像)するプロセスを、材料データベースをプラットフォームにして実装し、データ駆動型材料設計の実例の蓄積をWeb 上で展開した.
著者
金子 熊夫
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
動力・エネルギー技術の最前線講演論文集 : シンポジウム
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

<p>The current Japan-US nuclear cooperation agreement, which is the result of strenuous diplomatic negotiations in the 1970s-80s, should best be extended beyond July 2018 as it stands now. However, in view of various unfavorable circumstances (such as the delayed operation of the Rokkasho-mura Reprocessing Plant, Monju, MOX programs), further determined efforts are needed on the Japanese side to improve the domestic climate by removing as much as possible the existing negative factors. Above all, Japan should endeavor to dissipate misgivings abroad about clandestine military diversions, somewhat provoked by Mr. Donald Trump's recent statements as well as Chinese accusations.</p>
著者
金綱 知征
出版者
日本感情心理学会
雑誌
エモーション・スタディーズ (ISSN:21897425)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.17-22, 2015-10-01 (Released:2017-04-24)
参考文献数
21
被引用文献数
3

This paper aimed to give an overview of a series of cross-national studies on children’s perception and understanding of bullying in England and ijime in Japan, and to see the nature and the characteristics of ijime and its possible social and cultural background factors. Ijime in Japan, compared to bullying in Western countries, is often considered to be more indirect in nature, and often conducted as a group aggression by victims’ classmates or someone victims know very well. Although students in both countries had similar perceptions of typical characteristics of bullies and victims, and many students had anti-bully and pro-victim attitudes, victim-blaming tendency appeared to be more salient in Japan. These characteristics may partly be explained by the school systems and pupils' friendship formations within the system in each country. Compared to English pupils, Japanese pupils formed their friendships on the basis of the class they belonged to, and spent most time with them in the classroom. Thus, more class-based prevention and intervention approaches would be necessary.
著者
勝又 拓真 羽金 昌平 ベンジャミン ナバロ プレス フィリップ ベンチャー ジェンチャン
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.1P1-H11, 2017
被引用文献数
1

<p>This work presents the position and force control in cartesian space by adapting the dynamics and geometry of the payload brought by a robot arm. We generated exciting trajectory by solving the nonlinear optimal problem to identify the dynamic parameters. Then we identified the dynamic model of the robot with the payload. Our proposed method can identify the geometric parameters of the payload from the identified dynamic parameters of the payload. Using the identified dynamic and geometric model, we generated the task motion for our robot to paint walls with roller by solving a new nonlinear optimal problem. Finally, we reconstructed the position and force control system from the model and generated motion, and let the robot performs the task motion in the experiment. As a result of using the accurate identified model, we can confirm that our proposed controller controls position and external force even if the painting roller brought by robot is changed.</p>
著者
落合 英二 金子 主税
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Pharmaceutical Bulletin (ISSN:03699471)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.56-62, 1957-02-20 (Released:2008-02-19)
被引用文献数
2 10

Durch Nitrierung von Chinolin-N-oxyd mit Benzoylnitrat in Chloroform-bzw. Dioxan-Losung wurde das 3-Nitrochinolin-N-oxyd mit befriedigender Ausbeute erhalten. Pyridin-N-oxyd gibt bei ganz analoger Reaktion das 3-Nitropyridin-N-oxyd trotz sehr schlechter Ausbeute. UV-Absorptionsspektren der isomeren Mononitroderivate des Chinolin-N-oxydes wurden verglichen.
著者
金 どぅ哲
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.14, 2006

I はじめに 本研究は旧韓末(朝鮮時代の末期)の代表的な学者で啓蒙思想家である張志淵の地理思想を中心に、韓国における伝統的な地理思考と近代的な地理思想との接点を探ることを目的とする。張志淵(1864~1921)は、韓国初の民間新聞である「皇城新聞」の創刊者および主筆として、日韓保護条約(1905)を痛烈に批判した社説「是日也放聲大哭」で有名であるが、一方では旧韓末の代表的な儒学者・史学者としても大きな足跡を残している。それだけに今日にも張志淵は言論人の草分けとして、また儒学者・史学者として韓国で広く知られている人物であるが、彼の地理学的な業績と近代地理学への影響についてはあまり知られていない。そこで、本稿では、張志淵の思想的背景に注目しつつ、彼の著書である「大韓新地誌(1907)」を中心に韓国における近代地理学の黎明期の特徴を明らかにするとともに、韓国の近代地理学に及ぼした影響について検討したい。II「大韓新地誌」の内容と特徴 張志淵は韓国の3大地理書の一つと呼ばれる丁若鏞の我邦疆域考 (1811年)を増補した「大韓疆域考(1903)」や「大韓新地誌 (1907)」などを著するなど、地理学と地理教育にも少なからず功績を残した。張志淵は「大韓疆域考」の序文で、「いま地理を論ずるためには、歴代の疆土の沿革をまず調べなければならず、・・・歴史の一部分を補充しようとする・・・」とし、地理学を歴史の一部と見なす伝統的な地理思考を示している。しかし、4年後に刊行した「大韓新地誌」の序文では、「今日、我々に最も緊急な問題は地理の不在である・・・地理学が発達しないと、愛国心もない・・・近年我が国では新学問を論ずる人々が世界各国の地理と事情だけを一生懸命議論するのみで、真の我が国の地誌を研究するものはほとんどいない。また、学校では教科書で地理を教えていると言っているものの、完全無欠な教本がなく地理に関する常識がはなはだ浅い。これは我々の大きな欠点である・・・」とし、新学問としての地理学の必要性を力説している。この時期、彼は地理教育を通じて愛国心や民族意識を向上させることを試みており、その方法として近代的な学校教育を取り、実際にいくつかの民族学校の校長に努めるなど、教育運動にも関わっていた。「大韓新地志」は、1907年に学部(統監部)の検定を受けたが、内容が不純であるという理由で1909年に検定無効となった。しかし、当時としては比較的に科学的な内容構成であり、優秀な地理教科書であったため、1907年初版の発行以来1年半後に再版を発行するほど人気が高かった。「大韓新地志」は韓国地理を地文地理、人文地理、各道の3部構成で叙述しており、近代地理学的な地誌体系を取っている。また、「大韓新地志」田淵友彦の「韓国新地理」を参考にした痕跡があるとの意見もあるが、伝統的な地誌を基本に近代的な韓国地理の体系を樹立したと評価できる。例えば、従来韓国では風水地理の影響を受けた「白頭大幹」あるいは「白頭正幹」という表現が用いられてきたが、「大韓新地志」で初めて「白頭山脈」という表現が登場する。また、「大韓新地志」の挿入図には、方位や縮尺、海岸線や航路の距離、礦山・港口・鐵道などの凡例のように近代地理学の概念や表現が用いられている。「大韓新地志」の目次からも分かるように、「大韓新地誌」には「山経」などの伝統的地理思想に基づいた項目もあるが、近代地理学の体系を受容している項目が多く、近代的な地誌としての体系を整えていると言える。III 終わりに 韓国における近代地理学の黎明期に波瀾万丈な人生を過ごした張志淵の地理観を要約すると、次の3点が指摘できる。第一に、開花思想の影響で、日本から導入されはじめていた近代地理学的な概念を受容し、伝統的な地理観からの脱皮を試みた。第二に、儒学者としての生い立ちの影響で、地理を歴史の一部としてとして捉える認識が残っていた。第三に、地理学を愛国啓蒙の手段として捉えていた。最後に、このような張志淵の地理観にみられる特徴のうち、地理学を愛国啓蒙の手段として認識は、独立後の韓国の地理学にも影響を及ぼしてきたことを指摘しておきたい。すなわち、韓国では少なくとも1980年代まで地理学を「国学」として捉える風潮が色濃く残っていたが、その原因は海外研究が自由にできなかった社会経済的な要因もあるが、韓国のおける近代地理学が愛国啓蒙の手段として出発したことと大いに関わっているからである。参考文献張志淵(1907)『大韓新地志』、廣學書舗。具滋赫(1993)『張志淵』、東亜日報社。カン・スンドル(2005)「愛国啓蒙期知識人の地理学理解:1905~1910年の學報を中心に」、大韓地理学会誌、40-6、595-612。金基植(1994)『韓・日合併を前後した韓国地理教科書に表れた国家意識の分析』、韓国教員大学修士論文。
著者
鈴木 みずえ 磯和 勅子 金森 雅夫
出版者
医学書院
雑誌
看護研究 (ISSN:00228370)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.275-289, 2006-08-01

緒 言 音楽は人々の心を静穏化させ情動的反応を引き起こすことによる癒しの効果や身体活動を促進する効果があり,人々の健康の維持・増進に用いられてきた。欧米では19世紀から臨床的報告がみられ,20世紀後半から音楽が治療として用いられるようになった。今や臓器移植・遺伝子治療などの先端医療技術は,従来の疾病構造さえも変革しようとしている。しかし,人々の健康あるいは病気の課題は先端医療だけで解決されるものではなく,病気や治療に伴うさまざまな苦しみや痛みに対する全人的なケア,本来の自然治癒力・生命力を回復させるホリスティックなアプローチが必要とされている。近年,欧米を中心に,音楽を健康回復および健康増進だけではなく,病気や障害の治療に使用するようになっている。その適応範囲は,リラクセーション,ストレスマネジメント,リハビリテーションなど情動反応やリズム刺激などを活用した広範囲に及んでいる。 老年看護の実践場面でも音楽は高齢者の生活の質を高めるアプローチとしてケアに取り入れられている。デイケア,デイサービス,高齢者施設において音楽は生活環境の一部として欠かせないものである。落ち着きのない認知症高齢者も集中して歌や合唱のレクリエーションに参加したり,コミュニケーション障害のある認知症高齢者が歌を通して他者と交流する場面も認められている。音楽療法のほかにも運動,動物,回想などのレクリエーション的アプローチを用いた看護介入は,アクティビティケアと呼ばれて実践に盛んに取り入れられている。そのなかでも音楽は,わが国の高齢者にとっては壮青年期における重要な娯楽であり,共通した情動反応を引き出しやすく,欧米ではアクティビティケアのなかでは最も歴史が長く,研究報告がなされている。今後,わが国でも認知症高齢者に対して介護予防や介護負担軽減を目的した音楽療法を看護介入として活用することは有効であろう。
著者
今井 佐金吾
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.27, no.10, pp.611-615, 1978 (Released:2010-02-16)
参考文献数
11
被引用文献数
3 4

有機物試料を低温灰化する際に,これに含まれる元素群の揮発損失について放射化分析法により検討した.メンブラン・フィルター又は天然セルロースろ紙上に 25種の元素を各々100μgずつ個別に添加し,更に灰分増量剤及び共存物質として硝酸マグネシウム又は塩化鉄(III)を2mg添加した試料, 更に高揮発性の塩化アンモニウム,又は低揮発性の塩化カドミムを 0.1 mmol程度共存させた試料を調製した.これらの試料はすべて2試料1組として調製し,その一つを低温灰化し,もう一方は対照用試料として,それぞれ中性子放射化分析した.その結果,硝酸マグネシウムを灰分増量剤とした場合にヒ素(III),セレン(IV),セレン(VI)が74%から89%の間の回収量を示し,又,塩化鉄(III)を灰分増量剤とした場合,又は,これに塩化カリウムを共存させた場合,ヒ素(III),ヒ素(V),カルシウム,セレン(IV),セレン(VI)が55%から94%であった.この他の元素群については95%以上の回収率が得られた.塩化鉄(III)に塩化アンモニウムが共存する場合は,一般に回収率が若干低下する傾向が認められた.炭素微粉末を主成分とし,比較的多量の鉄を含む大気浮遊じんの灰化を想定して,これに類似の系として塩化鉄(III)に黒鉛粉末を共存させた試料では塩化鉄(III)のみの場合と,その回収率に有意な差は認められなかった.
著者
一棟 宏子/萩原 美智子/中野 迪代/若井 希水子/金 貞仁/崔 在順 イチムネ ヒロコ/ハギワラ ミチコ/ナカノ ミチヨ/ワカイ キミコ/キム ジュンギン/チョイ ジェソン ICHIMUNE Hiroko/HAGIWARA Michiko/NAKANO Michiyo/WAKAI Kimiko/KIM Jungin/CHOI Jaesoon
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
vol.45, pp.171-186, 2008-01-31

本研究は、分譲マンションの管理組合活動への参加困難層の負担を軽減しつつ組合の弱体化に対する支援と、建物と居住環境の管理レベルを一定に維持するしくみの検討を目指して、2005年度から取り組んでいる。その一環として、本報では2006年11月に京滋阪奈地区の管理組合(築30年以内)理事長を対象に実施したアンケート調査(有効回収59件、41.3%)とヒアリング事例調査(5件)による組合活動の実態を報告する。 アンケート調査の結果をみると、新築当初からの住民比率は、10年を超えた時点で新規居住者との入れ替えが急速に進むマンションとそうでないものに分かれる。賃貸住宅や空き家・事務所を抱えるマンションも多く、中には欠陥が疑われる工事の発見とその対応など、管理組合がかかえる問題は多様である。その中で、(1)築年数が古いマンションほど理事長は高齢化する傾向にあり、役員の世代交代をどのように進めていくか、(2)危機管理について理事長が居住者の基本的情報を把握していない事例が多く、どのようにリスク管理を進めていくか等が課題とされる。また、聞き取り調査から、(3)組合運営のための情報収集や支援に、専門家やNPO、他のマンションとの交流が大きな役割を果たしており、(4)当初設定された管理費用の見直しを行った事例も多い。マンション管理には経営的視点、技術的視点、危機管理とコミュニティ育成の視点が重要といえる。さらに、これまでの研究成果とあわせて検討し、改めて日本における分譲マンションの今後の課題を整理した。
著者
大須賀 洋祐 鄭 松伊 金 泰浩 大久保 善郎 金 ウンビ 田中 喜代次
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.407-418, 2015-08-01 (Released:2015-07-27)
参考文献数
38
被引用文献数
4 1

The purpose of this study was to examine the effects of an exercise intervention for older married couples on exercise adherence and physical fitness. Thirty-six older married couples and 61 older adults participated in the study as couple and non-couple groups (CG, NCG, respectively). Participants attended an exercise class once a week and performed a home-based exercise program consisting of walking and strength exercise over eight weeks. Exercise adherence was assessed by the rate of non-absentee, walking habits (≥ 2 times/week), and strength exercise habits (≥ 6 items*2 sets/week). Physical fitness was assessed by the Senior Fitness Tests. Logistic regression analyses were conducted to obtain the CG’s odds ratios (ORs) and 95% confidence interval (CI) for non-absentee, walking habits, and strength exercise habits (reference: NCG). Analyses of covariance were used to examine the statistical difference in the degree of change (⊿) for physical fitness between CG and NCG. CG had significantly higher ORs for non-absentee and walking habits compared with NCG but there was no significant difference in the rate of strength exercise habits between the two groups. In regards to ⊿ for physical fitness, significantly higher ⊿ for upper extremity strength was observed in CG than in NCG, while there were no significant differences in ⊿ for other physical fitness items between the two groups. These results suggest that an exercise intervention for older married couples would be more useful to maintain higher participation in exercise program and walking and improving upper extremity strength.