著者
鈴木 秀人
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第69回(2018) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.83_1, 2018 (Released:2019-01-18)

暴力的行為(体罰やしごき)が繰り返されてきた運動部の過去を振り返ると、それを行使する側の問題を問う必要があることは勿論であるが、結果的にそれを長期間にわたって許してきた側の問題を問うことも必要ではないか、というのが本研究の根底にある問題意識である。 暴力的行為を許してきた側を問う視点として発表者が着目してきたのは、かかる行為とその行使の基盤となっている監督と選手間や上級生と下級生間の封建的な上下関係の起源を旧軍隊の行動様式に求める「軍隊起源説」という俗説である。 発表では、当の軍隊が消滅してしまった後々まで、軍隊に起源があるとされる行動様式がなぜ運動部の中で継承されたのかを説明できないという弱点を持つにもかかわらず、我が国の多くの人々がこの説を共有してきた理由を明らかにし、暴力的行為を許容してきた側に見られる問題を新たに提起する。
著者
鈴木 秀人
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.28_3-29, 2017

<p> 私は体育科教育学が専門であり、学生への講義や実技指導とともに、現場の先生方とよりよい体育授業の在り方を検討している。そうした立場としては、歴史研究からの貢献を、例えば「体育理論」の授業で歴史研究の成果を活用できるというように矮小化したくはない。今回は体育授業の大半を占める実技の実践に焦点を当てて、目の前の授業を改善していく上で歴史研究を活かしてきたと考える私のこれまでの取り組みをいくつか紹介したい。教育現場では日々多くの授業実践がなされているが、「たとえ、ある特定の立場に立ってプログラムをつくろうとする意図的な企てがなかったとしても、それぞれのプログラムは、体育についての何らかの信念や思想を暗黙の裡に反映させている」というシーデントップの見解は、かかる取り組みの出発点となったものである。この見解をもとに、マニュアル的な指導法の習得に走りがちになる授業づくりの現実に対して向き合い、さらに授業の具体を考えていこうとする時に公式ルールを絶対視しないルールの工夫を導く手がかりを得たり、授業で常にもめごととなる審判の在り方について検討する時にも、歴史研究は重要な示唆を与えてくれてきたのである。</p>
著者
遠藤 健司 康 玉鵬 鈴木 秀和 小林 浩人 田中 英俊 山本 謙吾
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.129-133, 2008 (Released:2008-12-22)
参考文献数
13
被引用文献数
2

腰椎椎間板ヘルニア患者の全脊柱アライメントを計測し,体幹前傾傾向のある群と前傾傾向のない群を比較検討した.全体の約50%で体幹前傾傾向が存在していた.前傾群では,前屈制限,下肢伸展挙上制限が強く,JOAスコアは低値で,約半数に側弯を合併していた.矢状面アライメントは,前弯の減少,骨盤の後傾が顕著であった.体幹前傾を認める腰椎椎間板ヘルニアは重症例が多く,腰椎―仙椎は矢状面で直線化しており,腰椎骨盤周囲の筋緊張が強いことが示唆された.
著者
東谷 仁志 鈴木 秀人
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
茨城講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.283-284, 2003

A steady market extension of the surface modification with the diamond like carbon continues. The application of DLC has been limited to fields such as molds and tools, and the application example of the machine part increases so far, too. In this research, an actual application example with the car product of the DLC coating and the electrical machinery and apparatus, etc. is extracted by the case study, the strategy for the application expansion in the machine part of the DLC coating in the future is examined, and the market growth of the DLC coating in the future is analyzed.
著者
鈴木 秀人
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.51-62, 2013-09-30 (Released:2016-08-01)
参考文献数
15

一般的には、現在行われている体育授業の直接的な起源は、19世紀後半に成立した「体操」の授業と考えられている。しかしながらここでは、英国のパブリック・スクールで課外活動として行われていたスポーツを、現在の体育授業の1つのルーツと措定する。なぜなら、現在の体育カリキュラムにおける内容の大半は「体操」ではなく「スポーツ」であり、かつ英国パブリック・スクールにおいて、それらのスポーツは単なる身体の規律訓練を超えた教育的な価値を見出されたからである。 本論文の目的は、英国パブリック・スクールに焦点を当てながら、体育科教育の過去を把握し、その過去に規定されていると思われる体育科教育の現在を描き出し、さらには、その超克を志向するという方向で体育科教育の未来を展望することである。 スポーツ活動が教育として承認されていく過程は、3つの段階にわけることができる。まず最初に、教師たちがスポーツを抑圧したり禁止したりした18世紀後半から19 世紀初頭の時期があった。次に、教師たちが校内の規律を維持するために、生徒たちの協力を得ることをねらってスポーツを公的に承認した19 世紀初めから半ば頃までの時期があった。そして第3番めに、教師たちが生徒の人格形成に役立つというスポーツの教育的な価値ゆえに、スポーツを積極的に奨励するに至った19 世紀半ば以降の時期があったのである。 最も重要な段階は第2番めの段階である。この時期のスポーツ活動の特徴は、教師たちにとっては社会統制の1つの手段であったスポーツも、生徒たちにとっては純粋に「遊び(プレイ)」であったに違いないということにある。我々は、教育としてのスポーツの出発点が、生徒たちの自発性によって導かれたというこの事実に注意を払うべきである。 このような体育科教育の歴史を振り返ると、これまでの体育科教育は運動を行う側にとっての根本的な意味、そこにある面白さを十分に考えてはこなかったことに気がつく。そういった視点からすると、運動のプレイとしての要素を重視する「楽しい体育」という体育授業論の可能性は、体育科教育の未来にとって1つの方向性を示しうる。
著者
南 篤志 劉 成偉 田上 紘一 松本 知之 Jens Christian Frisvad 鈴木 秀幸 石川 淳 五味 勝也 及川 英秋
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 57 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.Oral34, 2015 (Released:2018-10-01)

ペニトレムA(1)は、Penicillium crustosumなどの糸状菌から単離されたインドールジテルペンである(図1)1。同菌は、酸化度や修飾様式が異なる構造類縁体{ペニトレムB-F(2-6)}に加えてパスパリン(7)2、PC-M5(8)、PC-M4(9)なども生産する3, 4。1は、パキシリン(10)やアフラトレム、ロリトレムなどの多くのインドールジテルペンと同様に7をコア骨格とする一方、インドール環上にある4-6縮環骨格や8員環エーテルなど他のインドールジテルペンではみられない特徴的な構造を有する(図1)。その特異な化学構造は有機合成化学者からも注目され、4については全合成も達成されている5。一方、その生合成については、標識化合物の投与実験などから1-6が生合成後期における酸化的修飾によって構築されると推定されていたものの6、骨格構築機構については不明であった。最近我々は、麹菌異種発現系を用いることで17種の遺伝子が関与するペニトレム生合成マシナリーの解明に成功し、特徴的な骨格構築機構を含む生合成経路の解明に成功した7。本討論会ではその詳細を報告するとともに、我々が改良してきた麹菌異種発現の有用性についても議論したい。ペニトレム生合成遺伝子クラスターの同定 ペニトレム生合成マシナリーの解明へ向け、生合成遺伝子の探索を試みた。予想生合成中間体である7の生合成に関与する遺伝子(paxGCMB)8を指標としてペニトレム生産菌(P. simplicissimum9)のドラフトゲノムデータを精査したところ、ptmGCMBを含む15個の読み枠から構成される生合成遺伝子クラスター(cluster 1:図2)を見いだした。しかしながら、酸化的な修飾反応を触媒する酵素遺伝子が明らかに不足していたため、遺伝子クラスターの分断が示唆された。分断した遺伝子クラスターを同定するためにRNA-Seqによる発現解析を生産/非生産条件で行ったところ、4種の酸化酵素遺伝子と1種のプレニル基転移酵素を含む遺伝子クラスター(cluster 2:図2)を新たに見いだした。1と同じ分散型生合成遺伝子クラスターはfusicoccin10、austinol11などで報告されているが、いずれも類縁化合物の相同遺伝子もしくは経路特異的な遺伝子を指標としてゲノムデータから探索されたものである。これに対して本結果は、植物由来の天然物と同様、発現解析が糸状菌天然物における分散型遺伝子クラスターの同定において有効であることを示す結果であると考えている。 麹菌異種発現系を利用したペニトレム生合成マシナリーの解明 最近我々は麹菌を宿主とした異種発現システムに着目し、代表的な糸状菌由来二次代謝産物であるインドールジテルペン7,8,12、テルペン13、ポリケタイド14の生合成マシナリーの再構築と物質生産を行ってきた。本手法の特徴は、①導入した遺伝子の確かな機能発現、②生合成経路の同定と物(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
諸田 智克 はやぶさ2ONCチーム 杉田 精司 澤田 弘崇 本田 理恵 亀田 真吾 山田 学 本田 親寿 鈴木 秀彦 安藤 滉祐
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊星人 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.48-53, 2015

はやぶさ2に搭載された光学航法カメラ(ONC:Optical Navigation Camera)はその名の通り探査機のナビゲーションの役目を担うカメラであるが,科学観測においても中心的な役割を果たす.本稿では特に小惑星の力学進化過程の復元に向けた,ONC地形観測の戦略について紹介する.
著者
田宮 基裕 松井 薫 河原 邦光 楠 洋子 笹田 真滋 小林 政司 松浦 由佳 森下 直子 上原 暢子 鈴木 秀和 岡本 紀雄 平島 智徳
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.257-261, 2010
参考文献数
11
被引用文献数
1

背景.肺放線菌症は時に肺癌との鑑別が困難な場合があり,診断に苦慮する疾患である.症例.症例は65歳,男性.血痰を主訴に近医受診,胸部X線にて左上葉の腫瘤陰影を指摘され当院へ紹介.腫瘤陰影はFDG-PETでも強い集積を認め,肺癌が疑われた.気管支鏡検査を施行し,autofluorescence imaging(AFI)でマゼンダの色調を呈する慢性肉芽と思われる気道病変を左B^3bに認めた.同部位の擦過細胞診にて放線菌が検出され肺放線菌症と診断し,クラリスロマイシン,アンピシリンを投与し腫瘤陰影は縮小した.約4ヵ月後,再度気管支鏡検査を施行したところ,同部位の気道病変は消失し,AFIでも粘膜所見は正常であった.結論.AFIにて肺放線菌症の慢性肉芽を観察した報告はなく,治療効果判定に有用である可能性がある.
著者
永田 基樹 藤原 直哉 西川 功 田中 剛平 鈴木 秀幸 合原 一幸
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.295-299, 2013-05-01 (Released:2013-09-06)
参考文献数
16

東日本大震災以降,電力の安定供給は重要な課題として注目を集めている.安定性の理解のためには数理モデルの解析が必要であるが,詳細なモデルは数理的な解析が容易ではないため,現象の本質を抽出した簡潔なモデルが必要である.本研究では,東日本の送電網の接続関係を用いて,周波数同期のダイナミクスを位相モデルによって記述した.本モデルにおいて,安定供給のためには同期した定常状態の実現が必要であるが,そのための結合強度の閾値を求めた.また,周波数同期に寄与している送電線を特定し,同期への寄与の大きさについて考察した.
著者
福永 寛 櫻木 悟 藤原 敬士 藤田 慎平 山田 大介 鈴木 秀行 宮地 剛 川本 健治 山本 和彦 堀崎 孝松 田中屋 真智子 片山 祐介
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.S2_154-S2_158, 2011

Kounis症候群とはアレルギー反応に伴い急性冠症候群をきたす症候群であり, 冠攣縮に合併したタイプ1とプラーク破裂に伴う血栓形成に起因するタイプ2に分類される. 今回, われわれはKounis症候群により心肺停止をきたした2症例を経験したので報告する.<BR>症例1: 76歳, 男性. 腰部脊中柱管狭窄症の術中にセフォペラゾンを投与したところ, アナフィラキシーショックを発症した. 下壁誘導にてST上昇を認めたため急性冠症候群と診断, 緊急冠動脈造影にて右冠動脈#1に血栓および#4AVに完全閉塞を認めた. 血栓吸引療法のみで再疎通が得られた.<BR>症例2: 61歳, 男性. 起床時より四肢・体幹に蕁麻疹を認め, その後, 心肺停止となり, 当院へ搬送された. 心肺蘇生術にて心拍再開したが, その後, 心室頻拍が頻発, 急性冠症候群を疑い緊急冠動脈造影を施行した. 冠動脈に有意狭窄は認めなかったが, 心電図上胸部誘導で一時的にST上昇を認めたため, 左前下行枝の冠攣縮と診断した.
著者
渡邊 香 鈴木 秀和
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集
巻号頁・発行日
vol.27, pp.44-44, 2011

当研究室が出場している中型リーグは,ロボットが完全に自律しており,カメラなどのセンサのみで環境を認識し,判断・行動している.RoboCupでは年々自己位置同定技術の重要性が高まっており,ボールをゴールに運ぶだけでなく,フリーキックやパスなどの戦術的な面でも注目されている.介護・福祉ロボットやホームロボットなど人間と共生するロボットは人と同様の環境認識・行動判断能力が求められている.自己位置同定技術はこれらのロボットへの応用も期待できる.RoboCupにおけるサッカーフィールド環境では様々なセンサを用いることで,自己位置同定に必要な指標をいくつか得ることができる.これらの指標を大きく二つに分類すると,エンコーダによる移動情報や電子コンパスなどから得られる内部情報と,カメラ画像などから得られる外部(周囲)情報に分けられる.本報告では,これらの情報を用いて自己位置同定の検証を行う.
著者
米本 拓馬 西尾 航 鈴木 秀和 松本 幸正
雑誌
第79回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.1, pp.407-408, 2017-03-16

スマートフォンの普及に伴い,バスの利便性を向上させるために様々なバスナビゲーションアプリが作成されているなかでスマートフォンのGPS機能やバスロケーションシステムが提供するバスの運行情報を利用することで,個々のユーザの歩行速度やバスの遅延を考慮したリアルタイムナビゲーションシステムが提案されてきた.しかし,各地方自治体が提供しているデータ形式が統一されていないため,適宜アプリケーションを設計する必要がある.また,従来のシステムはバスに特化しているため,他の公共交通機関との乗換えには対応していないといった課題がある.そこで本研究ではGoogleが提供する公共交通データの世界標準フォーマットであるGTFS(General Transit Feed Specifi-cation)を用いることで,複数のバス事業者に対応可能なバス停ナビゲーションシステムについて提案する.
著者
井上 俊 竹内 康浩 竹内 寿和子 山田 信也 鈴木 秀吉 松下 敏夫 宮垣 仁実 前田 勝義 松本 忠雄
出版者
社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.73-84, 1970-03-20 (Released:2008-04-14)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

In 1967 there occurred many polyneuropathy cases in household vinyl sandal manufacturers at F-disrict in Mie prefecture. In this district among 3, 210 people (788 families) most of them engaged in vinyl sandal manufacture (as of Oct, 1967). Ninety three patients suffering from polyneuropathy were found by our survey. Out of these 93 patients those suffering from sensory polyneuropathy were 53, from sensorimotor polyneuropathy 32 and from sensorimotor polyneuropathy with muscle atrophy 8 (cf. Tab. 1). The work conditions and the factors contributing to the intoxication's were investigated, and the method of prevention was suggested. The results are as follows. (1) The patients occurred in 1961 at first and the number of them increased rapidly from 1965 and showed a peak in 1967 (cf. Tab. 2). This increase was in parallel with the amount of adhesives containing "n-Hexane" used in this district (cf. Tab. 3, 4). Outbreak of many patients in winter and spring may due to poor ventilation in winter. (2) The causative substance was considered to be "n-Hexane". But "n-Hexane" on sale contains 2-methylpentane, 3-methylpentane, n-hexane, and methylcyclopentane, and the quantity of n-hexane in "n-Hexane" is about 60% (cf. Fig. 6). (3) The work conditions of the vinyl sandal manufacturers among whom many cases of "n-Hexane" intoxication occurred were as follows. 1) The work was primitive household manufacture and living rooms were used as the working place (cf. Fig. 1, 3). 2) As adhesives containing a large quantity of highly volatile "n-Hexane" were used in narrow rooms, the concentration of "n-Hexane" vapor became high and reached about 500-2500 ppm in the work room. The vapor concentrations were especially high in winter because of closed windows. (cf. Fig. 7, 8, 9). 3) Since the workers (subcontractors) were paid by the number of manufacturedgoods, their working period was unrestrictedly long and some worked for 14 hours per day (cf. Fig. 10). 4) The work intensity was high and some starched 3, 000 times per day. It seems that the more the times of starching, the heavier the degree of symptoms (cf. Fig. 11). 5) As the adhesives were used with hand brushes, the vapor concentrations were high at the site near the noses of the workers, so that they inhaled the organic solvent vapor at high concentrations. 6) As the organic solvents vapor ignite easily, the work rooms were not heated and they were working at quite low temperatures in winter (cf. Tab. 5). 7) The workers were not instructed as to the toxicity and the handling method of the organic solvents. 8) Usual health supervision was not performed at all. (4) The chief cause of the occurrence of intoxications was that a large amount of the organic solvents was used under very poor work conditions as above mentioned combined with neglected supervision. Moreover, that which gave impetus to the occurrence of the intoxication was that the easily drying adhesives containing a large quantity of "n-Hexane" were used in order to increase the number of the manufactured goods, because the pay per one of the goods was not increased for these several years in spite of the recent inflation. (5) As the urgent measure for the prevention, though instruction on the toxicity and the handling method of the organic solvents, improvement of the ventilation and the working methods, guidance by the health center and so on were made, these are only certain aspects of measures for the prevention. The danger of the intoxication may not be perfectly removed without the fundamental reform in the work conditions.
著者
幸田 圭史 高橋 一昭 更科 広実 斉藤 典男 新井 竜夫 布村 正夫 谷山 新次 鈴木 秀 奥井 勝二 古山 信明 樋口 道雄
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.1466-1470, 1985

非ポリポーシス性遺伝性大腸癌の一型として分類されているcancer family syndromeは, Lynch (1973)らによりその診断基準が示されたが未だ明確なものではない.今回cancer family syndromeを疑わせる異時性3重複癌の症例を経験した.症例は60歳の女性で, 40歳時にS状結腸癌,直腸癌に罹患. 57歳時に子宮内膜癌に罹患.今回(60歳)は胆嚢癌,横行結腸癌と診断され昭和59年7月開腹術を行ったが多数の腹腔内播種を認め根治術を施行し得ず閉腹した.その組織型は全て腺癌であった.また本症例の三男は20歳時に大腺癌の為死亡し,母親は胃癌の為53歳時に死亡している.本症例の大腸癌はポリポーシスの形をとっておらず,子宮癌は子宮体部に発生したものであった.これらは, Lynchらの述べているcancer family syndromeの特徴の大部分を満たしているが,広い家族歴を調査できなかった為,常染色体優性遺伝のことは証明できず確定診断にはいたらなかった.家族に対する癌の二次的予防の意味においてcancer family syndromeを診断することは意義があり,今後明確な診断基準の作成が必要と考えられた.また,診断基準の作成の為に免疫学的研究の導入が必須と思われた.