著者
福島 秀晃 三浦 雄一郎 布谷 美樹 田中 伸幸 山本 栄里 鈴木 俊明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0635, 2005 (Released:2005-04-27)

【はじめに】我々は、肩関節疾患患者の肩甲上腕リズムの乱れに関して、肩関節屈曲に伴い肩甲骨には力学的に前傾方向へのモーメントが加わり、これを制動できない場合は、肩甲骨の安定した円滑な上方回旋に支障が生ずるのではないかと考えている。そこで、第44回近畿理学療法学術集会にて、屈曲30°位において僧帽筋下部線維は上部・中部線維と比較して有意に筋活動が増大したことから、この前傾モーメントを制動するには解剖学的に僧帽筋下部線維が有効であると報告した。このことから、上肢の運動に伴い肩甲骨には力学的なモーメントが生じ、また運動方向の違いによって肩甲骨にかかるモーメントも異なることが示唆された。今回、肩関節外転運動に着目し、肩関節屈曲運動と比較して肩甲骨に生じるモーメントが異なると仮定し、肩関節初期屈曲・外転角度における僧帽筋の肩甲骨安定化機能を筋電図学的に比較・検証したので報告する。【対象と方法】対象は健常男性7名(平均年齢28.7±4.2歳)、両上肢(14肢)とした。運動課題は端座位姿勢での上肢下垂位、屈曲30°位および外転30°位をそれぞれ5秒間保持し、それを3回施行した。測定筋は僧帽筋上部・中部・下部線維とし筋電計myosystem1200(Noraxon社製)を用いて測定した。分析方法は下垂位の筋積分値を基準に屈曲30°位と外転30°位の筋積分値相対値を算出し、各線維ごとに対応のあるt検定を行った。なお、対象者には本研究の目的・方法を説明し、了解を得た。【結果と考察】僧帽筋上部・中部線維の筋積分値相対値は、屈曲位と比較して外転位において有意に増大した(p<0.01)。一方、下部線維の筋積分値相対値は屈曲位と比較して外転位において減少傾向となった。肩甲上腕リズムでは屈曲60°、外転30°までは肩甲骨の運動なしに肩甲上腕関節固有の運動でなされるsetting phaseの時期である。本研究における運動課題もsetting phaseの時期であり、この時期での僧帽筋の活動は肩甲骨と体幹を固定するための活動であると考える。山本らは正常な肩甲骨の動きは胸鎖関節を支点として三次元的に制動方向が導かれることとなるが、その動的な制御は肩甲骨と胸郭を連結している筋群のバランスと肩鎖関節の安定性により決定されるとしている。僧帽筋上部・中部線維については解剖学的に鎖骨外側1/3・肩峰・肩甲棘上縁に付着しており上肢の外転運動に伴う肩甲骨の下方回旋モーメントへの制御に機能したと考える。一方、下部線維については解剖学的に肩甲棘内側下部(肩甲棘三角)に付着しており上肢の屈曲運動に伴う肩甲骨の前傾モーメントへの制御により機能したと考える。以上より、上肢の運動方向が異なれば肩甲骨に生じる力学的なモーメントも異なり、そのモーメントに応じて選択的に僧帽筋の各線維がより活動し肩甲骨を制御することが示唆された。
著者
鈴木 洋
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.47-51, 2011-02-20 (Released:2011-05-20)
参考文献数
11

インクなど(含色材流体)の塗布プロセスを考えるうえで,流体の流動特性について知ることは重要である。インクの多くは色素微粒子が溶媒(分散媒)に懸濁された状態(サスペンジョン)であり,一般に通常知られている水や空気のような単純な粘度特性を示さない。乾式である場合にも同様である。また媒体によっては粘弾性という特殊な性質を示す場合があり,この場合にはより複雑な流動特性が発現する。ここではこれら特殊な流体を取り扱うレオロジーに基づき,かかる複雑流体の基礎的な流動特性について解説する。
著者
鈴木 莉子 小西 幹人 池田 順哉 林 大地 深井 颯 菅原 優 町井 湧介 山浦 佑介
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回全国大会(2020)
巻号頁・発行日
pp.3Q5GS901, 2020 (Released:2020-06-19)

ドキュメントに含まれる画像はテキストの内容理解を助ける役割を持つが、画像とテキストの間に整合性が無い場合は、読み手の理解を妨げる恐れがある。ドキュメント作成時の人的ミスやデータの改ざん等により、画像に対してテキストの意味が部分的に変わってしまう場合は、作成者が矛盾点に気付きにくいため、意図せずドキュメントの品質を落としてしまう可能性もある。本研究では、マルチモーダル深層学習を用いて、画像とテキストの整合性判定を行い、画像の物体領域とテキストの単語の関連性を学習するCross Attentionにより、画像とテキストの矛盾点を可視化するモデルを構築する。画像とキャプションが対になったデータセットを元に、キャプションの意味を部分的に変更したデータセットを作成し、提案モデルの有効性を検証すると共に、Cross Attentionにより可視化される画像とテキストの対応関係について考察する。
著者
山内 健生 鈴木 大
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.345-349, 2008
被引用文献数
1 5

ヌマエラビルは日本と中国に分布し,淡水性のカメ類を宿主とする蛭である.本種の日本国内における記録は乏しく,その分布域はよくわかっていなかった.そこで,本州,四国,九州においてヌマエラビルの分布状況を調査した.その結果,本種が本州(石川県以南)と四国(北部)に分布することを確認した.本種の宿主はクサガメとイシガメであった.大部分のヌマエラビルは宿主の背甲と腹甲の間の柔らかい皮膚に付着していたが,眼窩と背甲に付着していた個体も確認された.宿主の背甲上には,しばしば,本種の卵塊が付着していた.
著者
松田 智行 上岡 裕美子 伊藤 文香 鈴木 孝治 富岡 実穂 木下 由美子
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.449-459, 2011
参考文献数
14
被引用文献数
1

【目的】地震を想定した災害時要援護者(以下,要援護者)に対する避難支援の地域ケアシステムを構築することを目的に,移動に障害を有する要援護者の避難訓練を報告し,避難支援に対する理学療法士の必要性を提言する。また,避難訓練の事例集(以下,事例集)を作成し,事例集が地域の保健医療専門職にどのような点で有用であるのかを検討する。【方法】要援護者5名に対して,研究者らが独自に作成した調査票と実施手順をもとに避難訓練を実施した。さらに,茨城県内の市町村と保健所,訪問看護ステーションの149名に,5事例の事例集を配布し,郵送にて利用方法に関する質問紙調査を行った。【結果】5事例のうち,自力での避難が困難な2事例について詳細な報告を行う。2事例に対して,停電を考慮した避難方法を指導し,屋外への避難訓練が実施できた。質問紙調査は,22件(回答率14.9%)の回答があり,事例集の主な活用方法は,要援護者とその家族,専門職種への避難支援教育の教材であった。【結論】地域ケアシステム構築に向けて,避難を可能にするために地震発生前からの理学療法士の関与は重要である。さらに,事例集は,避難支援教育の教材として有用である可能性が示された。
著者
吉岡 芳泰 谷埜 予士次 鈴木 俊明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.555-559, 2014 (Released:2014-09-25)
参考文献数
19

〔目的〕膝伸展直後に最大努力で膝屈曲を行わせ,その際のハムストリングスの筋活動と膝屈曲トルクについて検討した.〔対象〕健常男子学生9名とした.〔方法〕角速度60°/secで,膝屈曲30°から80°までの膝屈曲を対象者の最大努力で行なわせ,その直前に収縮様態と強度,および角速度を変化させた膝伸展課題を行った.〔結果〕各膝伸展課題直後の筋電図の平均振幅値は内側ハムストリングスで有意に減少し,腓腹筋は有意に増加した.また,膝屈曲ピークトルクに有意差はないが,その発揮角度は有意に低値となった.〔結語〕ハムストリングスの筋収縮を促したい場合は,膝屈曲のみを行った方が良いということが示された.
著者
鈴木 尚子
出版者
徳島大学大学開放実践センター
雑誌
徳島大学大学開放実践センター紀要 (ISSN:09158685)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.1-23, 2019-03

本稿は,米国イリノイ州にある公共図書館地区の一つが介護施設で実施している認知症高齢者を主たる対象にした教育プログラムを取り上げ,現地調査及び資料分析を通じてその特徴と課題を明らかにすることを目的とする。米国では,今後数十年間に急増する高齢者を見据え,様々な分野において高齢化に関わる議論や取組が存在する。とりわけ認知症の問題は,当事者だけでなく,それにまつわる社会コストや介護者への負担の大きさ等から深刻な影響が懸念されており,図書館もその対策に積極的に関わっている。米国の公共図書館の中には,認知症者の症状に見合った図書館資料を慎重に吟味し,それらを効果的に活用した教育プログラムの提供により,認知症高齢者の認知機能や社交性,介護者との関係性,介護者の認知症者に対する意識等に肯定的変容をもたらしうる事例があることが判明した。今後の課題として,より良い成果に向けたプログラム内容・方法の再検討,実施者の持つべき専門性に関する熟慮,認知症者にとっての学習及び図書館資料の持つ意味の概念整理と学術的追究,図書館の独自性と本事業に関わる意義の整理等があることが抽出された。米国よりはるかに高齢化の進行する我が国では,既に図書館内で認知症をめぐる問題が顕在化しており,米国のようにきめ細かなプログラムの開発やその実践は容易ではない。とはいえ,図書館資料の注意深い吟味とその効果的活用,認知症事業へのボランティアの積極的活用等,対応が考えられ得るものもある。諸外国の事例にも学びながら,多様な人々を包摂する社会の実現に向け,図書館の持つ潜在機能をより精緻に追究する姿勢が望まれる。
著者
鈴木 建治
出版者
北海道大学大学院文学研究科北方研究教育センター
雑誌
北方人文研究 (ISSN:1882773X)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.29-44, 2010-03-31

It is thought that the Soviet archaeology which continued from 1917 to 1991 is divided into two features. One is the research of local cultural history and another is the research of human social history. In the Soviet archaeology, the most important point is that the historical view of Marcus Leninism dogma existed until the collapse of the Soviet Union. The examination of the history of the Soviet archaeology to which "archaeology" and "national ideology" related serves as the cause which archaeologist itself recognizes about the danger which exists in archaeology. In this paper, the Soviet archaeology in the 1920s and 1930s is divided into three periods: 1) from after a revolution to 1928, 2) 1929-1933, 3) after 1934. And I examine the formation process of Marxism-Leninism in the Soviet archaeology.

1 0 0 0 OA 朝鮮紀聞

著者
鈴木信仁 著
出版者
博文館
巻号頁・発行日
1894
著者
鈴木 明哲
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.26_2, 2017 (Released:2018-02-15)

現代におけるオリンピックやスポーツの教育的価値、そして体育やスポーツによる人格形成は揺るぎない価値として広く世界に流布されており、もはやそこに懐疑を挟むことはタブーである。 しかし、私たちはこれらの不変的な価値にあまりにも縛られすぎていないか。これらの不変的な価値によって、果たして多くの人々が幸福を感じ、そしてまたスポーツそのものが豊かに発展しているのであろうか。そもそもこれらの不変的な価値はどのようにして誕生し、世界に広まっていったのか。歴史的に検証し、現代との「ずれ」を指摘することは、スポーツに「託せないこと」を見出す手立てとなり得る。 本報告では、近代スポーツの功罪を、スポーツ教育と近代オリンピックという二つの事例から考えてみたい。近代以降、スポーツの教育的価値が形成され、しかも公教育システムとオリンピックムーブメントという二つの巨大な力を得て全世界に広まっていった。この教育的価値がいかに現代との「ずれ」を生じているのかを「罪」とし、逆に何が「功」として拾い上げられ、捉え直されるべきであるのか、体育・スポーツ史の立場から提案してみたい。
著者
鈴木 典子
出版者
渋沢栄一記念財団
雑誌
青淵 (ISSN:09123210)
巻号頁・発行日
no.855, pp.35-37, 2020-06
著者
鈴木 宏一 平田 博明 猪飼 隆 坂田 五常
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.p315-323, 1991

Quizalofop-ethyl, ethyl 2-[4-(6-chloro-2-quinoxalinyloxy)phenoxy] propionate is a selective grass herbicide developed by Nissan Chemical Industries, Ltd. Quizalofop-ethyl possesses a wide herbicidal spectrum for grass weeds with a quick action at low application rates by foliage applications. It shows good safety for non-gramineous crops. A research for a grass killer herbicide, focussed on heterocyclicoxy phenoxy proionic acid, began in 1978. During investigations on the various condensed heterocyclic moieties, the quinoxalinyloxy phenoxy propanoic acid derivatives were found to have a high potential for grass herbicides. Through the optimization of derivertives, the title compound was selected as a candidate for development. In field trials conducted in major producing areas of soybeans, cotton, sugar beet and other broad leaf crops, quizaolfop-ethyl demonstrated sufficient control at 0.5-1.5 g a.i./a for annual grass species and at 1.25-2.5 g a.i./a for perennial ones. Quizalofop-ethyl was translocated from treated leaves to meristem tissues of grass weeds within a day and attacks these parts, followed by causing necrosis. Quizalofop, which is the metabolite of quizalofop-ethyl, was proved to be a potent inhibitor of fatty acids synthesis through acetyl-CoA carboxylase inhibition. A main metabolic pathway of quizalofop-ethyl was the hydrolysis to quizalofop in plants, soil and mammals. Following hydrolysis, cleavages of ester bonds, hydroxylations and conjugation of quizalofop occurred. Toxicity of quizalofop-ethyl in mammals, fish and birds was very low. Its potential hazard to the environment was minimal.
著者
鈴木 静香 村田 雄二 杉本 彩 永井 智貴 正木 信也 田中 暢一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Cb0511, 2012

【はじめに、目的】 上腕骨近位部骨折や鎖骨骨折患者において、困難となる日常生活動作の一つとして結帯動作がある。しかし、結帯動作の制限因子について言及している文献は少なく、その因子も画一化されたものではない。そこで、結帯動作を再獲得するため、その制限因子を検討した。結帯動作を運動学的に捉えると、肩関節伸展・内旋・外転の複合運動である。また、解剖学的に捉えると、肩関節の筋・靭帯・関節包の影響を受けると考えられる。今回は制限因子として短期間で効果が得られる筋に着目し、制限因子を検討することとした。【方法】 対象は右上肢に整形外科疾患の既往のない健常者15名(男性11名・女性4名、年齢:22~37歳)とした。結帯動作の運動学的要素のうち肩関節伸展・内旋の可動域(以下ROM)に影響する筋として、烏口腕筋・棘下筋・小円筋を対象とした。各筋に2分間ストレッチを実施する群と筋に介入を加えず2分間安静臥位とする群の計4群(烏口腕筋群・棘下筋群・小円筋群・未実施群とする)にて、前後の結帯動作の変化について検討した。結帯動作は立位にて右上肢を体幹背面へと回し、第7頸椎棘突起-中指MP関節間の距離(以下C7-MP)を測定し、各筋の介入前後にて評価した。C7-MPの変化は、実施前の距離を100%とし変化率として表した。被験者15名には各筋に対する介入効果が影響しないよう、各群間で介入後1週間以上の期間を設けて実施した。次に、C7-MPの変化に及ぼす因子の検討として、肩関節でのLift off・第2内旋・伸展の3項目(以下関連項目)を測定した。Lift offの測定は、腹臥位にて右上肢を体幹背面へと回し、尺骨茎状突起をヤコビー線に合わせ、肩関節内旋により尺骨茎状突起がヤコビー線から離れた距離とした。統計処理は、C7-MPの変化率について4群間での比較を一元配置分散分析にて行い、多重比較はTukey法を用いた。次に、有意差を認めた2群間について関連項目での比較にはt検定を用いた。有意水準はそれぞれ5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 全ての被験者に対して事前に研究参加への趣旨を十分に説明し、同意を得た。【結果】 C7-MPの変化率については烏口腕筋群と未実施群間(P=0.006)、棘下筋群と未実施群間(P=0.009)で有意差を認めた。有意差を認めた各群間での関連項目の検討では、烏口腕筋群と未実施群間で第2内旋ROMに有意差を認め(P=0.009)、棘下筋群と未実施群間で伸展ROMに有意差を認めた(P=0.019)。【考察】 烏口腕筋と棘下筋が、介入前後でのC7-MPの変化率に未実施群と有意差を認めたことより、これらの筋が結帯動作の制限因子となっていることが示唆された。また、烏口腕筋への介入により第2内旋ROMの改善を認め、棘下筋への介入により伸展ROMの改善を認めており、運動学的にこれらが結帯動作改善の因子と考えられる。烏口腕筋・小円筋は起始・停止より、第2内旋ROMの制限因子と考えられる。結果では、烏口腕筋のみに結帯動作の改善を認め、第2内旋ROMの改善に関与していた。烏口腕筋は、肩関節前面に位置しており、小円筋は後面に位置している。結帯動作では肩前面に伸張が生じることから、烏口腕筋の介入の影響が大きかったと考える。棘下筋は伸展・内旋で伸張されるという報告があり、伸展ROMの制限因子と考えられ、烏口腕筋も起始・停止より伸展ROMの制限因子と考えられる。結果では、棘下筋のみに結帯動作の改善を認め、伸展ROMの改善に関与していた。これらの筋は、伸展・内旋ROMに関与しており結帯動作の制限因子となると考えられる。烏口腕筋に有意差を認めなかった原因として、今回筋のみに着目しているが前関節包や靱帯の影響が大きく、伸展ROMの改善を認めなかったと考える。今後は、関節包や靭帯等も視野に入れた検討が必要である。今回、烏口腕筋・棘下筋・小円筋を対象に検討したが、小円筋は未実施群と有意差を認めなかった。有意差を認めなかった原因は、有意差を認めた烏口腕筋や棘下筋は肩関節中間位において肩関節伸展すると伸張される。しかし、小円筋は肩関節中間位では肩関節伸展時、伸張位とはならない。これより、小円筋への介入が結帯動作に影響を及ぼさなかったと考える。また、結帯動作では伸展運動が生じた後、内旋運動が生じる。以上を踏まえると、結帯動作の改善には伸展ROM改善の影響が大きく、棘下筋への介入により伸展ROM改善を認めたことから、棘下筋への介入が最も効果があるのではないかと考える。【理学療法学研究としての意義】 烏口腕筋・棘下筋が結帯動作の制限因子と示唆されたことにより、これらに介入する事で早期に結帯動作の再獲得となり、日常生活・QOLの改善につながると考える。
著者
西 香織 鈴木 慶夏
出版者
北九州市立大学国際教育交流センター
雑誌
北九州市立大学国際論集 (ISSN:13481851)
巻号頁・発行日
no.16, pp.131-148, 2018-03

本稿は、コミュニケーションの場での使用をめざす教育文法には、必要に応じて表現形式を適宜選択できるよう、これまで一つの学習項目として扱ってきた文法事項を分割、分散して提示することが有益であると主張するものである。本稿では陈・周(2005)、陈(2010)の案をもとに、主に前置詞“比”を用いる比較表現について、日本の大学で使用する中国語教材における初中級段階の文法事項の分割・分散化試案を提示する。
著者
尾崎 幸謙 鈴木 貴士
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.39-52, 2019
被引用文献数
3

<p>Results of an analysis of survey data which includes data from inappropriate respondents (respondents who do not devote an appropriate amount of attentional resources when answering questions or whose answers for two questions are contradictory) are untrustworthy. To address this problem, an instructional manipulation check or directed questions scale can be used to identify such respondents. However, survey companies are not willing to use such tools for ethical reasons. In the present study, using eleven machine learning models and six exploratory variables, a prediction model which can judge whether a respondent is inappropriate is developed. The model shows that two explanatory variables, the maximum number of consecutive items on a scale to which a respondent answered with the same response option and response time, are effective for the prediction. The model can reduce the percentage of inappropriate respondents in the analyzed data, which leads to an improvement in the trustworthiness of the analysis results.</p>
著者
上岡 清乃 北岡 智子 鈴木 恵太
出版者
一般社団法人 アジアヒューマンサービス学会
雑誌
Journal of Inclusive Education (ISSN:21899185)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.77-78, 2018 (Released:2018-08-30)
参考文献数
8

本研究は、英語学習に特異的な弱さを示した高校生2名(A児、B児)を対象として認知特性に応じた効果的な英単語書字指導法を検討した。両名とも全般的知的発達水準は平均から平均の上の領域で、視覚的情報処理の速度と正確性に認知的短所が考えられた一方、A児は視覚情報をもとに推理し思考する力が、B児は聴覚言語系情報処理が認知的長所として考えられた。指導では、英単語の綴りにおける効率的な学習と確実な定着を意図し、PC画面上に提示したスライドを用いて綴りを諳んじる視覚系列化法や語呂合わせを介して綴りを音韻に乗せて覚える言語イメージ法などを行った。その結果、指導開始前に比して指導終了後に書字成績の向上がみられた。また、一定期間後も高い正答率が維持されたことより確実な定着が窺えた。ここから、聴覚優位/視覚優位といった個々の認知特性に応じた英単語の書字指導方法について考察した。
著者
鈴木 冴沙 髙原 梢 酒井 暢世 鈴木 伸江 稲永 詠子 菊池 元宏 朝田 芳信
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.444-450, 2019-11-25 (Released:2020-01-31)
参考文献数
24

著者らは上唇小帯の切除に対する治療方針決定の一助となることを目的に,3 歳から5 歳までの幼稚園児あるいは保育園児448 名を対象に,上唇小帯の形態と付着位置の変化について正常型および異常型(以下Ⅰ型からⅤ型)に分類したところ,以下の結果を得た。1 .上唇小帯の正常型と異常型の出現率は,すべての年齢において正常型は異常型に比べて高値を示したが,増齢的に正常型の割合は減少した。2 .各異常型の出現率は,Ⅰ型がすべての年齢において最も高かった。Ⅱ型はすべての年齢においてⅠ型に次いで高く,増齢的な増減の方向性は認められなかった。Ⅲ型は,増齢的に倍以上に増加した。Ⅳ型は増齢的な増減の方向性は認められなかった。Ⅴ型は5 歳で出現が認められた。3 .正常型と異常型(Ⅰ型,Ⅱ型,高位付着肥厚型)の出現率は,3 歳において正常型が有意に高く,高位付着肥厚型が有意に低く,5 歳において高位付着肥厚型の出現率が有意に高い傾向にあった。 これらより,3 歳では異常型の主体がⅠ型とⅡ型であり,変動しにくい型であるⅣ型とⅤ型ではないことから,上唇小帯異常が認められたとしても経過観察を行うことが適切であると考えられた。5 歳では高位付着肥厚型の出現率が高い傾向にあるため,上唇小帯異常が継続する可能性が考えられることから,永久前歯交換期に認められる正中離開や口唇閉鎖機能に影響を及ぼすことを念頭に置いた対応が求められることが示唆された。