41 0 0 0 OA 知の格差

著者
長谷川 哲也 内田 良
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.259-280, 2014-05-31 (Released:2015-06-03)
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究の目的は,大学図書館の図書資料費に関して,大学間の格差の実態とその推移を明らかにすることである。資料の電子化という地殻変動のなかで,大学間の格差はどう変容してきたのか。図書館研究と高等教育研究はいずれもこの問題を等閑視してきただけに,格差の全体像を丁寧に検証することが求められる。 とくに高等教育の資源格差は,各大学の機能の相異として是認されうるため,本研究では4つの視点──大学間の不均等度,大学階層間の開き,時間軸上の変化(縦断的視点),大学本体との比較(横断的視点)──を用いて多角的に分析をおこなう。分析には『日本の図書館』の個票データを用いた。国立大学法人化以降(2004-2011年度)の図書費,雑誌費,電子ジャーナル費に関して,「大学間格差」(個別大学間の不均等度)を算出し,さらに「大学階層間格差」(群間の開き)を明らかにした。 主な知見は次のとおりである。第一に,電子ジャーナル費では大学間の不均等度は縮小しているものの,階層間格差はむしろ拡がっている。これまで電子ジャーナルの購読では階層間格差は小さくなると考えられてきただけに,重要な知見である。第二に,雑誌費では大学間の不均等度が高くなり,さらに階層間格差が拡大するという,深刻な事態が生じている。「電子化」の背後で進むこれら図書資料費の「格差化」にいかに向き合うかが,大学図書館の今後の課題である。
著者
内田 良 長谷川 哲也 上地 香杜
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.422-434, 2023 (Released:2023-12-13)
参考文献数
30

本研究の目的は、公共図書館をだれが利用しているのか、またそれはだれに利用されるべきと考えられているのかについて、平等利用の観点から大規模ウェブ調査の分析をもとに検証することである。分析の知見は次のとおりである。第一に、図書館利用には学歴がもっとも強い影響力をもっていた。第二に、非大卒者よりも大卒者のほうが、また滞在型の新しいサービスへの期待度が高い者のほうが、利他的に公共図書館の存在意義を重視していた。
著者
長谷川 哲也 内田 良
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.108, pp.1718, 2018-03-31 (Released:2018-03-07)

大学図書館における「教育」の機能は重要さを増しており,その成否の鍵を握るのが図書館職員である。本研究の目的は,国立大学の大学図書館における「教育」活動に着目し,その担い手となる職員の量と質に関して,大学間の格差の実態を明らかにすることである。分析の結果,とりわけ司書数における雇用形態別の大学階層間格差は拡大していることが明らかとなった。大規模な総合型大学では,小規模な単科型大学に比べて,正規採用で専門性の高い司書が,「教育」活動に従事する傾向が強まっている。
著者
野原 寛文 前田 育子 久澄 倫之介 内山 岳人 平島 紘子 中田 大仁 大野 里香 長谷川 哲朗 清水 健史
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本法科学技術学会誌 (ISSN:18801323)
巻号頁・発行日
pp.778, (Released:2020-08-20)
参考文献数
9

Many unidentified bodies are expected to be discovered during a major disaster. Therefore it is necessary to establish a technique of identity estimation from the DNA of the dead person. Y-STR haplotype is genetically same among male relatives unless a genetical mutation occurs, and it is expected that the same Y-STR haplotype tends to be distributed in nearby residential areas. In this study, we analyzed Y-STR haplotypes and Y-haplogroups from 1,702 samples mainly collected from Miyazaki Prefecture to examine whether the geographic origin can be estimated. Y-haplogroup tended to be distributed differently between inside and outside of Miyazaki Prefecture. Some specific Y-STR haplotypes were intensively distributed in the southern and northern parts of Miyazaki Prefecture. These findings are thought to lead to the construction of a geographic origin estimation system in Miyazaki Prefecture, and are expected to be used in disaster victim identifications and criminal investigations in the future.
著者
長谷川 哲也 内田 良
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育創造開発機構紀要 (ISSN:21860793)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-9, 2011-03-31

高等教育研究と図書館研究において長らく続いてきた研究上の分断は、大学図書館の研究を自己完結的なものへと押しやってきた。「大学図書館の社会学」の構想は、大学図書館を大学あるいは社会全体のなかに位置づけること、また単純集計にとどまらない統計分析を用いることから、大学図書館の諸相を全体関連的に描出することを企図する。本研究の主題「高等教育機関における図書館評価」は、「大学図書館を大学あるいは社会全体のなかに位置づけること」に重点を置きながら、大学図書館の評価について考察する。とくに「誰が評価するのか」という評価主体の視点から評価の力学を読み解き、評価の構造を体系的に整理していく。その整理からは、今日の認証評価制度のもとで、第一に、図書館界が先導してきた自己点検・評価の議論が一定の落ち着きをみせるなか、図書館評価が大学評価の一部としての性格を強めてきたこと、そして第二に、基礎的データに評価の関心が絞られ、さらにその限られたデータが大学本体の存続と関わって重大な意味をもつようになったことが見出された。
著者
姫野 完治 長谷川 哲也 益子 典文
出版者
日本教師学学会
雑誌
教師学研究 (ISSN:13497391)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.25-35, 2019

本研究は,今後の教員養成・採用・研修を担う教師教育者の在り方を検討する上で基盤となる教師教育者の職務内容や教師発達観等を解明することを目的とする。そのため,国立教員養成系大学・学部および大学院において教員養成に携わっている研究者教員と実務家教員を対象として質問紙調査を行い,学校等における勤務の「経験なし研究者教員」と「経験あり研究者教員」,そして「実務家教員」の3群に分けて比較検討した。その結果,相対的に「実務家教員」は教育にかける時間が多いこと,「実務家教員」は授業や他機関との連絡調整において研究者教員と連携していること,「研究者教員」と比べて「実務家教員」の職務内容や教師発達観には,同僚性やコミュニティとの関わりが反映されていること等が明らかになった。
著者
姫野 完治 長谷川 哲也 益子 典文
出版者
日本教師学学会
雑誌
教師学研究 (ISSN:13497391)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.25-35, 2019 (Released:2019-07-08)

本研究は,今後の教員養成・採用・研修を担う教師教育者の在り方を検討する上で基盤となる教師教育者の職務内容や教師発達観等を解明することを目的とする。そのため,国立教員養成系大学・学部および大学院において教員養成に携わっている研究者教員と実務家教員を対象として質問紙調査を行い,学校等における勤務の「経験なし研究者教員」と「経験あり研究者教員」,そして「実務家教員」の3群に分けて比較検討した。その結果,相対的に「実務家教員」は教育にかける時間が多いこと,「実務家教員」は授業や他機関との連絡調整において研究者教員と連携していること,「研究者教員」と比べて「実務家教員」の職務内容や教師発達観には,同僚性やコミュニティとの関わりが反映されていること等が明らかになった。
著者
川村 光 紅林 伸幸 越智 康詞 加藤 隆雄 中村 瑛仁 長谷川 哲也 藤田 武志 油布 佐和子
出版者
関西国際大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:13455311)
巻号頁・発行日
no.17, pp.51-71, 2016-03-31

The purpose of this study is to analyze Japanese teachers’ viewpoints relating toJapanese society and education based on the data of quantitative investigation of public primary school and junior high school teachers in 2013.From this survey, some important findings were drawn. First, the characteristics of teachers who take an optimistic view of the future Japanese society is that the level of their consciousness of the autonomy of the profession is lower. Second, the characteristics of teachers whose consciousness of the autonomy of the profession is lower are that the level of their consciousness of the training of pupils in 21 century academic abilities is lower and they are not ready to carry out the individual and clinical education that help teachers cope with the reality of pupils in their educational practice. Third, the teachers who are school middle leaders in schools are the ones “accomplishing their duty of the school organization”type, who positively carry out school and lesson reform. Also this trend in younger generation is higher. Especially, the characteristics of the school middle leaders is the important issue to consider for the future school education.
著者
長谷川 哲也 内田 良
出版者
THE JAPAN SOCIETY OF EDUCATIONAL SOCIOLOGY
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.259-280, 2014

本研究の目的は,大学図書館の図書資料費に関して,大学間の格差の実態とその推移を明らかにすることである。資料の電子化という地殻変動のなかで,大学間の格差はどう変容してきたのか。図書館研究と高等教育研究はいずれもこの問題を等閑視してきただけに,格差の全体像を丁寧に検証することが求められる。 とくに高等教育の資源格差は,各大学の機能の相異として是認されうるため,本研究では4つの視点──大学間の不均等度,大学階層間の開き,時間軸上の変化(縦断的視点),大学本体との比較(横断的視点)──を用いて多角的に分析をおこなう。分析には『日本の図書館』の個票データを用いた。国立大学法人化以降(2004-2011年度)の図書費,雑誌費,電子ジャーナル費に関して,「大学間格差」(個別大学間の不均等度)を算出し,さらに「大学階層間格差」(群間の開き)を明らかにした。<BR> 主な知見は次のとおりである。第一に,電子ジャーナル費では大学間の不均等度は縮小しているものの,階層間格差はむしろ拡がっている。これまで電子ジャーナルの購読では階層間格差は小さくなると考えられてきただけに,重要な知見である。第二に,雑誌費では大学間の不均等度が高くなり,さらに階層間格差が拡大するという,深刻な事態が生じている。「電子化」の背後で進むこれら図書資料費の「格差化」にいかに向き合うかが,大学図書館の今後の課題である。
著者
山崎 準二 高谷 哲也 三品 陽平 濱田 博文 田中 里佳 高野 和子 高野 貴大 朝倉 雅史 山内 絵美理 村井 大介 長谷川 哲也 栗原 崚
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

「省察」それ自体が問い直されぬまま教師の専門性の中核を成す絶対的理念と化す傾向にある今日、大学における教員養成の「省察」言説を相対化し、不可視化された問題状況を明らかにするために、現代日本の大学における教員養成を方向づけてきた「省察」言説とはいかなるものか、またこの「省察」言説が隆盛する中で展開される学びの実態と問題はいかなるものか、という本研究の核心をなす2つの学術的「問い」に応えるため、教師教育における言説の特徴の解明、「省察」が重視される学術的・実践的原理の解明、「省察」による学びの実態把握、そして教員養成における「省察」のあり方の検討、という4つの研究課題に取り組むものである。
著者
吉岡 信和 田辺 良則 田原 康之 長谷川 哲夫 磯部 祥尚
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.4_40-4_65, 2014-10-24 (Released:2014-12-24)

機器の高速化やネットワークの発展に伴い,多数の機器やコンポーネントを連携させ,高度な機能を提供する並行分散システムが一般的になってきている.そのようなシステムでは,振舞いの可能性が膨大であり,従来のレビューやシミュレーションで設計の振舞いの正しさを保証することは困難である.それに対して,網羅的にかつ自動的に振舞いに関する性質を調べるモデル検査技術が注目されている.本稿では,モデル検査技術の背景と5つの代表的なモデル検査ツールを紹介し,その応用事例や最新の研究動向を解説する.
著者
堤 良一 岡崎 友子 藤本 真理子 長谷川 哲子 松丸 真大
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、現代日本語の指示詞の現場指示の方言差を明らかにするとともに、各方言が採用する空間認知の分割方法と、それと連関するような文法現象を見極めることで、日本語の指示詞の現場指示の使用のされ方と、その他の言語現象との関わりを探ろうとするものである。今年度は、次年度以降に実施予定である本格的な実験に向けて、実験のデザインを行った。そして、そのデザインの妥当性を検討するために徳山大学(山口)、尾道市立大学(広島)、愛媛大学(愛媛)の3大学で実験を行った。収集したデータは方言帯ごとにグルーピングし、それぞれの差を見ることとなる。具体的な傾向としては、研究代表者と研究分担者(岡﨑友子氏)が、岡山方言について言及したことがあるように、話し手と聞き手との間程度の距離の対象についてアノで指示する話者が一定数存在し、それは瀬戸内海沿岸の地域の出身者に多いような傾向が見て取れる。しかしこれは今後継続的な実験を続け、データの数をある程度取らなければ断定的なことは言えないというような状況である。実際に実験を行いながら、実験の妥当性、公平性他、様々な点で問題点が見つかったが、その都度微調整を行いながらデータ収集を行った。現段階では、次年度に向けて均等な環境での実験が遂行できる準備が整いつつあると考えている。収集したデータについて、統計的な処理を施すことができるかどうかについて、平成30年3月24日(土)、東洋大学岡﨑友子(共同研究者)研究室にて、検討会を行った。統計学の専門家である小林雄一郎氏から有益なコメントをもらい、データベースの作り方等を今後さらにつめていく必要があることを確認した。
著者
内田 良 長谷川 哲也 上地 香杜 UCHIDA Ryo HASEGAWA Tetsuya KAMIJI Koto
出版者
名古屋大学大学院教育発達科学研究科
雑誌
名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要. 教育科学 (ISSN:13460307)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.169-179, 2017-09-30

This study seeks to examine the current state of affairs of public libraries in contemporary Japan, with regard to regional disparities in the availability of resources and their use. While libraries are established based on the principle of local autonomy, regional disparities present issues affecting access to resources and information, and guardianship of residents’ rights to learn. For local governments in Japan to establish individual libraries according to their respective abilities, it is necessary for them to gain an overview of the national library system as a whole. Unfortunately, this task has been neglected, with the result that there is an insufficient understanding of the actual situation of regional disparity in public libraries. In this study of public libraries, I examine regional disparities by comparing urban municipalities (cities and wards) with rural municipalities (towns and villages) in terms of the availability of materials and human resources. In my analysis, I use the latest available data, from the 2016 edition of Statistics on Libraries in Japan. I calculate the degree of dissimilarity between urban and rural municipalities respectively, in terms of total number of books, book circulation statistics, number of loans, service population, number of members, and number of full-time librarians. I then study regional differences by comparing these two target groups. The main findings are as follows. Firstly, in rural municipalities, disparities emerge in terms of the very existence of libraries, while in urban municipalities disparities emerge in the utilization of resources in terms of the number of loans. Secondly, no major difference exists in the number of full-time librarians in rural and urban municipalities. However, if the degree of difference among service populations is used as a reference standard, then rural municipalities could be said to have larger disparities than urban municipalities in terms of the relative number of full-time librarians. The ongoing challenge for public libraries is to find ways to cope with regional disparities in services and resource utilization.
著者
池内 了 杉山 直 海部 宣男 土居 守 福島 登志夫 長谷川 哲夫
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

アジア・太平洋地域(オセアニア、南北アメリカも含む)における天文学研究は、多くの先進的観測装置を有する国から観測装置が未整備な国まで、さまざまな研究環境条件にある。そこで、国際天文学連合(IAU)が主催して、これらの諸国の天文学研究者が一堂に集まり、最前線の研究成果を交流しつつ、若手研究者の育成、共同研究の推進と相互援助、天文学普及のための活動、などについて情報交換を行う「IAUアジア・太平洋地区会議(略称APRM)」を開催してきた。本研究課題は、2002年7月2日から5日まで東京の一橋記念講堂で開催された、第8回APRMの準備費用・会議運営経費・報告集発行経費を賄うことによって会議の成功に寄与したものである。会議には、総計462人が参加し、うち148人は23カ国からの外国人研究者であった。会議は、全体会議行われた(1)大型観測装置、(2)大規模サーベイ、(3)太陽系外惑星、(4)天文学教育の4つのセッションと、(5)星・惑星系形成、(6)星・太陽活動、(7)高エネルギー天文学、(8)活動的銀河核、(9)重カレンズ、(10)系外銀河・宇宙論の6つのセッションが分科会で行われ、約30の招待講演、約100の口頭発表、約320のポスター発表があった。加えて、(11)情報交換のためのネットワーク形成と研究雑誌の発行、(12)今後の地域集会の予定、の2つのビジネス・セッションを持ち、アジア・太平洋地域における天文学研究のよりいっそうの発展のための討論を行った。会議の報告集として、全体会議については太平洋天文学会(ASP)の国際会議録シリーズ、分科会およびポスター論文は日本天文学会(ASJ)の国際会議録として出版した。なお、最終日の翌日の6日には4つのサテライト集会が持たれ、これにも多数の研究者が参加した。