著者
河野 恵美子 奥野 敏隆 長谷川 寛 京極 高久 高峰 義和 林 雅造
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.2974-2978, 2007-12-25 (Released:2008-08-08)
参考文献数
11

乳癌術後13×8cmの皮膚欠損創に対し, ラップ療法で治癒した1例を経験したので報告する. 症例は55歳, 女性. 左乳房に15×25×5cm大のカリフラワー様の腫瘍を認め, 乳癌の診断で左乳房切除術を施行した. 第5肋骨の露出を伴う13×8cm大の皮膚欠損創となったが, 創感染のリスクが高いと判断し, 一期的遊離皮膚移植は行わず, 水道水による洗浄後, ポリ塩化ビニリデン製食品包装用ラップフィルムを用いた開放ドレッシング (ラップ療法) を続けた. 術後8日目に肉芽増生が開始し, 17日目には平坦化した. 上皮化は14日目に縦方向, 37日目に横方向が開始したが, 次第に停滞したため, 57日目よりステロイド外用剤を使用したところ, 翌週には, 潰瘍の辺縁に上皮化を認め, 以後1週間に1cmのスピードで上皮化が進み, 約2カ月でほぼ治癒となった. 以上より, ラップ療法は10cm以上の大きな皮膚欠損創でさえも治癒することができる優れた治療法であると考える.
著者
長谷川 拓 成田 譲二 上原 秀幸 大平 孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.61, pp.13-18, 2008-05-22
被引用文献数
5

無線通信におけるセキュリティ技術として,エスパアンテナを用いた秘密鍵共有方式が提案されている.本稿では,雑音耐性・盗聴耐性を同時に評価するための指標であるImacを定式化し,Imacの高くなるリアクタンスセットを探索する.計算機シミュレーションの結果,無作為にリアクタンスを選んだ場合の平均と比較してImacが約30%高くなるリアクタンスセットを発見した.さらに,従来方式の片側端末のみ7素子エスパアンテナを用いた方式と,提案する両端末に3素子エスパアンテナを用いた方式との性能比較を行った.従来方式では盗聴局が正規局の1/4波長(約3cm)内に近づいた際にImacが急激に低下するが,本提案方式では盗聴局が正規局に近づいてもImacが低下しないことを確認した.
著者
丹野 義和 前原 文雄 関谷 里美 伊藤 学 露峰 浩 長谷川 文雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.1102-1111, 2001-06-01
被引用文献数
9

放送のディジタル化に伴う大量のディジタル映像コンテンツを供給するためには, 大容量の映像蓄積方式と高速な検索が課題である.本論文では, このためのペタバイト級の大容量映像アーカイブシステムとその検索方式について述べる.アーカイブシステムは7,200巻(15,000時間)の容量を有するテープ装填(てん)ロボットを中心に, HDDサーバ, DVDサーバそれぞれを目的別に配置することによって, 蓄積及び配信の効率を向上させるとともに, 遠隔地からの検索, 映像伝達, 遠隔編集を可能とした.また, 一連画像データのシーン変化点検出方式と, 抽出したシーン変化点を基準とするブラウジング映像生成方式, それに基づく多画面動画同時再生表示による視覚検索方式の開発をした.ここでは自動装填ロボットを中心とした大容量アーカイブシステムと多画面動画同時再生表示での拘束でかつ効率的な検索方式について報告する
著者
飯尾 淳 鵜戸口志郎 小山 欣泰 長谷川 祐子
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.2624-2634, 2012-11-15

健康維持を支援するウェブアプリケーション「イートスマート」は,会員(ユーザ)のダイエット活動をサポートする機能として食事や運動の記録はもとより日記やコメントといったユーザ同士のコミュニケーション機能を提供する.これらの機能はダイエットに効果的な影響を及ぼす.しかし同コミュニティに参加しているユーザの間でも,ダイエットに成功したユーザと成功していないユーザに分かれているという状況が見られる.そこで本研究では,それぞれのユーザによる情報の記録内容を分析することによって,効果的にダイエットを成功させるためには何が重要かを明らかにすることを試みた.その結果,やはりダイエットの成否を分ける潜在的な意識や意欲は記録に明示的に現れること,および,ダイエット支援サービスをより効果的なものとできる可能性が明らかになった.The web application named "Eat Smart" provides functions for its users to keep dietary records, exercise programs, daily comments, and other information, as the functions to support the users' activities for dieting. Although these functions are considered effective in dieting, we have found the users are divided into two groups; the one is the users who have succeeded in dieting and the other is the users who have not succeeded. Therefore, this study aimed to clarify what was important in effective dieting, by analyzing the information recorded by each user. As a result, it was confirmed that the expression of users' firm intention in dieting was clearly expressed in the records, and that there was possibility to improve the supportive service for dieting.
著者
長谷川 敦士 植田 一博
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.417-430, 2001-12-01 (Released:2008-10-03)
参考文献数
16

In this paper we addressed the problem how social interactions, especially P2P (Peer to Peer) communication, set trends. We made a multiagent-based model to investigate the issue. The agents are computer programs that act autonomously and behave individually. In this artificial society, the agents demand goods that they want to consume as well as they can produce and consume goods. They try to barter their goods with one of the other agents that is selected randomly. They make their own evaluation of each good based not on global information in the market but on local information shared with their trading partners: They assume the goods, which their trading partners demand, to be popular. They can also demand the goods that they think very popular by themselves and exchange their evaluation of the popularity when they trade with other agents. We pointed out that, in this situation, agents' evaluation of the popularity can be concentrated on some good one after another, which can explain a mechanism of the concentration of popularity.
著者
岡 隆治 印鑰 史衛 森 善樹 伊藤 真也 沖 潤一 長谷川 浩 吉岡 一 平田 哲 片桐 一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.597-603, 1984-06-25 (Released:2013-05-24)
参考文献数
26

10歳時に心臓カテーテル造影検査にて原発性肺高血圧症と診断した症例が経過中に,血小板減少,血管内溶血などのまれな合併症状を呈し,診断確定後2年8カ月の経過でうっ血性心不全のため死亡した1例を経験した.病理組織学的には,肺小動脈の内膜の肥厚が著明でありPlexiform lesionも認められた.肝臓ではうっ血とグリソン鞘および中心静脈を中心とする線維症を認めた.これまで原発性肺高血圧症に血小板減少症を合併したという報告はあるが,血管内溶血や肝線維症を合併した症例はほとんどなくきわめて貴重な症例と考えられ報告した.
著者
長谷川 忍
雑誌
科学研究費助成事業研究成果報告書
巻号頁・発行日
pp.1-6, 2014-06-03

本研究の目的は,研究グループによる研究活動で創発されるインフォーマルな経験則を研究活動スキルであると捉え,新たに研究グループに配属される研究初学者が研究活動スキルを学習する過程を支援するSNS(Social Networking Service)を開発することである.本システムの特徴は,論文やプレゼンテーションの作成過程において教員と学生の間で交わされるコメントをバージョンやメタデータとともに管理することで,研究グループ内で重視されているコメントや典型的な進捗状況プロセスを経験情報として抽出することや,修正の難しいコメントへの他の学生の対応過程をピアレビューすることが可能である点である. : The main topic addressed in this research is to develop a social networking service (SNS) system to support new graduate/undergraduate students belonging to a laboratory to learn the research activity skills which are regarded as informal experiential knowledge created by the laboratory members. The main point of the developed system is to store/manage the comments attached by the researcher and the students in conjunction with the versions of the documents and metadata in making process of the research papers and presentations. This enables the students to extract/find important comments or typical progress situation as experiential information of the laboratory, and to conduct peer review of others responses about complicated comments.
著者
松村 良之 村山 眞雄 白取 祐司 長谷川 晃 太田 勝造 城下 裕二 木下 麻奈子 林 美春
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

この研究では「コミュニティ」の存在が修復的司法の必須の要素であるという認識のもとに、仮想的な小話を利用した要因計画法に基づく一般人に対する調査を行った。一般的に言えば、内集団におけるスティグマ的恥づけが人々の評価が高い。しかし、この結果は再統合的恥づけの重視と矛盾するものと考えるべきではない。修復的司法の制度設計としては、課題解決型裁判所をモデルにシステムが構築されるべきであろう。
著者
清水 俊幸 安島 雄一郎 吉田 利雄 安里 彰 志田 直之 三浦 健一 住元 真司 長屋 忠男 三吉 郁夫 青木 正樹 原口 正寿 山中 栄次 宮崎 博行 草野 義博 新庄 直樹 追永 勇次 宇野 篤也 黒川 原佳 塚本 俊之 村井 均 庄司 文由 井上 俊介 黒田 明義 寺井 優晃 長谷川 幸弘 南 一生 横川 三津夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.10, pp.2118-2129, 2013-10-01

スーパーコンピュータ「京」の構成と評価について述べる.「京」はスパコンの広範な分野での利活用を目指した10PFLOPS級のスパコンである.我々は,デザインコンセプトとして,汎用的なCPUアーキテクチャの採用と高いCPU単体性能の実現,高いスケーラビリティのインターコネクトの専用開発,並列度の爆発に抗する技術の導入,高い信頼性,柔軟な運用性,省電力性の実現を掲げ,2011年にそのシステムを完成させた.HPC向けCPU,SPARC64 VIIIfxと,スケーラビリティの高いTofuインターコネクトを専用に開発し,並列度の爆発に抗する技術としてVISIMPACTを実装した.冷却やジョブマネージャ等により,高い信頼性,柔軟な運用性,省電力性を実現した.「京」は2011年6月と11月にTOP500で世界一となった.また,複数のアプリケーションで高い実行効率と性能を確認し,スパコンとしての高い実用性を示した.
著者
長谷川 功 前川 光司
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.432-434, 2008 (Released:2008-05-28)
参考文献数
20
被引用文献数
6 5

北海道千歳川支流の紋別川には,本流と支流にそれぞれ堰堤があり,その下流側では,在来種アメマスから外来種ブラウントラウトへの置換が報告されている。一方,堰堤上流側では,ブラウントラウトは確認されていなかった。しかし,2004 年秋から 2005 年春の間に本流の堰堤が決壊し,堰堤上流側へのブラウントラウトの侵入が確認された。今後,堰堤上流側のアメマス個体群へのブラウントラウトの影響が懸念される。
著者
菊池 馨実 福島 豪 中川 純 上山 泰 菅 冨美枝 小西 啓文 尾形 健 川島 聡 今川 奈緒 永野 仁美 新田 秀樹 長谷川 珠子 長谷川 聡
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

研究者各自による研究論文の発表に加えて、4度にわたる公開シンポジウムの開催、3度に及ぶ学術雑誌での特集論文の掲載、さらに刊行が確定している論文集と教科書の出版などを通じて、日本における障害者法学の構築に向けた基盤をつくることができた。
著者
長谷川 純一 森 健策 鳥脇 純一郎 安野 泰史 片田 和廣
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.8, pp.1587-1594, 1993-08-25
被引用文献数
57

本論文では,スライス間隔1mmで撮影された高精度連続胸部CT像から3次元画像処理を用いて肺がん候補領域を自動抽出する試みについて述べる.ここでは,限局性の異常陰影(SR)を対象とし,3次元形状特徴の違いに基づいてそれらを他の陰影(主に血管影)と識別する手順を開発した.実際の処理手順は大きく二つのステップ:(1)肺野領域の切出し,および,(2)SR抽出,からなる.本論文では,これらの処理をしきい値処理,3次元図形融合(または,3次元距離変換),3次元スケルトン化などの基本手法を組み合わせた比較的簡単な手順で実現し,実際の肺がん症例を用いてその有効性を示す.本研究は,3次元画像処理の有効性を実用上十分な精度の3次元CT像で検証した最初の試みとして,その意義は大きい.
著者
池内 隆夫 上野 学 与儀 実夫 長谷川 和則 佐々木 春明 浜島 寿充
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.1677-1682, 1991-12

1)非細菌性前立腺炎および前立腺炎様症候群における肛門疾患合併率は29.7%,活動性病変合併率は15.4%であり,他の泌尿器科疾患での合併率に比し有意に高い.2)合併肛門疾患では痔疾患とくに痔核の合併頻度が高い.3)治療による臨床的有効率は非細菌性前立腺炎が71.4%,前立腺炎様症候群が58.2%であった.4)前立腺炎と痔疾患とくに痔核の合併および発症とは深い関係がある.肛門疾患を合併する前立腺炎に対して桂枝茯苓丸は有用であった
著者
中野 茂樹 桑田 雅彦 長谷川 浩之 入村 兼司 丸伝 章 森田 健一
出版者
日本毒性学会
雑誌
The Journal of Toxicological Sciences (ISSN:03881350)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.13-59, 1989-10-31
被引用文献数
3 5

ラットにP-4を2, 10, 50および150mg/kg/dayの投与量で13週間経口投与し, その亜急性毒性ならびに回復性を検討し, 以下の知見を得た. 1. 一般状態の観察では, 50mg/kg/day以上の雌雄各群で投薬後一過性の流涎と主に雌で尿による下腹部の汚染が観察された. その他に重篤な中毒症状はみられず, P-4投与によると思われる死亡例もなかった. 2. 体重は, 雄の50mg/kg/day以上, 雌の150mg/kg/dayの群で増加抑制がみられたが, 摂餌量に著しい変動はなかった. 摂水量は雌雄とも50mg/kg/day以上群で, 投薬初期より明らかな増加を示した. 3. 尿検査では, 50mg/kg/day以上の雌雄各群で尿量の増加, 浸透圧の低下, 蛋白およびウロビリノーゲンの陰性化, さらに電解質排泄量の軽度増加がみられた. 4. 血液学的検査では,150mg/kg/day群の雌雄に赤血球数の増加およびAPTTの短縮, さらに雄ではヘモグロビン量およびヘマトクリット値の増加, 白血球数の減少と雌ではフィブリノーゲン量の増加がいずれも軽度にみられた. 5. 血液生化学的検査では, 雄の50mg/kg/day以上および雌の150mg/kg/dayの群に中性脂肪の減少とγ-GTPおよびAlP活性, および尿素窒素の増加がみられた. さらに雄では総および遊離コレステロール, およびリン脂質が減少し, 雌では総コレステロールの増加およびコリンエステラーゼ活性の減少がみられた. 6. 病理学的検査では, 50mg/kg/day以上の雌雄各群に胸腺および脾臓の肉眼的萎縮がみられたが, 病理組織学的異常は認められなかった. 雄の50mg/kg/day以上および雌の150mg/kg/day群では肝臓重量または重量比が増加し, 病理組織学的検査で肝細胞の肥大および脂肪変性が観察された. 電子顕微鏡検査では, 同群でさらに肝細胞に著明な滑面小胞体の増殖を認めた. 腎臓では, 雄の10mg/kg/day以上, 雌の50mg/kg/day以上の群の近位尿細管上皮細胞内に好酸性の核内封入物を認めたが, その細胞質に腎障害像は全くみられなかった. 7. 回復試験では, P-4投与によるいずれの変化も回復ないし回復傾向を示し, 可逆性の変化であることが示唆された. 8. 無影響量は雄で2mg/kg/day, 雌で10mg/kg/day, 確実中毒量は雄で50mg/kg/day, 雌で150mg/kg/dayと推察された.