著者
江添 正剛 三武 裕玄 長谷川 晶一
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2015論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.529-532, 2015-09-18

イラストを描く際,デッサン人形を参考にイラストを描く手法があるが,デッサン人形のとる姿勢 が人間にとって無理のないものになっているかはユーザーの知識に依存する.そこで,物理モデルを持っ たバーチャルデッサン人形を作成,姿勢を維持したときに全身にかかる負荷が少なくなるような関節角を 最適化計算により算出し,ユーザーがより自然な姿勢のイラストを描くための手がかりとして提案する.
著者
小林 頼太 長谷川 雅美 宮下 直
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.795, 2005

カミツキガメ(<i>Chelydara serpentina</i>)は淡水から汽水域にかけて生息するアメリカ原産の雑食性カメ類である.日本へは,1960年代からペットとして輸入され,近年では全国各地から野外へ逸出した個体が発見されるようになった.千葉県印旛沼周辺では1990年代中頃より本種が頻繁に発見されるようになり,2002年には国内で初めてカミツキガメの定着が確認された.カミツキガメは在来種と比較して大型であり,また多産であることから個体数が増加した場合,生態系へ大きな影響を及ぼす可能性がある. そこで本研究ではカミツキガメの管理を目的とし,まず,本種の印旛沼流域における分布を調査した. 2000年から2004年の期間に印旛沼流域において,罠掛けによる捕獲および聞き取り調査を行った結果,カミツキガメが確認された地点は流入河川である鹿島川及びその支流に偏っており,こうした傾向に顕著な変化は認められなかった.また, 2002, 2003年に合計28個体(オス10,メス18)に電波発信機を装着し,利用区間距離を記録した結果,外れ値の1個体を除いた27個体の平均(±SD)は405±192mであり,性差は見られなかった.また,この傾向は追跡期間(18-597日)とは相関がなかった.外れ値の 1個体に関しては短期間に移動し,最終的に利用区間は約2300mとなった. 次に,消化管および糞内容物から,カミツキガメを支える餌生物について評価した.その結果,カミツキガメは主に水草やアメリカザリガニなど,環境中に豊富にある資源を摂食していた.これらの結果をふまえ,今後のカミツキガメの管理方針について検討を行う.
著者
高田 忠敬 内山 勝弘 安田 秀喜 長谷川 浩 里井 豊 国安 芳夫
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.627-631, 1985-05-20

はじめに 1935年Whippleら1)が乳頭部癌に対し,はじめて二期的膵頭十二指腸切除を行つた.しかし,当初胆管および膵断端の消化管への吻合はなされておらず,1943年Whipple2),Child3),Cattelら4)により胆管および膵断端と消化管の吻合を同時に行う一期的膵頭十二指腸切除術が考案された.これらの術式の特徴は,重篤な合併症としての膵腸吻合部や胆管空腸吻合部の縫合不全,逆行性胆管炎などの対策として,これらの吻合部に食物を通過させないようにしたことである.これに対し,1960年今永5)は縫合不全や胆管炎の発生と食物の通過経路とは関係がないとし,Braun吻合を付加しないCattel変法とも言われる再建法を報告した. 膵頭十二指腸切除後の再建法で長年問題となつていたのは,膵腸吻合部の縫合不全であることは言うまでもないが,再建法ならびに吻合法,素材の種々の工夫,膵管外瘻の付加,さらに高カロリー輸液法などの栄養管理が進み,縫合不全は以前に比べ激減してきており,実際われわれも最近3年間に施行した膵頭十二指腸切除57例では1例も経験していない.しかし,Fortnerら6)の提唱以来,積極的に郭清を行う拡大膵頭十二指腸切除の普及により,頑固な下痢の発生など消化吸収障害の問題が新たな合併症としてクローズアップされてきた7)こともあり,膵頭十二指腸切除についても術後の消化機能を温存する術式が望まれるようになつてきた.
著者
長谷川 順子
出版者
大学図書館研究編集委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.58-68, 2003

<p>国立大学図書館協議会の海外派遣事業で,スウェーデンの図書館を訪問した。スウェーデンは高度福祉社会であり,生涯学習の盛んな国である。また,インターネットの普及率も世界のトップクラスである。スウェーデンの大学図書館において中心的役割をもつ王立図書館の一組織であるBIBSAMをはじめ,いくつかの図書館を訪問し,情報の流通と図書館サービスについて調査した。その結果,図書館は市民に支持を受けた社会的,文化的公共機関であることを確認した。発達したIT社会において図書館は学術情報,生涯学習を支える情報基盤としての役割を果たしている。</p>
著者
四方 恒生 長谷川 千晃 南 基泰 杉野 守
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物工場学会誌 (ISSN:09186638)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.108-112, 1998-06-01
参考文献数
10
被引用文献数
4 1

The time course of growth and content of ligustilide in <I>Angelica acutiloba</I> Kitagawa plants cultivated in sand culture were observed between July 1994 and July 1995. <BR>(1) The growth curve of <I>Angelica acutiloba</I> Kitagawa plants showed a gentle slope at 9th months after seeding. Maxima diameter of 2cm from the proximal end of the tap root at 9th months extended for about 25mm, and the dry weight of the tap and lateral roots was about 14g/plant. The growth rate of plants in sand culture was faster than that in conventional soil culture.<BR>(2) The ligustilide content in the root was constant during cultivation, and was nearly equal that of plants grown in soil culture.
著者
羽田 真悟 長谷川 達也 永岡 謙太郎 南保 泰雄 松井 基純 角田 修男 今川 和彦
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.104, pp.1022, 2011

【目的】哺乳類の着床に,gp130ファミリーのサイトカインが関与することが知られている。このファミリーのサイトカインには,マウスにおいて着床に必須もしくは重要とされるLeukemia inhibitory factor(LIF)やInterleukin-11(IL11), IL6などが含まれる。しかし,ウマでは,ゲノム解析は終了しているが,現時点においてLIFに相当する遺伝子はゲノム上になく,IL11に相当する遺伝子は機能する配列として認識されていない。我々は,これまでの研究において着床期のウマの子宮内膜でIL6の発現を確認している。そこで,本研究では,着床におけるIL6発現の経時的変化,子宮の部位による発現量の比較および発現細胞の特定を目的とした。【方法】試験には,サラブレッド種雌ウマ10頭を使用した。排卵日を0日とし,非妊娠13日(C13),妊娠13日(P13),19日(P19),25日(P25)および30日(P30)にそれぞれ2頭ずつから子宮を回収した。子宮は,胚の存在する部位(G)と逆側の子宮角の根元(N)に分けて採材した。また,P30Gにおいては,子宮内膜を卵黄嚢絨毛膜(P30GY)および尿膜絨毛膜(P30GA)と接触する部位に分けて採取した。解析は,リアルタイムPCR法により行い,各子宮内膜サンプル中のIL6 mRNAの発現量を比較した。さらに,免疫組織学的手法により子宮内膜でのIL6タンパク質の産生部位を調べた。【結果】子宮内膜のIL6 mRNAの発現は,P19Gで軽度な増加が認められ,P25GおよびP30Gでは顕著に増加していた。P30Gにおけるその発現は,P30GYと比較してP30GAでより高かった。これらの結果から,IL6 mRNAの発現は,胚の存在により固着後の子宮内膜中に誘導され,その発現は胚のカプセルが融解して胚と子宮内膜が直接接するようになる時期に重要であることが示唆される。さらに,IL6 mRNAの発現は尿膜絨毛膜に接触した部位で高く,IL6タンパク質は子宮内膜上皮の細胞に検出されたことから,IL6は,着床過程において胚と子宮内膜の接着面,特に尿膜絨毛膜との境界面で作用することが示唆され,胎盤形成などの反応に関わるものと考えられる。
著者
久保 秀文 中須賀 千代 多田 耕輔 宮原 誠 長谷川 博康 小野寺 学
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.161-164, 2013-08-01
参考文献数
9

われわれは急性の閉塞に対してステント留置を行い一期的な切除手術が可能であったS状結腸癌の1例を経験したので報告する.症例は71歳,男性.北海道を旅行中に突然の腹痛を来して地域の病院へ入院となった.検査でS状結腸に腫瘤を診断されたが,患者が地元(山口県)での手術を希望したため閉塞に対して金属ステントが留置された.ただちに腹痛は消失し多量の排便を認め,その後当院へ紹介入院となった.S状結腸切除術が施行されたが術後経過は良好であり術後第10病日目に軽快退院した.患者は現在も再発徴候なく健在である.急性の大腸閉塞に対して術前の金属ステント留置は侵襲が少なく複数回の手術を回避することができ有用な方法と考えられる.
著者
内藤 正光 長谷川 憲正 小川 淳也
出版者
日経BP社
雑誌
日経コミュニケーション (ISSN:09107215)
巻号頁・発行日
no.547, pp.36-39, 2009-12-01

これまでの審議会や作業部会は,一つの課題に対処するだけだった。継続性を重視するときはいいが,大変革が求められるときには適さない。 政権が代わった今,これまでの枠組みにとらわれず,大上段からいろいろと議論をしようと考え,タスクフォースという形を採った。
著者
出口 佳一 長谷川 優 山下 裕生 吉田 英樹 大柴 小枝子 山口 政光
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会誌 (ISSN:00192341)
巻号頁・発行日
vol.105, no.1, pp.38-44, 2021-05-01 (Released:2021-05-18)
参考文献数
22

Many studies on the effects of LED on living organisms have been performed recently thanks to the ease and precision with which the power and wavelength of the LED can be regulated. To investigate the effects of LED irradiation on Drosophila activity, we monitored the locomotive activity of Drosophila for six days continuously. The data showed that wild-type flies behave similarly under fluorescent light, incandescent bulb, and white LED irradiation, which is equivalent to the intensity of an incandescent bulb. We next investigated the effects of red, blue, and yellow-green LED irradiation under same intensity as white LED on the locomotive activity of a wild-type fly and a Drosophila model of autism spectrum disorder (ASD). The results showed that the amount of locomotive activity in the wild-type flies with red LED irradiation was significantly increased throughout the day (excluding morning peaks) while that with blue LED irradiation was decreased in evening peaks and at nighttime. Yellow-green LED irradiation increased the locomotive activity during the midday siesta but decreased the activity of the morning and evening peaks.It is known that the rugose (rg) mutant, the Drosophila homolog of human Neurobeachin, shows locomotive hyperactivity. In our study, the red LED irradiation did not affect the locomotive activity of the rg mutant at all. Taken together with the effects of red LED irradiation to the wild-type, it seems that red LED irradiation enhances the neural circuit to positively regulate the locomotive activity, and rg functions in the neuronal cells by negatively regulating the neural circuit enhanced by red LED irradiation. Thus, the neuronal cells expressing the rg gene appear to play an important role for the regulation of activity during the midday siesta and while sleeping at night. In contrast, irradiation with yellow-green and blue LED to the rg mutant had similar effects to those of the wild-type. This demonstrates that irradiation with yellow-green and blue LED negatively regulates the locomotive activity through the neural circuit not related to rg, or downstream of the neural circuit actively regulated by red LED irradiation.
著者
長谷川 慶太郎
出版者
中央公論社
雑誌
ウイル (ISSN:02867877)
巻号頁・発行日
vol.3, no.5, pp.p92-96, 1984-05
著者
長谷川 直子 横山 俊一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

&nbsp;<b><u>1. </u></b><b><u>はじめに</u></b> 地理学ではある場所を訪れてその地域を現地で学び理解する巡検という活動を盛んに行う。一方観光は、同じくある地域を訪れる活動だが、増すツーリズムでは特に、その地域の風土や文化、地理を学ぶという活動に結びつかない形で行われることが多い。旅行の中に巡検的要素を入れられれば、その旅行が直接的な地理の普及につながる手段になりうるのではないだろうか。演者は昨年表参道~原宿周辺の学生向け巡検の際、当該地域に対する旅行と巡検の認識の違いについて調査し報告を行った(長谷川2015)。今回は大学の授業の中で、巡検と旅行を両方行い、その融合系としての地誌的視点を取り入れた旅行ガイドブックのサンプル作成を行ったので、その成果を報告する。 &nbsp; <b><u>2. </u></b><b><u>授業の概要</u></b> 授業はお茶の水女子大学の地理学コース向けの地理環境学演習Iという科目で、4学期制の1学期に1日2コマ(1コマは90分)連続で8週間で終了するという授業である。2コマ連続の授業の利点を生かし、現地調査を3回取り入れた。履修学生は18名であった。授業は、はじめに古今書院の巡検虎の巻(東京都地理教育研究会2002)の千駄ヶ谷から原宿のページのエリアと情報を基本として、これに掲載されている情報に肉付けする形でスポットを分担して調べて室内報告をしてもらい、後日2週かけて実際にそのエリアを巡検した(分担したスポットについて、担当学生が案内者を務めた)。その後、旅行者としてこのエリアを訪れた場合にどのようなコンセプトでどこを周りたいかを室内報告してもらい、翌週実際にその場所を訪問してもらった。最後に、巡検で学んだ地域の情報と旅行とを融合させた旅行ガイドブックのサンプルを各自が作成し、最終回の授業で発表するという形で授業は終了した。 &nbsp; <br> <u>3.</u><u> 旅行のテーマ</u> 各学生の旅行プランのテーマとしては、緑、市販のガイドブックにはあまりないところをめぐる、明治神宮と外苑をつなぐルートを作る、あえてファッションとグルメ以外を訪ねる、写真を趣味とする人向けコース、ドラマのロケ地、アート、文房具、ライダー、青山霊園へ旅行者を向かわせる試み、変わった建物巡り、アニメ、等である。緑と癒し、緑とアートなどの複合形もあった。市販のガイドブックでは定番の、買い物やおしゃれといったテーマを中心としたのは1名だけであった。この時点ですでに一般的な視点からはかなり離れていることが伺える。 &nbsp; <b><u><br>4.地誌的視点を取り入れた旅行ガイドブックのテーマ</u></b> &nbsp;学生の作成した旅行ガイドブックサンプルはそれぞれ以下のようなテーマで作成されていた(作成者の意図を説明)。1)都心の緑と癒しを求めて、2)オタク文化を訪ねて(聖地巡礼など)、3)原宿・表参道の意外な魅力発見の旅、4)日本の歴史を歩いて感じるコース、5)ブラタモリファンに捧ぐ表参道さんぽ、6)子どもと楽しむ明治神宮・神宮外苑、7)ハイセンスな街 表参道で自分磨きをしよう、8)原宿・青山 歴史と散歩の旅、9)じゃらんじゃらん千駄ヶ谷、10)月曜日に巡る美術館・アート巡り(月曜日には美術館の休館日が多いため、その日でも巡れる場所を提示)、11)ハカマイラーのための歴史散歩(青山霊園は良いスポットなのに市販のガイドブックではことごとく無視されているので、なんとか青山霊園に人を呼び込めないかという工夫の成果)、12)表参道・青山の建物めぐり(変わった建物が多い) &nbsp; <br> <u>5.</u><u>学生作成のガイドブックから見えてきたこと</u> &nbsp;学生主体の地誌的視点を取り入れたガイドブックは以下のような特徴を持っていた。 ・&nbsp;&nbsp; 地誌的視点を取り入れつつも話題となっているスポットを取り入れている(聖地巡礼、ハカマイラー、文具カフェ、ブラタモリ、パワースポットなど) ・&nbsp;&nbsp; 様々なターゲット層を扱っていた ・&nbsp;&nbsp; 財布に優しい飲食店やスイーツ店、タダで見られる場所等を選定していた(逆に今人気の高額なパンケーキ店等は一人も取り上げていなかった) ・&nbsp;&nbsp; 通常の巡検でも利用できるポイントも記載(富士塚など) ・&nbsp;&nbsp; 女性的な紙面構成(ことりっぷ的) &nbsp; (本研究はJSPS科研費(課題番号26560154)を使用した。) <br> <b><u>参考文献:</u></b> 長谷川直子(2015)旅行と巡検の違いを探るー1日巡検授業実践報告&mdash;.お茶の水地理.54.31-34. 東京都地理教育研究会(2002)エリアガイド地図で歩く東京I東京区部西.101p.
著者
朽名 夏麿 長谷川 淳子 松永 幸大
出版者
一般社団法人 植物化学調節学会
雑誌
植物の生長調節 (ISSN:13465406)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.104-111, 2014-12-20 (Released:2017-09-29)
参考文献数
38

Live imaging was brought about by recent development of fluorescent proteins and innovation of imaging systems. Dynamic analyses of organelle through live imaging reveal the subcellular dynamic function and the spatiotemporally four-dimensional structure. At the same time, quantitative analyses in addition to qualitative analyses become more important in analyses of the huge imaging data. Thus, we introduce our recent works in live imaging of mitochondria, nuclei, vacuolar membrane, and actin filaments in plant cells with our observation skills. Moreover, quantitative analyses of live imaging data were classified into three categories, number, morphology and distribution, three dimensional shape or dynamics. We review these three quantitative analyses.
著者
長谷川 一希
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.524-527, 2018-11-20 (Released:2019-11-01)
参考文献数
3

苛性ソーダ (NaOH) および金属ナトリウム (Na) は,いずれも化学的に非常に活性なアルカリ金属の化合物および単体である。これら製品は,塩化ナトリウム (NaCl) を原料にして生産されて,幅広い産業分野の原料や反応剤などに利用されている。現在,NaOHとNaの生産には,電気分解法が用いられる。前者はNaClの水溶液,後者はその溶融塩を用いた電解法である。これら製造には電気分解という共通手法を適用するが,操業に対する取り組みは当然異なる。本稿では,NaOHとNaの製造法を解説する。
著者
長谷川 徹
出版者
京都府立医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

口腔顎顔面領域の外傷や手術後の合併症として、三叉神経に神経麻痺等の障害が起こることがある。このような障害に対し、従来から保存的な治療法として理学療法や薬物療法が選択されてきた。理学療法である高周波の電気刺激では微少血管の拡張、神経伝達速度の上昇、痛覚閾値の上昇などの効果について報告されている。しかし低周波・高周波混合の電気刺激による効果についての検討は未だ報告されていない。そこで、神経障害に対して低周波・高周波混合の電気刺激による効果についての研究を行った。まず、一定の刺激により神経系細胞に分化することが報告されている骨芽細胞(MC3T3-E1)に対し低周波・高周波混合の電気刺激を加え検討した。出力は1~4mAで、刺激時間は1~10分間とした。結果、出力に係らず5分間の電気刺激により細胞活性の増大を認めた。次に、ALP活性およびヒアルロン酸の産生について検討した。結果、出力が2mA、10分間電気刺激した群でcontrol群に比べ、有意なALP活性の上昇を認めた。一方、ヒアルロン酸の産生量は、control群と刺激群では変化がなかった。これより低周波・高周波混合の電気刺激は、骨芽細胞の増殖と分化を促すことで、骨形成の増大に関与している可能性が示唆された。また、オトガイ神経支配領域に知覚鈍麻を認めた症例に対し電気刺激療法をおこなった。他覚的な評価を口腔顔面機能学会の規定するスコア化の基準に従いスコア化した。その結果、治療開始後3ヶ月でスコアが改善した。また自覚的な評価をVASにより生活支障度および自覚症状で評価した。それぞれ10例中6例および7例で改善していた。以上より、理学療法である低周波・高周波混合の電気刺激により神経障害が改善する可能性が示唆された。