著者
今村 俊幸 村松 一弘 北端 秀行 金子 勇 山岸 信寛 長谷川 幸弘 武宮 博 平山 俊雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告計算機アーキテクチャ(ARC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.22, pp.49-54, 2001-03-08

世界各国の計算機資源のみならず様々なネットワーク上の装置を有機的に結合し,一つの仮想計算機システムを構築する試みとしてメタコンピューティングが提案されている.日本原子力研究所では,これまで所内LANでの仮想計算機上を構築し数値アプリケーションの実験を行ってきたが,さる2000年11月アメリカ,ダラスにて開催された国際会議SC2000期間中に日独米英4ヶ国のスパコンを結合して世界規模での実験の試みに成功した.本実験では,放射線情報推定システムを題材として世界5機関の並列計算機を利用し最大計510CPUの仮想計算機の構築並びに,仮想計算機上での計算を行った.また,計算と同時に仮想計算機から大気中に放出された放射性物質の拡散過程を可視化することも実施した.本報告では,世界規模での実アプリケーションの実験の概要とその結果についてまとめる.Metacomputing, which enables us to construct a virtual computer system with some computer resources or experimental devices via internet connection, was proposed. Japan Atomic Energy Research Institute, JAERI, also continued to carry out several numerical simulations on a virtual computer system even though it was restricted in the JAERI's LAN. At SC2000, we had an opportunity to construct a worldwide virtual supercomputer with help of several supercomputer centers at Germany, US, UK and Japan, and we succeeded to execute a "Quick responsible source estimation system" with 510 processor units on 5 sites. Furthermore we demonstrated a real-time visualization for the dispersion process of radioactive particles released into atmosphere. In this report, we summarized the result of worldwide metacomputing experiment.
著者
長谷川 健太 大石 哲 佐野 哲也
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.108, 2010

本研究では山梨大学の二重偏波ドップラーレーダーを用いて,短時間の定量的降雨予測における精度不足の要因の一つとされる降雨の落下過程の解明について考察する.レーダーエコーの強い部分における鉛直からの傾き(以下では仰角と称する)に着目し,各高度の雨滴の落下速度とドップラー速度を用いて仰角を表現するモデルを開発した.2009年8月2日の事例を用いて,モデルの結果と観測したエコー画像を比較したところ,エコーの仰角の時間変化をよく表現することができた.この結果から,強エコーの傾きは雨域の移動速度に対する各高度の相対的な速度差から形成されていることが示唆された.
著者
加藤 容三 広瀬 素尚 長谷川 典彦 片山 勲
出版者
社団法人日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.33, no.373, pp.1264-1270, 1984-10-15

Rotating bending fatigue tests were made on a quenched and tempered 0.45% carbon steel in the temperature range from room temperature to 450℃ at a machine speed of 3600 rpm. The fatigue strength σ_f at 4×10^4 to 3×10^7 cycles reached a maximum at about 350℃ due to cyclic strain aging in the same manner as the annealed material. For the quenched and tempered material the fatigue limit was clearly confirmed up to 200℃ but not observed at the peaking temperature of 350℃, while for the annealed material the fatigue limit had been confirmed even at 350℃. the fatigue strength of the quenched and tempered material was higher than that of the annealed material at every temperature, but the effect of cyclic strain aging on fatigue strength of the former was less than that of the latter. This suggests that this material shows different effect of cyclic strain aging at high temperatures when heat treated differently. The observation of fatigue crack propagation behavior revealed that the strain aging at 350℃ is more effective for the quenched and tempered material in preventing crack initiation rather than inhibiting crack propagation, contrary to the results of the annealed materials, which shows that strain aging is more effective in inhibiting crack propagation.
著者
長谷川 秀樹
出版者
日本離島センター
雑誌
しま (ISSN:13437224)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.53-61, 2019-09

本稿では、南インド洋に位置するフランスの島嶼地域「レユニオン」 「マヨット」で二〇一八年に実施した調査結果を報告する。二島は仏国海外地域という特殊な状況にあるため、前号ではまず同国の海外島嶼地域の位置づけなどについて概説した。今号では、主にこの二島の振興に対するEUの役割、事業内容などについて述べたい。
著者
長谷川 信
出版者
静岡大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

本研究の課題は、国内の商社活動に対して国際カルテルが与えた影響を大倉商事(大倉組)の事例を中心に明らかにすることである。ドイツAEG社は1900年代以降、拡大しつつある日本の電気機械市場への進出を図った。その際、AEGの輸入代理店として市場拡大に取り組んだのが大倉組であった。しかし、1910年代に入ってから、大倉組はそれ自身では解決できない商社活動への制約を受けた。それは、アメリカGE社とAEGの間で結ばれた国際協定に端を発していた。1903年のGE・AEG協定そのものは日本市場を対象としていなかったが、GEは1909年に芝浦製作所と提携し、日本市場における芝浦の排他的権利を認めた。そして、GはAEGと大倉組に対して、芝浦の排他的権利を尊重するよう要求した。GEの要求を受け入れることは、大倉組がAEG製品の輸入販売業務を続けられないことを意味しており、大倉組はこの要求をそのまま受け入れることは出来なかった。最終的には、GEとAEG・大倉組との間で話し合いが行なわれ、大倉組はAEG製品の輸入業務を続けることが出来た。けれども、大倉組・AEGの日本市場における活動には制約が課せられた。具体的には、タ-ビンに関して1913年に芝浦とAEGの間で協定が締結され、(1)GE・芝浦は日本における専売権をAEGに与え、AEGは製造販売権を芝浦に与える、(2)AEGは日本で販売した製品の特許使用料、コミッションを芝浦に支払う、(3)過去4年間の実績に基づいて両者の販売比率を定めることになった。1910年代に入って、GEは、国際協定および特許協定を利用して、自己のテリトリ-を拡大する戦略を採ったと考えられる。そして、このGEの企業戦略によって、大倉組(大倉商事)の商社活動とAEGの日本における事業展開は制約を受けることになった。
著者
江島 清 長谷川 悦雄 松下 洋一 西出 宏之 土田 英俊
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.11, pp.1836-1845, 1988-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1

3種類の 2-位置側鎖にイミダゾリル置換基をもつ 5, 10, 15, 20-tetrakis(α, α, α, α-o-pivalamidophenyl)porphyrinatoiron(II) 誘導体 [12], [14] および [15] を合成した。5, 10, 15, 20-tetrakis(α, α, α, α-o-pivalamidophenyl)porphyrin[1] の銅(II) 錯体 [2] は, Vilsmeier 試薬と反応して 2-ホルミルポルフィリナト銅(II) 誘導体 [3] を与えた。[3] を濃硫酸で処理して銅が脱離した [4] を得た。これは, Knoevenagel 反応で 2-(trans-カルボキシエテニル)ポルフィリン誘導体 [7] を, 水素化ホウ素ナトリウム還元で 2-(ヒドロキシメチル)ポルフィリン誘導体 [5] を与えた。[5] にホスゲン, 1-(3-アミノブロピル)イミダゾール, および臭化鉄(II) を順次反応させて [12] を得た。[7] の鉄(III) 錯体 [13] に2種のイミダゾール誘導体をアミド縮合させて, [14] および [15] を得た。[5] と比較して [14] と [15] は, 鉄(II) フリーの状態で不安定であり, 置換基の種類によってイミダゾリル基をもつ 5, 10, 15, 20-terakis(α, α, α, α-o-pivalamidophenyl)porphyrin の安定性に差が見られた。
著者
江島 清 長谷川 悦雄 松下 洋一 西出 宏之 土田 英俊
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.10, pp.1713-1718, 1988-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10

5,10,15-tris(α,α,α-o-pivalamidophenyl)-20-[α-o-[4-[[12-(1-imidazelyl)dodecyl]carbamoyl]-2,2-dimethylbutanamido]pheny1]porphyrinatoiron(II) [9] を合成した。5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-アミノフェニル)ポルフィリン [4] に 1.2当量の4-エトキシカルボニル-2,2-ジメチルブタノイルクロリド [3] および過剰量のピバロイルクロリドを順次反応させたのちエステルを加水分解し, 5,10,15-tris(α,α,α-o-pivalamidophenyl)-20-[α-o-(4-carboxy-2,2-dimethylbutanamido)phenyl]porphyrin [7] を得た。これに 1-(12-アミノドデシル)イミダゾール [7'] を縮合させて, 5,10,15-tris(α,α,α-o-pivalamidophenyl)-20-[α-o-[4-[[12-(1-imidazolyl)dodecyl]carbamonl]-2,2-dimethylbutanamido]Pheny1]Porphyrin [8] を得た。この化合物は化学的に安定であり, 対応する既報の 5,10,15-tris(α,α,α-o-pivalamidophenyl)-20-[β-o-[5-(1-imidazolyl)pentanaido]phenyl]porphyrin が光と酸素の共存下で迅速に分解するのと対比される。[9]のとり得る立体配座をあわせ議論した。
著者
森 禎三郎 藤村 匠 山田 洋平 狩野 元宏 佐藤 健二 浅沼 宏 星野 健 長谷川 奉延 黒田 達夫
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.841-849, 2019-06-20 (Released:2019-06-20)
参考文献数
38

総排泄腔遺残症・外反症や性分化異常症では,生命予後やQOLは改善されてきたが,生殖機能における長期的予後は十分に改善されているとは言えない.当院では小児外科,小児科,泌尿器科,産婦人科でチームを形成し,症例ごとに治療を行っている.今回,外陰部形成術を施行した5例を後方視的にまとめ,術式の選択と至適な手術時期について検討した.原疾患は総排泄腔遺残症が2例,総排泄腔外反症,先天性副腎皮質過形成症,原発性性腺機能低下症が1例ずつであった.外陰部形成には,結腸間置法,skin flap法,pull-through法,total urogenital mobilization,骨盤腹膜利用法をそれぞれ用いた.外陰部形成術を行う疾患は多岐にわたり,病態も多様なため,症例に応じたアプローチが必要である.疾患に応じて手術時期を設定し,乳児期より多科連携による治療戦略のロードマップを描くことが重要である.
著者
家原 知子 長谷川 大輔
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.125-129, 2021

<p>小児血液・腫瘍性疾患患者は一般小児に比べて新型コロナウイルスに感染しやすく,重症化するリスクが報告されつつある。最も重要なことはCOVID-19の感染を防ぐことである。患者やその周囲の者は,人込みを避け,マスク着用,手指衛生の徹底を行う必要がある。入院中は院内感染防止に努める必要がある。COVID-19に罹患した際には,COVID-19による合併症と原疾患の状態を判断して,リスクの高い病態の治療を優先させる個別化した治療方針の決定が必要である。寛解期であれば,一定期間の原疾患の治療中断はあり得るが,高リスクや緊急性の高い場合は,原疾患の治療を優先する必要がある。その他の問題点として,SARS-CoV-2感染を恐れて医療機関受診控えで重症化に至った報告がある。また,医療資源の不足から,治療に遅れや変更が生じるなど,小児血液・腫瘍性疾患患者の治療が影響を受けている。小児やその保護者に適切な情報提供が必要である。</p>
著者
長谷川 啓哉
出版者
日本農業経営学会
雑誌
農業経営研究 (ISSN:03888541)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.28-42, 2013-06-25
参考文献数
11

Since Japanese consumers tend to choose high-quality apples, Japanese apple farmers need many unskilled workers (for harvesting fruit, removing bad-quality fruit, and removing leaves that block the sunlight) as well as workers with pruning skills. As a result, apple farming is based mainly on manual labor. In Japan, it is difficult for large-scale apple orchards to have higher productivity and profitability than middle- or small-scale orchards because large-scale orchards incur higher costs as they employ more workers. According to Toyoda Takashi's studies in the 1980s, workers were in short supply in large-scale orchards ; consequently, yields in these orchards decreased. He called the apple orchards "Sohouka-daikeiei."<br>However, nowadays, large-scale apple orchards show high productivity and profitability. "S" orchard in Hirosaki City, Aomori Prefecture, is one such orchard. However, "S" orchard once was a typical apple orchard with low productivity. What improvements did "S" orchard make? The aim of this study was to evaluate "S" orchard's management so as to elucidate the reasons why "S" orchard has high productivity and profitability for its success. To achieve this aim, I analyzed two questionnaires completed in 1985 and 2011, financial statements, and work-hour data.<br>"S" orchard changed its management in the following manner. (1) "S" orchard hired middle-aged and young men who were not working at the orchard in 1985. (2) "S" orchard established a labor-saving farming system and simultaneously reduced the number of unskilled workers. (3) "S" orchard stopped selling apples to agriculture cooperatives and rural sellers and started selling directly to retailers and consumers.<br>"S" orchard attained the following advantages : (1) land productivity increased after several middleaged and young men were recruited as workers to control soil and apple-tree quality. (2) working hours per 10a were reduced. (3) Thus, labor productivity improved as a result of the above-mentioned changes. (4) New selling methods helped sell "S" orchard's low-grade apples at higher than market prices. As a result, the average price of the apples sold by "S" orchard increased. (5) Profitability improved with increases in labor productivity and average prices.<br>"S" orchard's management has become a model for the management of a large-scale apple orchard.
著者
江島 清 松下 洋一 長谷川 悦雄 西出 宏之 土田 英俊
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.4, pp.518-521, 1988-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1

シクロデキストリンをかぶせた構造のヘム誘導体(以下CD結合ヘムと略記する)を,鉄(II)プロのなトポルフィリンIX(ヘム)の6-,7-位プロピオン酸とα-シクロデキストリン(以下CDと略記する)の第一級ヒドロキシル基をエステル結合またはウレタン結合により結び付ける反応から合成した。CD結合ヘムへ軸配位したイミダゾールの配位平衡定数はヘムの約1/100に低下,,CD結合側からの軸配位がCDの立体障害によって妨げられることを観測した。高分子2一メチルイミダゾールが配位したCD結合ヘムは,-30℃ の水中で寿命の長い酸素錯体を生成した。これらの結果は,CDがヘム面上にかぶさった立体構造を支持する。CD結合ヘムを生体内酸素輸送の目的でラットに静脈内投与した場合,急性毒性はヘムに比較していちじるしく低下する。
著者
長谷川 正哉 金井 秀作 島谷 康司 大田尾 浩 小野 武也 沖 貞明 大塚 彰 田中 聡
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101851, 2013

【はじめに,目的】転倒予防や足部障害の発生予防,パフォーマンスの維持・向上には適切な靴選びが重要である.一般的な靴選びは,まず自覚する足長や靴のサイズに基づき靴を選び,着用感により最終的な判断を行うものと考える.しかし,加齢による足部形態の変化や過去の靴着用経験などから,着用者が自身の足長を正確に把握していない可能性が推測される.また,靴の選択基準はサイズや着用感以外にも,デザイン,着脱のしやすさ,変形や疼痛の有無など様々であることから,自覚している靴サイズと実際の着用サイズが異なる可能性が考えられる.そこで,本研究では地域在住の中高齢者を対象とし,自覚する靴サイズおよび実際に着用している靴サイズ,足長や足幅の実測値から抽出したJIS規格による靴の適正サイズを調査し,比較検討することを目的とした.【方法】独歩可能な中高齢者68名(男性20名,女性48名,平均年齢64.0±6.5歳)を対象とした.調査項目は左右の足長および足幅の実測値,足幅/足長の比率,実測値を基に抽出したJIS規格による左右別の適正サイズ,2Eや3Eなどで表わされる適正ウィズ,自覚する靴サイズ(以下,自覚サイズ),および現在着用中の靴の表示サイズ(以下,着用サイズ)とした.なお,各項目間の比較にはフリードマン検定およびScheffe法による多重比較を行い,統計学的有意水準は5%とした.また,自覚サイズと着用サイズの一致率,適正サイズと着用サイズの一致率,および適正サイズおよび適正ウィズの左右の一致率を求めた.【倫理的配慮、説明と同意】実験前に書面と口頭による実験概要の説明を行い,同意と署名を得た後に実験を実施した.なお,本研究は全てヘルシンキ宣言に基づいて実施した.【結果】左右足型の実測値は右足足長22.6cm (21.8-23.85),左足足長22.7cm (21.75-23.7),右足足幅9.5cm (9.0-9.9),左足足幅9.3cm (8.9-9.9)であり,足幅/足長比率は右足41.5%(39.8 -42.5),左足41.0%(39.5-42.6)であった.また, JIS規格により抽出した右足適正サイズは22.5cm (22.0-24.0),左足適正サイズ22.5cm (21.5-23.5)であったのに対し,自覚サイズは23.5cm(22.5-24.5),着用サイズは23.5cm (23.0-25.0)となった(結果は全て中央値および四分位範囲).着用サイズおよび自覚サイズと比較し左右適正サイズ(p<0.001),左右足長実測値は(p<0.001)は有意に小さい結果となった.次に各項目の一致率について,まず自覚サイズと着用サイズの一致率は37%であり,被験者の63%は自身で認識する足サイズとは異なる靴サイズを選択し着用していた.また同様に,右足適正サイズと着用サイズの一致率は7%,左足適正サイズと着用サイズの一致率は4%と極めて低い結果となった.なお,適正サイズの左右の一致率は52%であり,これに適正ウィズの結果をふまえた場合,左右の靴の一致率は4%に低下した.【考察】中高齢者が実際に着用している靴サイズおよび自覚する足のサイズは,JIS規格に基づく適正サイズや足長の実測値より大きいことが確認された.また,自覚サイズと着用サイズ,適正サイズと着用サイズの一致率が極めて低く,中高齢者では自身の足の大きさを自覚していないだけではなく,自覚する足サイズに基づく靴選びをしていないものと考えられた.中高齢者の靴の選択基準には装着感や着脱の容易さ,デザインなど複数の要因が関与することが過去に報告されており,本研究でもこれらが影響した可能性が示唆される.次に,実測値から抽出した左右の靴適正サイズの一致率が極めて低いことが確認された.これは,左右同一サイズの靴を購入した場合,いずれか一方の靴が足と適合しないことを意味している.先行研究により靴の固定性の低下が動作時の不安定性や靴内での足のすべりを増加させ運動パフォーマンスの低下を引き起こすことが報告されており,靴の不適合が中高齢者の転倒リスクを増加させる可能性が示唆された。これらの靴の不適合に対し,靴内部での補正や靴紐などによるウィズの調整,片足づつ販売する靴を選択するなどの対応が必要になるものと考える.また,本研究の被験者の多くが自身の足サイズについて適切に認識しておらず,正しい評価や知識に基づく靴選びが重要と考える.【理学療法学研究としての意義】適切な靴の選択は転倒予防や障害発生予防,パフォーマンスの維持・向上を考える際に重要である.また,インソールの処方時や内部障害者のフットケアなどの場面では適切な靴の着用が原則となる.そのため理学療法士は対象者の足型と靴のフィッティングについて理解を深め,適切な靴の着用について啓発していく必要がある.