著者
千葉 直子 関 良明 堀川 裕介 橋元 良明
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.311-324, 2014-01-15

スマートフォンの急速な普及にともない,ネットワークサービスの利用環境はいっそう進展し,青少年の安全なインターネット利用は喫緊の課題となっている.本稿では,青少年にインターネット接続端末を利用させる保護者と家庭の状況に焦点をあて,子どものインターネット利用によるリスクに影響を与える要素を定性的調査によって整理し,家庭における対策レベルの向上施策を議論するためのフレームを与える仮説モデルを構築する.さらにスマートフォンを利用する中高生とその母親300組に対する定量的調査によって仮説モデルを検証する.その結果,子どものインターネット利用における主要なリスクである「プライバシー情報の露呈」「有害情報閲覧」「ネットでの出会い」それぞれのリスクに対する家庭内要素の相関モデルを示した.「プライバシー情報の露呈」「有害情報閲覧」に影響を与える家庭の要素として,規範意識や育児観に代表される保護者の考え方,家族関係,家庭内のルールや対策が存在することを明らかにし,「ネットでの出会い」については,家庭でのルールや対策との相関がなく,家族関係が寄与していることを明らかにした.また家庭内のルールや対策は,保護者の考え方に加えて,保護者のリスク学習経験および家族関係と相関関係があることを明らかにした.With the spread of smartphones, the degree of Internet usage has increased even more, and Internet safety is an urgent problem facing young people. Our research focuses on parents and the home situation of young Internet users. We construct a hypothetical model that provides a framework for discussing how to lessen the risk for young people using the Internet at home based on our qualitative analysis. Furthermore, we tested the hypothetical model based on a quantitative investigation of 300 smartphone-using junior and senior high school students and their mothers. The investigation results clarify the correlation model considering such factors as parenting concepts, family relations, in-home rules and measures as domestic elements that control the risk when children use the Internet. In addition, we clarify that home measures are related to family relations, the parents' learning experience regarding the risk of Internet use, and the implemented parenting concepts.
著者
田井 政行 関屋 英彦 岡谷 貴之 中村 聖三 清水 隆史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
AI・データサイエンス論文集
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.378-385, 2021

<p>耐候性鋼橋梁の点検・診断は,防食機能の劣化状態の判定に基づき行われており,その判定には外観評点法が用いられる.しかしながら,外観評点法により的確な評価を行うためには,相応の経験を要するが,昨今の人材不足や点検費用の確保などの課題があり,簡易かつ精度が高い評価手法の確立が求められている.本研究では,耐候性鋼橋梁のさび近接画像と既存の CNNモデルを活用し,外観評点の識別精度について検討を行った.また,識別精度に及ぼす学習・検証用近接画像の画像サイズの影響についても検討を行った.その結果,VGG19及び SEnetの CNNモデルが高い識別精度を示した.また,入力画像サイズが大きいほど識別精度が向上することを明らかにした.さらに,学習と検証に用いた画像の解像度が異なる場合,識別精度が低下する傾向があることを示した. </p>
著者
関岡 東生 南橋 友香 Haruo Sekioka Minamihashi Yuka
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.205-215,

群馬県川場村は,1975年から「農業プラス観光」を地域振興の基本理念として種々の地域振興策を講じてきた山村である。その結果として,過疎地域指定(1971年)も2000年には解除される等の成果を生んでいる。本稿では,この「農業プラス観光」を支える基盤である民間宿泊業のうち特に民宿に注目し,現状の分析と若干の考察を行った。その結果,民宿業の現下の優越性として,[◯!1]総じて高いリピート率を誇ること,[◯!2]各民宿毎に特徴ある客層を対象とした経営を実現していること,[◯!3]多くにおいて後継者を有していること,等を確認することができた。一方で,解決を要する点として,[◯!1]スキー客への依存,[◯!2]地域社会への経済的貢献度の低さ,[◯!3]他機関・他組織との連携の弱さ,[◯!4]交流事業との連携の弱さ等も明らかとなった。
著者
関根 康正
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.387-412, 2020

<p>本論文は、『社会人類学年報』45巻掲載論文を引き継ぐ形で、現代社会を席巻するネオリベラリズムという思潮を人類学の立場から根底的に批判する一連の研究の中に位置づけられる。アガンベンが指摘するように、生政治が実践される現代社会では代理民主主義という形で「例外状態の常態化」が進行している。現に、世界中で大多数の国民が「ホモ・サケル」状態に置かれるような格差どころか棄民される社会を生き始めている。この20年にわたる私の「ストリート人類学」研究は、現代の苦境で苦しむ被抑圧者、犠牲者の側の視点に立つことを明確に宣言している。それは、このネオリベラリズムという浅薄な進歩の歴史から見れば、「敗者」とされる人々の歴史を「下からのまなざし」で掘り起こし、そこに希望と救済の場所を構築していく作業に傾注する人類学である。故に、周辺化され「ストリート・エッジ」にある人たちが、それでも、生きられる場をどのように構築しているのかを、その同じ社会空間を共有する者として、注目してきた。その立場から、勝者の側の純化した「高貴な」まなざし=「往路のまなざし」のみではなく、他者性と共にある不純で汚れた雑多な敗者のまなざし=「復路のまなざし」を含みこんだ二重化=交差のまなざしが生きられる場には不可欠であることを見出してきた。その延長上で、本論文では、「ストリート人類学」のより確かな理論化に向けて、特に、ストリート・エッジの理解に有益なアガンベンの「例外状態」論を批判的に検討することを通じて、現代社会を生き抜く極限の様式として「往路と復路の二重化のまなざし」を持つ構えが現代人一般に要求されていることを明らかにする。その意味で、基本的にアガンベンの「新たな政治」の実現という目標を共有しているが、『ストリート人類学』のみならずむしろ私の研究の起点になった『ケガレの人類学』にまで遡って行われる独自の思考によって、その目標を真に実現していくための補完として本研究はある。ここでの議論を通じて、『ストリート人類学』が、その発想の基礎において『ケガレの人類学』の到達点をふまえていることが明確に自覚され、その結果、フーコー、メルロ・ポンティ、ベンヤミン、岩田慶治、アガンベンらの諸理論との新たな出会いがもたらされた。そうした先人との対話の総合的な結果としてストリート人類学の基本構造理論がここに提出されている。</p>
著者
田中 良太 吉田 治 松田 実 福島 久喜 花岡 建夫 呉屋 朝幸 関 恒明
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.1222-1225, 1997-06-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
15

注入法による豊胸術後乳癌の1例を経験したので報告する.症例は52歳女性, 23年前に注入法による両側豊胸術を受けた.左乳房および左腋窩部腫瘤を触知し増大してきたため当院外来を受診した.造影MRIにて左乳房に腫瘤像が描出され,腫瘤辺縁に輪状濃染像が認められたため乳癌を疑った.腫瘤摘出生検を施行し病理学的に浸潤癌との診断が得られたので定型的乳房切除術を施行した.組織学的には充実腺管癌,鎖骨下リンパ節転移陽性と診断された. 造影MRIが注入異物と乳癌との識別に有用であった.
著者
琴浦 毅 森屋 陽一 関本 恒浩
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_959-I_964, 2012 (Released:2012-09-18)
参考文献数
10
被引用文献数
4

海上作業を伴う海洋工事では,高度化されつつある気象モデル,波浪推算モデルを用いた予測結果が作業可否判断に利用され始めている.しかし,波浪推算モデルの推算精度に関しては,外洋部での高波浪に着目して検討されたものが多く,海上作業の可否判断である波高1m程度の精度の検討は多くない.また,瀬戸内海は多くの島嶼が存在し,波周期が短いことから高精度モデルでの検討が望まれるが,高精度モデルは計算時間が多くかかり,作業可否判断予測に活用するには実務的とは言えない. 本研究では瀬戸内海を対象として,気象庁GPV海上風データを入力とし,波浪推算モデルとしてWAMモデルを用いた波浪予測を実施するとともに,海上作業可否に着目して風・波浪の予測精度を検討し,実務的に妥当な予測精度を得るために必要な条件を明らかにした.
著者
小田切 史徳 中里 祐二 秋山 泰利 島野 寛也 高野 梨絵 木村 友紀 塩澤 知之 田渕 晴名 林 英守 関田 学 戸叶 隆司 住吉 正孝 代田 浩之
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.165-175, 2018-11-02 (Released:2018-12-28)
参考文献数
28

皮下植込み型除細動器(subcutaneous implantable cardioverter defibrillator : S-ICD)の有効性と安全性は,すでに海外の臨床試験データから示されているが,これらのデータに本邦での使用経験は含まれていない.今回,当施設におけるS-ICDの初期使用経験について報告する.対象は2016年3月から9月までに当施設でS-ICD植込みを行った7例と,対照として経静脈的植込み型除細動器(transvenous implantable cardioverter defibrillator : TV-ICD)植込みを行った10例である.患者背景,原疾患,検査所見,既往歴,内服薬,手術方法,作動状況などについて,両群で比較検討した.植込み術を施行された17例(S-ICD 7例およびTV-ICD 10例)を213±86(127〜312)日後まで観察した.S-ICD植込みを行った7例は全例男性で,平均年齢は46.3±14.1(34〜68)歳,BMI(body mass index)は23.3±2.6(20.7〜27.9)kg/m2であった.一次予防目的が4例,二次予防目的が3例であった.また,原疾患に関しては,虚血性心筋症2例,非虚血性心筋症2例,Brugada症候群などを含むその他が3例であった.S-ICD植込み群は,7例全例で術中に除細動テストを施行し,そのうちの1例はシステム位置の再調整を要した.観察期間内で,S-ICD植込み群およびTV-ICD植込み群ともに適切作動は見られなかったが,S-ICD植込み群において,2例の不適切作動が見られた.有害事象については,TV-ICD植込み群と有意差は認められなかった.S-ICDは,植込み時に本体・リードの位置に注意を要するものの,短時間で安全に植込み可能であった.当施設で経験した2例の不適切作動は,心房粗動波とノイズのいずれもオーバーセンシングが原因と考えられ,適切なスクリーニング方法,治療ゾーンの調整やセンシングベクトルの選択には今後の検討を要すると考えられた.(心電図,2018;38:165~175)
著者
関口 正之
雑誌
美術研究 = The bijutsu kenkiu : the journal of art studies
巻号頁・発行日
no.321, pp.15-24, 1982-09-30

Part I and Part II of this paper appear in Nos. 317 and 319 of the Bijutsu Kenkyu. In the present part the subjects of Scrolls 6, 7 and 8 are described. Scroll 6 is the scene of Suppression of Demons. At the center of the picture is the troop of the Demon King attacking Śākyamuni. The heads of the arrows shot toward Śākyamuni are trasformed into lotus flowers. The three daughters of the Demon King are depicted at the lower left of the picture ; the daughters transformed into old women by Śākyamuni are at the middle of the bottom; and Pṛthivi who has appeared to prove the righteousness of Śākyamuni is at the lower right. The depiction of Pșthivī whose upper half of the body is emerging from the earth like this is rare. Furthermore, the figure of Śākyamuni meditating for seven days after the demon-suppression is added at the right hand side of the picture in a small size. Scroll 7 is the scene of King Bimbisāra's Conversion to Śākyamuni's Teaching after hearing his sermon. In the upper part of the picture is depicted the audience in front of Śākyamuni, including the king and his ministers, and elephant carriages and attendants waiting the return of the king are in the lower half. Behind Śākyamuni is Gṛdhrakūta Mountain with its eagle-headed peak, suggesting that Śākyamuni is preaching. Also, the wheels of law painted between Śākyamuni and the kings symbolize his preaching. Scroll 8 is a visualization of three stories concerning the Nirvāṇa. The entire left half of the picture plane is devoted to a minute depiction of the Nirvāṇa scene which embodies details like Mahāmāyā with her attendants and the old women near Sākyamuni's feet. The lower right of the picture plane is the cremation of Śākyamuni. Here, as MahāKāśyapa, who could not come to see Śākyamuni upon his deathbed, worships the coffin placed on firewood, feet of Śākyamuni appear from the coffin. The upper right is the scene of distribution of Śākyamuni's relics in which a brāhmaṇa Droṇa divides the relics.
著者
加藤 智章 新田 秀樹 西田 和弘 石田 道彦 稲森 公嘉 田中 伸至 石畝 剛士 国京 則幸 関 ふ佐子 原田 啓一郎 水島 郁子 石畝 剛士 片桐 由喜
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の研究成果として、各国の診療報酬体系は原価計算に基づく報酬設定というスタイルを取っていない点で共通であるという知見を得た。ここで日本の診療報酬体系は統一的で極めて精緻なシステムを構築していることが理解できたものの、医療保障を実現するための供給サイドに対しては、診療報酬に偏重しているため、医療施設等のスクラップアンドビルドに柔軟性を欠くとの仮説を獲得するに至った。このため、本研究はテーマを、医療施設をはじめとする医療保障体制全般にシフトチェンジし、基盤(A)の研究に転換することとした。
著者
関口 由彦
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第49回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.E15, 2015 (Released:2015-05-13)

本発表は、北海道日高地方におけるアイヌ民族の文化継承をめぐる動きを事例として、そこに浮かび上がる「血」、「系譜」、「地域」の観念を検討する。それぞれの観念の複雑な絡み合いが、直接的な人と人とのつながりに基づく「アイヌ」や「仲間」といった自己認識を生み出し、自己のエスニックな帰属が文書資料によって規定される「人種化」(=出自/血統にもとづく帰属集団の固定化)という現実に抗う様態を考察する。
著者
吉田 惠子 四十九院 成子 熊田 薫 岡本 洋子 伊部 さちえ 関根 正裕
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.19, pp.61, 2007

<BR><B>【目的】</B><BR> 昨年度の本学会において、ゆで大豆、蒸し大豆、圧力鍋で加熱した大豆についてその特徴を比較し、各豆に甘味や硬さに特徴があることを報告した。昨年は水でのゆで豆であったが、大豆を速く軟らかくゆでるために食塩や重曹を添加する方法が実際に行われている。今回は水、食塩添加水、重曹添加水、圧力鍋でのゆで豆を作成し比較したところ、硬さや粘りに違いが認められた。そこで各ゆで豆の相違を、組織、物性の面から検討することを目的とした。<BR><B>【方法】</B><BR> 大豆は丹波錦白大豆を用いた。電子顕微鏡写真のサンプルは以下のように調製した。20gずつ、5倍量の水、1%食塩水、0.3%重曹水中で室温(24℃)で15時間浸漬後、200mlのビーカーに入れ、湯煎鍋でやわらかくなるまで加熱した。水中で加熱した豆は2時間、1%食塩水、0.3%重曹水で加熱した豆は1時間加熱した。圧力鍋加熱は同様に水浸漬後、オートクレーブを用い、112℃15分加熱した。各豆について、透過型電子顕微鏡で撮影した。物性試験の豆は、上記の方法で経時的なサンプルを調製した。静的粘弾性測定として、レオナ-RE33005(山電)を、動的粘弾性測定として、MG-Rheoアナライザー(アトー)を用いて測定した。<BR><B>【結果】</B><BR> 電子顕微鏡写真では、水加熱豆は、細胞壁、プロテインボディーともその形態を保っていたが、食塩添加豆では、プロテインボディーに変化が、重曹添加豆、圧力鍋加熱豆では、プロテインボディー、細胞壁に変化が認められた。物性試験では静的、動的試験での差がみられた。また加熱方法によるゆで豆の粘弾性の差も明らかであり、組織と物性の相関も示唆された。

1 0 0 0 OA 鼻科学新論

著者
尾関才吉 著
出版者
金原医籍
巻号頁・発行日
vol.下, 1906

1 0 0 0 OA 鼻科学新論

著者
尾関才吉 著
出版者
金原医籍
巻号頁・発行日
vol.上, 1906
著者
藤木 大介 関口 道彦 森田 志保 高橋 佳子 倉田 久美子 山崎 晃
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.169-179, 2010 (Released:2010-10-22)
参考文献数
20

In 2004, Ninio suggested that the process of comprehending noun phrases such as “black shoes” included two steps: comprehending the noun “shoes” and the addition of the attribution “black.” Based on this assumption, Ninio predicted that the developmental process of comprehending noun phrases must progress through a phase in which children understood only the noun. She demonstrated the validity of her assumption through experiments conducted in Hebrew. However, her results were confounded by the word order of the noun phrase in the Hebrew language, in which the noun is the first word and the headword. In this study, we used Japanese phrases to eliminate the artifacts of the above study, because in the Japanese language, the noun is neither the first word in a noun phrase, nor the headword in an adjective phrase. Results indicated that also in Japanese, there is a developmental phase in which children comprehended only the noun in the noun phrases, which confirmed Ninio's assumption. However, there was also a phase in which children comprehended only the noun in the adjective phrases. These results cast doubt on Ninio's suggestion that the process of comprehending the noun phrase includes two steps, or that this two-step process results in a phase in which children comprehend phrases based only on the noun. We think current results relate the idea of noun dominance in children's learning of new words as described by Gentner in 1982, and this dominance influences children's attention by directing it to the noun when comprehending phrases.