著者
尾関 伸哉 立松 典篤 三石 知佳 石田 亮 吉田 真理 杉浦 英志
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.271-279, 2021 (Released:2021-09-16)
参考文献数
31

【目的】在宅緩和ケアを受けるがん患者の訪問リハビリテーション(以下,訪問リハビリ)開始から4週後までの身体的Quality of Life(QOL)およびActivities of Daily Living(ADL)の変化とその特徴を明らかにすること.【方法】対象は在宅がん患者35例とした.身体的QOL評価はQLQ-C15のPhysical Functioning(PF),ADL評価はBarthel Index(BI)およびFIM運動項目(Motor FIM)を用いた.リハビリテーション(以下,リハビリ)開始時から4週後までのPFおよびADLスコアの経時的変化,PFスコア維持・改善群と悪化群でのADLスコアの変化と特徴について検討した.【結果】PFスコアは4週後で有意な改善を認め,PFスコア維持・改善群において4週後でMotor FIMスコアの有意な改善を認めた.【結論】在宅がん患者の身体的QOLは,リハビリ開始時に比べ4週後で維持・改善がみられ,在宅で実際に行っているADL(しているADL)能力を維持することは,身体的QOLの維持・改善につながる可能性が示唆された.
著者
小林 豊 飯干 茜 渡邉 博文 井出 和希 堀内 祐希 手島 麻美子 中川 喜文 山口 安乃 小林 伸一郎 谷口 幹太 関 泰 榊間 昌哲 鈴木 豊秀
出版者
一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
雑誌
日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.347-355, 2021 (Released:2021-12-29)
参考文献数
12

CKDシールは、腎機能情報共有により患者に有効かつ安全な薬物療法を提供することを目的に各地で検討されている。CKDシールに対する病院・薬局薬剤師のニーズに関する調査は存在するものの、患者が腎機能情報共有の必要性をどのように理解しているかは不明である。静岡県富士宮市でCKDシール貼付システムを構築するとともに、富士宮市立病院でシールを貼付した患者のニーズと、同地域における腎機能情報共有の現状と課題を調査した。2019年7月10日からの3か月間にお薬手帳にCKDシールの貼付を提案した228名の患者全員より同意を得た。医師と作成したプロトコルに基づく貼付を行った患者は62名(27%)であった。アンケートは入院患者、腎臓病教室受講患者、維持透析患者74名中67名(G3b/G4/G5/G5D=7/12/11/37、回答率91%)及び、腎臓病薬物療法の研修会に参加した薬局薬剤師20名中19名(回答率95%)から回答を得た。保険薬局で薬を貰った経験は患者51名(76%)が有したが、51名のうち腎機能を伝えた患者は10名(20%)のみであり、薬局薬剤師から腎機能を聞かれた患者は15名(29%)のみであった。一方、薬局薬剤師16名(84%)は検査値を入手できた時にのみ腎機能を確認していた。腎機能により薬を調節することへの患者の認知度は29名(43%)と低く、CKDシール貼付開始を全ての患者と薬局薬剤師が期待すると回答した。薬局薬剤師のCKDシール活用方法は用法用量等の確認だけでなく、患者とのコミュニケーションや生活指導が挙げられた。患者は薬局薬剤師に腎機能情報が必要との認識が低く、腎機能の共有はされていなかった。CKDシールが薬物療法適正化につながるだけでなく、腎機能情報共有の意義を患者に説明し理解を得ることで、CKDシールが貼られたお薬手帳の活用と薬剤師による腎臓病療養指導につながる可能性が示唆された。
著者
関口 秀夫
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.36-45, 2014-08-28 (Released:2018-03-30)
被引用文献数
1

Japanese names of palinurid and scyllarid lobster species recorded from Japanese waters and commercially imported from foreign countries are reviewed. New names are proposed for species not available for Japanese names.
著者
関西 剛康
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.453-458, 2021-03-31 (Released:2021-06-16)
参考文献数
54

The purpose of this study is to elucidate the view of gardens held by Ashikaga Takauji and his younger brother Tadayoshi, members of the Ashikaga shogun clan who played active roles in Kyoto Prefecture in the early Muromachi period. Takauji used his residential garden for mingling with Zen priests, but not for hosting poetry meetings, which was one of the Japanese dynastic customs. His younger brother Tadayoshi, however, started to hold such events as poetry meetings at the garden of his residence, known as Sanjobo-montei, offering a place to the aristocratic class called Kuge, the military nobility known as Buke, and Zen priests so that they could mingle with one another. This suggests that it is Ashikaga Tadayoshi who began the custom of using residential and other gardens for the Japanese dynastic culture. The Ashikaga brothers used the gardens of other places than their residences, such as Tenryu-ji Temple and Saiho-ji Temple, for communicating with various people, including the Emperor and Zen priests. The Ashikaga brothers organized events for the dynastic culture and Zen Buddhism at such gardens, making cross-cultural communication between the Kuge aristocratic class, the Buke military nobility, and Zen priests catch on with these three circles.
著者
中條 雅彦 牛 凱軍 門間 陽樹 小林 順敏 関 磊 佐藤 美加 郭 輝 大友 篤 崔 宇飛 只浦 寛子 斎藤 辰典 永富 良一
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.383-389, 2014-08-01 (Released:2014-07-26)
参考文献数
40

Coffee administration has been shown to increase maximum voluntary contraction and muscular endurance. However, no study has addressed the association between daily consumption of coffee with muscular function. This cross sectional study aimed to investigate the association between frequency of coffee consumption (CC) in daily life and muscle strength among a population of working adult men. This cross sectional study included men (n = 516, mean age: 47.1) who participated in an annual health examination conducted in Sendai. The monthly frequency of coffee consumed was reported by a brief-type self-administered dietary history questionnaire. Leg extension power (LEP) was measured as an index of muscle strength. Subjects were divided into tertile levels according to CC. Analysis of covariance was used to examine the relation between the tertile levels of CC and LEP. After adjustment for potential confounders (including all lifestyle factors), the adjusted means (95% confidence interval) of LEP across the tertiles of CC were 17.4 (16.6 - 18.1) for the lowest tertile, 17.9 (17.4 - 18.5) for the mid tertile, and 18.9 (18.3 - 19.5) for the highest tertile (p for trend = 0.007). Higher frequency of monthly coffee consumption was associated with higher muscle strength.
著者
仁平 裕太 山田 育穂 関口 達也
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2017年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100228, 2017 (Released:2017-05-03)

近年の日本では,緑被率に代わり,緑視率が人の意識に与える影響についての注目が高まってきている.特に,建物が密集する都心部において緑を確保することの重要性は高く,実際に,緑の基本計画に緑視率向上の政策が示されている自治体も存在する.また,緑視率が人に与える影響についての研究も複数存在するが,植生の配置が人々の意識に与える影響を充分に評価できているとは言いがたい.そこで本稿では,都市部における植生の量・配置を定量的に指標化し,人々の景観に対する主観的評価に与える影響を分析する.そして、得られた知見を適切な植生配置の一助とすることを目的とする.重回帰分析を用いて植生の量と配置が人々の評価に与える影響について分析した結果,目線上部にある植生は,高評価につながることが示された.つまり,植生を多く配置できない場合,中木や高木を中心に植栽を整備する方が景観上好ましいことが示唆された.
著者
宮崎 晴代 茂木 悦子 斉藤 千秋 原崎 守弘 一色 泰成 鈴木 伸宏 関口 基 湯浅 太郎
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : journal of the Japanese Orthodontic Society : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13440241)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.118-125, 2001-04-25
参考文献数
35
被引用文献数
11

本研究の目的は, 多数の歯を維持する日本人高齢者を対象として, その咬合および顎顔面形態を明らかにすることである.千葉市では毎年, 8020達成者を募集し千葉市主催の長生き良い歯のコンクールで表彰している.今回は平成10, 11年度の応募者41名に対し, アンケート調査および口腔内診査を実施し, その際口腔内及び顔面写真撮影, X線写真撮影, 印象採得を行い資料とした.応募者の平均年齢は82歳5カ月で, 平均現在歯数は25.3歯であった.年齢および現在歯数に男女差はなかった.咬合関係は, 前後的には上顎前突が78.9%, 正常が21.1%, 反対咬合は0%だった.垂直的には過蓋咬合が34.2%, 正常が65.8%, 開咬は0%だった.犬歯部アングル分はClass I (64.6%)とClass II (25.0%)が大半を占めた.叢生については, 上顎前歯部の叢生を有するものは4.9%と少なかった.下顎前歯部は31.7%に叢生を認めたが著しい叢生ではなかった.顎顔面形態については下顎骨が後下方回転し, やや上顎前突傾向を示した.以上により日本人8020達成者は比較的良好な咬合および顎顔面形態を有することがわかった.
著者
近藤 正聡 チザール バレンティン 廣瀬 貴規 関 洋治
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.86, no.7, pp.393-397, 2010-07-25

核融合炉ブランケットの共存性を評価するために必要な実験や分析等の手法を包括的に紹介する.共存性試験の重要なパラメータについて整理し,その上で試験片の準備の仕方,液体中への浸漬方法とその装置,試験後の試験片の分析方法について具体例を交えて解説する.
著者
関本 克良
出版者
天理大学学術研究委員会
雑誌
天理大学学報 (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.109-129, 2012-02

日本軍「慰安婦」問題は90年代に国連を中心にさかんに議論が行なわれた。その背景には旧ユーゴスラビア紛争での「強かん収容所」などに見られる武力紛争下での女性に対する性暴力が国際社会の重大な関心事であり,2000年の国連安全保障理事会決議1325の採択に至る経緯があった。武力紛争下の性暴力を断ち切るには犯罪行為の責任者を処罰する必要がある。元「慰安婦」による国内訴訟は全て申立てが棄却され原告敗訴で終った。判決の重大な焦点の一つに条約における個人請求権の解釈がある。日韓請求権協定によって不法行為に基づく被害者個人の損害賠償請求権が放棄されているのか否か,また国際法上個人の損害賠償請求権が存在するのか否か,本論はそうした視点から若干の考察を行なっている。
著者
小関 成樹 伊藤 和彦
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.390-393, 2000-05-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
10
被引用文献数
7 12

電解水の保存中の変化を検討した結果,以下のことが明らかになった.1) 短期間の保存において,強酸性電解水のORP,有効塩素濃度は明所開放条件によっては速やかに低下し,有効性を失うことが示された.一方,遮光密閉条件において強酸性電解水は安定していることが確認された.また,強アルカリ性電解水は保存条件によらず不安定であった.2) 長期間の保存においても強酸性電解水は遮光密閉状態であれば安定した状態を保つことが明らかになった.また,遮光しない場合にはORP,有効塩素濃度は速やかに低下してしまうがpHは変化を示さないことから,活性を失っても酸性を示す水溶液であることが明らかになった.
著者
古関 喜之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.1-21, 2016-01-01 (Released:2019-10-05)
参考文献数
23

本稿では,台湾産マンゴーの日本への輸出を取り上げ,ポジティブリスト制度導入後の日本市場向けマンゴーの生産・輸出システムと,安全性や品質管理を重視した日本市場への対応が生産地域や台湾農業に与えた影響について検討した.日本でのポジティブリスト制度導入後,台湾では政府主導によって,日本向けマンゴー輸出業者と日本市場向けマンゴー園の登録制度,および輸出前の生産者単位による残留農薬と糖度の検査体制が構築された.安全性を重視した対日輸出への取組みは,農家に農薬費の負担を増大させたが,収益増加にも結びついている.また,生産者の安全管理に対する意識を高め,台湾国内では日本の安全基準に基づく輸出システムで生産されたマンゴーが流通し,差別化商品として扱われている.台湾農業にとって,安全性重視の対日輸出への取組みは,輸出や国内販売において,台湾産マンゴーの市場を多様化させる一因となっている.
著者
大関 由貴 奥村 匡子 神吉 宇一 Okumura Kyoko 神吉 宇一 Kamiyoshi Uichi
出版者
神奈川大学 国際経営研究所
雑誌
国際経営フォーラム (ISSN:09158235)
巻号頁・発行日
no.25, pp.239-279, 2014

日本では,移民政策は検討しないとする政府の公式見解にも関わらず,外国人の入国は増加し,定住化が進んでいる現状がある.人口減少や労働力不足が深刻な社会問題となりつつある中,今後も外国人の受け入れは増加が見込まれる.外国人の十全な社会参加に欠かせない社会統合を考えるとき,重要な役割を担う日本語教育は,現在どのような研究的課題を抱え,今後,どこを目指していくべきなのだろうか.本稿では,このような問題意識に立ち,経済連携協定により来日する介護人材の受け入れ問題を対象に,日本語教育および関連領域における研究の現状を整理し,それらを対比させることによって,日本語教育研究の現状と課題を浮き彫りにすることを目的とした.分析の結果,外国人介護人材に関する日本語教育研究は,国家試験分析研究の偏重による弊害,就労現場研究の必要性,制度設計や社会の支援体制整備を目指す研究の必要性という三つの課題が明らかになった.査読論文
著者
小山 明日香 内田 圭 中濵 直之 岩崎 貴也 尾関 雅章 須賀 丈
出版者
Pro Natura Foundation Japan
雑誌
自然保護助成基金助成成果報告書 (ISSN:24320943)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.27-35, 2020 (Released:2020-09-29)
参考文献数
15

霧ヶ峰高原は多くの絶滅危惧動植物の生息地であり,国内有数の観光地でもある.しかし近年ニホンジカによるニッコウキスゲの被食被害が深刻化し,対策として複数の防鹿柵が設置されている.本研究では,亜高山帯半自然草原での防鹿柵設置による生物多様性保全効果を検証することを目的に,植物・昆虫調査およびドローン画像解析を行った.結果,植物の開花種数,開花数および絶滅危惧種の開花種数はいずれも柵内で柵外より多く,チョウおよびマルハナバチの種数・個体数も柵内で柵外より多かった.また,ドローン空撮画像をもとに防鹿柵内外のニッコウキスゲの花数を計測し,防鹿柵による保全効果をより広域で視覚化した.本成果は,防鹿柵の設置が観光資源植物および絶滅危惧動植物を保全するうえで不可欠であることを示している.