著者
唐澤 俊一 青木 啓成 村上 成道
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第28回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.123, 2009 (Released:2009-08-11)

【目的】上腕骨近位端骨折に対する骨接合術は、プレートや髄内釘などを用いて施行されるが、臨床上、関節可動域が十分に確保されないまま理学療法(以下、PT)を終了する症例が散見される。また、骨接合術後のPTに関する報告は少なく、その要点は明らかにされていない。今回、骨接合術後症例の経過からPTプログラムについて検討する。 【方法】対象は、2003年4月から2008年9月までに当院整形外科にて手術を施行された15例(男性7例、女性8例)、プレート固定8例(LHSP2例、PHILOS6例)、髄内釘固定7例、平均年齢60.9±13.5歳。術後PTは2日以内に開始された。退院後は外来リハビリへ移行した。PT終了時の他動屈曲角度(以下、屈曲)120°以下を成績不良群として、成績良好群との比較を行なった。調査項目は、術式、年齢、術前待機期間、PT内容、骨癒合と転位やスクリューの緩みの有無、屈曲の経時的変化および改善率(各時期の前回の値を基準値として、各時期の値/基準値×100-100)、PT終了時の平均屈曲として調査し、屈曲の経時的変化と改善率は、術後1週、2週、3週、6週、3ヶ月、6ヶ月の値から算出した。 【結果】成績良好群11例、不良群4例。術式は、良好群プレート6例、髄内釘5例、不良群プレート2例、髄内釘2例。平均年齢は、良好群57±12.3歳、不良群71.8±11.6歳。平均術前待機期間は良好群5.8±2.7日、不良群12.5±10.1日。PT内容は、翌日から振り子、他動運動開始、3週より積極的な自動運動を開始。良好群1例に大結節の上方転位を認めたがほぼ全例骨癒合した。スクリューの緩みは両群1例ずつであった。屈曲の変化は、良好群では術後6週までに終了時屈曲の約90%が確保されていたが、不良群では2週から6週の可動域は停滞する傾向にあった。改善率は、良好群1週~2週12.4%、2~3週5.7%、3~6週8.4%、6週~3ヶ月4.6%、3~6ヶ月2.7%。不良群1~2週14.4%、2~3週-0.5%、3~6週4.2%。終了時平均屈曲は良好群159.1±8.6°、不良群112.5±8.6°であった。 【考察】術後成績においては、高齢、術前待機期間の長期化による関節内の瘢痕組織形成、早期のスクリューの緩みによる疼痛などが影響を与えると考えられた。肩甲胸郭関節の柔軟性低下、創部や関節内の炎症に伴う肩甲帯の緊張は、肩甲上腕関節の運動を阻害するため、安易に振り子運動や他動運動を進めるべきではないと考える。術後2週までの期間では、過度な緊張を抑え、肩甲胸郭関節の動きの獲得に重点を置く必要がある。特に可動域拡大の難渋が予測される症例では、2週以降に生じる関節内の組織間の癒着や軟部組織の連結障害を重視し、肩甲上腕関節の運動性の低下を最小限に抑える必要がある。
著者
青木 嵩 角野 幸博
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1176-1183, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
7

郊外戸建住宅地は,画一的な開発と類似した居住者の同時期の流入により,高齢化および人口減少が進行してきた.一方で近年一部の郊外住宅地では近隣からの二次取得層の転入や子育て世帯の流入など,新しい世帯が少なからず流入しており,世代交代の兆しも見え始めているが,若い世代の生活行動の実態と地域内の施設やサービスとの乖離が示唆される.本稿の目的は,それら人口減少・高齢化が進む郊外戸建住宅地の中・若年層居住者に着目し,今後の郊外戸建住宅地を担う彼らの購買および外食行動における行動実態を明らかにしていくことである.そして特に如何なる居住者がそうした行動をとりやすいかを統計的に分析し,郊外戸建住宅地再編の一助とする. 本稿では,主に2017年に緑が丘で実施した“緑が丘町・志染町青山地区のまちづくりに関するアンケート”の結果を用いる.アンケート回答者の内,中・若年者を便宜上①若年層:20歳~34歳,②中間層:35歳~49歳,③プレリタイア層:50歳~64歳の3区分に分類し,階層型クラスター分析とアソシエーションルール分析を用いてそれらの類型化および特徴の抽出を行った.
著者
青木 誠 村田 将人 金子 稔 澤田 悠輔 神戸 将彦 萩原 周一 中村 卓郎 大山 良雄 田村 遵一 大嶋 清宏
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.699-703, 2014-10-31 (Released:2015-01-24)
参考文献数
15

症例は60歳代,男性。近医定期受診日に全身状態問題なく,肺炎球菌ワクチンを接種された。同日夜間より39度台の高熱が出現した。2日後には両側性の難聴も併発し,近医を再受診した。白血球数の著増を認め,当院を紹介受診した。ワクチン接種部の蜂窩織炎による敗血症と考え抗菌化学療法を開始した。その後全身状態に改善を認めたが,蜂窩織炎以外に明らかな感染源は不明であった。肺炎球菌ワクチンによる重篤な全身反応,敗血症様反応は本邦でも数例報告されているが,難聴を呈した例の報告はない。今後,肺炎球菌ワクチン接種に関わる医療従事者は接種により重篤な副作用を生じうる可能性を十分に理解する必要がある。
著者
早瀬 光司 錫木 圭一郎 青木 誠治 上滝 丈太郎
出版者
廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.193-200, 2002-07-31
参考文献数
16

大学構内の公共空間を現場実験系として採用し, 散乱ごみ低減の社会実験を行った。実験系を朝清掃して散乱ごみをゼロとした後, 夕方, 散乱ごみを回収しごみ分析を行った。人員は10分間隔の写真撮影によりカウントした。実験1においては, ごみ箱も幟もない参照期間とごみ箱と幟「ごみはごみ箱へ」を設置した観測期間との間の散乱ごみ量を比較した。その結果, カンビンの散乱率は観測期間で10%以下となり, ごみ箱と幟による散乱ごみの低減効果が観測された。実験2においては, 灰皿も幟もない参照期間と灰皿と幟「吸い殻は灰皿へ」を設置した観測期間との間の散乱吸い殻量を比較した。その結果, 吸い殻の散乱率は観測期間で61~67%と大きな値であり, 灰皿と幟による散乱吸い殻低減効果はあまり認められなかった。また, 喫煙者は近くに灰皿があれば吸い殻はそこへ入れるが, 少し離れているだけで近くにない場合は灰皿へ入れようとしない傾向のあることもわかった。今後は, 喫煙者が吸い殻を散乱させないようにする啓発活動や働きかけなど, さらなる介入策の研究が必要であろう。
著者
青木 舜平 西川 祥子 柳原 英人 佐藤 徹哉
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会講演概要集 72.1 (ISSN:21890803)
巻号頁・発行日
pp.1006, 2017 (Released:2018-04-19)

局在表面プラズモン共鳴(LSPR)に伴う磁気光学効果の増大はスピン軌道相互作用の変化に起因するものと考えられている。本研究ではAuナノ粒子のLSPRを用いてCoFe_2_O_4_の磁気異方性の変化させることを目指す。Auナノ粒子が埋め込まれたCoFe_2_O_4_膜を作製し共鳴波長、ファラデー効果の測定をした。結果はファラデー回転角が共鳴波長で大きく変化し、磁気異方性の変化を示唆するものであった。
著者
杉松 献理 上田 慎治 寺内 文雄 青木 弘行
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.267, 2012 (Released:2012-06-11)

人は物体の形を見た際に様々な感情を抱きます。たとえば不安感や緊張感が感じられる物体からは同時に魅力が感じられます。本研究では,人が全体重をかけて 乗る自転車を不安感や緊張感の感じられる形にすることで日常では味わえない乗り心地が得られると考え,このことからワイヤーの柔軟性を利用したステアリン グ構造およびサスペンション機能を備えた,乗車可能な強度ある自転車フレームについて提案します。
著者
青木 尚子 渡邊 恵都子 ハーランド 泰代 植野 拓 由川 明生
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.277, 2010

【はじめに】<BR>心臓リハビリテーション(以下、心リハ)は退院後の患者教育と運動療法が継続できれば効果的とされている。当院での外来心リハ通院患者の継続・非継続因子の調査では、非継続因子として統計学的に有意差はないものの1、男性が継続しにくい2、遠方の方が継続しにくい3、自己負担が高い方が継続しにくい傾向にあった。今回は、低心機能にもかかわらず自覚症状が軽度なため過負荷に陥り易い男性の症例に着目した。仕事帰りに利用することができる自宅近辺の非医療施設であるスポーツジムへの利用に繋げることが出来たので、今後の課題と共に報告する。今回の報告は、本症例に対して説明し同意が得られている。<BR>【症例紹介】<BR>70歳台、男性、既往に狭心症や急性心筋梗塞(以下、AMI)など繰り返しており、今回4度目の入院となる。2009年12月に胸痛ありAMI(2枝病変)と診断され経皮的冠動脈形成術を施行した。PeakCK3039U/L。心エコー結果より、左室駆出率40%、後壁、心室中隔・前壁の壁運動低下、中等度の大動脈弁狭窄症みられた。当院のMIパス2週間コースを用い心リハを開始した。5病日目から個別運動療法介入し、その後大動脈弁狭窄症から心不全を合併し、MIパスが停滞したものの19病日目から集団リハを開始し、自転車エルゴメーターにて旧Borg指数11レベルの負荷設定とした。4週間入院リハを行い、退院時には近隣スポーツジムに週3回、当院の外来心リハを週1回継続することとした。その際にスポーツジムには運動許可を示す主治医からの文責と併せて担当セラピストより情報提供目的の心リハ連携シートを渡し、持参して頂いた。内容は、疾患の状態、安全に出来る運動内容、リスク管理チェック項目を記載した。症例にもスポーツジムスタッフにも分かりやすい言葉を用い、定期的に評価を行い運動内容の変更も記載出来るようにし、安全でスムーズな連携を図った。1ヶ月後、歩行時の呼吸苦あり外来心リハ時に受診し、心不全増悪(左室駆出率30%)がみられたため利尿剤の追加あり。その後、スポーツジム利用を週3回から1回に、外来リハを週1回から3回に変更し、医学的管理を中心に心リハを継続した。<BR>【まとめ】<BR>今回、心リハ連携シートを用い患者宅近隣スポーツジムへの紹介と運動指導を行った。本人への運動管理意識の向上と外来心リハも併用したことで症状に応じた運動指導を即座に変更・実施することが出来た。また、症状悪化に伴い循環器の外来受診を薦めることで医学的管理も可能となり、外来での症状コントロールが可能となった。今後の課題として1、症状に合わせた医療施設と非医療施設との役割分担の明確化2、使用料金や場所を考慮した連携施設の選択と拡大3、心リハ連携シートの見直しなどを行っていく必要がある。
著者
大谷 弘 古田 徹也 一ノ瀬 正樹 片山 文雄 石川 敬史 乘立 雄輝 青木 裕子 佐藤 空 野村 智清
出版者
東京女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

現代のように多様な価値観や情報が溢れる時代においては、我々の実践的文脈を離れた理性の明証性に訴えるような(通俗的な)個人主義的啓蒙思想は説得力を欠く。個人主義的啓蒙思想の理念に訴えるのでもなく、また権威に盲従するのでもなく、我々の実践に根差した形で思考し行為することの意義を徹底的に考える哲学としての常識哲学は、今日ますますその重要性を高めている。本研究の目的は、これまで十分に検討されてこなかったこの常識哲学の展開を哲学と思想史の両面から明らかにし、その洞察と限界を見極めるとともに、それを通して現代の我々が様々な問題について思考する際に常識の果たすべき役割を明らかにすることである。
著者
青木 尊之 吉田 正典 奥村 晴彦 矢部 孝 塙 雅典 野澤 恵
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

昨年度導入した20台のプレイステーション2 Linux kitで、並列の数値流体シミュレーションを行った。非圧縮性流体の場合、大量のネットワーク通信を伴うポアソン方程式の解法が最も大きな課題となる。並列化が容易なSOR法で2次中心差分法による離散化式と、局所補間微分オペレータ法による4次精度の離散化式を解いた。Linux kitに付属するGNUのコンパイラは、プレイステーション2のCPUであるEmotion Engine(EE)の高速化アーキテクチャを利用する最適化が行えず、インライン・アセンブラにより直接EEのベクトル・レジスタVU0を利用することにした。ベクトル・レジスタVU0を4並列で効率よく実行する必要があるが、メモリーからデータをロードするのに時間がかかり、その間はVU0が休んでしまう結果となった。これを回避するために、VU0の演算スケジュールを工夫し、データのロード・ストアを含めて450MFlopsの計算速度を達成した。プレイステーション2が高速のRAMBUSメモリーを用いているために、CPUキャッシュに入りきらないデータに対するアクセスに対しても余り速度が低下しないことが明らかになった。EEのもう一つの問題点として指摘されている「VU0が単精度演算しか行えないこと」を解決する必要がある。倍精度計算に対しては浮動小数点演算プロセッサが働かなくなり、計算速度は100分の一以下に低下してしまう。単精度計算で直接従属変数からポアソン方程式を計算すると桁落ちが生じてしまうので、残差から修正方程式を導出し修正量を求めて従属変数に加算・減算して修正する方法を開発した。修正方程式を解く際に桁落ちなどの誤差が入るが、反復ごとに修正値が小さな値に移行し、従属変数の精度範囲をまかなえることが明らかになった。非圧縮性流体の移流部分や圧縮性流体に対しては局所補間微分オペレータ法が少ないメモリーに対して高精度な計算を行うことができ、プレイステーション2に適していることが分かった。また、ルンゲクッタ時間積分を行うことにより安定な計算ができることが明らかになった。
著者
青木 勇人 安住 和久
出版者
一般社団法人 表面技術協会
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.189, 2011-03-01 (Released:2011-09-28)
参考文献数
10

The surface morphology and mass of a silver coating deposited on a glass substrate using silver mirror coating method were investigated as a function of the bath temperature, the glucose concentration used in the plating bath as a reducing agent, and the coating time necessary to obtain good coating quality. Using the optimum coating conditions of 10.8 ks deposition time and 0.2 °C temperature of the plating bath composed of 0.2 mol dm−3[Ag(NH3)2]++0.12 mol dm−3 glucose, a smooth and uniform silver coating with ca. 150 nm thickness was obtained. Improved adhesion of the silver coat to the glass substrate was obtained by application of an etching pretreatment to the glass substrate using various etchants. A commercially available etchant containing (NH4)HF2 provides an especially strong anchor effect because it induces a considerably rough dissolution trace to the glass substrate.
著者
青木 達彦 六浦 光一 池田 欽一
出版者
信州大学経済学部
雑誌
信州大学経済学論集 (ISSN:02880466)
巻号頁・発行日
no.49, pp.89-161, 2003

本研究は,平成10年度以降破綻の相次ぐ全国信用金庫,信用組合を対象に,経営破綻した信用金庫・信用組合と,破綻金融機関の譲渡・引受を行った金融機関を選び出し,それら個別行の財務変数の平成9年度から13年度までの動きを読み取ることにより破綻の説明に有意な財務変数を確定し,それによって破綻確率の推定を行ったものである。地域中小零細金融機関が共通しておかれるマクロ的・制度的環境下で,「倒産」する金融機関と「非倒産」の金融機関とを分岐させ,破綻に至らせるところの財務変数として,われわれは不良債権とその処理の仕方,そして不良債権処理の進捗率に焦点を当て,それに影響する各金融機関の不良債権「処理体力」等を問題にした。破綻行に特徴的な財務変数の動きをパターン化し,それをロッジト分析において破綻確率の推定に用いようとするとき,われわれはそれらの変数,例えば「不良債権の処理進捗率」が破綻行と非破綻行との間で識別しがたいという問題に出会った。この識別問題に対して,われわれは変数をどのように適切に組み合わせて,破綻確率をもっとも効率的に説明しうるかについての基準を与えるAIC (Akaike Information Criterion)を用いることとした。こうしてわれわれは破綻確率の推定に当たって,不良債権比率とか自己資本比率といった通常の説明変数よりもより効率的に説明しうる変数として(不良債権処理損を貸出で割った)「(実現)信用コスト」や不良債権の「処理体力」(その水準と変化率),あるいは「処理進捗率」を選び出し,それらを組み合わせて,破綻,健全を正しく判別できる確率が93%以上という最適モデルを得た。