著者
高瀬 公三 馬場 守ジルベルト 西 理佳子 藤川 英雄 山田 進二
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.327-330, 1995-04-15
被引用文献数
2

発育鶏卵漿尿膜(CAM)及び鶏腎培養細胞(CK)由来の鶏アデノウイルス(FAV)寒天ゲル内沈降(AGP)抗原の反応性を実験感染鶏血清及び野外鶏血清を用いて比較し, 次の成績を得た. 実験感染鶏血清の両由来抗原による陽性率はFAVの株(血清型)の違いによって異なり, ヘテロ抗原での陽性率はホモ抗原でのそれに比べて低く, またヘテロ抗原での抗体価もホモ抗原の抗体価に比べて低い傾向を示した. さらに, CAM由来抗原を用いた方がCK由来抗原の場合よりも高い陽性率, 又は高い抗体価の得られる場合が多かった. CAM由来抗原を用いて野外鶏血清を検査したところ, 用いる抗原(血清型)によって抗体陽性率は異なったが, 複数の抗原を混合することにより, 陽性率は高まった. このことから, FAVの血清疫学調査にはCAM由来の複数の血清型のAGP抗原を用いて行うことが望ましいと考えられた.
著者
相澤 孝司 かわい ひろゆき 野口 正孝 安森 弘昌 橋本 英治 川北 健雄 馬場田 研吾 上村 孝人 白本 恵美 綱島 夢美 Takashi AIZAWA Hiroyuki KAWAI Masataka NOGUCHI Hiromasa YASUMORI Eiji HASHIMOTO Takeo KAWAKITA Kengo BABATA Takato KAMIMURA Emi HAKUMOTO Yumi TSUNASHIMA
雑誌
芸術工学2014
巻号頁・発行日
2014-11-25

本研究では、「有馬温泉ゆけむり大学」を実践的なデザイン教育の場として研究を行った。すなわち、「学科間プロジェクト」の教育的効果を再考するために、本イベントの「Tシャツ」、「チラシ」デザイン、及び有志学生による「神戸芸工大雑貨屋さん」、「浴衣DEファッションショー」を開催した。その他イベントとして、「有馬温泉クリスマスツリープロジェクト」のワークショップ、「有馬節分会」の「チラシ」デザインを行った。また、武蔵野美術大学・群馬県立女子大学・立命館アジア太平洋大学に出向き、聞き取り調査を行った。研究の結果、「有馬温泉ゆけむり大学」に参加した学生は、他の学科及び学年を超えた交流の機会ができた。また、特に大阪音楽大学・近畿大学・武庫川女子大学の学生たち及び有馬温泉のスタッフとも交流ができたことは、大変貴重な経験となり、様々な教育効果が期待できる。したがって、「学科間プロジェクト」のカリキュラム開発のための基礎資料を得ることができた。In this studies, we studied that the "Arima Onsen Yukemuri University" was for design practical education. That is, in order to rethink the educational effect of "Interdepartmental Project", of this event "T-shirt", "Flyer" design, and by volunteer students "Kobe Design University Zakkaya san", "Yukata DE Fashion show" were held. As other events, workshop of "Arima Onsen Christmas tree project" , "Flyer" design for "Arima Setsubun E".In addition, visited to Musashino Art University, Gunma Prefectural Women's University, Ritsumeikan Asia Pacific University, which were investigated.Results of the studies, students who participated in the "Arima Onsen Yukemuri University" was able opportunity of exchange beyond the school year and other departments. In addition, it becomes a very valuable experience, that the staff of Arima Onsen and students of Osaka College of Music, Kinki University, Mukogawa Women's University also could exchange in particular can be expected to be teaching a variety of effects. Therefore, it was possible to obtain the basic data for curriculum development "Interdepartmental Project".
著者
釼 実夫 今村 州男 馬場 孝 伊良部 光男
出版者
THE SOCIRETY OF RUBBER SCIENCE AND TECHNOLOGYY, JAPAN
雑誌
日本ゴム協会誌 (ISSN:0029022X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.388-393, 1967

各種市販有機ゴム薬品 (酸化防止剤, 加硫促進剤等) をNR-オキシム加硫系およびNR-過酸化加硫物系に配合した加硫ゴムをCo-60r線で照射し, ブランクとの比較からその放射線劣化防止能力を検討した. その結果次のことがわかった.<br>1) 100%引張応力の空気中と窒素中との差が著しく大きかった.<br>2) 窒素中での100%引張応力の増加に対し, 空気中の100%引張応力がかなり低く, 空気中においてはそれほど網目数が増加していないことを示している.<br>3) 過酸化物加硫物においてDPG, OTBを含む試料およびブランクは空気中1×10<sup>7</sup><i>r</i>までの照射でそれぞれ測定不可能となった.<br>4) 過酸化物加硫物において特にイミダゾール系のものに関しては他のものと異なった100%引張応力の変化がみられた.<br>5) 添加したアンチラッドはイオウ加硫でもみたように全体を通じそれほど大きな効果は認められなかった.
著者
佐藤 文男 百瀬 邦和 鶴見 みや古 平岡 考 三田村 あまね 馬場 孝雄
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1-21_1, 1998
被引用文献数
5 6

現在,伊豆諸島鳥島で繁殖するアホウドリは約170つがいであるが,営巣地が不安定な地形にあるため繁殖率が低下している。本研究はアホウドリの個体数回復を促進させるために,より安定した場所に新しい営巣地を作ることを目的に行なった。<br>予備調査として,1991年11月に鳥島燕崎のアホウドリ営巣地でデコイ10体と音声を用いてアホウドリを新営巣地で繁殖させるための誘致調査を行い,アホウドリがデコイと鳴き声に反応し,近づくことを確認した。引き続き,1992年4月に鳥島初寝崎の新営巣地予定地にデコイ16体を設置,音声を再生して誘致実験を4日間行なった。その結果,通常アホウドリが飛来しない地域で9個体のアホウドリをデコイ上空に飛来させるのに成功した。同年11月からはデコイ41体を継続設置した(音声なし)。<br>これらの予備調査の結果を受け,1993年3月からはデコイを50体とし,太陽電池を用いた音声システムを併用,はじめてアホウドリ5個体(重複個体を除く)を新営巣地に着地させることに成功した。1993年の繁殖期から1996年にかけて誘致調査を継続させた結果,新営巣地への着地は重複個体を除き,1994年に5個体,1995年に29個体,1996年に41個体と増加した。また,年毎のアホウドリの滞在時間を示す滞留指数は,1993年:0.31,1994年:0.86,1995年:1.64,1996年:2.37となり4年間で7.6倍になった。アホウドリの着地は1993('92~'93)年にはデコイ区域に多く見られたが(78.9%),1994年からはデコイ区域の下部一帯に広がり,デコイ区域への着地数は1993年に比較し23.1%,1995年に8.3%,1996年には31.4%と減少した。この理由として1993年10月に音声システムの一部を変更し,スピーカーの向きを変更したことが考えられた。デコイ区域内に着地したアホウドリの着地地点と着地後に歩いて近寄ったデコイの型は成鳥型が多く,亜成鳥型は少なかった。また,音声との関係ではスピーカー近くの音量の大きい地域に着地地点が集中していた。着地したアホウドリは幼鳥•亜成鳥が多く,成鳥は少なかった。成鳥の着地は1996年の調査では41個体中4個体であった。着地個体の年齢は4•5•6齢が多く,1995年2~3月の調査では60%を占めていた。<br>新営巣地では1993年に2個体によるディスプレイダンスが観察されたのを始め,1994年には複数回のダンスと夜間も滞留する個体が,1995年には特定の場所に長時間座る個体が確認された。さらに,1995年11月には6歳の雄と5歳の雌との営巣産卵が確認され,1996年2月には雛の艀化を確認,6月10日に巣立った。また,1996年11月にはデコイ地域で3つがいの巣作りが確認され,うち2つがいで産卵を確認した。初繁殖したアホウドリの年齢は,4歳11ヶ月(♀),5歳11ヶ月(♂)•6歳11ヶ月(♂)で,いずれも1990•1991年生まれであった。1990年生まれの個体は1994年1月から複数回観察されており,繁殖開始は飛来しはじめて2年から3年かかることが示唆された。これらの観察を通し、アホウドリはデコイを海上から確認して,上空に飛来し,デコイと音声の両方の効果により着地,その後,おもに音声効果によって滞留が促されていると考えられた。また,初寝崎で繁殖しているクロアシアホウドリの存在もアホウドリの定着に効果的に作用したと考えられた。
著者
田崎 和江 野村 正純 馬場 奈緒子
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.389-400, 2007-09-25
被引用文献数
1

2007年3月25日9時41分にマグニチュード6.9の地震が石川県能登半島を襲った.その地震のため1〜2週間電気や水道が止まった.住民は近所の井戸,湧き水,山水を注意深く使用した.なぜならば,地震後のそれらの水は,泥などで色が変化し,pHも硫酸イオンのために中性から酸性に変化し飲料不可になった井戸水があったからである.一方,地震から2ヶ月後の6月初旬,石川県七尾市中島町において、亀裂や陥没等々の地下構造の変化のため,海水が水田に浸透し稲が枯れる塩害が発生した.塩害が発生した水田を始め,周辺の用水路,貯水池の水を現地で測定したところ,pH8を示し電気伝導度(EC)も高い値を示した.また,塩害を起こした水田の土壌と稲を蛍光X線分析により定量分析をおこなったところ高濃度の塩素のほか典型的な塩害現象を示すNa,S,Feが高濃度に検出された.
著者
森 陽子 望月 清 樋口 輝久 馬場 俊介
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究論文集 (ISSN:13495712)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.45-57, 2004

<I>Fuji-bashi</I>, completed in 1915 over the Fuji River in Sizuoka Prefecture, is probably the longest span suspension bridge as well as only one railway suspension bridge in Japan before the World War II. However it's existence has been forgotten for a long time. The reason of oblivion will be as follows; that is, it was constructed by a private paper-manufacturing company, and it was used only four years until it was destructed in the stormy night with intent to save disaster. The purpose of this paper is to regain its reputation, and try to emphasize that <I>Fuji-bashi</I> is one of the important structures in the history of civil engineering of the modernized era in Japan. The paper contains lots of original data concerning its construction.
著者
加藤 竜太 大関 隆夫 馬場 暁 新保 一成 加藤 景三 金子 双男 シェパード ギャレス ロックリン ジェイソン
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OME, 有機エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.236, pp.9-13, 2011-10-07

近年、表面プラズモン共鳴法(SPR)は高感度なセンシングが可能であることから、バイオセンサーへの応用が注目されている。表面プラズモン(SP)を共鳴励起させるために、プリズムを用いたプリズムカップリングSPR法やグレーティング基板を用いたグレーティングカップリングSPR(G-SPR)法がある。また近年、G-SPRを用いたSP異常透過光が観測されおり、そのセンサーへの応用の可能性が検討されている。本研究では、簡便性と実用性という点からこのT-SPRに注目し、T-SPRとマイクロ流体デバイスと組み合わせることで今までになかった簡便でコンパクトなバイオセンサーを作製した。そこで、IgGとanti-IgGの抗原抗体反応を行うことでこのデバイスのバイオセンサーへの有用性を示した。
著者
中西恭介 山口隆 卯田駿介 角谷亮祐 尹玄玄 倉知尚貴 馬場哲晃 串山久美子
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.10, pp.1-3, 2013-12-16

Music Puzzle はスライドパズルブロックを音楽シーケンサの各ブロックに見立てることで,視覚と聴覚を同時に利用してパズルを解くゲームアプリケーションである.パズルブロックにメロディやリズムを割り当てることで,ブロックをスライドして動かすたびに,絵柄だけでなく自動で音楽も変化してループ演奏される.ブロックに描かれている画像だけでなく,演奏されるメロディの違いを攻略のヒントにすることができる.
著者
十鳥 弘泰 大津 金光 横田 隆史 馬場 敬信
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CPSY, コンピュータシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.319, pp.19-24, 2009-11-26
被引用文献数
7

我々は,ループ中の実行頻度上位2位の経路(パス)を抽出し投機的に並列実行することでプログラムを高速化する2パス限定投機方式を提案している.本稿では,広範なプログラムに対する本方式の詳細な評価を行うため,現実的なハードウェア構成を想定したマルチコアプロセッサシステムPALSを提案するとともに,その評価環境について述べる.PALSでは,パス予測を行うハードウェア機構により,投機的なスレッドの制御にかかるオーバヘッドを低減する.また,プロセッサおよびプロセッサの持つメモリをそれぞれリング状に接続し,レジスタ間およびメモリ間での通信を実現することで,スレッド間での同期待ち時間を低減する。
著者
久野 譜也 村上 晴香 馬場 紫乃 金 俊東 上岡 方士
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 = Japanese Journal of Physical Fitness and Sports Medicine (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.17-29, 2003-08-01

The ability to walk is just as important for the elderly as it is for young people. In fact, in the elderly, decreased mobility limits function in daily life and can lead to more serious situations (e.g., becoming bedridden). The elderly population has increased over the last decade, and many researchers have studied the mobility of the elderly. However, the focus of most studies has been to facilitate recovery of bedridden individuals and prevent the elderly from becoming bedridden, and particularly to prevent fall-induced fractures, which often cause the elderly to become bedridden. However, about 70-80% of the elderly population do not require care, and it is necessary to conduct research on the maintenance of activities of daily living to make it possible for the elderly to work or volunteer. From this perspective, mobility is an important physical factor. Mobility is dependent on muscle activity and it has long been known that aging reduces muscle mass. Therefore, it is feasible to assume that reduced muscle mass leads to decreased ability to walk, and we have proven that there is a close correlation between the two. When presenting the idea of strength training to the elderly, it is appropriate to focus on the maintenance and improvement of mobility, not on the training itself. The results of our research can be summarized as follows : Muscle mass decreases with age, with the legs being affected to a greater degree than the arms. Moreover, muscle atrophy is dependent on weakening of muscle fibers, especially fast-twitch (Type II) fibers. Reduced lower limb muscle mass increases the risk of falling and can decrease walking ability to a degree that can affect daily living activities. In order to improve reduced muscle mass in aging, it is important to use an exercise program that is designed to strengthen fast-twitch fibers, which can be followed even by the elderly. Since walking therapy mostly mobilizes slow twitch fibers, it is not effective in preventing and improving muscle atrophy. It is important to have an exercise program that is designed to mobilize fast-twitch fibers.
著者
大野 裕美 下岡 正八 田中 聖至 本間 裕章 馬場 宏俊
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.33-41, 2008-03-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
25
被引用文献数
2

今回著者らは,小児の性格の違いで視知覚による情報探索の仕方に違いがあるかどうかを知るために,小児の性格を心理検査の一つであるTS式幼児・児童性格診断検査を用いて,依存群,標準群,自立群に分類し,歯科医師の正立顔写真に対する小児の眼球運動を測定した。移動角速度秒速5度未満を停留点,5度以上をサッケードとして分析し,以下の結論を得た。1.小児の顔の見方には性格が影響していることが示唆された。2.停留回数,停留時間とも依存群,標準群,自立群の順に増加した。部位別では諸部分を中心とした顔への停留が最も多く,特に自立群において増加した。3.停留点,サッケードの分布は各群とも諸部分を中心とした顔への分布が多く認められた。4.視線の走査方向には4つのタイプが認められ,自立群では繰り返し,「みる」Lookなどの規則性のある走査が増加する傾向にあった。5.依存群の顔の見方は従来の小児の顔の見方に類似し,自立群の顔の見方は成人の顔の見方に類似していることが認められた。しかし,依存群と従来の小児の見方は間違っているわけではなく,発達の一過程であることが示唆された。従って小児が何故そのような見方をしたのかを知ることは,小児一人ひとりの発達のプロセスを理解する上で重要と考える。
著者
馬場 朗
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.1-19, 2016-03

In Ovid's Metamorphoses, the story of Pygmalion, a mythological man from Cyprus since antiquity, was not necessarily aimed at celebrating the power and genius of art. It is much more likely that a religious reverence for Venus was responsible for the animation of Pygmalion's statue by the goddess so that she could become his wife and have their daughter Paphos than artistic excellence. However, in the fifth act, Sculpture, of the the 18th century opera-ballet Le Triomphe des Arts by Houdart de La Motte (1700), the story becomes explicitly concerned with the récompense for the art of Pygmalion, and the animation of the statue honours the genius in art.Rousseau's famous mélodrame, Pygmalion, first staged in 1770, seems to share such a perspective. However, Rousseau's Pygmalion cannot necessarily simply be reduced to this. Our study emphasises two points. First, a contemporary review in the correspondance littéraire of its performance in Paris, although not yet sufficiently analyzed, suggests to us that an important role is played by the vraisemblance of Pygmalion's passions, which is probably inseparable from that found in Rousseau's autobiographic attempts such as his Confessions, etc. Second, also embodied in this mélodrame is Rousseau's radical critique of French contempory opera, especially of the poétique du mervelleux confirmed in de La Motte's Opéra-Ballet as well as in the Acte de Ballet Pygmalion by Jean-Philipe Rameau (1748). More fundamental however is the possibility that his Pygmalion marked one of the most significant breaks with contemporary aesthetics still based on the poétique classique, which shall be a principal subject in the next part of our study.古代世界から語り継がれてきた、キュプロスの伝説上人物ピュグマリオンを巡る物語は、そもそもオウィディウス『変身物語』がそうであるように、芸術的天才の力を讃えるものでは必ずしもなかった。むしろピュグマリオンの彫像が生命化しその妻となって娘パフォスを生むのは、彼の芸術上の卓越さでは殆ど無くむしろウェヌスへの宗教的敬意に依っている。しかし18世紀に入り、ウダール・ド・ラ・モットのオペラ・バレェ『諸芸術の勝利』(一七〇〇年)第五幕「彫刻」が示す様に、この物語はピュグマリオンの「技」への「見返り」に明確に関るものとなる。彫像生命化は、彼の芸術上の天才に与えられる栄誉を象徴化するのである。一七七〇年に初演された、ルソーによる高名なメロドラム『ピュグマリオン』もまた上記の近代的な芸術上の天才礼賛を共有する様に見えるが、実は必ずしもそうではない。この観点から、本論は以下の二つの論点を強調することになる。第一に、未だ研究者の十分な分析を受けていない、そのパリ初演の際の『文芸書簡』の同時代の一つの劇評を介して、我々はルソーの自伝小説(『告白』等)の試みとおそらく不可分な形でのピュグマリオンの「情念」の「真実らしさ」の枢要な含意に着目する。第二に、このメロドラムには、ド・ラ・モットのオペラ・バレェだけでなくジャン・フィリップ・ラモーの「アクト・ド・バレェ」『ピュグマリオン』 (一七四八年)においても確認できる「驚異の詩学」、これに特に向けられる同時代フランス・オペラへの彼の批判が具現化されている。しかしより根本的なのは、ルソーの『ピュグマリオン』が、未だ「古典主義詩学」に基づく同時代美学に対して決定的な断絶の一つをしるしづけた可能性である。これについては次回の論考で本格的に取り組むことになろう。
著者
高嶺 翔太 後藤 春彦 馬場 健誠 山村 崇
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.78, no.686, pp.857-865, 2013-04-30 (Released:2013-06-04)
参考文献数
29

This study aims to clarify the effects of the morphology of the urban fabric upon the sequential scenery from the Metropolitan Expressway. The morphology of the urban fabric specified within this research is topography, land use during Edo Period and the land use prior to the construction of the Metropolitan Expressway. Through two experiments, cognitive and visual, the following has been identified.1) The topography and land use prior to the construction of the Metropolitan Expressway, effects the form of the expressway impacting the cognitive change in sequential scenery.2) The green space left from the Edo Period land use effects the cognitive change in sequential scenery.