著者
松元 俊 久保 智英 井澤 修平 池田 大樹 高橋 正也 甲田 茂樹
出版者
独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.3-10, 2020-02-28 (Released:2020-02-29)
参考文献数
23
被引用文献数
2 1

本研究は,脳・心臓疾患による過労死の多発職種であるトラックドライバーにおいて,労災認定要件であ る過重負荷と過労の関連について質問紙調査を行った.1911人の男性トラックドライバーから,属性,健康状態, 過重負荷(労働条件:運行形態,時間外労働時間,夜間・早朝勤務回数,休息条件:睡眠取得状況,休日数),疲労感に関する回答を得た.運行形態別には,地場夜間・早朝運行で他運行に比して一か月間の時間外労働が 101時間を超す割合が多く,深夜・早朝勤務回数が多く,勤務日の睡眠時間が短く,1日の疲労を持ち越す割合 が多かった.長距離運行では地場昼間運行に比して夜勤・早朝勤務回数が多く,休日数が少なかったものの, 睡眠時間は勤務日も休日も長く,過労トラックドライバーの割合は変わらなかった.過労状態は,1日の疲労の持ち越しに対して勤務日と休日の5時間未満の睡眠との間に関連が見られた.週の疲労の持ち越しに対しては,一か月間の101時間以上の時間外労働,休日の7時間未満の睡眠,4日未満の休日の影響が見られた。運行形態間で労働・休息条件が異なること,また1日と週の過労に関連する労働・休息条件が異なること,過労に影響 を与えたのは主に睡眠時間と休日数の休息条件であったことから,トラックドライバーの過労対策には運行形態にあわせた休日配置と睡眠管理の重要性が示唆された.
著者
山内 佑子 高橋 雅延 伊東 裕司
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.83-92, 2008 (Released:2017-06-02)

認知インタビュー(Cognitive Interview:以下CI)は認知心理学の実験的知見をもとにFisherとGeiselmanによって開発された記憶促進のための事情聴取方法である。想起方法としてCI技法を用いない標準インタビュー(Standard Interview:以下SI)とCIの2条件を設けて比較した従来の研究では、CIはSIよりも正確な情報を引き出すことが明らかにされている。本研究では2つの実験において、CIの有効性に及ぼす目撃者の性格特性の差異の影響を検討した。すなわち、参加者を向性テストの結果によって外向性高群と外向性低群に分けた後、銀行強盗の短いビデオを呈示した。実験1ではSI条件とCI条件を比較した。実験2では全員がCIを受ける前に、CI技法による想起の経験か、CI技法によらない想起の経験のいずれかを行った。その結果、CIの有効性は目撃者の性格特性によって影響を受けることが明らかとなった。これらの結果についてはCIにおけるラポール形成の面から考察した。
著者
東野 正明 林 伊吹 高橋 俊樹 須原 均 二村 吉継 櫟原 新平 青野 幸余 松尾 彩 川上 理郎
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.Suppl.2, pp.S181-S188, 2010 (Released:2011-12-01)
参考文献数
8

心臓血管外科手術患者において、術後の嚥下障害を術前や術直後に予測できるかどうかを検討した。症例は、心臓血管手術後経口摂取に問題があり、本院栄養サポートチーム (NST) に栄養管理の依頼があった 20 例 (男性 14 例、女性 6 例) で、手術から最終食事内容に至るまでの期間が 1 カ月未満であった 8 例 (A 群) と、1 カ月以上かかり術後の嚥下障害が大きな問題となった 12 例 (B 群) に分けて、両群間で比較検討した。その結果、心臓血管手術後嚥下障害を起こす要因として、年齢 (70 歳以上)、Body mass index (BMI)≧25 の肥満もしくは BMI < 18.5 の低体重、高度心機能低下 (EF ≦ 40%) の有無、脳梗塞の既往の有無、呼吸器疾患の既往の有無、緊急手術か否か、大動脈手術か否か、長時間手術 (10時間以上) か否か、の 8 項目のうち 4 項目以上に該当すると嚥下障害を引き起こす可能性が高いと考えられた。その中でも緊急手術、肥満、大動脈手術が影響していると考えられた。この 8 項目をスコア化したものと手術から最終食事形態に至るまでの日数との間に相関が認められた。また、心臓血管外科手術後患者の嚥下障害に対する NST 介入の効果も示された。術前スコアから術後の嚥下障害のリスクがあると予測される患者家族に対しては、十分な術前説明をするとともに、適切かつ迅速な対策を講じる必要があると考えられた。

1 0 0 0 IR 漢民族と神話

著者
高橋 庸一郎
出版者
阪南大学学会
雑誌
阪南論集 人文・自然科学編 (ISSN:03881822)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.81-88, 1999-03
著者
高橋 慶一 山口 達郎 夏目 壮一郎 中守 咲子 小野 智之 高雄 美里 中野 大輔
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.10, pp.467-474, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
17

大腸NET(neuroendocrine tumor)の外科治療で局所切除を行うか,リンパ節郭清を伴う腸管切除を行うかしばしば術式選択に悩む.リンパ節転移の危険性が高ければ,後者の手術が必要になる.術前CTでの転移リンパ節は直腸癌に比べて小さい傾向があり,術前に転移リンパ節を的確に指摘することは困難である.そこで,リンパ節転移予測危険因子を国内のアンケート調査387例で検討し,腫瘍径10mm以上,表面陥凹あり,NETG2,pT2以深,脈管侵襲陽性の5つの因子が抽出された.これらの因子数別のリンパ節転移率は,予測危険因子なし:0.7%,1因子:19.1%,2因子:20.7%,3因子:61.9%,4因子:75.0%,5因子:75.0%で,3因子以上では高いリンパ節転移率を示した.大腸NETの外科治療ではこれら5つのリンパ節転移予測危険因子を念頭に置き,手術方法を決定することが推奨される.
著者
孫 起和 金岡 祐次 前田 敦行 高山 祐一 高橋 崇真 宇治 誠人
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.48-53, 2020 (Released:2020-07-31)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

症例は72歳の男性で,直腸癌同時性肝転移に対して,術前化学療法としてmFOLFOX6+Panitumumab療法を行った後に腹会陰式直腸切断術,肝拡大左葉切除術および肝後上区域部分切除術を施行した.術後7日目に骨盤死腔内への小腸嵌頓による腸閉塞のため回盲部切除術を施行した.術後6カ月目のCTでは右下腹部に20mm大の単発結節を認め,FDG-PETでも同部位に集積を認めた.腹膜播種再発を疑い手術を行ったところ,回腸結腸吻合部の間膜内に腫瘤を認めたため,吻合部を含めた腸管切除術を施行した.病理組織所見では悪性像は認めず,瘢痕組織に囲まれた膿瘍を伴う,縫合糸を取り囲む多核巨細胞を認め,異物肉芽腫と診断した.回盲部切除術を行った際に間膜を閉鎖した縫合糸による異物反応と考えられた.悪性腫瘍術後に再発との鑑別が困難であった縫合糸による腹腔内異物肉芽腫を経験したため報告する.
著者
高橋 文孝 本阿彌 彩佳 赤木 浩之 菊地 勇輝 伊藤 大輔 畠山 祥明 土岐 美苗 藤田 幸弘 原 康 山口 伸也
出版者
Japanese Society of Veterinary Anesthesia and Surgery
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.7-14, 2023 (Released:2023-04-25)
参考文献数
20

第7頸椎頭側成長板骨折を受傷した幼猫2頭に対して、頸部腹側正中アプローチを行い、骨折整復およびチタンスクリューとポリメチルメタクリレートを使用した椎体固定術を実施した。2症例ともに術後徐々に、第5頸椎腹側部に骨棘形成の進行を認め、1症例では、胸郭および胸椎頭側部の変形所見が認められた。骨折の発症要因は不詳であるが、術後、インプラントの折損や緩みは認められず、臨床症状は改善し、歩行可能となったことから、本研究で用いられた手法は有効な治療選択肢の一つになりうる可能性が示唆された。
著者
横瀬 拓也 山内 直揮 高橋 紘一
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第31回情報化学討論会 東京
巻号頁・発行日
pp.P9, 2008 (Released:2008-11-06)
参考文献数
5

オペロンの下流に存在するターミネータ領域の探索を行った。RNAの構造解析に使用されるドットマトリックス法において、自由エネルギーを評価値として用いることで、ターミネータ領域探索法を構築した。E.coli K12の各遺伝子領域の下流60塩基配列のターミネータ解析を行ったところ、スコアの高いものと低いものがみつかった。前者はρ-非依存性、後者はρ-依存性ターミネータに相当するものと思われる。
著者
高橋 恭介
出版者
社団法人 日本印刷学会
雑誌
日本印刷学会誌 (ISSN:09143319)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.204-209, 2008 (Released:2010-12-15)
参考文献数
10

A historical overview of the changes on the printing technologies in Japan for the past 1300 years from the 8th century to the 21st century is described in this article. The rise and fall of the printing technologies and its background of the changes are explained from the viewpoints of the innate potential of the technology. Also, the future trend of the printing technologies is shown.
著者
青木 宏明 高橋 秀明 田邉 成 前川 宏一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.22-00225, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
21

塩分を含む地下水の流入による地中RC構造物の鉄筋腐食が報告されている.地中構造には地盤沈下等の外荷重が作用する場合もあり,塩害劣化の影響が重畳した場合の予測は重要性を増してきている.本研究では鋼材腐食させたRC中空円形試験体の8割を地中に埋設した載荷実験を行い,地中拘束下における外荷重の影響を調べた.その結果,地中円形トンネル構造の変形能と耐力は鉄筋腐食の影響はあまり顕著ではないが,先行曲げひび割れに沿って断面を貫通するせん断破壊が生じる場合があることを示した.このせん断破壊形態は,鉄筋の腐食域に非対称性があると,腐食域以外の健全部で起こり得ることを示した.さらに,曲げひび割れに沿う後続のせん断破壊のせん断耐力は,先行の耐力式を下回る場合があり,維持管理における留意点を明らかにした.
著者
村田 公一 村田 晶子 兵藤 博行 中山 広之 岩澤 淳 水谷内 香里 高橋 哲也
出版者
一般社団法人 日本生物教育学会
雑誌
生物教育 (ISSN:0287119X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.2-11, 2011 (Released:2019-09-28)
参考文献数
24

ヒトの聴覚器において鼓膜と卵円窓の面積比によって音が増幅される機構を説明するためのモデルを作成して,これを医療系学校(高等学校卒業者の1年生)の講義で演示した場合の学生の理解に及ぼす効果を調査した.モデルは,スチロールの円板を取り付けたばね式上皿はかりと市販の空気弾発射装置を組み合わせて作成し,スチロール円板の大きさ,スチロール円板と空気弾発射装置との距離(空気弾射出距離)および空気弾発射装置の口径を検討し,さらに空気弾発射装置は市販品と自作品との比較を行った.その結果から,スチロール円板は直径20㎝と5㎝,空気弾射出距離は40㎝,口径は12㎝とし,市販の空気弾発射装置を使用して講義で演示を行うこととした.講義を行った後では,「ヒトの聴覚器のどの部分で音は増幅されるか」についての質問に対して,「耳小骨」と答えた者の割合は講義の前よりも有意に増加したが,モデルを使わなかった場合と使った場合との間に差はなかった.また,「音をどのように増幅するか」についての質問に対しては,「てこの作用」と答えた者の割合は,モデルを使った場合のみ講義前より増加した.「鼓膜と卵円窓の面積比」と答えた者は,モデルを使わなかった場合は全くいなかったが,モデルを使った場合は講義前よりも有意に増加した.したがって,本研究において作成した演示モデルを使用することにより,本研究が目的とした「鼓膜と卵円窓の面積比」による音の増幅機構のみならず,「てこの作用」による増幅機構の理解度も高める効果があるものと思われる.
著者
高橋 阿貴
出版者
筑波大学
雑誌
戦略的な研究開発の推進 創発的研究支援事業
巻号頁・発行日
2022

怒りの爆発による過剰な攻撃行動は大きな社会問題である一方、攻撃性を特異的に抑制する薬物は存在しません。本研究提案は、マウスを用いて過剰な攻撃行動を誘発する神経回路の全貌を明らかにするとともに、その性差を明らかにします。そして、内分泌系や免疫系、腸内細菌などの末梢因子が、どのように過剰な攻撃行動の神経回路の働きに影響を与えるかを明らかにすることで、その介入法の開発につなげることを目指します。
著者
川合 覚 石原 優吾 笹井 貴子 高橋 史成 桐木 雅史 林 尚子 山崎 浩 平石 秀幸 千種 雄一 Satoru Kawai Yugo Ishihara Takako Sasai Fuminari Takahashi Masashi Kirinoki Naoko Kato-Hayashi Hiroshi Yamasaki Hideyuki Hiraishi Yuichi Chigusa
雑誌
Dokkyo journal of medical sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.189-192, 2013-10-25

埼玉県在住の男性・64 歳.2012 年11 月初旬,近医で日本海裂頭条虫症の診断を受け,駆虫目的で本院消化器内科を紹介受診.外来で駆虫治療したところ,全長約250 cm の白色紐状で,全体的に肉厚感のある虫体を排出した.虫体は形態学的特徴より日本海裂頭条虫ではなく,クジラ複殖門条虫が強く疑われたため,遺伝子解析を行った.PCR によって増幅されたcytochrome c oxidase subunit 1 遺伝子(cox1)の全長塩基配列を解析したところ,既知のクジラ複殖門条虫の塩基配列と99%の相同性を示したことから,本症例はクジラ複殖門条虫症と確定した.該当患者は,便に白色紐状物が混入する2&#12316;3 か月前に,生シラスを生食しており,これが感染源となった可能性が高いと考えられた.
著者
南 朱音 小林 優希奈 甲野 佑 高橋 達二
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回 (2020) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2I5GS203, 2020 (Released:2020-06-19)

複雑な入力情報から取るべき行動を推論する深層強化学習は,強力な関数近似器での学習(Deep Learning)が発展の核となった.強化学習には教師あり学習とは異なり,自分でデータ収集しなければならない探索の概念を持ち,単純な強化学習の一種であるバンディット問題では最適な探索アルゴリズムが明らかになっている.しかしながら関数近似を用いる文脈付きバンディット問題では最適な探索が保証されなくなる.そこで本研究では従来とは異なる探索アルゴリズムの検証を行った.人間は報酬の目標水準を持ち,それを満たす行動を速やかに探索する性質(満足化)が知られている.この満足化を応用した文脈付きバンディットアルゴリズムに応用した linear Risk-sensitive Satisficing (LinRS) は人工的な分布を用いた課題では既存アルゴリズムと比較しても良い成績が得られている.本研究では実世界から実測データでの文脈付きバンディット問題での検証を行った.人工データより実世界データの成績は悪化すると言われており,その対処法として LinRS における適切な探索のための目標水準の調整について議論する.
著者
高橋 慎
出版者
法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
雑誌
イノベーション・マネジメント (ISSN:13492233)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.23-48, 2022-03-31 (Released:2022-03-31)
参考文献数
43

本研究では、構造型ベクトル自己回帰(structural vector autoregressive:SVAR)モデルを用いて、S&P 500 E-mini先物のベスト・ビッド(最高値での買い注文)とベスト・オファー(最安値での売り注文)のファイルから計算されたオーダー・フロー・インバランス(買い注文と売り注文の差、order flow imbalance:OFI)と価格リターンの間の相互作用を分析する。よく知られている注文の数量などの市場変数の日内変動は、SVARモデルを1日の短い区間ごとに適用することで考慮し、一定区間で集計することによる内生性は、分散不均一性による識別(identification through heteroskedasticity:ITH)によって構造パラメータを推定することで処理した。ITHによる推定の結果、有意な内生性が存在すること、推定されたパラメータと関連する変量(OFIによって引き起こされるリターンの分散など)は市場変数の変動を反映して時間とともに変化することが示された。
著者
千田 いずみ 田中 秀治 高橋 宏幸 喜熨斗 智也 白川 透 島崎 修次
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.575-584, 2015-08-31 (Released:2015-08-31)
参考文献数
12
被引用文献数
1

背景:2011年10月に発表された救急蘇生法の指針に,心肺蘇生の学校へのさらなる普及の重要性が示された。目的:小学生の心肺蘇生法に対する理解力および実技能力を検討すること。対象方法:小学6年生96名を対象に心肺蘇生の知識の確認試験および1〜6年生214名を対象に実技試験を行った。結果:心肺蘇生法に関わる知識ではほとんどの問題で80%以上の正答率を得た。実技では高学年でも平均圧迫深さが30mmと十分な圧迫深度に達しなかった。人工呼吸では十分な吹き込みができたのが64%,AED操作は100%正しく操作することができた。考察:心肺蘇生に対する理解力は小学6年生で十分備わっていることが判明した。胸骨圧迫の確実な実施は難しいものの,人工呼吸やAED操作は正しく実施する可能性が見出せた。結論:中学生の体格では胸骨圧迫の実施が可能であると報告されていることから,小学生への心肺蘇生法教育の目的は今後の成長を見越した知識の習得および技術の獲得にあるといえる。
著者
岩切 一幸 外山 みどり 高橋 正也 劉 欣欣
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.198-210, 2022-07-20 (Released:2022-07-25)
参考文献数
30

目的:介護施設における介護職員(以下,介護者と記載)の人材不足が問題となっている.この対策として,働きやすい職場の構築が求められており,労働生活の質(Quality of Working Life:QWLと以下記載)の向上が必要になっている.しかし,優先的かつ重点的に取り組むべきQWL要因は明らかではない.そこで本研究では,現在の介護施設における介護者のQWLに影響する主要な要因と取り組むべき優先度を明らかにすることを目的としたアンケート調査を実施した.対象と方法:調査は,施設用および介護者用アンケートを用いて2018年10~12月に実施した.対象施設は全国の特別養護老人ホームから無作為抽出した1,000施設とし,対象介護者は1施設あたり8名の計8,000名とした.解析では,ロジスティック回帰分析を用いてQWLに影響する要因を抽出した.結果:解析対象施設は504施設,解析対象者は3,478名であった.解析の結果,介護者QWLとの関係において有意かつ最も高いオッズ比(OR)を示したのは人間関係(OR: 3.92, 95% CI: 3.09–4.97),次いで作業人数・配置(OR: 3.69, 95% CI: 2.56–5.32),コミュニケーション(OR: 3.42, 95% CI: 2.66–4.40),施設からのサポート(OR: 3.37, 95% CI: 2.69–4.23),労働時間・休み(OR: 3.20, 95% CI: 2.53–4.04),裁量(OR: 3.09, 95% CI: 2.46–3.88)と続いた.一方,給与はQWLと有意に関連したが,人間関係などに比べてオッズ比は低かった(OR: 2.81, 95% CI: 2.19–3.61).また,腰痛のない者ほど高いQWLが示された.考察と結論:介護者のQWLを向上させるには人間関係,さらには作業人数・配置,コミュニケーション,施設からのサポート,労働時間・休み,裁量に関する改善を優先的かつ重点的に実施すべきと考えられた.QWL向上のための改善策としては,介護者の不満理由から勘案して,上司・同僚との情報交換の促進,労働時間や休暇,メンタルヘルスを相談できる担当者の活用などが必要と思われた.給与はQWLを向上させる要因ではあるが,人間関係などに比べて関連性は低く,以前ほど重要ではなくなっていた.また,介護者の腰痛対策は,QWLの改善に貢献すると思われた.