著者
高木 泰士 Md Rezuanul ISLAM Le Tuan ANH 高橋 篤平 杉生 高行 古川 郁貴
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.12-21, 2020 (Released:2020-02-20)
参考文献数
20
被引用文献数
3 5

2019年9月9日に東京湾を直撃した台風15号の調査結果を速報する.神奈川では相模湾側で大きな高波被害は生じていなかったが,東京湾では直立護岸を乗り越える越波で被害が生じていた.千葉では九十九里浜ビーチ内の施設が被害を受けていた以外,目立った高波被害はなかった.一方,強風被害は激甚で,屋根の飛散や電柱の折損など各地で被害が生じていた.茨城でも高波被害は見かけなかったが,防波堤が堅固であることや,震災後の堤防改修が強靭化に寄与している.波浪追算の結果,ピーク波高は横浜で3.4m,東京や千葉で2.6mと推算された.湾内で急速に発達した高波が1m以下の高潮と相まって局地的な被害をもたらした.関東に上陸した過去の台風との比較では,今次台風はゆっくりと進んだ小型で強い台風と特徴づけられた.
著者
高橋 章 森藤 素良
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン (ISSN:18849644)
巻号頁・発行日
vol.29, no.10, pp.820-825, 1975 (Released:2011-03-14)
参考文献数
9

一般にテレビ共同受信や無線中継放送所で妨害波を除去するために, 受信アンテナを2基以上スタックして合成する方法が採用されている.われわれはこのようなアンテナの合成に対して各種の振幅調整器 (増幅器+減衰器), 移相器および合成器で構成した種々の振幅位相調整器を試作した.この振幅位相調整器の試験の結果, 妨害波を簡単に除去できた.この装置は短時間でスタックアンテナを最良な合成状態にできるので, 工事費の節減が可能である.
著者
高橋 弘 由利 和也
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

うつ病は、様々な症状が複雑に絡み合っている病気であり、病態を正確に捉えることが困難である。また、うつ病は、慢性ストレスにより神経の可塑的変化(シナプス減少など)を引き起こし、通常の神経回路と異なる可能性がある。そこで、本研究は、慢性的に敗北させたうつ病モデルマウスを用い、各うつ症状がどの様な神経活動により起こるかを明らかにする。また、ストレスによる神経可塑的変化が、グリア型グルタミン酸トランスポーター減少を介して、グルタミン酸過剰により引き起こされるかを明らかにする。これらの成果は、新しいうつ病の発症機序を実証し、うつ病の病態解明・診断・治療に貢献する。
著者
皆川 寛 高橋 純 堀田 龍也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.Suppl., pp.141-144, 2009-12-20 (Released:2016-08-06)
参考文献数
5
被引用文献数
9

「授業中にICTを活用して指導する能力」を向上させるために,模擬授業・研究授業・ワークショップ型事後検討会の3つの活動を組み合わせた校内研修プログラムを開発した.実際に研修を実施し評価を行った.その結果,校内研修プログラムの活動及び構成は妥当であるという評価が得られ,「授業中にICTを活用して指導する能力」を向上させる上で有効であることが確かめられた.
著者
高橋 正三 武川 恒 高橋 孝志 土井 隆行
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.501-503, 1988-08-20 (Released:2010-08-05)
参考文献数
11
被引用文献数
11 11

ワモンゴキブリの性フェロモンの一つペリプラノンA (PA) とそのエピマー (EPA) を使って, Periplaneta 属, Blatta 属6種の雄に対する性フェロモン活性を実験室内で生物検定した. PAのワモンゴキブリに対するフェロモン活性はペリプラノンB (PB) の約1/1000で, EPAの活性はPAの約1/1000であった. PA, EPAおよびPAとPBの混合物はワモンゴキブリ以外にヤマトゴキブリ, トビイロゴキブリ, コワモンゴキブリ, トウヨウゴキブリの雄にもフェロモン活性があった.
著者
高橋 克寿
出版者
史学研究会 (京都大学文学部内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.p259-294, 1988-03

個人情報保護のため削除部分あり形象埴輪研究のもっとも重要な意義は古墳祭祀の実態とその変遷を明らかにすることにある。本稿はその対象として古墳の墳頂に置かれる四種の代表的な器財埴輪を選び、その変化の中に古墳祭祀の変容を見ようとしたものである。基礎作業としてまず各器財埴輪にたいして型式分類を試み、靱形埴輪を二類四型式、盾形埴輪を二類二型式、甲冑形埴輪を三類四型式、蓋形埴輪を三類四型式にわけ、それぞれの型式変化を明らかにした。次に器財埴輪の各型式の古墳におけるセット関係と古墳の年代から器財埴輪の変遷を五期にわけて論じ、その消長を見た。その結果、器財埴輪は本来被葬者の眠る墳頂を厳重に隔絶し守護することを目的に鰭付円筒埴輪との強い関連のもとで四世紀後半に誕生したことが明らかになった。そして、製作技法の能率化、簡略化を進めながら発展した器財埴輪が五世紀後半から顕著に見せる衰退は、横穴式石室の導入などにかかわる新しい葬送観念の浸透によって引き起こされたことが考えられた。Haniwa figures are significant for illustrating the rites performed on tumuluses and for reflecting the concept of funerals of the Kofun 古墳 era. I have chosen four kinds of typical Haniwa figures called Kizai-Haniwa mainly of the Kinai 畿内 district and have tried to make a typological classification and a chronology for each one. Then I examined several instances of their assemblages on tumuluses and set up a five-stage chronology. Consequently, it was revealed that Kizai-Haniwa figures developed in the last half of the 4th century A. D. in order to defend the dead chieftain inside who was buried on top of the tumulus, with a special relation to Haniwa cylinders that had fins 鰭付円筒埴輪. In the 5th century Kizai-Haniwa figures prevailed over most of Japan, but their wane from the last half of the century was brought about by a new concept of funerals that came from the continent.
著者
平島 円 高橋 亮 西成 勝好
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

pHを高くし,アルカリ性に調整したコーンスターチ,タピオカ澱粉,ジャガイモ澱粉の糊化および老化特性について検討した。高pHでの澱粉の糊化は,pHにより同様の傾向を示した。いずれの澱粉においてもpH11付近では糊化が起こりにくいため,澱粉糊液の粘度は低下した。一方,pH12を超えると糊化が起こりやすくなるため,糊液の粘度は上昇した。しかし,pH13付近では糊液の粘度は著しく低下した。これはアミロース鎖やアミロペクチン鎖の分解が原因だと考えられる。コーンスターチとジャガイモ澱粉糊液の保存に伴う離水量はpHが高くなるほど少なく,高pHほど老化の進行がゆるやかになるとわかった。
著者
馬殿 恵 今川 彰久 阿比留 教生 粟田 卓也 池上 博司 内潟 安子 及川 洋一 大澤 春彦 梶尾 裕 川﨑 英二 川畑 由美子 小澤 純二 島田 朗 高橋 和眞 田中 昌一郎 中條 大輔 福井 智康 三浦 順之助 安田 和基 安田 尚史 小林 哲郎 花房 俊昭 日本人1型糖尿病の成因診断病態治療に関する調査研究委員会
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.37-46, 2019-01-30 (Released:2019-01-30)
参考文献数
34
被引用文献数
5

抗PD-1抗体投与後に発症する1型糖尿病について,日本糖尿病学会員への調査と文献検索を行い22症例を検討した.初回の薬剤投与日から発症までの平均期間は155日,発症時の平均年齢63歳,平均血糖値617 mg/dL,平均HbA1c8.1 %,尿中C-ペプチド4.1 μg/日(中央値),空腹時血中C-ペプチド0.46 ng/mL(中央値)であった.31.6 %に消化器症状,27.8 %に感冒様症状,16.7 %に意識障害を認め,85.0 %でケトーシス,38.9 %で糖尿病性ケトアシドーシスを発症した.50.0 %が劇症1型糖尿病,50.0 %が急性発症1型糖尿病と診断された.膵外分泌酵素は52.6 %で発症時に,28.6 %で発症前に上昇した.1例でGAD抗体陽性であった.抗PD-1抗体投与後に発症する1型糖尿病は,劇症1型糖尿病から急性発症1型糖尿病まで幅広い臨床病型を呈し,高頻度に糖尿病性ケトアシドーシスを発症するため,適切な診断と治療が不可欠である.
著者
高橋 きよみ 村松 宜江
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.17-24, 2002-03-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
8
被引用文献数
3 1

従来から顔面で皮脂の多い部分は, 額, 鼻, 顎とされTゾーンと呼ばれているが, これらと現実の化粧くずれは必ずしも一致していない。そこでわれわれはこの検証を行うため, 美容スタップを対象とした意識調査や顔面各部位の皮脂測定および皮脂分泌状態の観察を行った。その結果, 顔面を19部位に分割することで, 個人の皮脂ランクパターンが表現できることを確認した。次に化粧仕上がりおよび化粧くずれに対する乳液の影響を顔面各部位で評価したところ, その部位の皮脂ランクによりプァンデーションの付着量に差があり化粧くずれ印象も異なることを確認した。これらの結果よりわれわれは, 皮脂量の多い鼻, 眉間, 頬上内側および顎の部位を一括してIゾーンと呼ぶことがふさわしいと考えた。また, ベースメイクを行う際には, 各自の各部位の肌性に合ったモイスチャー品のタイプの選択および使用量の調整を考慮すべきであると考えた。
著者
山田 聡志 岩崎 友洋 佐藤 明人 坪井 康紀 柳 雅彦 高橋 達 薄田 浩幸 江村 厳
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.12, pp.1947-1955, 2010 (Released:2010-12-06)
参考文献数
24

症例は54歳男性.多発性骨髄腫に対する自家末梢血幹細胞移植約2カ月後に激烈な上腹部痛にて発症(発症時免疫抑制剤は使用していない),鎮痛に麻薬を必要とした.発症7日後に全身に皮疹が出現し内臓播種性の水痘感染症と診断,抗ウイルス剤投与にて改善した.経過中の腹部CTで腹腔,上腸間膜動脈根部付近の脂肪濃度上昇を認め,この所見が腹部症状へ関与している可能性と本疾患の早期診断の一助となり得ることを示した.
著者
藤原 咲平 高橋 浩一郎 關口 領
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.15, no.7, pp.255-264, 1937-07-05 (Released:2009-02-05)
参考文献数
6

If δQ1 is the total energy consumed or accumulated in unit volume of the lower atmosphere per unit time and δQ2 is that which enters in or comes out of this space per unit time δQ1 should be equal to δQ2. δQ1 and δQ2 are calculated by the following equations, We calculated numerically these equations of the atmosphere using the data obtained at Tokyo observatory. We made sure that the 1st law of thermodynamics holds satisfactorily good in the atmosphere.
著者
武藤 崇 松岡 勝彦 佐藤 晋治 岡田 崇宏 張 銀栄 高橋 奈々 馬場 傑 田上 恵子
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.81-95, 1999-11-30 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
3

本論文では、応用行動分析を背景に持つ、地域に根ざした教育方法を、地域に根ざした援助・援護方法へ拡大するために、応用行動分析が持つ哲学的背景や、障害のある個人を対象にした「行動的コミュニティ心理学」の知見を概観し、今後の課題を検討することを目的とした。本稿は、(1)応用行動分析とノーマリゼーションの関係、(2)行動的コミュニティ心理学のスタンス、(3)障害のある個人を対象にした行動的コミュニティ心理学の実証研究の概観、(4)その実証研究の到達点の評価と今後の課題、から構成されている。今後の課題として、概念、方法論、技術の各レベルにおける、他のアプローチとの研究的な対話の必要性と「援護」に関する方法論的・技術的な検討の必要性が示唆された。
著者
半貫 敏夫 高橋 弘樹 石鍋 雄一郎 佐野 雅史 平山 善吉 Toshio Hannuki Hiroki Takahashi Yuichiro Ishinabe Masashi Sano Zenkichi Hirayama
雑誌
南極資料 = Antarctic Record (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2A, pp.490-503, 2002-09

南極昭和基地で約29年間使われてきた居住棟の主要構造部品、屋根、壁、床の各木質パネルの耐久性を評価するための曲げ強度試験を行った。その結果外気に接するパネルの構成材に部分的劣化が認められ、それが構造強度に影響していることが確かめられた。パネルの強度は総体的に落ちているとはいえ、設計強度はまだ十分に維持しており、南極で安全に使用できる構造性能を保っていることが確かめられた。 実験結果を整理すると、南極のような極限環境にある木質サンドイッチパネルの耐久性設計では、表面合板の保全が構造上最も重要な課題であることが分かった。
著者
水本 孝 北村 清明 高橋 裕子 為我 井道子 重森 恒雄 高田 久之 西島 克己 古川 裕夫 雑賀 興慶
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.283-289_1, 1983-02-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
22

症例は20歳の女学生で,大量の粘血便と腹部激痛を主訴として緊急入院した. 入院する半年前より峻下剤(sennosideA・B,12mg/錠)を服用しはじめた.発症の2日前に上記の下剤を一度に3錠も服用したが,軽度の腹痛を生じただけで排便しえず,発症の約6時間前に更に2錠用いた. 入院2日目に,緊急大腸内視鏡検査を行ったが,直腸から横行結腸の左半分の部位には全く異常がなく,右半分より盲腸に至る部分には広範囲に浮腫及び出血を伴う潰瘍または,びらん形成が見られた.あたかも潰瘍性大腸炎の激症型に酷似していた. 1943年,Heilbrunは下剤を長期間乱用している患者で,上行結腸を中心とした右側半分の大腸に好発する特殊な大腸炎を始めて報告し,cathartic colon(以下c.c.)と命名した. その後,多数の症例報告があるが,腸管の神経叢や筋組織までが変性崩壊し広範囲の不可逆的な病変を生じているのが通常であった. このような症例には最終的に,やむを得ず右側大腸半切除術等の外科的処置も行われるが,それでも充分の効果はなく,なお長期間にわたって腹痛や腹部不快感を訴える上に,低蛋白血症や血清電解質異常を来すものが多い. 著者らの症例は一過性で,便秘薬の服用を禁止し,食餌療法と抗生物質の投与で症状は速やかに軽快しはじめ,三週後の大腸内視鏡検査ではほとんど正常に戻っていた. 一方,cathartic colonはmelanosis coliとの関連性が問題になっているが,われわれの症例でもこれを認めた.われわれのような例もある故,慢性便秘症の患者が安易に下剤を乱用しないように戒しめたい.
著者
金丸 英樹 佐藤 徹 菅田 真生 石井 大造 丸山 大輔 林 正孝 濱野 栄佳 井手口 稔 片岡 大治 高橋 淳
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
Journal of Neuroendovascular Therapy (ISSN:18824072)
巻号頁・発行日
pp.jnet.oa.2015-0039, (Released:2015-10-02)
参考文献数
11
被引用文献数
4 1

要旨: 【目的】近年脳血管内治療は普及の一途をとげているが,病変へのアクセス時に,ガイディングカテーテル(GC)を母血管に干渉せず留置できるかどうかは治療の成否に関与する重要な因子の一つである.そこで,GC を留置する際に機械的血管攣縮(mechanical vasospasm; mVS)を惹起する因子について検討した.【方法】対象は2012 年8 月1 日より2014 年7 月31 日までの2 年間に未破裂脳動脈瘤に対しコイル塞栓術を施行した連続64 例とし後方視的に検討した.mVS の定義として,GC を留置した母血管径が25%以上狭小化するものとした.【結果】mVS は24 例(38%)に認め,そのうちGC のサイズ変更を要したものは5 例,その他の症例では先端位置を変えることで攣縮所見は全例軽快した.mVS と関連する因子として,より年齢が若いこと(p<0.001),女性(p=0.03),高血圧でないもの(p=0.03)を認めた.Body Mass Index,Adjunctive technique の有無,治療後のDWI 高信号域の有無,治療時間,部位(ICA/VA),抗血小板療法(Single/Dual)は関連を認めなかった.【結論】より年齢の若い症例,女性,高血圧のない症例では機械的血管攣縮を引き起こしやすいと考えられる.
著者
高橋 沙奈美 Sanami Takahashi
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Ethnology (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.235-251, 2015-11-27

マダム・ブラヴァツキーは幼少のうちから,ひとところに長く落ち着いて生活することのない「遊牧民的」生活を余儀なくされた。様々な民族と宗教が混在するロシア帝国の南方を転々と放浪する生活をしたこと,特にアストラハンで遊牧民のカルムィク人とそのチベット仏教に出会っていたことは,彼女のその後の人生に少なくない影響を及ぼしたと考えられている。母エレーナは,この放浪生活に耐えがたい疲弊を感じていたが,その一方で,西欧文明とは異なる生活の中にインスピレーションを見出し,「異郷」を舞台とした一連の小説を発表した。時に,1820–1830 年代のロシア文壇を風靡したロマン主義は,「カフカスもの」と称されるロシア南方を舞台とした小説を輩出していた。エレーナ・ガンの創作も,この潮流に棹差すものだったのであり,1838 年に彼女が発表した,カルムィクを舞台とする小説「ウトバーラ」もまた,ロシアのオリエンタリズムが生み出した作品の一つといえる。本稿はガンを育んだ人々や環境,彼女が抱き続けた理想や,彼女が生きた時代の歴史的・文化的背景を踏まえながら,ガンが見たカルムィクと仏教世界を小説「ウトバーラ」の中から読み解く試みである。
著者
高橋 紀哉 原田 利宣 吉本 富士市
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.5_27-5_36, 2002-01-31 (Released:2017-11-08)
参考文献数
11

自動車のフロントマスクデザインは,ヘッドランプのことを'目'といったり,エアインテーク形状のことを'口'というように,よく人の顔に例えられる.つまり,自動車のフロントマスクと人の顔の認知においては,何らかの類似関係があるという仮説をたてた. そこで,本研究ではイメージという視点から自動車のフロントマスクや人の顔の形態要素間の類似関係を明らかにすることを目的とした.具体的には,主成分分析,クラスター分析を用いて自動車のフロントマスクと人の顔を4つのクラスターに分類を行い,また,古屋らの研究(1993)における誇張画作成の考え方を応用し,各クラスターにおける誇張画の特徴を考察した.その結果,各クラスター内の自動車のフロントマスクと人の顔との間には,一致する形態的特徴が数多く存在することが明らかとなった.