著者
高橋 直紀 山縣 貴幸 峯尾 修平 加藤 光太 多部田 康一
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.171-182, 2021
被引用文献数
1

<p>世界中で猛威を振い続ける新型コロナウイルスの感染経路のひとつにエアロゾル感染がある。歯周治療で頻用される超音波スケーラーから発生するエアロゾルが交差感染のリスクとして懸念されているが,そのエアロゾル特性については十分に知られていない。本研究の目的は,微粒子可視化システムを用いた流体工学的検討と,感水試験紙およびパーティクルカウンターを用いた模擬臨床試験から,超音波スケーラーから発生するエアロゾル特性およびエアロゾル感染予防策を検討することである。流体工学的検討から,超音波スケーラーから発生するエアロゾルの平均粒子径は約40 μmで,液滴速度が3 m/sであった。また感水試験紙を用いた模擬臨床試験から,超音波スケーラーの向きによるエアロゾルの飛散距離の違いが観察された。パーティクルカウンターを用いた解析において,1-10 μmの粒径のエアロゾル飛散量は距離とともに減少し,口腔内外バキュームの使用によりエアロゾル量が大幅に減少することが確認された。これらのことから,超音波スケーラーから様々な粒子径のエアロゾルが発生するが,吸引装置の適切な使用によって超音波スケーラーから発生するエアロゾルを介した交差感染リスクを抑制できる可能性が示唆された。</p>
著者
長友 京子 奥田 正浩 池原 雅章 高橋 進一
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.26, no.54, pp.1-4, 2002-07-25

コンピュータ、及び、情報技術の急速な発展に伴って、3次元モデリングやレンダリングは、多くのアプリケーションにおいてますます重要になっている。3次元メッシュは莫大な量のデータを持っているので、保存や、ネットワークからダウンロードする際に時間がかかる。大部分の3次元モデルを表示する為のアプリケーションは、ユーザーが低解像度モデルのみ欲しいときさえも、3次元モデルの全てのデータを獲得しなければならない。従って、プログレッシブ性を持つこと(3次元モデルの多重解像度伝達を可能にする)が、望まれる。本論文において、我々は、イレギュラーなメッシュをテクスチャ上でマッピングし、セミレギュラーに変えることで、3次元メッシュのプログレッシブな符号化法を提案する。その際圧縮には、2次元画像符号化アルゴリズムをメッシュ圧縮に適用する。ウェーブレット変換を使うので、符号化されたビットストリームは、プログレッシブ性を持つ。我々は、高圧縮率においても、オリジナルのモデルと視覚的に同等なモデルを得ることが出来た。
著者
村瀬 仁美 上山 洋平 小林 達明 高橋 輝昌 徳地 直子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.115, pp.P1043, 2004

関東地方の暖温帯に分布するコナラ二次林群落としてクヌギーコナラ群集、クリーコナラ群集等が知られている。互いに丘陵地を中心にその分布域を接している。土壌条件で前者は、孔隙率が高く、A層が深く腐植に富み、pHが相対的に高い理化学性の良好な土壌に主として立地し、後者は、孔隙率が低く、A層が浅く腐植が相対的に乏しく、pHが低い強酸性の理化学性の悪い土壌に立地している(辻、1991)。一般的に、前者のような土壌の窒素の無機化速度は、後者のような土壌に比べると速く、硝化率も大きいと考えられる。また、硝酸態窒素を利用する植物は硝酸還元酵素活性(Nitrate Reductase Activity:NRA)も高くなると考えられる。Tokuchiら(1999)は、花崗岩質山地の斜面下部で無機化速度が速く、硝化率も高く、斜面上部では逆の傾向があることを示し、それらの立地に対応した植物-土壌系が成立することを示唆している。Koyama&Tokuchi(2003)は、それらの立地を代表する樹種3種の実生の硝酸還元酵素活性を調べ、立地の硝化能力と対応することを示した。<BR> 本研究では、平面的に群落分化が見られる狭山丘陵で植物-土壌系の関係を調べようとした。<BR> 調査地は、東京都武蔵村山市および瑞穂町と埼玉県所沢市に広がる東西11km、南北4kmの狭山丘陵の西端にあたる野山北・六道山公園内のコナラ、クヌギなどの様々な夏緑樹林が混生する林分に設けた。対象樹種は、アオハダ、アカマツ、ヒノキ、アカシデ、イヌシデ、クリ、クヌギ、アラカシ、コナラ、ムクノキ、エノキ、コウゾ、コブシ、クロモジ、ミツバアケビ、ヒサカキ、コアジサイ、ウワミズザクラ、モミジイチゴ、ネムノキ、フジ、ウリカエデ、アカメガシワ、ヌルデ、イヌツゲ、マユミ、ゴンズイ、アオキ、ミズキ、リョウブ、ネジキ、ヤマツツジ、エゴノキ、マルバアオダモ、ムラサキシキブ、クサギ、ウグイスカグラ、ガマズミ、コバノガマズミ、オトコヨウゾメ、サロトリイバラ、アズマネザサの計42種で、2003年8月下旬から10月上旬の晴れた日の10時30分から12時30分の間に各樹種、3個体ずつ葉をランダムに採取し、Havill et al.(1974)に従い、NRAを測定した。<BR> 各樹種のNRAは数値が高い順に、ムクノキ・ミツバアケビ・コウゾ・コブシ・ムラサキシキブ・エノキ・アズマネザサ・マルバアオダモ・モミジイチゴ・ヌルデ・ウグイスカグ・イヌシデ・リョウブ・クサギ・エゴノキの「高」グループ15種、ミズキ・コナラ・イヌツゲ・アラカシ・アカメガシワ・マユミ・ガマズミ・アカシデ・ゴンズイの「中」グループ9種、ウリカエデ・アオハダ・コバノガマズミ・フジ・ネムノキ・コアジサイ・クヌギ・ヤマツツジの「低」グループ8種、サルトリイバラ・ヒサカキ・クロモジ・ウワミズザクラ・ネジキ・クリの「なし」グループ6種と区分された。これらをクヌギーコナラ群集とクリーコナラ群集の2つの植生タイプに大別すると、クヌギーコナラ群集は、「高」グループが、ムクノキ・コブシ・ムラサキシキブ・エノキ・アズマネザサ・ヌルデ・イヌシデ・エゴノキの8種、「中」グループが、コナラ・アラカシ・マユミ・ガマズミ・アカシデ・ゴンズイの6種、「低」グループが、フジ・クヌギ・ヤマツツジの3種、「なし」グループが、サルトリイバラ・ヒサカキの2種の計19種となり、クリーコナラ群集は、「高」グループが、ミツバアケビ・マルバアオダモ・ウグイスカグラ・リョウブ・エゴノキの5種、「中」グループが、コナラ・イヌツゲ・アラカシ・ガマズミ・アカシデの5種、「低」グループが、ウリカエデ・アオハダ・コバノガマズミ・ネムノキ・コアジサイ・ヤマツツジの6種、「なし」グループが、ヒサカキ・クロモジ・ウワミズザクラ・ネジキ・クリの5種の計21種となった。<BR> NRAが「高」や「中」を示した樹種は理化学性の良好な土壌に主に生育しているものがほとんどであった。また、例外はあるものの、同科の種のNRAは同グループに属している傾向を示した。<BR> 以上から、クヌギーコナラ群集ではNRAが「高」、「中」の樹種が多く、クリーコナラ群集はクヌギーコナラ群集に比べ、「低」、「なし」の樹種が多くなったことから、狭山丘陵を構成している樹種のNRAは2つの植生タイプに対応する傾向があることが示唆された。
著者
長倉 克枝 高橋 厚妃 貴島 逸斗
出版者
日経BP
雑誌
日経コンピュータ = Nikkei computer (ISSN:02854619)
巻号頁・発行日
no.1044, pp.40-46, 2021-06-10

マイナンバーカードを保険証として利用する仕組みはこうだ。まず、患者が医療機関などの受付で顔認証付きカードリーダーを使って認証する。すると、レセプトコンピューター(レセコン)から保険診療請求をする際に使う閉域ネットワーク「オンライン請求ネッ…
著者
高橋 敬蔵 関 正純 小崎 俊男 鏡 勲 脇元 敦彦 宮崎 雄一郎 千坂 正毅 坂本 勇人 渡久山 博美 奥富 信博 宮上 順志 瀬尾 文洋
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.307-314, 1976

A series of 250 cases undergoing Cesarean section under spinal anesthesia were presented and analyzed from the clinical points of view.<BR>Hypotension down to 80 mmHg or less occured in 43.6% of all cases following spinal anesthesia, and the incidence of hypotension was closely related to the level of sensory analgesia (initial level) .<BR>Hypotension could be mostly restored by changing the position from supine to lateral, but the effects of vasopressor was not uniform.<BR>It was seen that the amount of rapid intravenous infusion was influenced by the duration and degree of hypotension.<BR>Associated with anesthesia, Apgar' Score was indicateed 7 to 10 points in 96% of all cases.<BR>Administration of Droperidol, Diazepam and Pentazocine were effectively choiced for any visceral pain after birth and any emesis.
著者
高橋 邦行
出版者
日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会会誌 (ISSN:21880077)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.63-68, 2019

<p>悪性外耳道炎とは,壊死性外耳道炎,高齢糖尿病患者,緑膿菌感染を3徴とする難治性感染症として知られていた.現在では細菌感染が側頭骨を中心に周囲に拡大,さまざまな脳神経症状を呈し,致死的となることから,頭蓋底骨髄炎と呼ばれる. </p><p>本疾患の症状は強い頭痛が多く,CRP値などの炎症反応が高くなりにくいことに注意する.他疾患との鑑別が重要であり,悪性腫瘍,結核性中耳炎,ANCA関連血管炎性中耳炎は常に念頭におく.画像所見では骨条件CTで皮質骨の連続性の破綻,MRI T1強調画像で骨内部の低信号化が特徴に挙げられる.治療は6~8週程度の抗菌薬静脈投与を基本とするが,さらに長期の抗菌薬投与も行われる.本疾患は高齢者に多く発症することから,全身状態を考慮した抗菌薬の選択や,長期入院加療による日常生活動作,認知機能の低下にも注意が必要であり,薬剤師,看護師,理学療法士,ソーシャルワーカーなどとの連携も重要である. </p>
著者
浅田 真央 高橋 一誠 鈴木 健嗣
雑誌
第79回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.1, pp.667-668, 2017-03-16

本研究は,プロジェクタを用いて実世界へ視覚教示を重畳する新しい教育支援システムの開発を目的とする.提案システムは,教示する内容を紙や黒板に描くように、実世界の平面や物体にリアルタイムに描画を重畳させることで、視覚情報を生徒へ提供することを可能にするシステムを目指す.本発表では,机上で使用するモバイル型と、体育館など大空間で使用する固定型の2つの手法を提案する.
著者
山海 嘉之 野々村 洸 高橋 厚妃
出版者
日経BP
雑誌
日経エレクトロニクス = Nikkei electronics : sources of innovation (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.1214, pp.79-82, 2020-04

装着型サイボーグ「HAL」を開発するCYBERDYNE(サイバーダイン)が「スポーツテック」に参入した。ユーザーには米メジャーリーグで活躍する前田健太選手など世界のトップアスリートも含まれる注1)。同選手はHALを利用した自主トレーニングをスポーツ施設「IWA ACADE…
著者
高橋 義人
出版者
平安女学院大学
雑誌
平安女学院大学研究年報 = Heian Jogakuin University Journal (ISSN:1346227X)
巻号頁・発行日
no.19, pp.1-10, 2019-03

建国以来の歴史が浅く「新しい国」であったアメリカには、20 世紀に入ってからも「アメリカ音楽文化」と呼べるようなものがまだわずかしか存在していなかった。アメリカを政治的にのみならず文化的にも「大国」にするために、アメリカ独自の音楽文化を育てることは喫緊の課題だった。その契機のひとつをなしたのが、レハールのオペレッタ『メリー・ウィドウ』のアメリカ上演(1906 年)だった。その爆発的人気をもとに、1934 年、『メリー・ウィドウ』はエルンスト・ルビッチ監督によって映画化され、オペレッタのアメリカ化が行われた。本稿は、18 世紀前半のイタリアにおけるオペラ・ブッファから、19 世紀後半~20 世紀初頭のヴィーンにおけるオペレッタを経て、20 世紀半ばに与えられたアメリカでミュージカルが誕生するまでの喜歌劇の歴史をたどりつつ、アメリカン・ミュージカルに与えられた課題を探る。
著者
高橋 敏
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.115, pp.61-82, 2004-02

大原幽学の東総地域における活動の結晶ともいうべきは、性学教団のシンボル、改心楼であった。改心楼をめぐっては幽学弾圧の端緒となった関東取締出役の手先と博徒の乱入事件がここで引き起こされたことでも著名である。関東取締出役が幽学に疑いを持ったきっかけは改心楼の大造な建築であった。幽学はじめ関係者は江戸訴訟のなかで、質素を趣旨とした道友の寄進にもとづく簡素な建築物であると弁明している。改心楼建築に関しては、その普請の過程の中で作成された第一次史料が多数のこされている。嘉永二年(一八四九)四月十五日の「絵図面定幷材木見立」から翌三年正月十九日の「開校」まで道友寄進の「土普請」から大工方、屋根、畳、石工、左官の職人を雇い入れての建物本体の建造、つづいて家具、食器、蒲団、蚊帳等の生活用具の購入までを実証する。また同時に動員された道友の労働力を克明に追求した。道友の寄進行為こそ、大原幽学の性学教団の力量をはかるバロメーターであるからである。江戸訴訟の際、評定所に提出された幽学側の改心楼建築の費用は金九九両余、これを九名の有力な道友が立て替えたと申告している。ところが普請関係の諸帳面を精査したところ、実際は金四四九両余も費しており、申告の四・五倍にのぼる。しかも、幽学は江戸まで出かけ主要な木材を買い付け、ぜいたく品と思しき道具類まで著名な大店から購入している。これだけでも金七二両余に及んでいる。改心楼造営に動員した道友は一八〇日間で四四三二人に達し、二四カ村を包括している。幽学の改心楼造営がこの地域に与えた影響を、決して過小評価することは出来ない。規模といい、建築費用といい、動員された道友の数と広がりといい、関東取締出役が疑いを抱くのは一面当然であったともいえる。改心楼は江戸訴訟の敗北とともに取り毀され、廃墟と化した。今その偉容はのこされた二幅の絵画で偲ぶのみである。
著者
栗田 哲史 安中 正 高橋 聡 嶋田 昌義 末広 俊夫
出版者
JAPAN ASSOCIATION FOR EARTHQUAKE ENGINEERING
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.1-11, 2005 (Released:2010-08-12)
参考文献数
5
被引用文献数
8 3

山地形のような不整形地盤では、地震動の増幅特性が地形の影響を受けることが知られている。不整形地盤に入射した波と内部で反射した波の干渉により、伝達する地震波は複雑な様相を示す。この様な山地形の地震動特性を明らかにするために、横須賀市内の山地において、アレー観測を行ってきている。観測記録はデータベース化され、震動特性の分析に活用されている。本研究では、この山地形を対象として観測記録の分析及び3次元有限要素法による数値シミュレーションを実施した。観測記録を良く説明できる適切な解析モデルを作成し、山地形の増幅特性を評価することを目的としている。検討の結果、山地形を忠実にモデル化することによって観測記録を良く説明できるシミュレーションが可能となった。更に同モデルを用いて、山地形に地震波が入射した時に地震動がどの様な特性を示すのかを解析的に評価した。
著者
高橋 麻美 根路銘 崇 沼尾 雅之
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.1711-1720, 2012-07-15
被引用文献数
1

節電がますます重要視される中,企業や家庭では,一般的な節電対策として経験的かつ試行錯誤的に節電に対する取り組みが実施されている.一方で,節電効果の向上を目的として,従来のブレーカ単位・月単位での測定に対し,より詳細に把握するために電化製品や部屋単位で測定する技術が登場してきている.我々は,電化製品と利用者の関係を整理するために,サービスインタフェースモデルを用いて,電化製品の特徴に基づく利用状況を分析した.本論文では,電化製品の消費電力量を利用者単位で測定する手法に加えて,節電のための指標となる節電KPIの計算方法について述べる.また,提案する手法に対する実験と評価について述べ,有効性を検証する.Electric power saving efforts is getting more important not only from the regional view point but also from the earth level view point. In order to improve the power saving, enterprises and homes are trying to reduce power consumption by ad-hoc try-and-error approach and based on empirical information. Thus, it is highly expected to establish the technologies and infrastructure for monitoring the power consumption by appliance level or finer location level. We proposed an approach to evaluate the user-level power consumption by converting from the appliance-level power consumption. In order to do that, we analyzed the relationship between appliances and users by using service interface model. In this paper, we described a method for allocating power consumption which measured by appliance level to user. In addition, we defined KPI (Key Performance Indicator) for saving power consumption and evaluate our approach.
著者
綾部 園子 堀口 恵子 神戸 美恵子 永井 由美子 阿部 雅子 高橋 雅子 渡邊 静
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】日本調理科学会平成24〜26年度の特別研究で,次世代へ伝え継ぐ資料とし群馬県内で聞き書き調査を行い報告した。その後の追加調査や刊行資料調査も含め,群馬県の家庭料理の副菜の特徴について報告する。</p><p>【方法】平成25年〜27年に群馬県内の8地域において,各地域2名以上(60 歳〜80 歳代,居住年数 40 年以上)の調査対象者に対して面接調査を行った。面接は特別研究の方法に従い,調査の同意を得た上で,調査票に沿って対話したものを記録した。その後,嬬恋村・片品村において追加調査を行った。</p><p>【結果および考察】群馬県は首都圏に近く気候にも恵まれ,いろいろな野菜が生産され,旬には山菜やきのこなどの利用も多い。これらの野菜を使って多様な野菜料理が作られているが,中でも「きんぴら」はそれぞれの家庭の味つけで鍋いっぱいに作る常備菜で,おかずはもちろん麺類の「こ」としてもよく登場した。また,自宅でとれた野菜をたっぷり入れたみそ汁は副菜を兼ねるもので,牛蒡,大根,にんじん,里芋,ねぎなどの野菜に油揚げ,豆腐,こんにゃく等をいれたけんちん汁はその代表ともいえる。野菜の煮物にはさつま揚げなど「買ったもの」を入れることも多かった。漬物(ぬか漬け,梅干し,沢庵,白菜づけ,紅しょうが,らっきょう,きゅうりの味噌漬け,きゅうりやなすの塩押し,山菜漬け,きのこ漬け等)はそれぞれ自家製の野菜を樽で漬けた。ゆでた野菜はうどんの「こ」にする他,お浸しや胡麻よごしとしても食べた。大根葉,切り干し大根,いもがら,ぜんまいなどの乾燥野菜や切り昆布は戻して煮物にした。野菜の天ぷら,花豆などの煮豆,特産のこんにゃくを使った田楽や白和えも来客時や日常食として食されている。</p>