著者
石川 裕彦 竹見 哲也 中北 英一 丸山 敬 安田 誠宏
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

IPCC5に向けた温暖化研究では、従来からの気象学的気候学的知見に加え、極端現象など災害に直結する影響評価が求められている。本研究ではIPCC4で実施された温暖化予測計算のデータアーカイブに基づいて、疑似温暖化実験による力学ダウンスケーリングを行い、台風などの極丹下現象による災害評価を行った。台風に関しては「可能最悪ケース」の概念を導入し、ある事例に関して経路が少しずつ異なる事例を多数計算し、その中から最大被害をもたらす事例を抽出する手法を開発した。これらの事例について、河川流出計算、高潮計算、強風被害の見積もり等を実施して、被害発生情報を作成した。
著者
間瀬 肇 森 信人 竹見 哲也 安田 誠宏 河合 弘泰 黒岩 正光
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,温暖化シナリオにもとづく気候変動予測結果をもとに,将来の台風災害,高波の予測災害,高潮災害について定量的な予測方法を確立することを試みた.日本周辺の高波・高潮予測に際しては,適切な台風イベントの抽出とその評価,そして高波・高潮の数値予測が重要となる.このため, 地球温暖化予測結果の下,将来の台風の予測を行った.ついで力学的・統計手法に基づく高波・高潮数値予測モデルを用い,温暖化に伴う高波・高潮災害の予測と評価を行い,将来気候における日本周辺の高波・高潮の顕著な増加を明らかにした
著者
松井 徹哉 武藤 厚 大塚 貴弘 永谷 隆志
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

浮屋根と液体の非線形性を考慮した大型液体貯槽の地震時スロッシング解析理論を体系化し、縮小模型による振動台実験を実施してその妥当性を検証した。さらにその成果に基づいて、2003年十勝沖地震で発生したシングルデッキ型石油貯槽浮屋根の損傷・沈没の原因究明を試み、浮屋根や液体の非線形性に起因する非線形振動モードの存在がポンツーンに過大な応力を発生させ、浮屋根を座屈・沈没に至らせる可能性のあることを指摘した。
著者
一ノ瀬 俊明 花木 啓祐 泉 岳樹 陳 宏
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

華中科技大学と共同で、中国・湖北省・武漢市の長江両岸地区(武昌と漢口)において再開発が想定される地域を対象に、夏季と冬季の集中気象観測、ならびに街区スケールの気流等に関する数値計算を行った。観測からは、河道上の風速が強まるのと連動し、直交する街路上の風速が強まり、同期して気温の変動が生じていることが示された。また、気象観測や数値計算の結果にもとづき、ヒートアイランド緩和策を盛り込んだ市街地の整備プランを提案した。
著者
重松 敏則 朝廣 和夫
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

過疎により閉校となった、福岡県八女郡黒木町の笠原東小学校を事例として、自然体験や農山村生活の体験、農林作業体験、ならびに、地域資源を活用した循環型共生生活を実体験する、滞在型環境教育の拠点として活用することを意図し、地域社会および都市域の教育機関やNPO等と連携した拠点形成プログラムの開発と、その過程のビデオ記録等による情報発信システムの制作を目的に行った。まず、地域の自然資源を活用した環境共生施設として、五右衛門風呂およびオガクズ・バイオトイレを建築廃材や間伐材を活用して設置するとともに、薪ストーブの設置、ならびに、グリーンファンドの助成による太陽光発電パネルおよび小型風力発電機を設置した。教室を宿泊室、家庭科室を炊事室、職員室を食堂兼交流談話室等として活用し、以上の環境共生施設を使用する2泊3日の農林体験プログラムを、小・中・高校生、ならびに、大学生、社会人を被験者として、計8回実施した。農林体験メニューとして、・スギ・ヒノキ林の間伐と枝打ち、竹林の伐採と竹細工、稲刈りや菜種の播種、苗の定植等を用意して行った。これらの体験プログラムの前後にアンケート調査を実施するとともに、写真やビデオカメラで撮影記録した。調査・分析の結果、1.里山や棚田に囲まれた木造の廃小学校は、地元住民の協力を得られやすいことからも、環境共生教育の拠点として打ってつけであること、2.小・中・高校生や大学生、社会人ともに、2泊3日の農林体験合宿を楽しんだこと、3.同世代だけよりも、異世代が混合して参加するほうが好評で、作業能率も高まったこと、4.ほとんど全ての被験者が、参加したことや農林体験をしたことに満足し、充実感を得ていること、5.機会があれば再度参加したいと希望していること、さらに、6.参加体験することによって、農山村や農林業に対する興味や理解を深めていることが明らかとなった。また、7.航空写真の解析と現地調査により、研究対象地で活用できる森林・農地等の地域資源の評価と分布を明らかにした。以上の成果に基づき、農山村の地域資源を活用した環境共生教育に関する拠点形成プログラムを策定するとともに、撮影記録の編集によるDVDへの録画と、ホームページの開設による情報提供のシステムを構築した。
著者
松山 優治 川上 高志 北出 裕二郎 石丸 隆 杉山 正憲
出版者
東京海洋大学(水産)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は沿岸の環境保全や持続的な利用を目指し、大学の研究者、民間会社の技術者、海洋現場担当者が共同で沿岸環境モニタリングシステムの開発と海洋現場への応用に取り組んだものである。その結果、廉価で、耐久性に富んだ、通信費用が安価で、環境に易しい装置の開発に成功した。環境の急変を告知するシステムで、環境変化に迅速に対応できる。2001年7月から内浦湾の養殖施設に設置し、10m深のデータを10分ごとに計測し、E-mailにて関係機関にデータが転送される実験を開始した。日付、時刻、pH、伝導率、濁度、酸素濃度、水温、水深、塩分などを1日4回送信し、通信には成功した。しかし、センサーへの生物付着の影響が激しく、溶存酸素量、濁度、塩分などに現われたことから、(1)緊急性を要する底層貧酸素水の湧昇予報システムには多層水温センサー(5〜10層)を開発して対応し、(2)生物付着の問題を解決するため、現場での付着実験を繰り返し、並行してセンサーの開発により、改善を目指した。2003年には3点での環境モニタリングにまで展開し、水温アレー・センサーと水質計を有効に使って、内部潮汐による湧昇と外洋水の進入に伴う急変現象の解析に成功した。現在、20箇所にデータをリアルタイムに近い状態で送信し、漁業者に利用されている。一方、モニタリング観測と並行して、夏季に湾内の環境調査を実施し、近傍でのCTD, ADCP観測から水温・流速の鉛直構造の時間変化、微細構造観測による鉛直拡散係数の見積もりなどを行ってきた。湾内の海底地形の急変部での内部潮汐波の散乱による空間スケールの小さな内部波への移行、内部波による密度逆転現象、内部潮汐に伴って発生する恒流などを明らかにしてきた。これらの物理現象の把握は湾内の海水交換や海水混合を考える上で不可欠であり、研究を進めている。
著者
戸波 江二 薬師寺 公夫 北村 泰三 建石 真公子 江島 晶子 小畑 郁 鈴木 秀美
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

2年間の共同研究では、(1)ヨーロッパ人権裁判所の判例研究、(2)ヨーロッパ人権裁判所の組織、権限に関する研究、(3)ヨーロッパ人権条約締約国の側から見たヨーロッパ人権条約の実施、とくにヨーロッパ人権裁判所判決の執行の研究、のそれぞれについて研究分担者が分担して研究するとともに、(4)ヨーロッパ評議会の組織と活動、およびそれがヨーロッパにおける人権保障の進展において果たしてきた役割についての研究、(5)その他の国際的・地域的人権保障制度に関する研究についても分担して研究を進めた。具体的には、平成16年度より引き続き、各研究分担者が上記各分野について割り当てられた自己の研究テーマについて各自研究を深めるとともに、全体の研究会を開催し(7月30日、31日・明治大学、10月22日・明治大学、1月28日・法政大学)、各自の担当判例および研究テーマについて報告を行い、全員で検討を行った。これらの結果、人権の国際的・地域的保障のあり方、人権保障の国際水準を確保するための裁判所による審査の意義、国際人権裁判所の人権規定の解釈・適用の実際、国際的視点からの各国内での人権保障の実施の促進の方法など、人権の国際的・地域的保障の理論と実践について、より明確な問題意識を共同研究者間に形成することができた。同時に、ヨーロッパ人権裁判所判例集の編集を進めた。掲載判例・解説執筆者を確定するとともに、原稿依頼を行った昨年度に引き続き、今年度は、編集会議を適宜開催し、査読の態勢を整え、現在、提出された原稿の査読の段階に至っている。
著者
木村 龍治 坪木 和久 中村 晃三 新野 宏 浅井 冨雄
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1994

本課題の重要な実績として、梅雨期の集中豪雨をもたらしたメソ降水系のリトリ-バルと数値実験を行ないその構造と維持機構を明らかにしたことと、関東平野の豪雨をもたらしたレインバンドの発生機構を明らかにしたことが挙げられる。1988年7月に実施された梅雨末期集中豪雨の特別観測期間中、梅雨前線に伴ったレインバンドが九州を通過し、その内部の風と降水のデータがドップラーレーダーのデュアルモード観測により得られた。このデータにリトリ-バル法を適用することによりレインバンドの熱力学的構造を調べ、維持機構を明らかにした。これにより対流圏中層から入り込む乾燥空気がメソβ降水系を形成維持する上において重要であった。またこの結果を2次元の非静力学モデルを用いて数値実験により検証したところ、この結果を支持する結果が得られた。さらに3次元の数値モデルを用いて降水系を再現し、その詳細な構造を明らかにした。関東平野において発生したメソ降水系のデータ収集とその解析を行なった。1992年4月22日、温帯低気圧の通過に伴い関東平野で細長いメソスケールの降雨帯が発生した。その主な特徴は、弧状の連続した壁雲の急速な発達により降雨帯が形成された点で、他の例に見られるような多くの孤立対流セルの並んだ降雨帯とは異なるものであった。この降雨帯は、それ自身に比べてはるかに広く弱い降雨域の南端に発達したもので、Bluesteinand Jain(1985)の分類では"embedded-areal-type"に属するものであった。最終年度には、メソ降水系の中でも特に梅雨前線に伴うメソβスケールの降水系について、平成8年6月27日から7月12日まで、北緯30度46.8分、東経130度16.4分に位置する鹿児島県三島村硫黄島で観測を行った。この観測期間中には気象研究所、名古屋大学大気水圏科学研究所、九州大学理学部、通信総合研究所など他の研究期間も同時に観測をしており、結果として大規模な観測網を展開したことになった。これらの研究機関の間ではワークショップを開きデータ交換も行なわれた。
著者
新野 宏 伊賀 啓太 柳瀬 亘 伊賀 啓太 柳瀬 亘
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

傾圧性と積雲対流に伴う凝結加熱の両方がその発達に重要な役割を演ずるハイブリッド低気圧の実態と構造及び力学を事例解析、線形安定性解析、数値実験により調べた。その結果、梅雨前線上に生ずるメソαスケールの低気圧や冬季日本海を含む高緯度の海洋上にに発生するポーラーロウ、日本付近に豪雨をもたらす温帯低気圧などの低気圧の特性や力学が環境場の構造や凝結加熱によりどのように変化するかが明らかになった。
著者
飯田 全広 末吉 敏則 尼崎 太樹 尼崎 太樹
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

SoC市場は、高集積化の進展とともに多様化しており、設計はより複雑になってきている。FPGAの搭載はこの問題を解決策として有望である。しかし、FPGAは大量のメモリからできているため、ソフトエラーが発生したときに回路故障につながる。本研究は、信頼性の高いリコンフィギャラブル・ロジックのアーキテクチャとして、SoC用フォールトトレラントFPGA(FT-FPGA)アーキテクチャと、その設計ツール(CAD)を提案している。また、FT-FPGAの試作チップを開発し、このチップの一連の評価によって、FT-FPGAは、ハードエラーおよびソフトエラーの回避と自動修復の能力を有することを確認した。
著者
平松 和昭 黒澤 靖 原田 昌佳 森 牧人 福田 信二 黒澤 靖 原田 昌佳 森 牧人 福田 信二
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,窒素・リンを対象に,都市化・混住化が進むアジアモンスーン地域の農業流域における流域水環境統合管理モデルの開発を目指した.流域モデル構築にはGIS技術を利用し,DEMや土地利用,河川網,点源などの詳細な流域情報を統合することで分布型モデルを開発した.また,定量化が容易でない排出負荷や閉鎖性水域の水質動態のサブモデルには,適宜,人工知能技術や時間-周波数解析手法を導入し予測精度を向上させた.モデルの構築に当たっては,九州最大の河川流域で,流域内に多様な土地利用が拡がる筑後川流域と,福岡市西方に位置し,混住化が進行している農業流域である瑞梅寺川流域という,流域規模・特徴の大きく異なる二つの流域を精査流域と位置付け,個々の素過程の定量化やサブモデルの検討,全体モデルへのネットワーク結合方法の詳細を検討した.
著者
沢野 伸浩 後藤 真太郎 濱田 誠一 濱田 誠一
出版者
星稜女子短期大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

国土地理院による『電子国土Webシステム』を用い、インターネットブラウザ上から海岸線の環境脆弱性指標情報を書き込み、関係者間で共有できるシステム構築を行った。また、サハリン・オホーツク海沿岸で行われている石油・天然ガスガス開発の進捗より、宗谷岬を航行するタンカーや危険物積載船舶の動向を把握するために船舶自動識別装置から送信される電波を受信するための受信局を設置し、GISや自前で構築したプログラムを用いて同海域の船舶航行密度や行き先等の解析を可能すると同時に、同海域の船舶航行の実態を明らかにした。
著者
森内 浩幸 有吉 紅也 大沢 一貴
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ベトナム中南部で2222組の母子を対象とする出生コホートで、種々の母子感染の研究を行った。先天性サイトメガロウイルス感染を0. 54%、(非流行時に)先天性風疹感染を0. 13%に認めた。母体のB型肝炎キャリア率は12. 5%、既感染も加えると58. 8%の高率であった。2歳児の調査ではB型肝炎キャリア率は1. 9%に認めた。2011年初頭の風疹流行に続いて先天性風疹症候群の発生が増えており、これまでに36名の患児の疫学・臨床的解析を行った。
著者
橋本 哲男 石田 健一郎 稲垣 祐司
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

フォルニカータ生物群は嫌気環境に生育する鞭毛虫からなる系統群であり、環境DNA解析から多様な生物種の存在が示唆されている。これまでに調べられたいずれの生物も、酸素呼吸を行う典型的なミトコンドリアをもたず退化型のミトコンドリアをもっているため、ミトコンドリアの縮退進化を解明する上で適切なモデル系と考えられる。しかしながら、実際に単離・培養されているフォルニカータ生物の種類は必ずしも多くないため、自然環境中から新奇フォルニカータ生物を見出すことを目的として研究を行った。これまでに数種のフォルニカータ生物を含む10種以上の新規嫌気性真核微生物の単離・培養株化に成功し、一部については記載を行った。
著者
熊澤 喜久雄
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

本研究の目的は窒素安定同位体比法を用いて多摩川の窒素汚染源を明らかにし、その自然的、人為的浄化過程の意義を明確にして、多摩川の窒素汚染除去対策の確立に資するところにある.多摩川の支流及び多摩川流域の湧水についてその流域における人間活動も含めて調査し、窒素特に硝酸態窒素(NO_3-N)の濃度とδ^<15>N値を求め、窒素汚染源及び河川流下にともなう窒素浄化の程度を推定しようとした.(1) 平井川は下記に示す秋留台地の影響を受けてNO_3-N濃度及びδ^<15>N値は高くなっている.特に南小宮橋での採水はすぐ上流部に草花公園からの排水が流入していることからNO^3-N濃度10.3mgL^<-1>、δ^<15>N値+10.7‰と著しく高くなっている.秋川源流部のNO_3-N濃度は0.61mgL^<-1>δ^<15>N値は-0.20‰であり、雨水と同程度であるが、下流部ではNO_3-N濃度は1.38mgL^<-1>、δ^<15>N値+5.44‰に達していた.これは下流の流域に存在している畑地からの化学肥料由来のNO_3-Nの影響が反映しているのではないかと推定される.秋留台地の崖下に湧出する湧水は台地上の農業、特に畜産業の影響を強く受け、そのNO_3-N濃度は8.98〜9.28mgL^<-1>と極めて高く、δ^<15>N値も+7.95〜+8.75‰と高い値を示している.(2) 北浅川源流部のNO_3-N濃度は1.16〜1.52mgL^<-1>であるが、大学移転やニュータウン開発が進んだ南浅川が合流すると浅川のNO_3-N濃度は4.42mgL^<-1>に上昇し、NH_4-NやNO_2-Nが検出された.(3) 野川の主要な水源であるである国分寺崖線の湧水のNO^3-N濃度は4.50〜6.48mgL^<-1>、δ^<15>N値は+4.67〜+5.34‰の範囲にあった.野川は流下するに従い、次第に河川自体の浄化作用や脱窒作用によりNO_3-N濃度を減少、δ^<15>N値を増大させ、仙川合流直前でそれぞれ4.03mgL^<-1>、+8.16‰を示した.仙川は三鷹市の下水処理水が流入している下流ではNH_4-N濃度5.18mgL^<-1>、NO_3-N濃度10.6mgL^<-1>でδ^<15>N値は+9.55‰であり、仙川合流後の野川はNO_3-N濃度6.40mgL^<-1>及びδ^<15>N値+11.7‰に増大している.(4) 多摩川上流右岸の湧水のNO_3-N濃度は0.48〜14.1mgL^<-1>、δ^<15>N値は+0.53〜+6.84‰で+0.53‰のものは天然由来であり、6‰前後のものは土壌有機物の分解によるものと推定された.中流右岸の湧水のNO_<3->N濃度は0.12〜9.62mgL^<-1>、δ^<15>N値は+5.64〜+8.21‰で高濃度のNO_3-Nは生活雑排水等の人為的影響によるものと推定された.中流左岸に位置する都立農業高校農場内の湧水のNO_3-N濃度は2.45〜9.69mgL^<-1>で芦田下を除く3地点は9mgL^<-1>程度、δ^<15>N値は+6.90〜+7.82‰であったが、芦田下ではそれぞれ2.45mgL^<-1>、+13.2‰であることから芦田による窒素除去能力が示唆された.
著者
岩坪 威 富田 泰輔
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究において、我々はプレセニリン(PS)を触媒サブユニットとするγセクレターゼ複合体の構成成分と形成機構の分子細胞生物学的研究を総合的に行った。γセクレターゼ複合体の必須構成因子としては、研究開始直前に蛋白化学的解析によりnicastrin(NCT)が見出され、2年度の平成14年、線虫を用いた遺伝学的スクリーニングによりAPH-1,PEN-2が同定された。しかしこれら3つのコファクター蛋白質の個々の機能は明らかでなかった。申請者らは主としてショウジョウバエ細胞を用い、RNAi法を駆使して、APH-1ならびにNCTがγセクレターゼ複合体の安定化、PEN-2が最終的な活性化を担うこと、ならびにPS, NCT, APH-1,PEN-2の4者がγセクレターゼの必須成分であることを示し(Takasugi et al. Nature 422:438-441,2003)、γセクレターゼの形成・作用機構解明の研究領域をリードする成果を挙げることができた。また有機合成化学者(福山透教授ら)との共同研究によりDAPTをプロトタイプとした低分子のγセクレターゼ阻害薬リード化合物の創製をも手がけた。特筆すべきこととして、非ステロイド系抗炎症薬sulindac sulfideがγ42切断を優位に阻害するγセクレターゼ阻害剤であることを実証した。これらの研究から、Aβ、特に凝集・蓄積性の高いAβ42分子種の生成機構が明らかになり、その産生を特異的に阻害することによりADの最初期過程を阻止・遅延させる予防・治療薬の開発が実現されるものと期待される。また発生・分化に重要なNotch,癌転移に関与するCD44などのI型膜蛋白に共通に生じる"膜内蛋白切断"の分子機構の解明につながる成果も得られた。
著者
桜井 万里子 橋場 弦 師尾 晶子 長谷川 岳男 佐藤 昇 逸身 喜一郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

古代ギリシア世界、とりわけポリス市民共同体において、前古典期までに成立、発展してきた社会規範と公共性概念に関して、その歴史的発展の様相を明らかにするとともに、古典期におけるそれらのあり方、とりわけ公的領域と私的領域の関係性を、法や宗教など諸側面から浮かび上がらせた。
著者
足立 明 花田 昌宣 子島 進 平松 幸三 佐藤 寛 山本 太郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は、開発過程を総合的に記録・記述する民族誌的プロセス・ドキュメンテーションの可能性を検討するところにある。いうまでもなく、開発は、開発援助機関、プロジェクトマネージャー、受益者といった直接のアクターのみならず、それを取り巻く多様なアクターとの関わりで、紆余曲折しながら進行していく。それは「複雑系」といってよい過程である。本研究は、参加型開発での現地調査をとおして、開発過程を記録し記述する手法を学際的に検討し、開発研究者や開発実務者のみならず、開発の受益者にも利用可能となるような汎用的記録法の可能性をさぐることを目的としていた。平成14年度は方法論的としてのアクター・ネットワーク論を議論した。平成15年度、16年度は、すでに検討した方法論をふまえて、開発プロジェクトの参与観察を行った。なお、現段階で収集した資料の整理がすべて終わったわけではないが、これまでに判明した点は以下である。1.調査を始めて見た結果、この研究はきわめて「時間のかかる」仕事であるということを実感した。たとえ実験的なプロセス・ドキュメンテーションの調査であっても、数週間から1ヶ月程度の期間でできることはきわめて不十分で、博士課程の院生が全力で取り組むような規模の研究課題である。2.方法論的な検討の結果、アクター・ネットワーク論は有効であることが分かった。例えば、「参加型」というフレームの成立、安定化、揺らぎを、アクターを追うことで、参加型開発の「公的台本」と「隠された台本」を見いだしうる。3.しかし、アクター・ネットワーク論的方法論を、事後的に使ってプロセス・ドキュメンテーションを描くことは、異種混交なアクター間の微妙な相互作用を見落としがちであり、事後的な分析ではなく、「アクターを追う」ことで、このような調査を継続し、方法論的な検討を深める必要がある。
著者
ホーンズ シーラ 丹治 愛 丹治 陽子 アルヴィ 宮本なほ子 矢口 祐人 土田 映子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

2001年度-04年度までの科学研究費(基盤B「19世紀末英米文学における都市の表象に関する新歴史主義的研究」)の成果をもとに、英米におけるユートピアニズムに関するテクストと実践を研究することを目的とした.海外の研究者らと共同して、文化地理学、空間理論、マテリアル・カルチャーなどの知見を援用しながら、ユートピアニズムの表象を政治批評的に研究することで、この英米の思想史における重要な概念を、きわめて国際的・学際的な視座で考察することができた.
著者
山中 玲子 西野 春雄 伊海 孝充 宮本 圭造 橋本 朝生 表 きよし 小秋元 段 小秋元 段 橋本 朝生 表 きよし 竹本 幹夫
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

4年間の全国的な調査により、従来知られていなかった資料を含む多くの能楽関係資料の伝存を確認し得た。これらの資料から収集した能楽関係記事を比較分析することで、諸藩の能楽が従来知られていた以上に多様な担い手によって支えられていたこと、お抱え役者に対する藩の全面的な管理とサポートの様態、藩の所有する能面・能装束の管理の実態など、江戸時代の能楽の具体的な姿を明らかにし、今後の能楽史研究を大きく進める基盤を築くことができた。