著者
小畑 秀文 小場 弘之 西谷 弘 長谷川 純一 山本 眞司 鳥脇 純一郎 松本 徹
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

本研究では日本人に多い胃がんと肺がんに焦点をあわせ、既に整備済みのマンモグラムデータベースと併せて、主ながん検診用画像のデータベース化の整備を行うことを目的としている。本研究は2年度にわたるが、この間に整備されたデータベースについて以下にその概要を述べる。胃X線二重造影像:本データベースは診断の難易度や病変の種類などのバランスがとれるように選別されたFCR像76枚から成る。このうち65枚が異常陰影を含む。胸部CT像:本データベースでは、肺がん検診に利用されるスライス厚10mmのものと、精密な検査に用いられるより薄いスライス厚のもの2種類を含む。肺がん検診用は症例数70症例であり、25症例が肺癌症例である。精密検査用については、症例数7症例で、いずれも肺癌症例である。胸部単純X線像:本データベースは間接撮影像50症例、直接撮影像50症例から成る。工学サイドの利用者であっても、一般的には撮影法やその読影法の基礎もわからないのが普通である。そのため、アルゴリズムの組立てに助けとなるように、それらに関する解説を用意したり、専門医のスケッチ画や診断所見を各画像ごとに与えるように努めた。
著者
MORI James Jiro 伊藤 久男 柳谷 俊 松林 修 加納 靖之 木下 正高 MA Kou-fong
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

我々は,車籠埔断層を横断する温度プロファイルを観測するために,深さ250mのボアホールを掘削した.この掘削場所は1999年集集地震による温度異常が2000年に観測された場所のごく近傍である.2008年と2010年の温度測定では,温度異常は観測されなかった.このことは,2000年に観測された温度シグナルが地震による摩擦発熱による真のシグナルであったことを示している.
著者
菊池 順 寺沢 和洋 村山 秀雄 錦戸 文彦
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

液体Xeは、原子番号54,密度約3.0の透明な液体である。γ線用のシンチレーターとしては、NaI(T1)結晶並みの発光効率を持ち、しかも、発光の減衰時間はBaF2よりも遅いが、NaI(T1)やLSOよりも遥かに早く、2nsecと22nsecとの2成分からなっている。その高発光効率、短減衰時間等の特徴を利用すれば、以下のような利点がある。1つは、真空紫外光は反射率が低く、反射で集光することは困難である。そこで、出来るだけ直接光のみを多量に集光することによってエネルギーの分解能を挙げることが出来る。また、このことは、複数の光電子増陪管によって観測されるそれぞれの光量を比較することによって発光源の位置を決定することが出来る事を意味する。更に、使用されたPMTの発光出力の総和を取ることによってエネルギー測定が可能であるとともに分解能をも向上させることが出来る。そのため、液体Xe中でも稼働し、真空紫外光にも有感で、5気圧でも稼働する新型のPMTを浜松フォトニクス社と共同で開発した。このPMTを利用して、小型液体Xe-PETを試作し、まずこのような点を実験的に検証することにした。つぎに液体Xeからの速い発光を利用すれば、きわめて高速のシステムを作ることが可能であるばかりでなく、time of flight(TOF)の技術を使用して、位置の精度を上げることが可能となる。このような方式は、これまで、BaF2で試みられていたが、その発光量が余りにも少なかったために、位置分解能を議論するところまで行かなかった。我々の実験では、液体Xeで2PMTを使用して高速重イオンに対して25psecの時間分解能を得ており、このことはPMTに十分な利得があれば、位置分解能がcmからmmのオーダーに入る可能性があることを示している。TOFによる位置の決定は、非常に、簡単なので、これはPET技術に新しい面を切り開くことになると考えられる。
著者
豊田 紀章
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

Ar等から形成されたメゾスコピッククラスタービームを用い、ピックアップセルを用いた混合クラスター形成や、荷電状態、クラスターサイズ、照射中雰囲気ガスなどを変化させて有機材料のダメージフリー・ナノ加工を行った。損傷評価には主としてGCIBと真空一貫で接続された光電子分光分析装置を用いた。その結果、低イオン化電子電圧による多価クラスターイオン生成の抑制や、クラスターサイズ制御、水蒸気等の雰囲気ガス制御を行うことにより、低損傷で有機材料の加工が可能であることを示した。
著者
西村 恕彦 乾 伸雄 野瀬 隆 小谷 善行
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

本研究は,利用者が自然言語対話を行いつつ,描画を行い,自動的に絵を含む知識を獲得する手法を開発し,創造性や表現力を育成するシステムの開発を目標としている.本年度は,絵を組み合わせ,利用者に提示し,創造性を養うシステムを開発し,実際に実験を行った.本研究では,特に子供が自発的に学習を行っていくようなシステムを目指している.そのため,飽きさせないような工夫が必要となる.そこで,本研究ではロダ-リの手法を採用した.これは,日常的な風景の中に意外なものを挿入することで,子供の創造性を引き出す方法である.絵の構成は自動的に作成することもできるが,子供が選択してもよい.絵の提示は4コマ漫画のような形で行われる.例えば,最初に教室の絵が提示され,次のその中に子供が入り,更に掃除器具が描かれたような絵が提示される.子供は,自分のストーリーを組み立て,コンピュータに言葉として入力する.システムは,絵と文の対応付けを行い,知識として獲得していく.実際に,小学校5年生程度の子供に対して実験を行ったところ,様々な物語を観察することができた.更に,替え歌作りのシステムを作成した.これは,子供が自由に既存の詞を変更していき,できあがったものをならすことができるシステムである.これについても,子供の実験を行ったところ,様々な詞を観察することができ,音としてならすことが創造性をかき立てることを観察することができた.従来はわれわれは自然言語だけを用いた教育システムを開発してきたが,絵や音楽を利用することによって,より豊かな子供の教育システムを提供することができ,その方法論を示すことができたと考えている.
著者
古瀬 充宏 豊後 貴嗣
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

副腎皮質刺激ホルモン放出因子、ウロコルチンおよびウロテンシンIは、アミノ酸配列が類似し、哺乳動物の摂食を抑制することが知られていた。ヒナにおけるその作用は、副腎皮質刺激ホルモン放出因子が最も強く、ウロテンシンI、ウロコルチンの順であった。副腎皮質刺激ホルモン放出因子と同様にグルカゴン様ペプチド-1も、ヒナの摂食を抑制することが知られていたが、他の行動に関しては異なる反応を示すことが確認されていた。両者の脳内における交互作用を調べたところ、摂食行動に対して協調しあい、ストレス行動に関しては拮抗しあうことが判明した。内因性のグルカゴン様ペプチド-1が摂食調節に関わっているか否かを調べたところ、採卵鶏のヒナでは関与が認められたもののブロイラーヒナでは関与していないことが明らかとなった。ニューロペプチドYは、ヒナの摂食亢進因子の一つとして認知されていた。ニューロペプチドYの受容体にはいくつかのサブタイプが存在するが、それらに対する選択的な刺激役を投与したところ、ニューロペプチドY-(13-36)を除き他の物はヒナの摂食を亢進することが判明した。哺乳動物において、グレリンは強力な摂食促進作用を持つペプチドであるが、ヒナでは全く逆に強い摂食抑制作用を有することがラットグレリンの投与で明らかにされていた。グレリンの受容体に対する様々な刺激役の効果をヒナで調べたところ、ニワトリグレリンもカエルグレリンもラットグレリンと同様に摂食を抑制した。また、合成リガンドである成長ホルモン放出ペプチドを投与しても摂食は抑制された。L-ピペコリン酸は、必須アノミ酸であるL-リジンの脳内における主要な代謝産物である。その脳内における役割を調べたところ、ヒナの摂食を抑制し、その一方で睡眠を誘発する作用を有することが判明した。
著者
渡辺 幸一 朴木 英治 久米 篤 青木 一真 中野 孝教 石田 仁 松木 篤 岩坂 泰信 松木 篤 田中 泰宙
出版者
富山県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

高所に出現する弱い黄砂(バックグランド黄砂)の動態やその自然環境へ及ぼす影響を評価するため、立山において、エアロゾル粒子、微量気体成分、降水、霧水、積雪などの観測・分析を行うと共に、植生への影響について検討した。年度による程度の違いはあるものの、毎年秋期に「バックグラウンド黄砂」の影響がみられることがわかった。立山山の植生は、大気汚染物質だけでなく、黄砂粒子の影響も大きく受けている可能性が示唆された。また、立山での観測と並行して、回転翼航空機による富山県上空大気観測も行った。観測結果から、高所では高濃度の光化学オキシダント物質に植生が晒させやすいと考えられる。
著者
木村 玲二 森山 雅雄 篠田 雅人
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

ダストの発生源であるモンゴル・中国の乾燥地域において,ダスト発生モニタリングに関する観測ステーションを設置し,春季における黄砂の発生と地表面の状態の関係に関するデータを得ることに成功した。その結果,黄砂の発生に対する植生(特に枯れ草)や土壌水分の効果が観測によって明らかにされるとともに,ダストの発生と地表面状態の関係について定式化し,黄砂被害の軽減資料として役立つ「黄砂ハザードマップ」の試作品を公表した。
著者
中塚 次郎 竹中 克行 横山 正樹 ヒガ マルセーロ 立石 博高 金七 紀男 山道 佳子 宮崎 和夫 川上 茂信 砂山 充子
出版者
フェリス女学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

地域の形成にはたんに経済的要因や地理的要因だけではなく、その地域に流入してきた人間集団の存在や、そこから出ていった移民たちの意識などが重要な役割を果たしている。たとえば、EU内を移動しそこを生活空間とする一方で、EU外の集団との差異を経験することで、人々はEUをひとつの「地域」と認識する、といった具合にである。このことは、国家内の「地域」にもあてはまる。本研究は、こうした観点を生かしながち、イベリア半島を対象にして、「ヒトの移動」と「地域」形成の関係を、歴史的に分析しようとするものである。共同研究の前提として、まず、大西洋をはさんだ、現代におけるイベリア半島とアメリカ大陸間のヒトの移動を中心にして、統計的な研究、地域意識の形成、移民先での移民の社会的地位といったテーマについて検討した。その後、対象を近代以前にまでひろげ、さらに移動の地域をピレネー山脈をはさんだ、イベリア半島とほかのヨーロッパ地域とのあいだの人の移動にまで拡大して、宗教意識の変容や言語の変化を含む、幅広い視,点から検討を行なった,また、強いられた移動である「亡命」についても、人々の帰属意識の変化の側面から分析を進めた。共同研究の最後に、アジアにおける人の移動を比較検討の対象としてとりあげ、いかなる分析方法が地域研究にとって有効であるか、といった総括的な作業を行なった。
著者
日高 健 小野 征一郎 鳥居 享司 山本 尚俊 中原 尚知 北野 慎一
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

マグロ養殖業は、オーストラリア、メキシコ、地中海諸国、日本において行われており、現在では総生産量は約4万トンに達し、重要な産業となっている。クロマグロ養殖業は天然資源に原魚を依存したCapture-based aquacultureであり、天然資源との関わりが強い。さらに、長い価値連鎖のため、経済主体間の関係のあり方が養殖経営に与える影響が大きい。そこで、主要生産国における養殖管理制度と主要業者の経営管理を比較分析し、持続的なマグロ養殖管理のための要件抽出を目的として研究を行った。漁業資源管理では、オーストラリアが最も緻密な管理を行っており、養殖業者は各自のITQと自国EEZ内での原魚採捕によって優位性を持つ。これに次いで、スペインではマグロ漁業資源管理の強化が進んでいる。メキシコと日本では漁業資源管理の対象となっていない。価値連鎖における経済主体間関係を軸としたビジネスシステムをみると、スペインは生販統合型、オーストラリアは原魚供給確保型、メキシコの二事例は生販統合型と原魚供給確保型、日本は生販統合型である。これらの中では、メキシコ1のシステムが高いパフォーマンスを示しており、メキシコ2がこれに次ぐ。メキシコが有するビジネスシステムの優位性は、経済主体間の連携の強さに基づくものである。生産コストの低さに加え、生販統合による市場情報に応じた生産と出荷の体制は、日本市場における競争優位を確実にする。ただし、高い天然資源の豊度と緩い漁業資源管理に支えられたものであり、脆弱である。つまり,供給の不確実性に対応するためには、確実な資源管理制度を基盤に、原魚供給確保型と生販統合型の双方の性格を具備したビジネスシステムが必要である。原魚採捕者、養殖業者、流通業者の三者の戦略的提携関係をいかにして構築するか、それを政府がいかに支えるかが持続的な養殖マグロ産業を構築するための要件となる。
著者
村山 繁雄 齊藤 祐子 石井 賢二 初田 弘幸
出版者
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

レビー小体型認知症(DLB)、パーキンソン病(PD)の認知症の責任病巣として、特異な線条体へのアミロイドβ沈着が原因と、ペンシルベニア大学、ロンドン大学からの報告で示されたことを受け、高齢者ブレインバンクプロジェクトで、PIB PETとドーパミンPETによる臨床例における線条体の検討と、死後脳におけるアミロイドβ蛋白とリン酸化αシヌクレイン沈着を免疫組織学的に線条体で検討する二つの方法で行った。DLB、認知症を伴うPD(PDD)51例と、認知症を伴わないPD(PDNC)48例の神経病理学的差分の検討で、辺縁系(扁桃核、嗅内野、CA2)、線条体、新皮質のαシヌクレイン沈着が抽出された。老人班に関しては、新皮質については抽出されたが、線条体は抽出されなかった。また、新皮質のAβ沈着はαシヌクレイン沈着を誘導する傾向が確認されたが、線条体沈着への促進作用は確認されなかった。なおこの研究期間3年間の新規蓄積例は13例であった。またこの検討過程で、αシヌクレイン沈着のみが有意で、アミロイドβ沈着、タウ沈着が軽度であり、認知症を呈するいわゆる純粋型レビー小体型認知症が23例検出され、辺縁方20例、新皮質型3例であった。これらの症例は、線条体のAβ沈着はないかほとんどなく、責任病理としての意味は少ないと考えられた。DLB/PDDとPD 3例ずつの差分で、DAT Scan(^<11>C-CFT PET)で、尾状核の集積低下が検出された。しかし、^<11>C-PIBでは新皮質はDLBの一例のみ陽性所見が検出されたが、尾状核を含め、線条体は全例で検出されなかった。研究期間中PDD一例の剖検所見が得られたが、辺縁型に分類され、新皮質にごくわずかびまん性老人班を認めるのみであり、線条体にはAβ沈着は認められなかった。以上の検討より、新皮質のアミロイドβ沈着は、レビー小体病理の新皮質への進展を促進することで、レビー小体型認知症の認知機能低下に影響を与えうるが、線条体における存在が、積極的に認知機能に影響を与えている結論は得られなかった。ただし、DLB/PDDにおける尾状核のDAT scan低下は、PDDに関しては病気の進行期であるためとの説明が可能であるが、DLBの場合の原因は、課題として残った。
著者
岡内 三真 長澤 和俊 菊地 徹夫 大橋 一章 吉村 作治 谷川 章雄
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

平成12年度〜平成14年度にかけて、西域都護府を軸としてシルクロード史の再検討を行った。西域都護府は前漢王朝の西域経営の拠点であり、文献史料によっておよその位置が比定されているが、正確な位置が確認されていない。漢王朝の西域進出はシルクロード形成の重要な要因であり、西域都護府を設置した烏壘城を比定できれば、漢王朝の西域経営の実態を明らかにできる。そこで、西域都護府の位置を確認するため、新疆文物考古研究所との共同による現地調査を実施した。平成12年8〜9月、平成13年5月、平成14年5月に中国新疆ウイグル自治区を訪問し、現地での調査を行った。調査地は西域都護府の所在地と推定される新疆ウイグル自治区輪台県・策大爾郷を中心とした地域であり、烏壘城の可能性が高いと推定される遺跡を踏査し、立地や構造、遺物などを確認した。本格的な発掘調査を行えなかったため、西域都護府の位置を断定するには到らなかったが、遺跡の現状を確認することができ、西域都護府の構造等に関してある程度の予測を立てられた。また比較のためにシルクロードの天山北路、天山南路のルートに沿って遺跡の調査、博物館での遺物の調査を行った。時期は漢代に限定されないが、新疆の都城址に関しての現状確認と資料の収集を実施することができた。2001年には早稲田大学で国際シンポジウム「甦るシルクロード」を開催し、2002年には日本中国考古学会第8回大会において西域都護府の調査概要を報告し、研究者との意見交換を行った。現在3年間で得られた成果の整理・分析を行い、調査報告およびデータベースの作成作業を進めており、今後の研究の基礎となるデータを提供する予定である。
著者
安達 修一 大山 正幸 辻野 喜夫 小田 美光 亀田 貴之
出版者
相模女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

日本へ-来する黄砂粒子について、成分の化学分析、肺に-着した-の生物学的影響などを調べた。その結果、大阪と韓国ソウルで集めた黄砂粒子から大気汚染物質が検出され、-来する過程で都市や工業地帯の汚染物質を付着したと考えられる。肺に入った-の影響は、汚染のない黄砂粒子に比べて強く、付着した成分が健康影響を及ぼすことを予測させる結果である。黄砂粒子に含まれる発がん物質の量は、これだけで肺がんを発生するとは考えにくい量であるものの、要因の一つになることが考えられ、今後検討すべき課題である。
著者
今西 英雄 稲本 勝彦 三島 睦夫 小池 安比古 土井 元章
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

系統の異なるユリりん茎を用い、-1.5〜-2.0℃の氷温下で長期貯蔵した場合の貯蔵可能期間を調べるとともに、温度降下処理を行い処理後のりん茎の生存率を調べてりん茎の50%生存可能な品温(LT50値)を求め、系統間の長期氷温貯蔵に対する耐性を評価した。その結果、氷温貯蔵期間が長くなるにつれて、テッポウユリ、オリエンタル系、アジアティック系の品種ではLT50値が高くなり氷温に対する耐性が次第に低くなること、LA系の品種ではほぼ一定で耐性が変わらないことを明らかにし、系統間の氷温貯蔵耐性の差異を確かめた。オリエンタル系とLA系のりん茎を-1.5℃と-2.0℃の異なる温度で異なる期間貯蔵後に栽培したところ、氷温財蔵耐性の低いオリエンタル系の品種では両温度ともに、4か月の貯蔵では正常に生育するが、7か月以上貯蔵すると採花時の花や葉に障害が発生し切花品質が低下するため、生存はしているものの使用できなくなるが、耐性の高いLA系では11か月貯蔵しても正常に生育することを確認した。低温による氷温下での貯蔵耐性の付与については、1℃4〜8週間の予冷により、りん片および茎の糖濃度が直まり、氷温で長期貯蔵後の栽培においても切花品質が高いこと、12℃8週間に続いて1℃8週間の予冷を組み合わせると、さらに切花品質が高まること、一方1℃の予冷期間が12週以上と長くなると茎が伸長を始め糖度が低下し、貯蔵中に死に至るりん茎が増加することを明らかにした。CA貯蔵の効果については、-1.5℃の氷温帯で、酸素濃度を2〜3%に維持したCA環境で貯蔵してきた場合、アジアティック系でのみ、開花率が高くなり、切花品質が向上するという結果を得たが、オリエンタル系ではかえって開花率、切花品質の低下がみられ、所期の効果を得ることができなかった。
著者
大谷 順子 大杉 卓三
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

中央アジアを調査地域として、社会開発の現状と課題の調査をおこなった。人間の安全保障の概念を取り入れ、特に、保健分野、教育分野、災害、ICT(情報通信技術)の利活用促進による社会開発、地域コミュニティ開発とマイクロファイナンスの取り組みについて調査をおこなった。これらは国連ミレニアム開発目標(MDGs)を達成するための課題でもある。本研究は、先行研究である九州大学教育研究プログラム・拠点形成プロジェクト(P & P)アジア総合研究「アジア地域における人間の安全保障の観点による社会開発に関する新たなフレームワークの研究(研究代表:大谷順子)」の成果を踏まえ発展させて調査をおこない、先行研究において調査が困難であった地域を中心に調査を実施した。
著者
丸 浩一 藤井 雄作 太田 直哉 上田 浩 吉浦 紀晃 田北 啓洋
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では, PCとカメラを活用して市民が身の回りを確実に見守る社会の実現を目指すコンセプトと,暗号化保存によりプライバシーの侵害を回避するためのコンセプトを合わせた新たな防犯カメラシステムのコンセプトの普及を目的とした技術開発および実験を行った.その成果として,プライバシー保護機能を付与した様々な防犯カメラシステムを開発し,本コンセプトの適用形態を大幅に拡大した.また,社会実験を通じた検証を行った.これらの活動により,本コンセプトの大規模な普及への足掛かりを得た.
著者
大場 正昭 伊藤 一秀 小林 信行 倉渕 隆 菊池 世欧啓 菊地 世欧啓
出版者
東京工芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、様々な風向時における建物内外の乱流構造について風洞実験と数値シミュレーションにより検討し、局所相似モデルを提案し検証するとともに、開口部到達全圧の推定方法を提案した。得られた知見は次のとおりである。(1)アプローチフローが建物開口部に正対する条件では、建物前面下部に形成される循環流と開口部直上面を下降する気流との相互作用により、下向きの運動量輸送が開口部直前で増大し、流入気流が開口部を急激に下降しながら室内に流入した。開口部の圧力損失係数は流入角と風向角に依存した。(2)建物内外の乱流構造の把握を自的とした風向正面の場合の通風気流に関する乱流モデルの予測精度検証を行った。LKモデル,LK改モデルは、標準k-εモデルでは困難である建物前面下部の大きな循環と流入気流の下降をある程度再現し,流入乱流エネルギーの過大評価を緩和できた。LESモデルは通風量,風速ベクトル,乱流エネルギー,風圧係数等の統計量に関して風洞実験結果とよく対応し,k-εモデルに対し大きな改善が見られた。(3)開口部の流管形状解析から、開口部付近の短い区間での加減速の影響により,この区間の流管形状に大きな変化が生じていることが明らかになった。(4)様々な風向における通風時の乱流構造の把握において,風向角変化に伴う圧力変化について考察し,風向45゜まで全圧が概ね一定,以後低下する原因は風上コーナーでの気流の剥離に伴う乱流エネルギー生産でことが判った。(5)通風の局所相似性の仮定に基づく通風量予測モデルを提案し,妨害気流の横風成分が強い通風気流に対して.局所相似モデルは風向角に依らず一意的に開口部の流入特性を表現できることを示した。(6)壁面近傍の動圧測定値を風圧に加算して、開口部到達全圧を簡便に推定する方法を提案した。今回のケースでは開口部長辺の1/4程度壁面から離れた地点の動圧を用いることが適当であり,全圧の簡易測定結果は直接測定結果とよく対応した。
著者
岡 泰資 須川 修身
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

横風の影響を受けた火炎形状,熱気流性状を把握するために,単一および複数火源を用いた模型実験を実施し,以下の事項が明らかとなった。(1)横風を受け下流側に傾斜した単一火源上の火炎の高さおよび傾斜角度を,発熱速度と横風速度の複合関数で表した関係式を導出した。さらに,火源規模および形状を変化させた実験結果を基に,無次元発熱速度で0.05<Q^*(Q^*rec)<12.75,さらに正方およびアスペクト比が1:6の矩形火源まで適用可能となった。(2)横風を受けた火災プリューム主軸の軌跡をロジスティック曲線で近似した予測式を提案した。さらに横風速度の影響を加味した形でこの軌跡に沿った移動距離と温度減衰の関係を表した関係式を提案するとともに,この温度上昇,外気速度および移動距離を変数として,主軸に沿った温度上昇と熱気流速度の関係式を導いた。(3)横風を受けた熱気流が作り出す温度場の結果を基に,温度で定義したプリューム幅を求め,火災プリュームの断面形状を実験的に明らかにした。さらにこの半値幅を用いて,火源から運ばれてきた熱と横風により上流側から運ばれてきた熱の和として火災プリューム内の温度分布が表現出来ることを示した。(4)2種類のCFDコードを用いて,有風下の火災プリューム性状の再現性を検討した結果,燃焼モデルの適用と火源への発熱速度の与え方を同時に工夫することで,連続火炎領域の高さや火災プリュームの主軸位置をある程度再現できたが,温度減衰性状は計算コードによる違いが著しく,また実測値と異なる結果となった。(5)有風下における複数火源からの火炎および熱気流性状に対して,模型実験の実験結果と比較することで,単一火源上に形成された火災プリューム性状に関する既存の予測式がどこまで適用可能であるかを検討した。
著者
小林 章夫 永富 友海 高橋 和久 高岸 冬詩
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

当研究の主たる目的は、文学と教育を関係づけ、文学教育の新しい可能性を探ることである。そのために次の2点の企画をおこなうことにカを注いだ。1.代表者の小林章夫がコーディネーターとなり、上智大学で翻訳の輪講授業を導入した。この授業では、プロの翻訳家の方々に順次講義をお願いし、現在、上智大学においてもっとも人気の高い授業のひとつとなっている。2.現在活躍中の若手作家を少人数のゼミにお招きし、読書をめぐる討論会をおこなった。うち2回についてはあらかじめテクストを決定し、それについての読書アンケートを作成、学生に回答させておいた。討論会の講師としてお招きした作家と議論の対象にした作品は以下のとおりである。 (1)2005年度恩田陸氏『夜のピクニック』 (2)2006年度宮部みゆき氏 (3)2007年度万城目学氏『鹿男あをによし』どの講演会も、学生からの活発な質問と、作家の方々の気さくな受け答えにより、盛況のうちに終わり、読書体験の少ない学生たちの、文学作品への関心を高めるという目的を、十二分に達成することができた。
著者
加藤 節 西崎 文子 亀嶋 庸一 富田 武 藤原 帰一
出版者
成蹊大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

近年、「内戦」が冷戦終結後の世界における戦争の新たな形態として頻発し、人々の関心をよんでいる。しかし、ふりかえってみると、20世紀全体が「戦争と革命の世紀」であるとともに、あるいはむしろそれゆえに、すぐれて「内戦の世紀」であった。今世紀は、ロシア革命に続く内戦から、ユーゴあるいはアフガニスタンの内戦に至るまで「内戦」を構造的に反復し続けてきたからである。本研究は20世紀がなぜそのように「内戦」を反復し続けてきたかを、多様的領域を専門とする政治学者の共同研究によって解明することを目的として発足した。その場合、本研究では次の三点に留意して分析を進めた。「内戦」を国民国家の擬制的性格に関連づけること、国民国家形成期における「内戦」の諸相に歴史的な光を当てること、国民国家体系としての現代世界における内戦の要因に理論的な考察を加えることがそれである。こうした作業を通して、本研究は歴史と理論との両面から「内戦」に政治学的考察を加えることができたと考えている。