著者
辻井 正人
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究では典型的なカオス的挙動を示す連続力学系(アノソフ流、特に負曲率空間における自由粒子の運動を記述する測地流)に対して、付随する転送作用素のスペクトルを分析することで軌道の統計的性質を精密に分析する方法を研究した.最大の研究成果は負曲率多様体上の測地流(またはより一般の接触アノソフ流)に対し、転送作用素の生成作用素が離散的なスペクトルを持ち、それらが複素平面上の幾つかの虚軸に平行な帯状領域に含まれるという事実を示したことである.加えて、力学系のゼータ関数についても対応する結果を得た.これは従来の関係分野の研究を大きく前進させるものである.
著者
若林 隆 仁木 一郎 吉田 松年 早川 哲夫 JERZY Krechn ZDZISLAW Wai MICHAL Wozni
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

1.培養細胞系によるミトコンドリア(ミト)巨大化実験モデルの確立:従来の動物(マウス、ラット)に代わって培養細胞系による実験モデルを確立し、ミト巨大化の機序解明を可能にした。2.ミト巨大化機序の解明:様々な病的条件下でのミト巨大化の普遍的機序に、フリーラジカルが直接関与することをin vivo,in vitroの実験系で証明した。3.ミト巨大化の細胞病理学的意義の解明:巨大ミト存在下の細胞がやがてアポトーシスに陥る事を培養細胞系で見いだした。フリーラジカルに晒された細胞内ミトは、巨大化により自らの酸素消費量を減少することによって酸素ラジカル産生を減少させ細胞内フリーラジカル量の増加を緩和しようとするのであり、ミト巨大化はオルガネラ・レベルでの適応と考えられる。4.フリーラジカルスカベンジャーによるミト巨大化阻止の成功:coenzyme Q_<10>,α-tocopherol,4-OH-TEMPOにより、in vivo,in vitroでの種々病的条件下でのミト巨大化の阻止に成功した。6.臨床応用を目的としたフリーラジカルスカベンジャーの開発:in vivoの実験系で4-OH-TEMPOの副作用がみられたので、新たに6種の誘導体を合成しスカベンジャー効果を培養細胞系で検討した結果、4-octanoyl-,4-lauroyl-TEMPOに4-OH-TEMPOよりはるかに優れたスカベンジャー効果が見られ、in vivoの系で検討中。
著者
中塚 武 光谷 拓実 河村 公隆 安江 恒 光谷 拓実
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

樹木年輪のセルロースに含まれる酸素と水素の同位体比が、過去の降水量や相対湿度の変動を、年~月の単位で極めて良く記録しているという知見に基づき、北海道から南西諸島に至る日本各地で、過去数百~数千年に亘る水循環の変動を復元して、梅雨前線活動とエルニーニョの関係の周期変動や、洪水・旱魃のサイクルが日本の歴史に与えた影響、水循環変動に対する植物の長期応答などについて、気候学・歴史学・生態学的解析を行った。
著者
林 泰秀 外松 学 朴 明子 大木 健太郎 佐野 弘純 小川 誠司
出版者
群馬県衛生環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ALK遺伝子の解析で神経芽腫(NB)では、部分欠損型ALKも腫瘍化に関与することが示され、ユーイング肉腫では新規のミスセンス変異の4例は活性化変異であることが判明した。横紋筋肉腫50検体の解析では高頻度にALKの高発現を確認した。IDH1/2遺伝子の解析ではNBを含め4種の腫瘍で変異が同定された。さらに次世代シーケンサーのエクソーム解析とALK経路に関連する遺伝子群の解析で新規異常を複数検出し、ALK経路はNBの発症と進展に重要な役割を果しており、治療標的になりうることが示唆された。
著者
岡山 明 小野田 敏行 板井 一好 西 信雄 小栗 重統
出版者
岩手医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

安静時代謝の住民での基本的な分布を明らかにするとともに循環器疾患危険因子との関連を検討するため、平成14年度に200名、平成15年度に200名について無作為抽出による住民対象の調査を実施した。調査は胆沢町、矢巾町の協力を得て保健センターで実施した。調査は週末を含む週4日間で午前中に実施し、対象者には空腹での来所を依頼した。安静時代謝量を測定する持続式呼気ガス分析装置は新たに購入し使用に供した。午前中は調査実施に用い午後はデータ整理及び参加者への結果報告準備に用いた。1.調査項目問診:飲酒喫煙、運動習慣、生活意識、生活満足度,栄養調査:フードモデルを用いた量頻度法による栄養調査,安静時代謝量:持続式呼気ガス分析装置を用いた代謝量測定,循環器疾患危険因子:血圧:自動血圧計による2回測定,血液化学検査:,安静時心電図,血管脈派速度,身体計測・運動能力:身長、体重、ウエスト・ヒップ比、握力,上腕周囲(脱力時、収縮時),生活体力(明治生命体力医学研究所版),歩行速度(30m)2.対象:40代、50代、60代、70代の男女各100名計400名。岩手県下胆沢町・矢巾町の協力を得て1町村当たり200名を住民基本台帳から作成した無作為抽出400名の名簿に基づき順次募集した。最終調査対象者は、385名であった。3.解析結果すべての検査項目について基本集計を完了し、データ解析を行う体制が構築できた。安静時代謝量は年齢が高くなるほど低く、肥満度が高くなるにつれて低くなる傾向が観察された。同時に測定した生活関連体力の測定結果からは、年齢とともに生活体力が低下する傾向が明らかとなり、生活体力が高齢者のみにとどまらず中高年者の体力の指標として有効であることを明らかにした。また血清フッ素は女性では50歳代で、男性では60歳代でたかまり、骨塩量の経年変化の男女差を説明できる可能性があると考えられた。
著者
大成 博文 高橋 正好
出版者
徳山工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

マイクロ・ナノバブル技術を用いて,閉鎖海域における海洋生物の蘇生と海洋環境の水質浄化に関する研究を行い,以下の成果を得た.(1)マイクロ・ナノバブル発生装置を開発し,マイクロ・ナノバブルの直径と上昇速度を計測した.その結果,1〜10μmの気泡径を有する「マイクロナノバブル」の存在を確認するとともに,「マイクロバブル」から「マイクロナノバブル」へと収縮する過程を詳しく検討した.(2)マイクロ・ナノバブルの発生装置の内部について高速度撮影を行い,マイクロ・ナノバブルの発生が秒速400回転程度の旋回速度で発生し,その静電摩擦によって,マイクロ・ナノバブルの物理化学的特性が生まれるという「サイズ効果」の存在を明らかにした.(3)マイクロ・ナノバブルの生理活性効果を見出し,それが,2枚貝のみならず,人体においても発生することを明らかにした.とくに,マイクロ・ナノバブルの供給によって,通常の2倍前後の血流促進効果を見出した.(4)マイクロ・ナノバブル技術を水産養殖に適用し,広島カキ養殖,北海道ホタテ養殖,三重真珠養殖における成果を系統的に検討した.また,その技術的成果における課題を明確にした.以上を踏まえ,マイクロ・ナノバブルによる水環境蘇生技術の可能性と展望を明らかにした.
著者
棚部 一成 遠藤 一佳 佐々木 猛智 白井 厚太朗 伊庭 靖弘 守屋 和佳
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

氷室時代の現世と温室時代の白亜紀の軟体動物(貝類)を対象として、貝殻の成長縞解析と地球化学的分析を行い、海洋環境に対する生活史形質の応答様式を解析した。その結果、北西太平洋の貝類の個体としての寿命が100年以上と長く、全球規模での海洋環境変動の記録を貝殻に保存していることが明らかになった。また、保存のよい浮遊性有孔虫、底生有孔虫、貝類化石の酸素同位体比分析から、白亜紀後期の北米内陸海や北西大西洋の陸棚は温室期の白亜紀中期に比べてやや寒冷化し、低層水温には季節変動があったことが示唆された。また、これら海域の貝類は現世の温暖な海域の貝類と似た生活史形質を持っていたことがわかった。
著者
黒田 忠史 三阪 佳弘 野上 博義 深尾 裕造
出版者
甲南大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究では、主要五カ国(独・英・日・仏・米)における法曹養成制度と法学教育制度の「歴史的類型」を理念型として析出し(黒田論文「法曹養成の歴史的諸類型」)、それらが近・現代200年にわたる各国特有の国家と法のあり方、および社会構造史的な基礎、とりわけ法律家集団と官僚制の各国あり方によってどのように規定されて成立したのかを明らかにしようと試みた。そのために、各国の歴史的諸制度とその改革の経緯に着目し、そのための史料や文献を収集し分析する作業に取り組んできた。これによって、各国における法曹養成と法学教育の実情が、史料に即してかなり明らかになった。歴史的に概観する研究報告論文の他に、共同研究者による個別的歴史研究としては、まず黒田(研究代表)がアメリカにおいて弁護士事務所での見習教育からロースクールでの法曹養成に転換していった原因とプロセス、法曹団体の役割と性格、およびProfession「理念」について、そしてドイツについてはグナイストの「自由弁護士」論とベルリン法学協会の果たした歴史的役割について研究した。イングランドについては深尾がLaw Society関係史料にもとづき19世紀後半のイギリスでの法科大学院設立運動の隆盛と挫折の過程を分析、フランスについては野上が革命後の弁護士職の歴史と特殊フランス的法律家秩序の変容のプロセスを、三阪が第三共和政初頭における司法官試験導入過程を研究した。三阪と黒田は、日本の司法官試験・弁護士試験と弁護士団体について比較法史的観点から研究をおこなった。本研究の成果の全体については、平成14年10月5/6日に開催される第50回法制史学会研究大会シンポジウム「歴史の中の法曹養成」において報告し、そこでの討論とあわせて公刊することになっている。
著者
島岡 みどり 蛭田 秀一 小野 雄一郎 堀 文子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

日本、スウェーデン、中国の老人介護施設において、介護業務従事職員の作業負担とその関連項目について、アンケート調査およびフィールド調査を行った。アンケート調査(日本325人、スウェーデン84人、中国74人)の結果比較において、日本の職員の作業負担とその関連項目の特徴として、中国とともに作業量が多く作業は通常1人で行われ、さらに疲労度や筋骨格系症状が3か国の中で最も高い状況にあることが示された。スウェーデンの特徴としては、作業量は少なく、2人以上で作業を行う機会が多く、就業継続希望も高いが、仕事や待遇への不満は大きかった。中国の特徴としては、日本とともに1人作業および作業量が多く、特に時間外労働をする割合が高いが、仕事や待遇への満足度は高かった。3種類のフィールド調査(勤務中の上体傾斜角、心拍数、歩数の各測定)のうち、座位作業と休憩時間を除く上体傾斜角測定(日本3人で4回、スウェーデン7人が各1回、中国は実施せず)において、日本の介護職員はスウェーデンの職員に比較して、より深い角度寄りの頻度分布を示した(双方とも看護師1人を除く)。心拍数測定(日本24人、スウェーデン6人、中国15人)では、各国とも個人差が大きく、休憩時間を含む勤務時間中の身体活動強度指標(%HRR)の平均値は26%〜27%とほぼ同水準であった。休憩時間を含む勤務時間1時間当たりの歩数の平均値(日本45人各1日、スウェーデン5人で延べ25日分、中国7人延べ30日分)は、日本(1122歩/時間)が最大で、次いで中国(1026歩/時間)、スウェーデン(779歩/時間)の順であった。本研究において、相対的に多くの日本の介護業務従事職員が、高水準の作業負担と疲労の状況を示したことから、各国の状況も参考にしながら、より適切な作業量や作業方法の目安が設定されるべきであると考察された。
著者
小田 竜也 柳原 英人
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

磁性ナノ粒子を腫瘍に集積させ、外部から照射する交流磁場による誘導加熱で癌を焼灼する新規治療の実現を目的にした。コバルトなどの生体に有害な金属を添加せずに高効率に発熱する、棒状の磁性ナノ粒子(DINP)の開発に成功し、国際特許出願した。血管内投与する磁性ナノ粒子のステルス化、iRGDペプチドの同時投与による腫瘍集積増強は十分な効果を得られなかった。DINPを腫瘍に直接注入し、交流磁場照射により腫瘍を完全に焼灼する事には成功し、新たな電磁誘導癌焼灼治療性の可能性を示せた。
著者
井上 眞理 湯淺 高志
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

イネ科およびマメ科作物の子実の成熟および発芽過程について主に活性酸素およびラジカルスカベンジャーの機能に注目して調べた。吸水後のコムギおよびオオムギ種子のアリューロン細胞で生成されるH_2O_2は、抗酸化物質であるアスコルビン酸により消去されることを明らかにした。また、子実の登熟過程において、穂発芽抵抗性のコムギ"農林61号"は、ラジカルスカベンジャーであるアスコルビン酸による発芽抑制効果が登熟後期の開花28 日目から顕著となり、H_2O_2を消去するカタラーゼ活性が著しく高くなった。さらに、コムギのアスコルビン酸散布処理は、いずれの登熟ステージにおいても有効な穂発芽抑制物質となることが示された。デンプン種子だけでなく、油糧種子の成熟や発芽過程についても基礎的な知見を得た。ラッカセイでは、H_2O_2処理により90%以上の発芽率を示し、対照区に比べ著しく改善された。含水率は子葉および下胚軸ともに吸水に伴い漸増したが、下胚軸の増大は顕著だった。水の動態を示すT2は、下胚軸では吸水1日後から5日目まで漸増し自由水が出現した。乾燥子実へのH_2O_2処理により下胚軸および幼根においてエチレン生成が3倍となることが明らかになった。そこで、エチレン応答性遺伝子群の発現を正に制御する転写因子抗GmEin3 抗体によるイムノブロットを行った結果、H_2O_2処理によりラッカセイの下胚軸および幼根に明瞭な交差シグナルが早い時期から検出された。また、ダイズ種子の成熟過程の子実の成熟過程における含水率の変化とオートファジー関連遺伝子であるATG8ファミリーとの関係にも着目し、GmATG8i は含水率の低下に伴い開花28日目からその発現程度が低くなることも合わせて報告した。
著者
三浦 篤
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は19世紀後半の日本とフランスにまたがる美術交流の実態を、双方向的な視野の下に三つの側面から総合的に解明しようと企てた。すなわち、第1段階として、日本美術からフランス美術への影響現象であるジャポニスム(日本趣味)を研究が進んでいないアカデミックなサロン絵画を中心に調査した。フィルマン=ジラールのような重要な画家の例を発掘したほか、オリエンタリズムの延長としての異国趣味的なジャポニスムが広く存在したことが明らかになった。他にアジアの寓意像、絵の中の文字、陶磁器についてもジャポニスムとの重要な関連性が見出された。第2段階として、アカデミックな画家の中でも好んで日本の美術工芸品を蒐集し、かつ日本近代洋画家たちの指導者でもあったラファエル・コランについて分析した。その結果、コランのジャポニスムは異国趣味とは異なり、印象派のような造形的なジャポニスムとも異質であることが分かった。春信、光琳、茶陶への趣味が物語るように、それは日本美術と本質的に共鳴する美意識に基づく特異なジャポニスムである。その意味で、コランが日本人の弟子を多く育てたことは決して偶然ではない。そして第3段階として、逆にフランス美術の日本美術への影響現象である、フランス留学した日本の洋画家たちにおけるアカデミスム絵画の摂取について研究した。山本芳翠や黒田清輝を始めとする渡航画家たちは、ジェローム、ボナ、コラン、ピュヴィ・ド・シャヴァンヌ、バスティアン=ルパージュらから、アカデミスム、古典主義、自然主義など多様な絵画様式を摂取して帰国した。日本近代洋画の礎となった画家たちの個性的な受容の有り様が見えてきた。以上のように、従来は別個に研究されていた三つのテーマを相互に連関させながら調査することで、日仏美術交流史の重要な断面をダイナミックに浮かび上がらせることができた。研究に新たな1頁を付け加えることができたと確信する。
著者
後藤 乾一 塩崎 弘明 山田 満 吉野 文雄 玉木 一徳 山崎 功
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

平成18年5月、本研究グループは、平成15-16年度の基盤研究B(課題番号 15330034)の研究成果を『東ティモール『国民国家』を巡るエスニシティと国際・地域環境』として上梓し、その成果をさらに深めることを本年度の課題とした。その概要は以下のとおりである。(1)独立後最初の深刻な内部対立(地域差が主因)が発生したが、その直後に現地調査を行い、権力構造、経済事情に関する基礎的資料を収集した。(2)混迷する経済の活性化には、一定の外国援助・投資が必要であり、特に日本の関与が『期待』されている。その観点から日本政府、企業。NGOの体東ティモール政策・関与の実態を聞き取り調査を含め実施した。(3)日本との関係においては、今なお戦時期の軍事占領に起因する微妙な対日感情が見られるが、この点につき前年度に現地で行った聞き取り調査のテープ記録を起こし分析した。(4)東・東南アジアでは経済分野における域内関係が密接化しているが、東ティモールも経済規模はきわめて弱体ではあるものの、こうした潮流に加わることを課題としている。そのような観点から、アセアンさらにはAPECなどの地域協力機構、その加盟国はどのような東ティモール政策を準備しているかについて実態調査を行った。(5)2002年5月の独立に際しては最大の宗教勢力であるカトリック教会が重要な役割を演じたが、今回の政治的・社会的・文化的な亀裂の修復にはどのような役割を果たしたのか(あるいは果たせなかったのか)につき、教会側の動きについて、主に現地で活動する日本のカトリック系NGOからの聞き取り調査を行った。以上の諸活動およびそこから得られた情報・資料・データについては、現在のきわめて流動的な状況が一段落をした時点で分析を行い、平成20年3月をめどに最終報告書を取りまとめる予定である。
著者
金田 利子 鐙屋 真理子 伊藤 葉子 斎藤 政子 宍戸 健夫 水野 恵子 劉 郷英 一見 真理子 伊藤 葉子 齊籐 政子 宍戸 健夫 水野 恵子 劉 郷英 劉 蓮蘭
出版者
白梅学園大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

乳幼児保育における母性意識の国際比較を、日・中・米・スウェーデンを対象に行ったものである。母性意識としては、政策が保育所拡大方向に変わっても日本においてはなお浸透している「3歳児神話」を中心に、ジェンダー意識、育児意識、0歳児集団保育意識においた。方法は、意識を捉えるため評定尺度による質問紙調査と、その意味を深めるためのフォ-カスインタビューの二つを重ね合わせて用いた。その結果、国間の有意差は見られたものの、4ヵ国を貫く因子は見いだせず、国による傾向というよりは、事項毎に異なること、また、質問紙への答えが同じでもその内実は全く異なり、文化・民族・制度との関わりの大きさが窺えた。
著者
千葉 由美 山田 律子 市村 久美子 戸原 玄 石田 瞭 平野 浩彦 植田 耕一郎 唐帆 健浩 徳永 友里 植松 宏 森田 定雄
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

摂食・嚥下障害は高齢者をはじめ脳血管疾患、変性疾患、がんなどの発症および治療に伴い発生する症状である。2次合併症の誤嚥性肺炎は、全肺炎の半数以上を占め、死因となる。本プロジェクトでは、評価法や管理システムにおける課題を見出し、改善点を示すことを目的に進めてきた。これまで複数病院における誤嚥性肺炎の発生率を見るとともに、病院管理の在り方について管理者と病棟で実態調査などを行った。現在、最終分析を進めている。
著者
振津 かつみ BERTELL Rosalie LAURENCE Glen BEIVERSTOCK Keith MOHR Manfred JAWAD Al-ali OMRAN Habib DOUG Weier RIA Verjauw GRETEL Munroe 佐藤 真紀 豊田 直己
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

「非人道的無差別殺傷兵器」のひとつである劣化ウラン兵器の国際規制について、国際社会が進むべき方向性を決めるための根拠となる、同兵器の環境・健康影響の科学的知見と社会学的論点について、調査研究を行った。以下がその成果である。(1)劣化ウラン兵器が使用されたイラク南部バスラの医師らによる癌登録の整備と疫学調査に協力した。また、現時点での同地域の癌の特徴と動向を確認した。(2)劣化ウラン兵器に関する「国連決議」の議論を調査し、国際規制における意義を確認した。(3)劣化ウランの健康影響に関する科学論文のレビューを行い、広く国際社会が共有できる資料としてまとめた。(4)予防原則の軍縮分野での適用について、文献調査を行い、劣化ウラン問題に即した予防原則のあり方について考察を行った。
著者
狩野 繁之 河津 信一郎 畑生 俊光
出版者
国立国際医療センター(研究所)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

1.リアルタイムPCR法を用いたマラリア原虫ゲノム解析システムの構築(1)熱帯熱マラリア原虫(Pf)のクロロキン(CQ)耐性関連遺伝子pfcrt上の単塩基置換の定量的検出を試みた結果、サンプル中に混在する感受性型(FCR-3株)と耐性型(K1株)遺伝子の混合比に一致した定量値を、リアルタイムPCRの測定値から推定することができた。しかし、FCR-3株:K1株を8:2の比率で混合した場合では、in vitroではCQ感受性を示し、fcrt遺伝子のDirect SequenceではK1型が検出された。(2)FCR-3株とK1株を混合して低CQ濃度(〜80nM)下で培養すると、混合時のK1株の比率が低くても、やがてK1株が優勢になった。本成果は、定量リアルタイムPCR法の有用性を示し、薬剤耐性原虫の選択のメカニズムをin vitroの系で再現したといえる。2.海外調査研究で得られた分子疫学的知見(1)フィリピン・パラワン島のPf13検体の内6検体で、pfcrt耐性型と感受性型の両型の遺伝子が検出された。感受性型:耐性型の遺伝子量の比率(%)は8.7:91.3から44.5:55.5であった。患者血液中には、複数の原虫クローンが混合寄生していることが証明できた。また、タイ・ミャンマー国境での39分離株は、すべてK76Tの耐性型変異を有す一方、ベトナム南部の株では、CQ感受性型(K76)の頻度が69%と多く、CQ耐性型(K76T)の頻度が26%と少ない点が特徴的であった。(2)ベトナム株のPfCRTの72-76番目のアミノ酸配列を調べると、CVMNK(感受性型)が最も多かった。一方CQ耐性型では、CVIET、CVIDT、CVMDTの3種類が観察された。CVIETはタイK1株と同じであった。(3)ところが、pfcrt遺伝子近傍のマイクロサテライト(MS)DNAマーカー-3座位の解析を行ったところ、CVIETを示すベトナム株のMS DNAパターンは、タイK1株のそれとは異なっていた。本研究結果は、アジアの耐性株の起源はタイをその発祥として拡散していったという定説を一部覆すもので、原虫genotypeの疫学研究成果として新しい知見である。今後その証拠を固める新たな研究が必要である。
著者
古川 鋼一 浦野 健 古川 圭子 田島 織絵
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

1.GM2/GD2合成酵素とGD3合成酵素のダブルKOマウスの検討の結果、神経変性、皮膚損傷、抗不安と記憶・学習脳の低下、知覚機能低下、アセチルコリンのムスカリン型受容体の反応性低下と、セロトニン受容体5-HT2の反応亢進を認め、酸性糖脂質が神経組織の維持に必須であることが示唆された。2.DKOマウスでの遺伝子発現プロフィールを検討し、DKOにおいて発現低下する遺伝子5種、亢進する遺伝子15種を同定した。特に補体・補体受容体遺伝子の発現亢進が認められ、補体制御分子のラフトでの機能不全、組織障害が補体系の活性化を招き変性増強に働くことが示唆された。3.舌下神経再生実験の結果、GM2/GD2合成酵素KOマウスでは、再性能が著明に低下した。舌下神経核において発現低下する遺伝子をLCMとRT-PCRにより解析し、BDNF、GDNFなどの発現低下が示された。asialo-系糖脂質の欠損にはGD3の代償機能が不十分なことが示された。4.lac-cer合成酵素であるβ4GalT-VI遺伝子KOを樹立したが、糖脂質に明らかな変化が見られず、lac-cer合成の多くはβ4-GalT-Vが担うことが示唆された。5.GM3合成酵素の欠損マウスは問題なく出生、成長し、asialo-系列糖脂質の代償作用が示唆された。6.Gb3/CD77合成酵素(α1,4-GalT)のKOマウスを用い、ベロ毒素に対する感受性が本酵素の発現に依っていることが確認された。以上、KOマウスに残存する糖脂質の代償的機能のカバー可能な範囲と、固有の機能が見えてきた。今後のテーマとして、1、単一遺伝子KOとダブルKOマウスの異常表現型の比較による特定糖脂質構造の意義の解明、2、糖脂質糖鎖の特異的ligandの同定と意義の解明、3、糖脂質がクラスター形成する膜ミクロドメインのin vivoにおける解明が重要である。
著者
森下 和広 谷脇 雅史 中畑 新吾 西片 一朗 中尾 和貴 山川 哲生
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

成人T細胞白血病(ATL)のゲノム解析を行い、多数のゲノム異常領域を同定し、白血病関連遺伝子として、TCF8(ZEB1)、NDRG2、TSLC1、BCL11B、EPC1/AXSL2融合遺伝子を同定した。それぞれの機能解析から、TGFbeta抵抗性、細胞接着性の亢進に伴う臓器浸潤、細胞増殖促進等、多彩な性状を同定できた。またTCF8(ZEB1)、NDRG2、TSLC1についてはそれぞれの遺伝子改変マウスがTリンパ腫を中心とした腫瘍発症がみられ、癌遺伝子、癌抑制遺伝子候補として証明できた。HTLV-1感染以降、これらのゲノム異常に依存した多段階発白血病発症機構の端緒が開かれ、新規診断法や治療法の開発につなげることが可能となった。
著者
等々力 英美 鄭 奎城 大屋 祐輔 佐々木 敏 ウィルコックス クレイグ 鄭 奎城 大屋 祐輔 佐々木 敏 ウィルコックス クレイグ
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

沖縄野菜を主体とした沖縄型食事介入による無作為割付比較試験を行った。対象者は沖縄在住20-60歳代の女性、夫婦、米国人男女、横浜東京在住40-60歳代夫婦、合計700名であった。1)沖縄野菜を豊富に取り入れた伝統的沖縄型食事は、血圧予防に有効である可能性と、2)欧米型DASH食と異なる沖縄の伝統的食事が、同様の効果を示した。3)生活習慣病の予防や治療において、食事パターンへの介入が有効な戦略となりうる。