著者
藤田 文彦 江口 晋
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

①ドナーラットより採取した脂肪幹細胞を肛門機能不全ラットの肛門周囲へ投与し、一定期間肛門内圧を測定する。最後に犠牲死させ、肛門周囲の組織からドナー由来の細胞を検証する。②肛門機能不全ラットの肛門周囲に脂肪幹細胞を直接注入し、さらには肛門周囲へ電気刺激を加えた肛門内圧の改善を観察する。③臨床にて肛門温存手術を受けた患者のうち、排便障害のある症例に対して十分なインフォームドコンセントを行った上で、肛門周囲組織へ自己脂肪由来幹細胞の移植を行う。腹部皮下あるいは大腿部の脂肪組織を吸引法にて採取し、閉鎖回路を用いて脂肪由来幹細胞のみを採取・濃縮させ、それを肛門周囲組織へ移植する。術後、創部の安定したころより電気刺激による肛門部リハビリを開始し、定期的に肛門機能の評価を行う。平成29年度は上記①に取り組み、長期間にわたり安定した肛門機能不全ラットモデルを作成することができた。さらに脂肪幹細胞を注入したところ、肛門内圧が上昇し肛門機能の改善が認められた。しかし、HE染色やαSMA染色などにより再生した筋組織の解明には至らなかった。結局のところbulking効果を示すような組織が存在している可能性がある。平成30年度は肛門機能改善を目指し、脂肪幹細胞をシート状にして塗布した試みを行った。この実験でも肛門内圧の上昇を示すことができたが、筋組織再生の証明には至っていない。注入した脂肪幹細胞から放出された物質の影響により、レシピエントに残存している筋組織が肥大していることが仮設として立てられた。
著者
瀧口 益史
出版者
広島国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-10-20

亜鉛は必須微量元素である。その亜鉛による抗がん機構について研究を行った。一過性の細胞内亜鉛濃度の増加は、がん化した細胞などを死に導くアポトーシスを誘導した。亜鉛により誘導されるメタロチオネイン(MT)のがん悪性化に対する影響を調べた。その結果、MTはがん悪性化を促進する可能性が示唆された。このように、亜鉛は一方ではがん細胞を死に導き、もう一方ではがん悪性化を促進するという二面性を持つことが明らかとなった。
著者
LENGGORO WULED
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ナノ粒子合成技術と高い選択性をもつ粒子集積化技術を用いて、気相プロセスに液相法の利点を組み込んだ「複合型ナノ材料プロセッシング」を開発した。静電気力を用いて、気中におけるナノ粒子の輸送と基板上のナノ粒子群の構造を制御し、高感度の環境センサ素子を構成するナノ粒子構造体における最適な幾何学的構造モデルを試みた。材料とする懸濁液を用い、その後のプロセスを気相において行う輸送制御技術を開発した。構造体の形成技術として、安定した懸濁液の調整とエアロゾル化技術、静電気力を用いた気中での粒子の輸送・制御技術、基板の帯電パターニングによる粒子集積制御技術を開発し、一連の技術の高度化を行った。
著者
橋本 喜一朗 梅垣 敦紀 小松 啓一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究の課題は,「ガロアの逆問題に対する構成的方法」の立場からアーベル方程式を構成する一般的メカニズムを得ることを目標とするものであるが,特にガロア群が巡回群である場合に焦点を絞って研究を進めた.2000-2002年度基盤C(一般)「アーベル方程式の構成とガウス和の数論研究」において,申請者は学院生(修士)星明考君と共同研究で,ガウス周期の関係式の一部を幾何的に一般化し,多変数関数体上の巡回多項式族の構成を行った。本研究はその継続研究であり,ガウス周期の満たすある基本関係式を公理として関数体上で類似物を構成するという幾何的一般化を行ない,これによりガウス周期の既約多項式から巡回多項式族が得られるしくみを明らかにし,パラメータの個数も複数個に増やすことに成功した.すなわちガウス周期y_0,..,y_{e-l}をe個の独立な不定元とみなすと,基本関係式から関数体L=Q(y_0,..,y_(e-l))に成分を持つ行列Cが得られ,これらを全て添加した体K=Q(c_{i, j})は巡回置換によるLの固定体となる.これよりL/Kはe次巡回拡大であり,Cの特性多項式の根体となる.このアイデアに基づいて小さなeに対してパラメータ付きe次巡回多項式族が得られた.特に,この構成から得られた巡回多項式族のパラメータを特殊化し,e=7おいて定数項がn^7である簡単な表示をもつパラメータの族を得た.この結果はLehmerプロジェクトとして知られている研究の一般化を与えるもので,総実代数体の巡回拡大の単数の構成問題などに重要な研究方法を提供するものである.本研究の成果は2002年度春の日本数学会及び早稲田大学整数論シンポジウムを含む幾つかの研究集会で講演発表された.この研究を更に高次の場合に進展させることは重要な課題である.
著者
片岡 良太
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

「ウリ科植物のPOPs吸収力をウリ科植物生育促進細菌と有機酸生産菌を導入する複合微生物系で機能強化できるか?」という学術的問いを設定し、パキスタンで問題となっているDDT汚染土壌を浄化するための学術的エビデンスを得る。そのために、ウリ科植物に対する植物生育促進微生物を選抜し、促進メカニズムを解明する。そして、DDTの植物吸収に与える微生物効果をRNA-seq等の網羅的解析から検証し、微生物が関与するDDT吸収促進メカニズムを明らかにする。さらに、ウリ科植物のDDT吸収を促す方法として微生物を利用した土壌中DDTのバイオアベイラビリティー向上についても検討する。
著者
松見 紀佳 VEDARAJAN R
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

ポリボロシロキサンのアニオントラップ能力を活かした新機能の創出として、ポリボロシロキサンを支持高分子材料とした高分子イオンゲル電解質の作製とそれらの特性の検討を行った。従来我々が開発した手法によりポリボロシロキサンを合成した後、1-アリルイミダゾリウム TFSIと各種リチウム塩を添加し、高分子イオンゲル電解質を作製した。それらのイオン伝導度の温度依存性に関して交流インピーダンス法により検討した。得られた高分子イオンゲル電解質は概ね10-4 Scm-1以上の高いイオン伝導度を示し、とりわけリチウム塩としてLiFSIを加えた系において最大で1.8x10-3 Scm-1の最大のイオン伝導度を示すに至った。また、イオン伝導メカニズムに関しても知見を得るため、Vogel-Fulcher-Tammannプロットを行い、系内のキャリアーイオン濃度、イオン輸送の活性化エネルギーに関しても算出した。全般に、LiFSI添加系においてはキャリアーイオン濃度が向上し、かつイオン輸送の活性化エネルギーが低下することが明らかとなった。電解質の電気化学的安定性に関して、Li/電解質/Pt型セルを用いた直線走査ボルタンメトリーにより評価し、約4V近く(Li/Li+)の電気化学的安定性を有していることが明らかとなった。その後、Vincent-Evans-Bruce法により系内のリチウムイオン輸率を交流インピーダンス法と直流分極法の併用により算出したところ、常温において0.40のリチウムイオン輸率を観測した。総合的にイオン輸送特性と電気化学的安定性に優れた電解質であることが見出され、様々なエネルギーデバイスへの活用が期待される。
著者
平木 隆夫 木浦 勝行 郷原 英夫 金澤 右 豊岡 伸一 加藤 勝也 三村 秀文
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

肺アスペルギローマの症例に対してラジオ波焼灼療法を行った。治療に伴う有害事象はなく、安全に治療された。その後、CTによる経過観察を治療後26ヶ月まで行い、焼灼域は経時的に縮小傾向していった。また治療後16ヶ月には焼灼域の生検を行った。焼灼域はほとんどが線維性組織で、菌糸はごくわずかにみられるのみであった。よって、この研究によりラジオ波焼灼療法はアスペルギローマに対して安全かつ有効であることが示唆された。
著者
田中 晶子
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

今年度は、健常者の研究結果を踏まえて、意識障害患者を対象に呼吸数・脳波に加え唾液を用いてオキシトシンとコルチゾールでストレスの定量的測定を行い、快刺激が高まるタッチング刺激の実施時間・速度・部位を特定することを目的としていた。そこで、昭和大学藤が丘病院EIユニット及び脳神経内科病棟で研究を実施する為に、倫理審査申請書を作成していた。しかし新型コロナウイルス感染症が収束せず、意識障害患者を対象として臨床研究が実施できる状況ではなかった。従って意識障害患者の脳波・呼吸数及び唾液を用いてオキシトシンとコルチゾールでストレスの定量的測定を行い、快刺激が高まる刺激の実施時間・速度・部位を特定するという目的を達成することはできなかった。そこで今年度は、意識障害患者を対象とした臨床研究を実施するにあたり、非接触で、簡便にタッチング効果を検証できる測定装置について検討を行った。田中は「さする」刺激を1分間実施した時に皮膚血流が増加した(田中,2017)という研究結果を明らかにしている。この結果を基に非接触で簡便な毛細血管スコープ装置を購入した。この装置は、指先の毛細血管及び血流を測定できる装置である。この装置を用いて、「触れる」「さする」刺激時におけるタッチングが末梢血管及び血流にどのような変化を及ぼすのかについて明らかにし、今後、意識障害患者を対象とした臨床研究に繋げていくという研究実施計画に変更した。
著者
磯部 直樹 沖田 美紀
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

性ステロイドホルモンが乳腺免疫機能に及ぼす影響および体内の常在細菌が死ぬことにより放出される細菌成分によって乳房炎が発症する可能性について検証した。エストロジェン(E)を投与すると、乳量が顕著に減少した。また細菌成分を注入した時、E投与区の方がプロジェステロン(P)投与区に比べて抗菌因子の乳中濃度が高かった。また、血中に細菌成分を注入すると、乳腺においてその成分が検出されると同時に、炎症が誘起された。以上の結果から、Eは乳量を減少させることによって乳中抗菌因子濃度を高め、細菌感染に対応していることおよび、体の他の部分から細菌成分が移行することによっても乳房炎が起こり得ることを明らかにした。
著者
小島 定吉 山下 靖 阿原 一志 和田 昌昭 高沢 光彦
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は,トポロジーにおける実験数学の研究形態のプロトタイプを提案することを主眼として,この1年間企画調査を行った.当初の予定通り,夏にイギリスを訪問し,Experimental Mathematics誌の初代編集長であったD.Epstein教授,および実験数学を代表する書物Indra's Pearlsの著者のであるC.Series教授,D.Wright教授とトポロジーにおける実験数学の現状について意見交換し,米国および英国の情報を収集した.その結果,実験数学の裾野が拡がる過程では,実装するアルゴリズムに話を絞るのが数学上の問題と計算上の問題を同じ土俵で議論するのに有効であり,さらに協調的な実験数学の研究につながる例が多かったことを知った.そこで12月に予定していた研究集会「トポロジーとコンピュータ」は,このことを念頭においてプログラムを組み東工大で開催した.とくに,多項式解法プログラムの作成者と基本群の表現の研究者の共同研究の発表では,当初は違う問題を解く目的で設計されたアルゴリズムがこの場合に妥当であるかどうかを,実験成果だけからでなくより実証的に示せないかなどの,数学と計算の双方で新たな課題が出るという討論の展開があった.確かにアルゴリズムは,論証を重んじる数学と技術を重視する計算を結びつけるスポットであり,それを主役に置くことにが実験数学の研究およびその発表形態のプロトタイプになり得ることが確認できた.今後はこの企画調査の成果を,サマースクール形式でのプログラミング技術講習会,およびアルゴリズム指向の新しい研究集会の企画につなげ,平成17年度に実行に移す予定である.
著者
坪内 伸司 山本 章雄 松浦 義昌 田中 良晴 高根 雅啓 清水 教永
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、健康な成人男女を対象としバイオフォトンの日内変動や人間の健康状態をどの程度反映するか検討した。対象者個々の日内でのエネルギーフィールド指標は、全平均値で日内変動が認められた。また、負荷作業前後のエネルギーフィールド指標は、全平均値で有意な差(p<0.05)が認められた。POMSは、作業後に疲労、抑鬱、怒りの増加が認められた。バイオフォトンは、作業によるストレスを度反映し、新視点から健康状態の評価が期待される。
著者
大塚 作一
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

近年、表示機器の利用環境が多様化し、視覚特性を新視点で研究する必要が生じた。心理物理実験の結果、(1) HDR(ハイダイナミックレンジ)環境では弁別力が低下すること発見し、従来困難とされていた全体処理のみを用いてHDR画像からSDR(標準)画像への変換方法を開発した、 (2) 色対比の評価において2色覚と3色覚の構造が連続的に変化することを発見した、(3a) 曲面ディスプレイ利用時に個人差が大きい「曲面残効」と名付けた新たな錯視を発見した、(3b) 視覚と平衡感覚の統合能力が優れた人ほど本残効が起きやすい、(3c) 新しい視覚インタフェースの利用には慎重な検討が必要である、こと等の知見を得た。
著者
小野 健太 渡邉 誠 樋口 孝之 渡邉 慎二 渡邉 誠 樋口 孝之 渡邉 慎二
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

現在,先進国が抱えている問題の多くは,人間関係の希薄化により生じている。本取組みはこの重要な課題に対し,相互扶助を促すデザイン行為をレシプロカルデザインと名付け,方法論・理論を構築し,この新しいデザイン概念の普及を通じて,問題を根本から解決することを目的に実施した。研究期間中,25プロジェクトを実施し,プロジェクト実施のためのルールの明確化を行い。また人間関係の希薄化の原因が,技術の一人化であると考え,調査・分析を行った。それらの内容は,2018年6月に開催されたThe 4th Aslla Symposium(韓国)にて口頭発表を行い,今後,IASDR 2019(英国)への論文投稿を行った。
著者
市井 雅哉
出版者
兵庫教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

研究I地域のボランティアによる3群で外部刺激への持続的注意を調べた。3群はPTSD群、高ストレス群、健常群である。PTSD群はPTSD症状と外傷経験ともに持っている。高ストレス群はPTSD症状はあるが、外傷経験はない。健常群はいずれもない。(1)外傷体験を経験しているPTSD群は、外部刺激へ注意を持続させる数唱課題得点が健常群および高ストレス群よりも低く、健常群と高ストレス群は数唱課題得点に差はなかった。(2)現在への注意の主観的得点がPTSD群は高ストレス群よりも低く、高ストレス群は健常群より低かった。外傷経験のみがこの違いを説明するとは言えない。研究II注意、自己没入、PTSD症状、抑うつ症状を含んだ質問紙データに重回帰分析を適用した。564名の健常成人を対象とした。結果、過覚醒症状が注意指標を説明し、注意指標が抑うつ症状を説明し、再体験(侵入)症状は抑うつ症状を説明した。研究III10名のPTSDクライエントに対して3回のEMDR治療前後で持続的注意指標を測定した。数唱得点、現在への注意得点ともに上昇した。研究IVEMDR治療によって改善した一人のPTSDクライエントにおいて、心拍数、外傷症状、注意指標の変化、関連を検討した。結果として、治療初期においては、過覚醒、侵入の改善に伴って、数唱得点の改善、外傷記憶想起時の心拍数のセッション内の低下が見られた。治療後半は回避が問題となり、心拍数との関連は見られなかった。以上から、PTSDと注意、認知指標の関連が認められ、注意、認知指標がEMDRの治療メカニズムの解明にも有効であることが示唆された。
著者
国枝 タカ子 桐生 敬子
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

比較舞踊研究の手法により,イタリア古典舞踊の「バッサダンツァ」と日本の京都大阪で生まれた「上方舞」の身体表象を,愛知県立大学所蔵のUSA製最新の「モーションキャプチャー」装置により3次元動作解析した結果,両者の共通な特性「みやびな」「上品な」「美しい」という「優雅さ」が,コンピュータによる定量化で実現した。2つの舞踊の動作の感性的表現は定量化されたのである。これにより,世界各地において多様に分布している民族的特性をもつダンスは,その質的表現を「身体づかい」の分析を経由して,定量化できる見通しが開けた。今回明らかにされた定性的特性の身体づかいは,上方舞の「らせん動作」(著者の命名による)と「連綿つなぎ動作」であり,バッサダンツァでは「ゴンドラ波動作」である。いずれも著者が命名した。このほかの成果は次の通り。(1)イタリア,ベネチアとフィレンツェ郊外のフィールドワークにより,クラシックバレエの基礎技法誕生のルーツである「バッサダンツァ」の再構築が確認された。シェア城中世祭で上演されているバッサダンツァと日本の研究グループで再現しているバッサダンツァの同一性と差異について証明できた。(2)バッサダンツァと上方舞の比較による動作辞書が試作された。(3)上方舞「らせん動作」の研究結果は,日本学術会議シンポジウム「アートの力〜文化変容の可能性」において,平成17年6月25日に京都大学で,一部報告される予定である。(4)日本の鹿鳴館ダンスに影響したプロイセンの宮廷舞踊に対するバッサダンツァの関係解明が進んだ。
著者
佐藤 由利子 白土 悟 竇 碩華 ファム タン バオ ダット
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、日本で理工系の学位を取得した元留学生の質問紙調査と関係者への聞き取りを通じ、彼らの定着・移動の選択に係る影響要因と職場環境・生活環境への満足度などを分析した。調査の結果、「キャリア形成/能力向上」は、理工系でも文系でも、日本留学生が就職先を選ぶ際に最も重視する要因であること、理工系では日本の技術力の高さが日本定着を促す要因であるものの、母国の経済発展に伴う「能力発揮・昇進」機会の増加や頭脳還流政策が、帰国促進要因になっていることが判明した。オーストラリア留学生との比較では、日本留学生に頭脳循環の傾向が強い傾向が見られた。
著者
比留間 洋一 天野 ゆかり
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成30年度は、本研究の最終年度として計画した「帰国介護人材を活用したベトナムの高齢化対策研究」を展開するために、(1)ベトナム人EPA介護福祉士帰国者の就労実態に関する調査研究、(2)ベトナムの高齢化対策に関する調査研究を遂行した。上記(1)の調査研究については、a)本研究プロジェクトの当事者メンバーであるEPAベトナム人介護福祉士1期生4名に、日本(浜松、山梨、千葉)およびベトナム(ダナン市)においてインタビュー調査を実施(2019.5.13時点で、3名が帰国)。b)上記4名に加えて、ベトナム(ハノイ市)においてEPA介護福祉士帰国者(看護師帰国者1名を含む、計8名)にインタビュー調査を実施した他、c)平野裕子教授(長崎大学)の共同研究に参加し、EPA帰国者(離脱者を含む)を対象としたアンケート調査(配票及びオンライン方式)を実施した(2019.5.13時点で集計、分析中)。研究成果として、上記a)のデータで学会発表1件をおこなった。上記(2)の調査研究については、a)研究プロジェクトの当事者メンバーである元留学生のベトナム人介護福祉士が、地元(中部の農村コミュニティ)の介護状況調査について研究会発表をおこなった(2018.12.16)他、b)研究代表者は、東南アジア学会(中部例会)等において学会発表2件をおこなった。このような調査研究を通して、EPAベトナム介護福祉士1期生(117名)について、(1)介護福祉士国家試験の合格率が高い諸要因のうち、日本語能力の高さ(殆どがN2以上)が自習を可能としたという視点、及び(2)合格後の帰国者も多く(定着率約50%)、その多くが日本への介護人材の送出し・養成機関で教師や通訳として就職しているその実態について明らかにした。ベトナムの高齢化対策については、特に認知症の高齢者の社会受容が大きな課題であることが浮き彫りとなった。
著者
田中 剛平
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

レザバーコンピューティングは、高速学習を可能とする機械学習の枠組みの一つである。本研究では、レザバーコンピューティングの数理的解析とレザバーの最適設計を行い、従来の問題点を解決するとともに、新たなモデルを提案して学習の高速化や計算性能向上を実現した。また、物理的レザバーの可能性を広く探究して数理モデリングを行い、その基本特性や基礎的タスクにおける計算性能を明らかにした。
著者
北村 圭吾 佐久間 博 ステイコフ アレクサンダー
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では汎密度関数計算(DFT)と分子動力学(MD)のハイブリッド計算(DFT-MD法)に基づいて高温条件下での粘土鉱物の電気伝導度を評価する手法の開発を行う.高温条件下での粘土鉱物の電気伝導度は地熱地域の熱水資源と粘土鉱物を主要構成鉱物とする帽岩層を比抵抗探査から区別する上で重要な情報になると期待されている.しかし実験的方法による高温条件下での粘土鉱物の電気伝導度の測定は多くの困難が伴い未だに成功していない.本研究のように計算科学的手法に基づくイオン伝導度評価手法の開発は地熱開発現場などの地球工学分野においても強く望まれており,開発に成功した際の波及効果は大きいと考えられる.