著者
中川 裕
出版者
東京外国語大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究はコイサン諸語コエ語族グイ語を対象に、未記述で無文字の危機言語の辞書編纂・語彙意味研究にとって斬新な接近法である「モノリンガル意味記述」を導入することによってつぎの3つを目指している。(1)危機言語の言語学的記録のための新しい方法論を具体的事例をもって提示すること。(2)コイサン言語研究における語彙意味論に新しい展開の糸口を与えること。(3)モノリンガル意味記述が危機言語コミュニティーでの識字教育・言語維持という言語学応用分野にどのように利点をもたらすかを模索すること。最終年度にあたる今年度は、(1)(2)(3)に関して本研究がこれまでに達成した成果を、コイサン語の先端的研究をしている国外の2人の言語学者に示し、討議をすることができた。5月に来日したベルリン大学教授トムグルデマンとボツワナ大学教授アンディチェバネと面談し、グイ語のモノリンガル意味記述のテキストの分析結果と、それをもちいた識字教育応用の素材に関する議論を行った。本研究が目指すモノリンガル記述の独創性は高く評価された。他のコイサン語研究では、媒介言語であるツワナ語や英語を通して調査が行われているので、本研究のアプローチは実現が困難であり、その意味でも肯定的な評価をうけた。表記法の原則の通言語的統一、識字教育へのインパクトについても、意見交換を行った。8月にアフリカ言語学国際会議で研究発表を行い、コイサン関係者と辞書編纂および、アフリカにおける識字教育一般にかんする情報交換を行った。12月~1月にボツワナのカラハリ地区のグイ集落であるニューカデに滞在し、モノリンガル記述を利用しての識字教育に関する、意見の聞き取り調査をした。英語の読み書きができる若いグイ人の協力をえて識字資料のインターフェースの問題点について示唆をうけた。現在、これまでの調査結果の総括を行っている。
著者
東山 繁樹 中山 寛尚 福田 信治
出版者
愛媛大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

がん細胞における細胞形質の不均一性の起因を膜型細胞増殖因子EGFファミリーの細胞外領域切断“エクトドメイン・シェディング”活性の“ゆらぎ”と関連付け、研究を進めた。ヒト乳がん細胞MCF7細胞からStem type、Basal type、Luminal typeの各クローンを樹立後、各細胞タイプとEGFファミリー膜型増殖因子のシェディング定量解析を行なった。その結果、proAREGのシェディング活性が各細胞タイプとの相関性を示すこと、proAREGに特異的なシェディング制御機構としてCUL3-RhoA軸が制御するアクチンダナミクスが関与することが明らかとなった。
著者
菅崎 弘幸 篠原 文明
出版者
鶴見大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

ADAMファミリーは腫瘍細胞で高発現されていること、発現量と予後不良度が相関していることが報告されている。また腫瘍細胞は破骨細胞形成を促進し腫瘍細胞周囲での骨吸収を亢進させて骨転移を促す機構が報告されている。本研究では腫瘍細胞による骨吸収抑制性サイトカインであるインターフェロンガンマ分解機構と骨転移能の関連を検索した。骨吸収抑制性サイトカインならびに腫瘍免疫制御サイトカインとして知られるインターフェロンガンマがADAM17によって分解されることを発見した。
著者
小池 裕子 松石 隆 西田 伸
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本研究では、鯨類の特に座礁集団および個体に着目し、座礁の原因究明の一つの手段として、ウィルス感染の有無とその動向のモニタリング、および検出されたウィルスの系統解析をおこない、宿主-ウィルスの共進化関係の有無と、免疫遺伝子MHCとの相互関係について探ることを目的としてきた。本年度も引き続き日本各地において座礁・混獲された鯨類より試料の収集をおこない、10鯨種・47個体の試料を得た。これは北海道ストランディングネットワーク・北海道大学・国立科学博物館・大村湾スナメリネットワーク(仮称)・宮崎くじら研究会との連携によるものであり、本プロジェクトもこれらネットワークの構築・運営の一部に携わっている。これまでに蓄積された試料について、DNA診断によるウィルス検出をおこなったところ、4鯨種・4個体よりヘルペスウィルスが検出された。本年度は特にこれらの系統解析と病理学的所見との関連性について解析を進めた。系統解析の結果、カズハゴンドウの鼻腔粘膜およびオキゴンドウの肺より検出されたウィルスは、それぞれ新たな系統のアルファヘルペスで、オウギハクジラおよびマッコウクジラのリンパ節からのものは、同じく新たな系統のガンマヘルペスと同定された。鯨類から検出されたアルファヘルペスウィルスは単一のクレードを形成し、種1分類群特異的な進化が示唆された。一方で、ガンマヘルペスウイルスの鯨類クレードは大きく2つに分かれており、これらウィルスの起源が複数あることを示した。またアルファヘルペスウィルスは主に呼吸器系統から、先行研究におけるガンマヘルペスウイルスは主に生殖器から、そして本研究によるガンマヘルペスウィルスはリンパ節から検出され、これらの系統のウィルスがそれぞれ異なる組織をターゲットとし、潜伏感染をおこなっていることが示唆された.なおこれらの結果は学術誌に投稿中である。
著者
菊入 崇 吉村 善隆 福本 敏 中村 卓史
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

歯牙腫は顎骨内に発生する歯牙様硬組織を主体とする歯原性腫瘍である。歯牙腫は臨床的には珍しい症例ではないが、これまでの報告によると、複数の歯牙腫が同一顎骨内に多発することは極めて稀である。本研究において解析を行った2症例は全ての大臼歯の歯根根尖部に歯牙腫を発生していた。この2症例は歯牙腫のみならず永久歯においても象牙質とセメント質に形態異常が確認された。これら二人の患者の臨床的特徴は比較的一貫しているため、原因遺伝子を検索するために遺伝子解析を行った。歯牙種の発生と歯牙の構造異常は特定の遺伝子によって引き起こされていることが示唆された。
著者
高木 裕 石田 美紀 番場 俊 逸見 龍生
出版者
新潟大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

2015年4月25日に、京都国際マンガミュージアム、京都精華大学国際マンガ研究センターとの共催で国際シンポジウム「ANIMEのアイデンティティ:表現・物語・メディア」を開催し、アニメの〈声〉の表現様態と、そこに立ち現れる主体の擬似的な経験の特質について事例報告をもとに、討議と行った。アニメの場合、〈声〉の源となる仮想の身体の生成には、それに呼応する観客・視聴者・聴取者においても〈声〉の経験が不可欠であることを確認した。
著者
新井 誠 宮下 光弘
出版者
公益財団法人東京都医学総合研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、ヤマブシタケ由来抽出成分を服用し、顕著に統合失調症の幻覚、妄想が奏功した症例に着目し、従来の病態仮説に依拠しない統合失調症の分子病態を明らかにすることを目的とした。当該症例の末梢血、尿検体を採取し、CE-TOFMS、LC-TOFMSによる代謝産物の測定を行った。CE-TOFMSにより155の物質ピークが検出され、LC-TOFMSによる測定からは114のピークが検出された。症例の服薬量の漸減、漸増に伴い、特徴的代謝産物の変動が認められた。抗精神病薬服用を必要としない状態にまで回復した症例の分子基盤を探ることは、難治性統合失調症の治療戦略を再考する上で重要な知見を与えるものと期待できる。
著者
大橋 隆弘 角田 敦 永井 恒夫
出版者
国士舘大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

使い捨て型などに利用可能な圧縮強さ100MPaを超えるスーパー繊維強化氷(FRI)の開発を行うことを研究目的とし、古紙パルプ繊維、ナノセルロース繊維、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維を用い検討を行った。動的圧縮試験では、圧縮強さはアラミド繊維≧紙パルプ≧炭素繊維≧ガラス繊維≧ナノセルロースの順となった。最も良い結果が得られた繊維濃度30wt%のアラミド繊維利用繊維強化氷において、試験冶具の強度限界まで圧縮しても割れによる荷重低下が見られない結果(公称圧縮強さ100MPa以上)が得られたが、真応力では30MPa程度にとどまっており、繊維の付着強度に起因する限界があるのではないかと推察される。
著者
高木 廣文
出版者
東邦大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

質的研究での主観的なテクスト解釈の問題点について、構造構成主義、ウィトゲンシュタインの言語に関する論考、科学的言語学であるソシュールの一般言語学およびチョムスキーによる普遍文法に基づき検討した。医療関係者、看護関係者及び哲学者等からテクスト解釈の問題点について情報収集し、心脳構造の言語システムの仮説的モデルを考察した。その結果、テクスト解釈の一般的方法をある程度は定式化できることが示唆された。さらに、ヴィエルジュビツカによる言語の概念的原子要素を用いたテクスト解釈、脳科学からのアプローチ、クワインの科学的な言語哲学の理路が、今後のテクスト解釈の科学的研究上で有用ではないかと考えられた。
著者
加藤 裕基
出版者
宇部工業高等専門学校
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

一般の左固有組み合わせ的かつ単体的なモデル圏についてモティヴィック導来代数幾何学の理論を定式化した. それらを応用して無限圏を用いてモティヴィック・スキームおよびスタックを構成する理論を与えた. 例えばモティヴィックスキームのベクトル束やThom空間を表現するモティヴィック・スタックを無限圏を用いて構成することができる. これらはモティヴィック導来代数幾何学がモジュライ問題に応用できる可能性があることを示している. 研究は論文「Motivic model categories and motivic derived algebraic geometry」にまとめた.
著者
中村 隆
出版者
名古屋工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

自動車のディスクブレーキパッドは,走行中もブレーキディスクと僅かに接触していて,これが引き摺り抵抗となっている.中央のスリット部に45° のスリットを加えた改良ブレーキパッドを開発した.市販ブレーキパッドと改良ブレーキパッドを厳しい摩擦条件で摩耗させた後,周速38 km/hで回転する鋳鉄製ディスクに近づけた時の垂直方向押し付け力と,接線方向の摩擦力を測定した.市販ブレーキパッドでは,引き込まれる力が発生した.改良ブレーキパッドでは垂直力は常にプラスであり,部分的な接触が始まる距離15 μmまでは接線力は0である.このパッドを使うことで燃費は2.5 %改善することが期待できる.
著者
齋藤 滋 山田 拓司
出版者
富山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

早産ならびに子宮内膜炎は炎症性疾患である。最近の研究により炎症性疾患では腸内細菌叢が変化し炎症を惹起させることが判ってきた。そこで両疾患の腸内細菌叢をメタゲノム解析した。群間比較では有意な変化を示すgenus/speciesは検出できなかったが、早産例でEscherichia/Shigellaが多い症例が一部認められ、子宮内膜症ではMegamonasの増加やParabacteroidesの減少が認められる例もあった。今後、病態との関連性を明らかにしていく必要がある。
著者
古澤 龍 柳川 智之 大原 崇嘉 大原 崇嘉
出版者
東京藝術大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

今まで感性として扱われてきた絵画用語であるヴァルール(鑑賞環境を含めた相対的な見えの強さ)の定量化を試みた。まずはビットマップ化した画像データの位置や色差による定量化アルゴリズムの基礎を考案し、作品発表等を通してその妥当性の検証を行った。また鑑賞環境によるバイアスを補正する必要があるため、環境要素の一つとして照明が絵画の見えにどのような影響を及ぼすのか、実験によって関係性の一端を明らかにした。画面の質感性(素材感)が比較的見えにくい低い照度環境においてはバイアスがかかりづらく、明るい環境においては画面の素材によって大きくバイアスを受ける可能性があることがわかった。
著者
宇野 雄一 奈邉 健 新田 陽子 鶴田 宏樹
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

イチゴにより口腔アレルギー症候群を発症するケースがあり,生活の質の低下や,生産物の消費低迷が懸念されている.本研究では,イチゴに含まれるアレルゲンおよび抗アレルギー成分の解析を行い,誘発性評価システム開発のための基礎的知見を得た.IgE結合能の解析により,イチゴの主要アレルゲンはFra a 1であると考えられた.Fra a 1 の含量は,品種,栽培方法,生育段階,および部位の違いにより増減し,その構造は,60℃以上の加熱により変化した.また,イチゴの抗アレルギー成分にも品種間差がみられた。以上により,品種,栽培方法,調理方法などの適切な選択によりイチゴアレルギーが緩和できる可能性が示唆された.
著者
垣内 力
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、昆虫の腸管に常在する細菌種の同定と遺伝子組み換え後の再定着能の検討を行った。クワガタムシの菌嚢とフタホシコオロギの腸管から、複数種の細菌を分離同定した。コオロギから分離した常在細菌について、プラスミド形質転換後の再定着が可能であった。また本研究は、昆虫の体サイズを増加させる生理活性物質の探索を行った。ロイヤルゼリーの経口投与により、カイコガとフタホシコオロギの体サイズの増加が認められた。以上の結果は、昆虫の腸管に常在する細菌の機能改変と再定着が可能であること、ならびに、昆虫の体サイズを増加させる物質がロイヤルゼリー中に存在していることを示唆している。
著者
小出 英夫 千葉 則行 神山 眞 秋田 宏 沢田 康次
出版者
東北工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

以下の研究成果を得た。①国土地理院GEONET提供のF3データやRINEXデータを用いて、東北地方を中心とする国内の地殻変動を観察するためのシステムの基礎を構築した。②プレート境界型の巨大地震における、発生数日前からの「プレスリップ(予兆すべり)」の2次元有限要素法による数値シミュレーションを実施する過程において、両プレート間の摩擦係数の時間的・空間的変動の考慮の必要性が明確になった。③過去10年間に発生した東北地方における8個の被害地震では、その地殻変動の時間履歴にプレスリップに関係すると思われる本震直前の2~3日前頃に水平変位の方位角の日変動に変化が生じることがわかった。
著者
長崎 弘 小谷 侑
出版者
藤田医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、マウスES細胞から分化誘導した視床下部組織を解析することで、成熟視床下部に内在する神経幹細胞の維持機構および神経新生機構の解明を目指した。ES細胞の分化誘導過程で、視床下部幹・前駆細胞マーカーであるRax遺伝子の発現をモニターしたところ、神経・グリア細胞の分化後も少数のRax陽性細胞が残存することを見出した。これらの細胞は遺伝子発現、細胞形態、増殖活性などの特徴から、成熟視床下部の神経幹細胞に類似することが分かった。さらにRax発現を指標とした培養条件の検討から、形態形成シグナルの一種であるヘッジホッグシグナルが、神経幹細胞の維持および分化抑制に働いている可能性が示唆された。
著者
長崎 栄三 太田 伸也 大谷 実 久保 良宏 重松 敬一 瀬沼 花子 滝井 章 阿部 好貴 島田 功 長尾 篤志 西村 圭一 日野 圭子 松元 新一郎
出版者
静岡大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

第1に、成人期の数学的リテラシーの捉え方について次の3点から考察した。個人と組織が求める数学的リテラシー、幸せに生きるための数学的リテラシー、不確定な社会における社会人に持っていて欲しい数学的リテラシー、第2に、民主主義社会などを念頭において数学的リテラシーとして次の4つの領域からその内容・視点を考察した。人間にとっての算数・数学、算数・数学における対象、算数・数学における方法、社会にとっての算数・数学。第3に、「すべての人々」について検討を行い、算数・数学における子どもの多様性から考察した。
著者
伊東 恭子
出版者
京都府立医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

タナトフォリック骨異形成症(以下TD)は、FGFR3遺伝子変異が原因で、四肢短縮などの骨形成異常とともに、中枢神経系では後頭葉・側頭葉に過形成性の過剰な脳回様構造、海馬異形成を伴う。今回我々は、ヒト胎児脳から樹立した神経幹細胞(以下NSCs)に、ヒトのTDで既報告のFGFR3遺伝子変異: FGFR3-K650E、FGFR3-R248Cの各々を導入したNSCsラインを樹立した。さらに、独自の培養液組成と培養環境条件下で、in vitroの系で3次元構築を有するミニブレイン様構造物の作製に至った。今後、TDミニブレインモデルを構築し、脳形成異常のメカニズム解明、レスキュー実験へと展開する。
著者
渡辺 肇
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

ミジンコは環境に応じて異なった生殖戦略をとることが知られている。適切な環境下では、単為生殖によりメスがメスを産むことにより急速に増殖する一方で、個体密度の上昇、餌の枯渇、日照時間の短縮、水温の低下など、その生存環境が悪化した場合には生殖戦略は単為生殖から有性生殖へと変化する。この有性生殖においてはまずメスがオスを産生し、このオスと交尾したメスは耐久卵と呼ばれる特殊な卵を産生する。この耐久卵は長期の乾燥にも耐えることから、生存戦略上有利に働いていると考えられる。特に個体密度が上昇した場合に生殖戦略が変化することは、ミジンコがその個体密度を何らかの方法で感知していることを示唆している。すなわち微生物などでよく知られ研究が進んでいるクオラムセンシングに類似したシステムがミジンコにおいても存在している可能性がある。このセンシングシステムの実態を明らかにするために、耐久卵を人工的に産生する条件を設定し解析を行った。耐久卵をつくる割合についていくつかの系統のミジンコについて検討を行い、ベルギー由来のミジンコが高率で耐久卵をつくることを明らかにした。およそ10Lの水槽でミジンコを一定時間培養し、過密状態になるまで飼育し耐久卵の産生を誘導した。耐久卵を高頻度で産生した水槽から飼育水を回収し、固相法により抽出を行った。生理活性については、通常はオス産生かおきない濃度で培養したミジンコの飼育水に溶出画分を添加することにより評価した。その結果、高密度でミジンコを培養した飼育水には、オス産生を誘導するインデューサーの存在が示唆された。さらにこの物質の同定を目指して、より大きな水槽を用いて培養を行い、オス産生誘導成分の精製を進めた。現時点では最終的な画分に至らないものの、バイオアッセイ法と部分精製法を確立したことから最終的な画分まで精製をすすめ最終的にその物質の同定をめざしている。