著者
大谷 貴美子 長渡 麻未 柴田 満 冨田 圭子 佐藤 健司 川添 禎浩
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.239-248, 2007-08-20
被引用文献数
1

伝統食品である京都大徳寺瑞峯院の大徳寺納豆について,ラジカル消去活性の強さを解明するために,製造過程のラジカル消去活性の変化とその関連成分について検討を行った。大徳寺納豆は,7月下旬から9月下旬にかけて仕込まれる。大豆(鶴姫)を蒸煮することで,ゲニスチン,ダイジン,グリシチンが増加した。しかし,室での発酵期間に減少し,熟成期間では,代わってゲニステイン,ダイゼインが増加した。また,室での1週間の発酵期間に,プロテアーゼの働きにより,遊離アミノ酸,特にグルタミン酸やペプチドが増加した。炎天下における2ヶ月間の熟成期間には,徐々にメラノイジン関連物質が産生された。またラジカル消去活性は,ポリフェノール含有量と高い相関を示したが,ラジカル消去活性に寄与している主な成分はメラノイジン関連物質であることが示唆された。
著者
大家 千恵子 高橋 節子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.371-377, 1987-12-20
被引用文献数
5

保存中の澱粉パンの澱粉の糊化度の変化、水分含量及びクリープ測定の結果から次のことが明らかとなった。1.糊化度の測定から、サゴ澱粉パンは、焼成直後の糊化度が90%と最も高く、馬鈴薯澱粉パン86%、とうもろこし澱粉パン69%を示した。また冷凍後の糊化度はコントロールパンに次いで高い値を示しサゴ澱粉パンは冷凍による劣化が少ないパンといえる。2.サゴ澱粉パンは室温保存及び冷凍による粘弾性の変化が少なく、コントロールパンに近似の物性値を示した。3.サゴ澱粉パンの糊化度や粘弾性測定の結果は順位法による官能評価とよい一致を示し、軟らかく、弾力のあるパンであった。4.糊化度と水分含量及び静的粘弾性の物性値の三者の間には高い正の相関が認められた。
著者
清原 玲子 山口 進 潮 秀樹 下村 道子 市川 朝子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.294-299, 2009-10-20
被引用文献数
1

我々は揚げ物,炒め物に独特のコク,うま味の一因として,加熱調理に伴って生成する油脂酸化物の影響を考えた。そこで本研究では油脂酸化物の味への影響を調べるため,主にヒトでの官能評価によって以下のことを明らかにした。リノール酸,リノレン酸,ドコサヘキサエン酸,エイコサペンタエン酸,アラキドン酸(AA)の5種類の脂肪酸を35℃24時間酸化させ水で抽出し,それぞれ醤油希釈水に添加したところ,添加無しに比べて有意に醤油の味が強まった。なかでも酸化AA水抽出物の添加作用が最も強いことが示された。AAを数%添加した植物油で調整したコロッケ,炒飯,野菜スープは有意にうま味,コク味,後味などが強まり,嗜好性も高まる傾向がみられた。以上より,油脂酸化物が食品の味を強める作用を持つこと,また植物油にアラキドン酸を添加することで,油脂調理食品のおいしさを向上できることが示唆された。
著者
南出 隆久 長谷川 明子 畑 明美
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.271-276, 1994-11-20

抹茶を添加した豆腐を作り、その性状及び成分について調べるとともに、加熱による性状の変化についても検討した。1.豆腐の水分含有率は、抹茶の添加に伴い減少した。また、離水率は抹茶の添加により増大し、1.0%添加の場合に顕著であった。2.抹茶の添加量が増加するほどL^*値は低く、C_<ab^>*値は高い値となった。H_<ab^>^○値は1.0%の方が0.5%のものに比較して若干低い値となった。3.破断過重、破断歪は抹茶1.0%添加の豆腐で顕著に小さくなり、もろく柔らかくなった。4.抹茶の添加により鉄、マグネシウム、カルシウム、カリウムのいずれの成分も増加した。5.豆腐を加熱すると、経時的に色は悪くなるが抹茶添加量が多いほどその傾向が顕著であった。また、破断荷重、破断歪は経時的に増大した。
著者
小島 朝子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.322-327, 1989-12-20
被引用文献数
1

滋賀県下の神社の神饌と直会膳にみられる魚料理について調べた結果の要約は次の通りであった。1.フナずし切りの神事は湖南北東部地方と湖東地方で行われていた。湖西地方にはシイラのすし切り神事がシイラ切りの神事として残されていた。2.馴れずしを神饌として供える神社は草津市、守山市、野洲群、栗太群などの湖南北東部地方に集中していた。すしの種類ではフナずしが一番多く供えられ、他にめずし、モロコずし、ドジョウずし、ハスずし、雑魚ずし、ウグイずし、サバずしなどがみられた。3.直会膳に出される馴れずしもフナずしが一番多く、他にモロコずし、ドジョウずし、ハスずし、ニシンの糀づけなどがみられた。4.馴れずし以外の魚の熟饌には「なます」料理が多くみられた。熟饌に用いられる魚は淡水魚が多かったが、塩サバや塩シイラ、塩ブリなどの海産塩物もあった。5.直会膳に出される馴れずし以外の魚料理の中には、現在家庭料理として残っていないものもみられた。湖岸近くの神社では淡水魚が多く使用されていたが、山間部では海産塩干物の使用が多かった。6.生饌には生の淡水魚が多く供えられていたが、海産塩干物もかなり多かった。以上の結果より、古来滋賀県ではいろいろな種類の馴れずしが漬けられていたことや、湖魚や海産塩干物が大切な食品材料であったことがわかった。
著者
木村 敬子 横田 佳子 梶田 武俊
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.44-48, 1981-02-20
被引用文献数
2

緑茶浸出液の高温保存下における褐変化について基礎的な実験を行なった結果次のことが判明した。1)玉露、煎茶、番茶浸出液はいずれも40℃保温では8時問後においてもほとんど褐変しなかったが、60℃、80℃、100℃と高温になるに従って褐変は著しくなり、煎茶,番茶,玉露の順に褐変した。 2)浸出液のpHが高い程褐変は容易であった。3)AAは還元雰囲気にある問は褐変を抑制するがAAが酸化されるとむしろ促進的に働いた。4)AAのデヒドロ体のうち、褐変に関与することが認められたのはDAAでありDKGにはその傾向は見られなかった。5)酢酸エチルを用いてカテキン類を除いた浸出液が褐変しにくいことから、この反応はカテキン類が大きく関与することが判明した。6)茶に含有されるアミノ酸の中ではヒスチジンが、有機酸ではリンゴ酸、コハク酸が褐変を促進する傾向を示した。7)ぺ一バークロマトグラフィーによりカテキン類を検索したところ、褐変前後の試料からいくつかのカテキンを検出したが褐変との関係を明確にするまでには至らなかった。
著者
羽田 明子 中村 アツコ 岩見 哲夫 伊元 光代
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.180-185, 1990-05-20

1.RHビーフは官能検査の結果、外観、舌ざわりに関する全項目と、味に関する好ましい味という項目に関して高い評価を得た。2.RHビーフに含まれるα-アミノ酸の量は生肉の約1.3倍、CVビーフの約1.7倍であった。加熱調理中の肉の温度が、60℃以下に保たれているため、酵素によるタンパク質の異化作用により増加したものと推察された。3.^1H-NMRによる水の^1H緩和時間から見たRHビーフの水分存在状態は、外側から中心部までのどの位置でも均一であり加熱が均一に及んでいることを示した。4.RHビーフ、CVビーフ共に重量から見た歩留まりは殆んど同じであったが、肉の可食部からみた歩留まりはRHビーフが100%、CVビーフでは85%であった。5.RHビーフの筋肉組織の変化は、結合組織の呈色の変化、アゾカルミンG呈色顆粒の存在という点で、表層部では多少の組織の変性が認められたが、中心部においては、その変性は比較的軽微であった。
著者
竹内 信子 近藤 栄昭
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.177-181, 1983-10-20
被引用文献数
1

市販の食塩代替塩味料(以下,代替塩)の食塩代替性について,食パンとすまし汁に市販の代替塩を添加して,食塩代替の可能性を官能検査法を用い検討した。試料はそれぞれ,65%代替塩を添加したもの(「65%代替塩食パン」,「65%代替塩すまし汁」),99%代替塩を添加したもの(「99%代替塩食パン」,「99%代替塩すまし汁」),65%代替塩中に含まれるNaClと同量になるように基準量の35%のNaClのみを添加したもの(「65%減塩食パン」,「65%減塩すまし汁」)を調整し,官能検査を行ない次のような結果を得た。1.食パンについては,食塩を添加した「標準食パン」が最も好まれ,次いで「65%代替塩食パン」,「65%減塩食パン」の順で好まれ,「99%代替塩食パン」が最も好まれなかった。2.すまし汁については,食塩を添加した「標準すまし汁」が最も好まれ,次いで「65%代替塩すまし汁」,「65%減塩すまし汁」の順で好まれ,「99%代替塩すまし汁」が最も好まれなかった。3.市販の65%代替塩を添加したものは,65%代替塩中に含まれるNaClと同量のNaClのみを添加したものに比べ,より強い塩味を呈する事が明らかになった。本研究の概要については,昭和57年10月,郡山女子大学,第36回もみじ会で発表した。本研究にあたり官能検査にご協力いただいた,研究生の大竹春代,三浦ちか子,増子陽子,今泉美喜子の皆さん,及び,文献収集にご協力いただいた本学栄養指導研究室の芳賀文子教授,小峰洋美助手に深謝致します。
著者
坂本 真里子 河野 一世 熊谷 まゆみ 赤野 裕文 畑江 敬子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.427-434, 2007-12-20
被引用文献数
4

硬度の異なる3種の水,南アルプスの天然水,エビアン,コントレックスを用いて,かつお節だし,野菜スープ,牛肉のスープストックを調製した。総窒素,遊離アミノ酸,イノシン酸,グアニル酸,有機酸の分析および官能評価を行い,水の違いを比較した。かつお節だしでは用いた水の種類によって,遊離アミノ酸のパターンが異なっていた。官能評価では総合的な好ましさに有意の差は無かったが,エビアンと南アルプスの天然水が好まれる傾向にあった。野菜スープでは南アルプスの天然水に殆どの遊離アミノ酸が多く,次いでエビアンに多かった。官能評価ではこの両者が有意に好まれた。牛肉スープストックではコントレックスがアクを最も多く分離してスープは清澄であった。遊離アミノ酸合計量はエビアンに最も多く,ついでコントレックスであった。エビアンはイノシン酸,グアニル酸も有意に多かった。官能評価で最も好まれたのはエビアンであった。硬度の異なる水で3種の煮出し汁を調製すると,溶出成分に差があった。煮出し汁の好ましさは溶出成分だけでなく,水そのものの味も影響することから,溶出成分と水の味との兼ね合いで好ましさが決まるといえる。
著者
山田 潤 五十嵐 圭里 松田 秀喜
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.134-137, 2008-04-20
被引用文献数
8

荒節だしと枯節だしのラジカル消去活性をDPPHラジカルを用いて比較した。かつお節の抽出温度・時間の違いによる検討では,100℃30分の抽出条件が荒節枯節ともに最も高いラジカル消去活性を示した。また,どの抽出条件においても荒節だしは枯節だしの1.7-1.8倍のラジカル消去活性を示していた。porapaq Qを用い香気成分の分離を行ったところ,吸着画分では荒節だしは枯節だしの4.4倍のラジカル消去活性を有していた。このラジカル消去活性の違いは主に,フェノール化合物の含有量に由来しており,含有されていたフェノール化合物のうち本研究で初めて,2つのフェノール成分の活性を明らかにした。非吸着画分の活性は,荒節だしと枯節だしで同等のラジカル消去活性を有していた。
著者
杉田 浩一 今井 美樹 山下 光雄
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.321-328, 1997-11-20
被引用文献数
4

The changes of the meaning of "cooking" were studied with descriptions about its definition, objective and method, selected from the special books on food science since Meiji era. These changes were divided into five periods based on their characteristics. It was summarized as follows. (1) From early years through middle years of Meiji era : Food scientists theoretically taught the people how to cook meat as new food materials. It was reflected in the definiton of "cooking". (2) From later years of Meiji era through Taisho era : Three kinds of cooking ; Japanese, Western, Chinese and their mixtures were popularized among people in their common meals. So the definition of "cooking" reflected such various standpoints (3) From later years of Taisho era through early years of Showa era : People attached importance to the rational cooking with the high degree of nutritional efficiency, and the change of food components during cooking was investigated. (4) The early period after the end of the World War II : Practical use of food materials and improvement of nutritional lives were required, and the studies on theoretical cooking were promoted. The science of cookery with engineering was proposed. (5) In the later years after the end of the war : The advance of food production and food service businesses into the cooking field contributed to diversifying Japanese diet. The range of the definition of "cooking" expanded. "Cooking" enhanced its range from menu planning to dining table composition, and the theory of cooking to meet the changing lifestyle now are studied.
著者
水谷 令子 久保 さつき 松本 亜希子 成田 美代
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.192-197, 1998-08-20
参考文献数
11

元来すしは魚や肉の貯蔵法の一つで, 魚と飯から作られ, 現在のすしとは違って酢を使用しないで発酵させる。あゆずしは, 三重県では, 宮川(伊勢市)と北山川(紀和町)の流域に伝承されている。あゆずしを調製するのは冬季で, 塩漬けしたアユと冷ました飯を合わせて, 木の桶にきつく詰め, 重石をして30〜40日間熟成させる。通常は正月のご馳走として, 家庭内で消費され, 市販されてはいない。1996年11月下旬に伊勢市大倉町で本漬けされたあゆずしについて, 水分, pH, 塩分, カルシウム量および各種有機酸の量を調べた。結果は次のようである。1) すしあゆ(あゆずしの魚部分)のpHは, 38日間熟成した場合は5.10, 65日では4.10で, 魚と飯のpH差はほとんどなかった。2) 塩漬けしたあゆの食塩濃度(23.2%)は, 5回水洗いすると8.7%まで下がり, これを飯と共に熟成させている間に2.1%まで下がった。3) 塩付けあゆの骨のカルシウム量は55.5mg/g, 38日間熟成したものは25.0mg/g, 65日では16.8mg/gであった。頭部のカルシウム量は65日間熟成すると著しく減少した。4) すしあゆ中の有機酸量は乳酸, 酢酸, コハク酸の順に多かった。これらの酸は, いずれも熟成中に徐々に増加した。すしあゆの乳酸量は65日間の熟成で約26倍に増加した。有機酸量は魚の方が飯より多かった。5) すし桶の上層部に漬けてあったすしは, 桶の中央部に漬けたものより熟成が速かった。また一旦逆押ししたすしを保存すると, その間に熟成は進行し, 食味に変化が生じた。
著者
貝沼 やす子 福田 靖子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.118-126, 2005-04-20
被引用文献数
1

We have shown in previous studies that the use of bamboo charcoal advanced the gelatinization of starch, and reddened and softened kintoki beans. We applied these effects for red rice steamed with glutinous rice and cowpeas. The pH value of the bamboo charcoal extract was about 9.5, and it decreased to about 8.0 after cooking cowpeas for 15 minutes. The broth used to boil the cowpeas with the bamboo charcoal extract became redder and clearer. There was a positive correlation between the pH value of the cooking water and the value measured by a color difference meter of the broth used to boil the cowpeas. Glutinous rice soaked in the broth used for boiling the bamboo charcoal extract became redder after steaming. The sensory test evaluated the red glutinous rice prepared by using the bamboo charcoal extract as significantly redder than that by using tap water. Use of the bamboo charcoal extract also accelerated the softening of the cowpeas, and the red glutinous rice was evaluated as tender in texture just after steaming.
著者
山本 美枝子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.233-242, 1992-08-20
被引用文献数
1

『婦人之友』戦後誌の肉料理記事から焼肉料理のみを取り出して調査資料とし,焼肉の調理素材としての利用状況,料理の種類と調理法,調味法などから焼肉料理としての年代的た変化を捉え,さらに執筆者別に焼肉の利用度,食事目的別に肉種別の利用度と料理の内容について比較分析し,家庭料理としての焼肉調理の特色を考察した。要約すると次のようである。1.焼肉の利用度は,塊肉料理の通年出現頻度としては肉料理総数に対して約2割であり,肉種別では特に豚焼肉の利用度が高く焼肉総数の半数を占め,肉種別の最多例数を示す年代は牛焼肉では60年代,豚焼肉は40年代後半,丸鶏では30年代の後半であった。年代別の利用度は食肉の供給状況・消費傾向との関連が認められた。2.焼肉の調理形態は部位焼肉,中抜き丸鶏・七面鳥などの基本形態のほかに,特殊形態として背開き鶏,詰め巻・袋状詰め肉,鶏ガランティンなどの多様な形態がみられ,45年以降に多かった。3.調理法のうち焼肉で頻度の高い調理法は,1位ロースト,2位ゆで煮,3位煮込みの順であるが,肉種別では,牛肉はゆで煮,豚肉は煮込み,丸鶏では天火焼ローストが1位を占める料理であった。4.ゆで煮料理やロースト類にみる調味法の変化は,50年以後に顕著に認められ,醤油や複合調味料,香味材料だとが併用され,用い方には和風感覚が活かされ,より高度な味を求める嗜好の変化が,調味に多様性をもたらしている。5.執筆者別による焼肉の利用は他の婦人雑誌と異なって,プロ,セミプロなどによる料理よりも一般主婦による料理が多く,6割を占めていた。そしてそれは50年代に多くみられた。6.一般主婦の料理は多様であり,日常食と特別食の料理とに分けられ,ほぼ同じ程度に用いられていたが,牛焼肉の場合に日常食がやや多かった。7.一般主婦の焼肉料理はロースト,ゆで煮,煮込み,銀ロースト,の順に利用され,主にローストは特別食,他は日常食の利用形態であった。
著者
松本 エミ子 峯木 真知子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.183-187, 1981-10-20
被引用文献数
2

グリーンピース・スープの材料の破砕について、冷凍グリーンピースを用い、加熱時間、破砕方法の影響を組織学的に調べ、官能検査を行った。1) 冷凍グリーンピース・スープの豆分散物の形状はビマン状の澱粉、蛋白質のほか、細胞細片、遊離澱粉粒、単離澱粉貯蔵細胞、破砕組織片などである。2) 冷凍グリーンピースの破砕は、裏ごしとミキサーで差がみられるが、加熱時間の影響は小さい。破砕後加熱すると破砕時の分散物の状態は大差なくなる。3) 冷凍グリーンピースを用いたグリーンピース・スープでは、官能検査結果から5分力加熱の豆でもミキサーを使用することで簡便に満足できるスープが得られる。なお、グリーンピース・スープにおいてグリーンピースの破砕程度と添加物によるスープの色、物性なと多くの問題があり、今後の興味ある課題であると考える。
著者
小川 宣子 田名部 尚子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.65-70, 1988-06-20

16〜18歳の女子206名を対象とした蛋白質食品の好みに関する調査を行った。因子分析を行った結果「こってりとした味で油脂を多く使う」と「調味料添加無」の因子に分かれ、豚肉は様々な料理が広く分布し、料理方法として様々な料理が存在していた。又、魚と豆腐は、クラスター分析の結果から一つのクラスタを形成しており、嗜好の点からはよく似た食品であった。又、16〜18歳の女子がよく知っている料理の頻度には調理形態、様式形態が大きな影響を与えていた。
著者
古郡 曜子 菊地 和美
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.410-416, 2009-12-20

本研究は,平成2年前後に生まれた学生を対象とした保育所・幼稚園における「食の思い出」アンケート調査をまとめたものである。調査時期は2008年4〜5月に実施し,有効回答数は732人,調査対象者の平均年齢は18.5歳であった。アンケート調査の結果は以下のとおりであった。食生活の出来事における思い出の回答では,「印象に残っていること」は「いただきます・ごちそうさまという挨拶」を多く挙げていた(74.5%)。通園先における「食事が楽しかった」という回答が82.2%であり,「楽しい思い出」の質問には,みんなで食べたこと,お弁当に関すること,食べ物の栽培をしたことなどを回答していた。一方,幼児期の家庭における「食事のしつけ」の記憶数は,平均4.0±2.2個であった。「現在,食事のマナーが身についていると思う」と回答した学生は,幼児期の家庭における「食事のしつけ」の記憶数が多いという,関連性がみられた。
著者
大羽 和子 山本 淳子 舟橋 由美 小原 明子 石井 現相 梅村 芳樹
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.102-108, 1999-05-20
被引用文献数
3

1)キタアカリ(VC高含有品種)および男爵薯の生育に伴って,塊茎の重量,デンプン価,ビタミンC(VC)量が増大し,7月下旬に最大になり以後減少した。2)ジャガイモ(7品種)塊茎を冷却(4℃)貯蔵するとVC量も(GLDHase活性も1ヶ月後に顕著に減少し,1〜2ヶ月の間は変が少なく,2〜3ヶ月後に再び減少した。3ヶ月後のVC量が著しく減少する時期および貯蔵2ヶ月以降のVC含量の低い時期に高くなった。3)収穫直後に塊茎を4℃に移すとその2〜3日後にVC量およびGLDHase活性が増大し,以後減少した。4)ジャガイモ塊茎を15℃に貯蔵した方が,4℃に貯蔵した場合よりもVC量の減少が小さく,GLDHase活性は低く保たれた。
著者
末野 紀子 新田 ゆき
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.134-138, 1978-06-30
被引用文献数
3

1.生豚ひき肉に6種の香辛料を添加し,7日間冷蔵して脂肪の酸化度を測定した結果,ジンジャー,セージ,ローズマリー,クローブはよく酸化を抑え,ブラックペッパーは弱い効果を示し,ガーリックは酸化を促進した。同じ試料についてpHとトリメチルアミン量をも測定して防腐効果を調べたが,数値の上では若千の効果を示したが,官能的には効果は感じられなかった。2.生豚ひき肉に5種の香辛料を添加し,6か月冷凍貯蔵した場合,対照は6か月で脂肪の酸化曲線がかなり上昇したが,ローズマリー,セージ,ナツメグ,パプリカはよく酸化を抑え,ホワイトペッパーは弱い効果を示した。pHはいずれの試料も同じ値を示した。3.ひき肉に12種の香辛料およびソルビン酸,ソルビン酸カリ,ポリリン酸塩を添加し,加熱後3週間冷蔵して脂肪の酸化度を測定した結果,無添加試料では保存中酸化が急激に進んだが,香辛料添加試料はいずれも酸化が抑えられ,特にクローブ,セージ,ローズマリー,ジンジャー,オールスパイス,オレガノ,メース,タイムの効果が大きかった。ポリリン酸塩は若干の効果があり,ソルビン酸とその塩には酸化防止効果はなかった。これらの試料の一部についてトリメチルアミン量を測定した結果,ガーリック,ジンジャー,ローズマリー,クロ一ブ添加試料でいくらか生成量が少なかったが,防腐効果と言える程はっきりした差ではなかった。ソルビン酸は最も大きな効果を示し,ポリリン酸塩もいくらか効果があった。本研究の概要は第29回家政学会総会(1977)で発表した。