著者
小塩 真司 橋本 泰央 下司 忠大 三枝 高大
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

二分法的思考とはものごとを「白と黒」「善と悪」のように二項対立的に捉えようとする思考形態である。本研究では特に,二分法的思考と外在化問題に結びつきやすい心理指標との関連を通じて,二分法的思考の持つ意味や役割を明らかにすることを目的とする。第1に二分法的思考は誇大型の特権意識と強く結びついていた。第2に,外在化問題に結びつきやすいパーソナリティ特性であるダーク・トライアドは,二分法的思考と関連していた。第3に,二分法的思考は年齢にともなって直線的に低下していた。第4に,二分法的思考と攻撃性との間には正の関連が認められるが,その関連の大きさは若い年齢集団ほど大きいという効果が認められた。
著者
橋本 健二 佐藤 香 片瀬 一男 武田 尚子 浅川 達人 石田 光規 津田 好美 コン アラン
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

市区町村および地域メッシュ単位の統計と質問紙調査の結果から、以下の諸点が明らかとなった。(1)1990年から2010年の間に東京圏の階級・階層構造は、旧中間階級とマニュアル労働者が大幅に減少し、新中間階級とサービス産業の下層労働者が増加するという2極化の傾向を強めた。(2)この変化は、都心部で新中間階級と高所得世帯が増加し、周辺部では非正規労働者と低所得世帯が増加するという空間的分極化を伴っていた。(3)しかし、都心の南西方向では新中間階級比率と所得水準が高く、北東方向では低いという、東西方向の分極化傾向は維持された。(4)空間的な分極化は住民の政治意識の分極化を伴っていた。
著者
光嶋 裕介
出版者
早稲田大学
巻号頁・発行日
pp.1-151, 2021

早大学位記番号:新8835
著者
勝方 恵子 LESLIE Winston
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

調査研究の効率をはかるために、京都の国際日本文化研究センターや、愛媛県の高畠華宵大正ロマン館。宮沢賢治記念館などで、西欧近代をいち早く取り入れながらも日本古来の伝統にこだわり続けた地元出身の作家たちの第一次資料や文献の調査、関係者インタヴューなどに重点を置いた。具体的には、1)両性具有的な人物描写で著名な漫画家・竹宮恵子が全作品を捧げている謎の挿絵画家「高畠華宵」について調べるために、著作権を管理している遺族のインタヴューを行い、テープを起こし、英語に翻訳した。これらの情報をもとに、華宵の年代譜を作成する予定である。華宵の来歴の最も謎の部分は、第二次大戦後、弟子の一人を連れてロサンゼルスに移住し、美術学校の設立準備にあたったが、弟子の不慮の死により計画を断念して1年で帰国した経緯である。その足跡の詳細は、ロスでの調査に託されよう。遺族との会見で得た大きな成果は、「高畠華宵」再評価の先鞭をつける使命を負わされ、今後の論文執筆に際して全作品の掲載に関する著作権を許可してもらったことである。2)古文書『病名彙解』などに記載された「フタナリ」に関する記述を解読。近世期における日本や中国の見解を知る手掛かりとなった。3)京都の京都国立博物館において、『病草紙』(12世紀の絵巻物・国宝)などに「ふたなり」に関する描写を発見し、模写版のコピーを得ることが出来た。4)宮沢賢治記念館では、『銀河鉄道の夜』のカムパネルラ解釈にかんして、「中有」「中陰」「中間生」という仏教用語が多用されることの背景を探るための資料収集をすることが出来た。5)その他、谷崎潤一郎に関する文献・資料もほとんど完了し、初期作品に「両性具有イメージ」が顕著であることに関して、傍証を得ることが出来た。以上、申請書に掲げた調査予定は完了した。予算の関係で沖縄調査は断念せざるを得なかったが、別途計画したい。
著者
齋藤 久美子
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

壁塗り用石膏に関して、前年まで研究で、当時石膏焼きの際、過焼成によりプラスターに無水石膏が混入していた可能性を指摘したが、これが現在までに二水石膏部分をも無水化させた原因ではないかと考え、半水石膏と、半水石膏と無水石膏の混合物をそれぞれ水和させ、変化を観察した。1年半にわたり湿度30〜40%の状態に置き、定期的に石膏の脱水の有無を調べたが、両者とも脱水は見られなかった。さらに、温度など壁画が置かれていた環境も検討し、長期的な観察を行う必要がある。顔料については、壁画には銅を発色源とするエジプシャン・ブルー、土器の彩色にはコバルトを発色源とするコバルト・ブルーという使い分けが行われていた理由を実験により検証した。分析結果に基づき合成したエジプシャン・ブルーと、出土したエジプシャン・ブルーの塗られた壁画片を、土器を焼く温度で輝いてみたところ、ともに黒く変色した。エジプシャン・ブルーは熱に弱く土器には使えなかったものと考えられる。コバルトブルーの製法については、同じくコバルトを使用していたガラスの製法、及びコバルト・ブルーより二千年以上前から作られていたエジプシャン・ブルーの製法と比較してみた。成分分析の結果、ガラスに比べて、コバルト・ブルーには多量のアルミナが含まれていた。分析結果に基づいて合成実験を行ったところ、アルミナが多いと融解温度が高くなるため、当時ガラスが作られていた温度ではガラス化が困難であり、ガラス製法そのままではコバルト・ブルーは作れないことがわかった。また、エジプシャン・ブルーともガラス質部分の配合が異なり、伝統的な顔料製法を用い、新たに導入された原料であるコバルトを単に銅に置き換えただけではないことが判明した。当時の技術体系の複雑さが伺える。顔料に関する実験の成果の一部を、6月に行われた日本西アジア考古学会第10回大会で発表した。
著者
阿藤 誠 津谷 典子 福田 亘孝 西岡 八郎 星 敦士 田渕 六郎 吉田 千鶴 岩間 暁子 菅 桂太 中川 雅貴 曺 成虎
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

研究成果の概要(和文):本研究では第一に男性の未婚化・晩婚化は非正規雇用の増大により引き起こされ、女性の未婚化・晩婚化は高学歴化に伴う賃金稼得力の上昇と関係がある。第二に結婚や家族に対して非伝統的な価値意識を持つ人ほど出生力が低く、反対に伝統的な意識を持つ人ほど出生力が高い。第三に男性と比べて女姓は結婚・出産を経験すると家事や育児を極めて多く遂行するようになる。第四に高齢の親に対しては男性よりも女性の方が心理的、経済的支援をより多く行っており、特に配偶者の親よりも自分の親に対して顕著である。また、孫がいない夫婦より孫のいる夫婦の方が祖父母から様々な支援をより多く受けていることが明らかとなった。
著者
長谷川 洋三
出版者
早稲田大学
雑誌
早稲田社会科学総合研究 (ISSN:13457640)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.A37-A58, 2003-11-25

論文
著者
秋永 一枝 上野 和昭 坂本 清恵 田中 ゆかり 松永 修一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

「複合メディアによる東京弁アーカイブの構築と電子的公開」の目的は、旧来の研究では埋もれてしまう可能性のあった東京弁としての貴重な一次資料を、汎く利用できるような形にして蘇らせようとするものである。秋永の聞き取りによるアクセントなどの言語情報が付加した自然度の高い談話資料として、文字化データと音声データをセットで利用できるよう電子化し、談話資料、アクセント資料、東京方言語彙資料のデータベースとしても利用できる基礎資料を完成させることができた。
著者
上田 洋子
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ロシアモダニズム期の作家S.D.クルジジャノフスキイによる、芸術における演劇的構造に関する指摘を出発点として、19世紀末から20世紀初頭に誕生した演出家主導型の演劇に関する調査・研究を行った。海外でのアーカイヴ調査を経て演劇の豊穣と他の芸術との相関関係を確認した。論文と学会発表以外に、演劇博物館所蔵の未整理資料調査の結果発見した同時代の貴重な資料等を用い、展示および図録での成果発表を行った(「メイエルホリドの演劇と生涯」展、「ロシア演劇のモダニズムとアヴァンギャルド」展)。
著者
内田 直 宝田 雄大 渡邉 丈夫 宮崎 真 宝田 雄大 後藤 一成 関口 浩文 宮崎 真
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

近年、国民の健康に対する関心の高まりとともに身体運動への関心も高まっている。しかしながら、このような関心は、身体的な健康が主体となっている。一方で、精神的なあるいは脳の健康も同様に重要であることは疑い。このような、精神的なあるいは脳の健康と、これに対する身体運動の効果についての研究は、いまだ十分に行われているとはいえない。本研究では、身体運動と精神活動あるいは脳活動の関連について焦点をあて、これについて健康科学的な側面から実証的な研究を行った。このような研究は、身体活動と身体の健康に関連した研究に比べると新しいものであり、今後うつ病や認知症予防のための運動療法としての活動につながるものである。研究は、以下の5つのテーマ(方法)によって行った。すなわち(1)身体運動が睡眠に及ぼす影響について、(2).睡眠中の代謝活動についての予備的研究、(3)朝行う身体運動が、その後の認知機能に及ぼす影響について、(4)身体運動と児童の発達の関連について、(5)観察学習の効果とスキルの転移、である。(1) 身体運動が睡眠に及ぼす影響については、二つの実験を行った。昼寝により人工的に作成した不眠状態への運動の影響をみたが、これは大きな影響が観察されなかった。次に睡眠直前に高強度の運動を行わせ、これが睡眠にどのような影響を及ぼすのかを観察した。これまでの研究では、ストレス反応により睡眠が悪化すると言う説があったが、我々の研究では変化無く、悪化は無かった。しかしながら、睡眠中の体温が睡眠中期で運動後運動しないときよりも有意に高いという興味深い結果が得られた。(2) はヒューマンカロリーメータを用いた睡眠中の代謝の連続測定と言う新しい分野の研究であり、今後運動後の代謝の変化など興味がもたれた。(3) 朝の運動については、日常的に行われる健康運動と似たパタンであるが、これが日中の活動にどのように影響を及ぼすのかを見た。しかしながら、結果としては一過性の効果は認められたが、一日の中での変化は無かった。このような運動を習慣的にした場合の影響が今後の課題として残った。(4) 小学生を対象とした研究のまとめが一部完成した段階である。現状では、認知機能のうち、判別と抑制の発達パタンが小学生年代では異なっている可能性が示唆された。(5) 観察学習は、運動学習の一部であるが、観察学習により獲得された手続き記憶は、必ずしも転移しないことが示唆される結果であった。全体として基礎研究と応用研究の両方から成果が得られ、身体運動が脳と心に及ぼす効果の解明と健康科学への応用についての業績がえられた。期間は終了しているが、この結果を国際論文として発表している作業を持続して行っている。
著者
朴 祥美
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究は昭和期日本の文化政策の歴史的経緯を検討し、また、日本の文化政策の方法論を韓国が導入した背景まで視野に入れることによって、アジアにおける文化政治論を豊かにする。
著者
山本 まゆみ
出版者
早稲田大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

当研究は、1990年からつづく、あまりにも政治化した慰安婦言説に警鐘を鳴らし、慰安婦研究が脱政治化へと軌道修正をすることを目指し、1990年代前半の出版・研究言説から浮かび上がった「強制〔連行〕」をキータームとし、言説の政治化過程を検証した。当研究調査では、その言説を補助する史実として繰り返し登場するジャワ島中北部で1944年3月に起こった「スマラン慰安婦事件」に関する資料をオランダ公文書館で精査した。本事件は、慰安婦の女性たちが、敵性国人収容所から強制連行されたこと、日本軍上層部が状況を知りこれら慰安所を開設後2ヶ月あまりで閉鎖したこと、和蘭BC級戦犯裁判で2年余という異例の長さを費やし調査・審理したことから、日本軍のみならず当時の和蘭政府も「異常」な事件と認識していたことが明白となった。慰安婦言説の政治化を支える強制連行というキータームが、曖昧になりつつある近年、強制連行の代わりに単なる強制という言葉や権力という言葉に置き換え、言説に政治性を付帯させるという技法のほか、特殊例であったはずの「スマラン」が、慰安婦「強制連行」を支える一般例として登場し言説の政治性を精鋭していることが明確になった。本研究の意義及び重要性は、調査結果を踏まえ2009年3月にシカゴで開催された米国アジア学会年次学会で慰安婦言説の脱政治化を目指し発表した「慰安婦言説政治化への過程:スマラン慰安婦事件について」に対する歴史研究者の反応からも窺えた。当研究が警鐘を鳴らした歴史の過剰な政治化への懸念は、多くの歴史研究者から賛同を得ただけではなく、発表後、「近年慰安婦問題だけに拘わらず、単に語り出版することで「真実であった」かのように認識される現象を、研究者は真剣に考えなければならない時期に来ている」とし、世界史学会の一部の研究者たちが、「次期学会で慰安婦問題を取り上げよう」という意見を述べていただけでも大きな意義があったと考える。
著者
尾野 嘉邦 菊田 恭輔
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2023-06-30

いわゆる「資源の呪縛」論に代表されるように、これまで天然資源と国内・国際紛争の関係については膨大な研究がなされてきた。しかし、そのほとんどがマクロなレベルでの相関関係の分析にとどまっており、天然資源が国内・国際紛争にいたるミクロなレベルでの因果メカニズムはまだ明らかではない。本研究は、偶然起こった出来事を利用する自然実験のリサーチデザインのもとで、地球上の油田開発に関する詳細な地理データ、245万人以上の回答者を含むグローバルな世論調査データ、そして3,800万件以上の記事に基づいた紛争のイベントデータなどを分析し、ミクロレベルの仮説を検証していく。
著者
藤本 一勇
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

脱構築思想を普及させたフランスの哲学者ジャック・デリダ(1930-2004)の基礎概念である「差延」は、伝統的な哲学における時間と空間の概念を変形し、両者が一体となり循環しあう関係を示す戦略素である。この概念を軸に、言語記号、テクスト、経験、情報、テクノロジー、政治権力など広範なデリダの思想を整理・読解し、彼の多様な思考の根底を「差延」というモチーフが貫いていることを明らかにした。その結果、初期の理論的段階、中期の文学的段階、後期の政治・倫理的段階を、表面的な変化にとらわれず、一貫したものとして把握することが可能となり、翻って同時代の多様な環境との相関関係を理解することを可能にした。
著者
片岡 孝介
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

先進国で高齢化が加速度的に進む中で加齢性記憶障害の発症機構の研究は重要性を増している。脳内で多く発現しているCB1受容体は、加齢性記憶障害に深く関与することが知られているが、その機構には不明な点が多い。助成対象者は、CB1受容体がミトコンドリアの品質を管理することで海馬神経細胞の機能を維持していると予想している。本研究では、CB1受容体によるミトコンドリア品質管理機構を解明することで、今後増加すると予想される加齢性記憶障害の機構解明や予防戦略の確立につなげることを目的としている。