著者
須藤 圭
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国際日本文学研究集会会議録 = PROCEEDINGS OF INTERNATIONAL CONFERENCE ON JAPANESE LITERATURE (ISSN:03877280)
巻号頁・発行日
no.39, pp.23-38, 2016-03-17

The phrase “Onna ni te miru” appears in several volumes of The Tale of Genji. It is said to mean either “to look at a man as if he were a woman” or “to look at a man as if one were a woman.” In this presentation, I call into question the gender bias underlying the act of translation by examining the ways in which the phrase “Onna ni te miru” has been translated. The phrase “Onna ni te miru” has already been thoroughly investigated.Yoshikai Naoto’s “ ‘Onna ni te miru’ to kōzokubi (‘Onna ni te miru’ and Royal Beauty)” (Genji Monogatari no shinkōsatsu: ningen to hyōgen no kyojitsu (A New Investigation of The Tale of Genji: The Truth and Falsehood of Humanity and Expression), Ohfu, 2003) insists that the meaning of “Onna ni te miru” is simply to look on a man as a woman. In response to this, Royall Tyler’s “Dansei no imēji o oou josei no Beēru (A Female Veil that Covers the Image of a Man)” (Kōza Genji Monogatari Kenkyū 11 (Lectures on The Tale of Genji Studies 11) Kaigai ni okeru Genji Monogatari (The Tale of Genji Overseas), Ohfu, 2008) points out the difficulty of comprehending the hidden meanings in the motif of a man putting on a “female veil” based on the authors’ own experiences with English translation.However, the question of what form the phrase “Onna ni te miru” takes in English translation, for instance, has never been discussed. In translating “Onna ni te miru,” there are more options than simply “to look at a man as if he were a woman” or “to look at a man as if one were a woman.” It is sometimes translated as “to look like a woman” while maintaining male gender, or as “it would have been better if their genders were switched.” “Onna ni te miru” has been translated in numerous, varied ways.In this presentation, I will examine the roles the phrase “Onna ni te miru” has taken and the meanings it has assumed in various contexts including modern Japanese translations as well as multiple translations into foreign languages. By doing so, I will question the act of translation itself and attempt to investigate gender differences between Japanese and foreign languages as well as those between the Heian Period and today.
著者
杉田 典正 海老原 淳 細矢 剛 神保 宇嗣 中江 雅典 遊川 知久
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2038, (Released:2021-08-31)
参考文献数
62

環境省レッドリストに掲載された多くの分類群は、個体数が少ない、生息地がアクセス困難であるなどの理由から保全管理計画の策定に必要な情報が不足している。博物館は過去に採集されたレッドリスト掲載の分類群の標本を所蔵している。ラベル情報に加え形態・遺伝情報を有する標本は、保全に関する様々な情報を供給可能である。しかし、標本の所在情報は各博物館の標本目録や台帳に散在しており標本の利用性は低かった。これらの情報は公開データベース等で共有化されつつあるが、情報の電子化・共有化は不完全であり、依然として利用性が低い状況にある。本研究は、環境省レッドリスト 2019ならびに海洋生物レッドリスト 2017に掲載の絶滅危惧種(絶滅と野生絶滅、絶滅危惧 I類のみ対象)の標本所在情報を集約するために、国立科学博物館の標本データベースおよびサイエンスミュージアムネット( S-Net)の集計と聞き取り等による標本所在調査をおこなった。国内の博物館は、約 95.9%の絶滅危惧種につき標本を 1点以上保有し、少なくとも 58,415点の標本を所蔵していた。海外の博物館も含めると約 97.0%の絶滅危惧種の標本所在が確認された。約 26.5%の絶滅危惧種が個体群内の遺伝的多様性の推定に適する 20個体以上の標本数を有した。本研究により絶滅危惧種標本へのアクセスが改善された。これらの標本の活用により、実体の不明な分類群の検証、生物の分布予測、集団構造、生物地理、遺伝的多様性の変遷といった保全のための研究の進展が期待される。一方でデータベースの標本情報には偏りが認められ、例えば脊椎動物はほとんどの高次分類群で 50%以上の絶滅危惧種の所蔵があったが、無脊椎動物では全く所蔵のない高次分類群があった。採集年代と採集地にも偏りがあり、 1960 -1990年代に標本数が多く、生息地間で標本数が異なる傾向があった。データベースの生物名表記の揺れや登録の遅延は、検索性を低下させていた。利用者が標本情報を使用する際は情報の精査が必要である。保全への標本利用を促進するために、データベースの網羅性と正確性を向上させる必要がある。博物館は、絶滅危惧種に関する標本の体系的な収集、最新の分類体系に基づいた高品質データの共有化、標本と標本情報の管理上の問題の継続的な解決により、絶滅危惧種の保全に標本が活用される仕組みを整えることが求められる。
著者
吉川 徹
出版者
一般社団法人 日本小児精神神経学会
雑誌
小児の精神と神経 (ISSN:05599040)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.127-136, 2020 (Released:2020-07-01)
参考文献数
9

発達障害のある子どもの育児には,多数派の子どもの育児と比較すると,より多くの大人の時間,気力,体力,経済力を要する場合が多い.このため発達障害のある子どもを育てている家族に対しては,マンパワーの確保,知識とスキルの伝達,気持ちの支えなど複数の観点からの評価と実際の支援とが必要となる.また特に気持ちの支えに関しては,専門家による支援のみでこれを充足することは難しく,ピアサポートを含む形での相補的な支援がなされることも期待される.家族が安心して地域を頼ること,家族が自分の人生を楽しむことが,ひいては子どもと家族の「こじれ」を防ぐ決め手になるのではないだろうか.本稿では養育者の負担軽減に主眼を置き,発達障害のある子どもの育児に必要な家族支援について考えてみたい.
著者
山内 勇人 河野 恵 大西 誠
出版者
日本環境感染学会
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.81-86, 2006-06-20
参考文献数
7
被引用文献数
5

インフルエンザウィルス感染症は, 病床運営や患者生命にも関わる重篤な院内感染症の一つである. 当院は240床中80%がリウマチ性疾患, 中でも関節リウマチ (RA) が大多数を占めるRAの専門病院である. 2002年度の全国的なインフルエンザの大流行時に, 当院でもインフルエンザ患者が急増した. その主たる原因をエレベーター内での飛沫感染と考え, 入院患者, 職員, 外来患者や面会人を含む病院全体での厳格なサージカルマスク着用による飛沫予防策を緊急導入し, アウトブレークを途絶することに成功した. その経験から, 当院ではワクチン接種の推進に加え, 冬期のサージカルマスク対策を継続して行っている. 更には, 外来有熱患者の受付でのトリアージを2004年度より導入し, 飛沫予防策の強化を図っている. その結果, 入院患者でのインフルエンザ発生は, 2003年度0人, 2004年度は3人と良好な結果である.<BR>当院のようなハイリスク集団におけるインフルエンザの院内感染対策において, ワクチン接種の重要性は言うまでもないが, 病院全体での厳格な飛沫予防策の併用は極めて有用である可能性が示唆された.
著者
岡田 桂
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.37-48,106, 2004

英国や欧州におけるサッカー・リーグの試合では、時おり、男性選手同士がキスし合うパフォーマンスが見受けられる。こうした行為は、ゴールを決めた際の感激の表現として理解され、受け入れられてはいるが、通常想定される「男らしさ」の価値観からは逸脱している。近代スポーツは、その制度を整えてゆく過程で、男らしさという徳目に重点を置いた人格陶冶のための教育手段として用いられてきた経緯があり、サッカーを含めたフットボールはその中心的な位置を占めていた。それではなぜ、男らしさの価値観を生みだしてゆくはずのサッカー競技の中で、「男らしくない」と見なされるような行為が行われるのだろうか。この疑問を解く鍵は、近代スポーツという制度に内在するホモソーシャリティにある。男らしさの価値観を担保するホモソーシャリティは、異性愛男性同士の排他的な権利関係であり、女性嫌悪と同性愛嫌悪を内包する。サッカーをはじめとするスポーツ競技は、ジェンダー別の組織編成によって制度上の完全な女性排除を達成しており、もう一方の脅威である同性愛者排除のために、ホモフォビアもより先鋭化された形で実践されている。こうして恣意的に高められたホモソーシャルな絆によって、スポーツ界は通常の男らしさ規範に縛られない自由な表現が許される場となり、キスのような、通常であればホモソーシャリティの脅威となり得るホモセクシュアリティを仄めかすようなパフォーマンスも可能となるのである。つまり、こうした行為は「自分たちは同性愛者ではない」という確固とした前提に基づいた、逆説的な「男らしさ」の表出であるといえる。また、男性同士のキスという全く同一の行為が、プロ・サッカーという特定の文脈では「男らしさ」を表出し、他の文脈では正反対の意味を構成するという事実は、ジェンダーというものが行為によってパフォーマティヴに構築されるものであり、ジェンダーのパフォーマンスとそれが構築する主体 (不動な実体) との間の関係が恣意的なものであること、即ち、行為の実践によってそれが構築する主体をパフォーマティヴに組み替えてゆくことができる可能性を表しているといえる。
著者
伊井 一夫 田野井 慶太朗 宇野 義雄 登 達也 廣瀬 農 小林 奈通子 二瓶 直登 小川 唯史 田尾 陽一 菅野 宗夫 西脇 淳子 溝口 勝
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.299-310, 2015-05-15 (Released:2015-05-28)
参考文献数
14
被引用文献数
2 8

2011年の原発事故以来,イネの作付制限地域に指定された飯舘村で,2012年に佐須・前田地区で,2013年には佐須・前田・小宮地区で水稲の試験栽培を行った。2012年において,除染の度合いにより土壌の放射性セシウム(134Cs+137Cs)濃度(0~15cm平均)が2000から6000Bq/kgの佐須・前田圃場では,玄米の放射性セシウム濃度は最大でも40Bq/kgであり,除染度合いに応じたセシウム濃度の低減効果が見られた。さらにカリウム(K)施肥による玄米のセシウム濃度の低減効果が確認された。土壌の交換性Kの濃度が高いほど,玄米の放射性セシウム濃度は低くなる傾向があるが,交換性K(K2O換算)が,20mg/100g乾燥土壌以上の区画では10Bq/kgとほぼ一定であった。一方,2013年において土壌の放射性セシウム濃度が除染後も8000Bq/kgを超えた小宮圃場では,玄米の放射性セシウム濃度が100Bq/kgを超えたサンプルが一部で見られた。これらの結果は,飯舘村において,適切な除染,K施肥により,水稲玄米への放射性セシウムを低減させ,基準値(100Bq/kg)を十分にクリアできることを示している。
著者
遠藤 保太郎
出版者
上田蠶絲專門學校千曲會
雑誌
蠶絲學雜誌
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.195-207, 1935-04-30
著者
北條 昌芳 阿部 俊明 鹿野 哲也 玉井 信
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1253-1255, 2003-07-15

要約 55歳女性が左眼の上下瞼結膜に黒い塊があるのに気づいて受診した。8年前にアレルギー性結膜炎と診断され,デキサメタゾンの点眼を続けていた。結膜結石があり,数回の結石除去術を受けていた。視力は良好で,眼底その他に異常はなかった。左眼の瞼結膜に偽膜形成があり,上の瞼結膜に1個,下の瞼結膜に9個の黒色塊があった。生検で黒色塊はクリプトコッカス症と診断した。残りの黒色塊を除去し,ステロイド薬点眼を中止させた。以後の再発はない。瞼結膜のクリプトコッカス症は稀であるが,長期の副腎皮質ステロイド薬の点眼による眼局所の免疫力低下が引き金になったと推定した。
著者
濱崎 雅弘 武田 英明 西村 拓一
出版者
The Japanese Society for Artificial Intelligence
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.157-167, 2010
被引用文献数
11 2

The Web technology enables numerous people to collaborate in creation. We designate it as <i>massively collaborative creation via the Web</i>. As an example of massively collaborative creation, we particularly examine video development on <i>Nico Nico Douga</i>, which is a video sharing website that is popular in Japan. We specifically examine videos on <i>Hatsune Miku</i>, a version of a singing synthesizer application software that has inspired not only song creation but also songwriting, illustration, and video editing. As described herein, creators of interact to create new contents through their social network. In this paper, we analyzed the process of developing thousands of videos based on creators' social networks and investigate relationships among creation activity and social networks. The social network reveals interesting features. Creators generate large and sparse social networks including some centralized communities, and such centralized community's members shared special tags. Different categories of creators have different roles in evolving the network, e.g., songwriters gather more links than other categories, implying that they are triggers to network evolution.
著者
大橋 美幸
出版者
函館大学
雑誌
函館大学論究 (ISSN:02866137)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.59-92, 2018-10

北海道新幹線の開業3年目に、函館市等の街頭、イベントでアンケートを行い、開業前、開業直後と比較した(回収数3824)。 北海道新幹線の利用経験は函館5割、他の沿線5~6割、札幌3割であり、沿線だけでなく遠方からも利用されている。目的は道内外ともに観光が多く、開業直後から変わっていない。 沿線への開業の影響は、経済・社会全体に「プラス」、観光客数が「増えた」と函館、新幹線駅地元で5~7割に評価されており、おおむね肯定的に捉えられている。ただし、1年前に比べて実感は薄くなりつつある。 道外からの移動は、東北8割、北関東4割が新幹線を利用しており、東北で開業前のJR利用が移行し、北関東で飛行機からの一部乗り換えが起こっている。訪問先は函館のみが8割程度であり、開業直後から変わっていない。周遊につながっておらず、新幹線の開業効果を限定的なものにしている。
著者
緒方妙子 大塔美咲子
出版者
九州看護福祉大学
雑誌
九州看護福祉大学紀要 (ISSN:13447505)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.57-65, 2013-03

本研究は大学生の月経前症候群(PMS)と日常生活習慣、及び症状出現時の対処としてセルフケアしていることの実態を明らかにし、その関連性を探ることを目的としている。PMS症状に関しては、PMSメモリーリスト52項目1)の結果を、似通った症状2)をまとめて身体・精神・社会的症状それぞれ10項目とし、症状の程度別に示して分析した。統計解析は、単純集計による分析、及び相関に関しては、ソフトSPSS statistics19を用いて、Pearson の両側有意差検定を行った。看護学科女子大学生(1・4年生)212名を対象に質問紙調査を行った結果、以下のことが明らかになった。1.月経前症候群の認知度は4年生69.6%、1年生18.6%であり、学年差が表れていた。2.月経周期が規則的な有効回答者162名中、月経前に何らかの症状が現れる者は97.0%に及んだが、その内PMSを知らない者は56.7%であった。3.日常生活に影響があるPMS症状を持つ者は61.7%、症状が激しい者は30.2%であった。主な身体的症状は「眠くなる」、「下腹痛、腰痛」、「食欲の変化、下痢、便秘」、「ニキビ、肌荒れ」、「疲れ易い」、「頭痛、肩こり、冷え」、精神症状では「イライラする」、「無気力・憂鬱」、「集中できない」、社会的症状では「物事を面倒くさく感じる」、「-人でいたい」などであった。4.日常生活習慣の「運動」、「朝食の摂取」、「良好な睡眠」、「気分転換」は、PMS精神症状と有意な関連がみられた為、日常生活でのこの点での配慮がPMS精神症状軽減に有用であることが示唆された。5.日常生活に影響するPMS症状を持つ者で、セルフケア実践者は87%であり、その主な内容は、「十分な睡眠」、「気分転換」、「周りに"月経前"と言う」、「お腹・腰を温める」であった。この中で幅広い症状に最も多く適用されていたのは「十分な睡眠をとる(60.9%)」であった。
著者
マイケル ワトソン ディディエ ダヴァン 湯上 良 西村 慎太郎 恋田 知子 青田 寿美 陳 捷
出版者
人間文化研究機構国文学研究資料館
雑誌
国文研ニューズ = NIJL News (ISSN:18831931)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.1-16, 2017-01-25

●メッセージ国際化とデジタル化の未来へ向けて●研究ノート禅の文化から教えに、そして文学へ和紙を愛でる:古文書修復技術の融合 ――マレガプロジェクト・ワークショップ――●トピックス第9回日本古典文学学術賞受賞者発表第9回日本古典文学学術賞選考講評協定等の締結について人命環境アーカイブズの地平 ――福島県双葉町における保全活動と地域持続――平成28年度 国文学研究資料館「古典の日」講演会大学共同利用機関シンポジウム2016「研究者に会いに行こう! ――大学共同利用機関博覧会――」参加記第40回国際日本文学研究集会総合研究大学院大学日本文学研究専攻の近況