著者
隠岐 さや香 OKI Sayaka
出版者
名古屋大学大学院人文学研究科附属超域文化社会センター
雑誌
JunCture : 超域的日本文化研究 (ISSN:18844766)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.18-32, 2019-03-25

Mr. Osomatsu (Osomatsu-san) is a Japanese anime comedy series (2015–2018) based on Akatsuka Fujio’s manga series, Osomatsu-kun (1962–1969). The anime features more adult-oriented humor compared to the original manga, as it follows the lives of the sextuplet Matsuno brothers, who have fully grown up into lazy NEETs. The anime series attracted young female audiences with its character designs and its comical but delicate portrait of the everyday relationships among the brothers. The purpose of this study is to examine and explain the queer elements apparent in this series, including its bromance and accompanying incestuous connotations, human/non-human romantic relationships, and polyamorist desire between the sextuplets and the heroine, Totoko. We can find similar elements in Akatsuka’s canon, which adopts a “nonsense gag manga” style marked by a fascination with the transgression of rules. However, it is clear these elements take on different meanings in Mr. Osomatsu, with its very satiric description of today’s neoliberal market society, which excludes the Matsuno brothers from any kind of stable social relationship except with their own family. We see these queer relationships are indeed forced options for them in place of a heteronormative romantic love out of the brothers’ reach, but at the same time they make us look at a certain strategy to challenge the neoliberal norm of masculinity, to be an economically independent man capable of living a heteronormative family life. In this regard, Akatsuka’s gag heritage almost merges with the act of queering, and allows us to look into the diversities and the difficulty of masculinity in today’s Japanese society.
著者
保坂 直紀
出版者
北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.3-16, 2009-09

A content analysis was made of newspaper articles in Japanese general newspapers and in English ones published in the US, on the same scientific research, to verify the difference between them. Three Japanese articles and three in the US were compared to show that Japanese articles are relatively short and are much the same in terms of the contents involved. Articles in the US, in contrast, do not resemble one another and elaborate on far more various stories such as the effort of the scientists involved and the history of the research field. Japanese newspapers have an inclination to focus on the minimum necessary information. These results suggest that, though Japanese newspapers have some advantages in their own ways, there should be some room for consideration to improve their quality to meet the demand of readers who are not necessarily satisfied with Japanese scientific articles as they are.
著者
湯川 進太郎 泊 真児
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.15-28, 1999 (Released:2018-09-07)
参考文献数
16
被引用文献数
2

本研究は,性犯罪を促進する要因として,そうした行為を合理化する誤った信念・態度(性犯罪神話)に注目し,性犯罪神話を形成する要因として,性的メディア(ポルノグラフィ)との接触,友人・先輩との性的な情報交換,パーソナリティなどが一体どのように結びついているのかを,一般の大学生を対象に検討した.その際,性犯罪神話が実際の性犯罪行為の可能性(許容性)へどのようにつながるのかについても併せて検討した.そこで本研究ではまず,因果モデルとして, 個人内要因(性経験・交際相手・一般的性欲・パーソナリティ),性的メディア接触,友人・先輩との性的情報交換,性犯罪神話,性犯罪行為可能性という因果の流れを想定した.そして,男子大学生165名を対象に質問紙調査によって上記の変数群を測定し,重回帰分析を用いたパス解析を行った.その結果,性経験があることや一般的性欲が高いことが性的メディア(ポルノグラフィ)との接触を促し,それが身近で類似した他者である友人・先輩との性的な情報交換を介して,性犯罪を合理化する誤った信念・態度である性犯罪神話(暴力的性の女性側の容認,女性の性的欲求に関する誤認)の形成へとつながり,その結果として女性に対する犯罪的な性暴力の可能性(許容性)へと結びつくことが示された.
著者
上野 裕介 江口 健斗
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2218, (Released:2023-04-30)
参考文献数
26

希少種のインターネット取引は、世界的に喫緊の課題となっている。希少種の中でも採集による地域個体群の消滅が強く懸念される分類群に、小型サンショウウオ類がある。日本には 2022 年 2 月現在で 45 種の小型サンショウウオ類が生息し、うち 42 種が環境省のレッドリスト 2020 に掲載されている。さらに近年も分類学的研究が続けられており、この 10 年間に各地の地域個体群が相次いで新種記載されている。また山中の小さな繁殖池に集まり、集団で産卵する種も多いため、成体や卵のう、幼生の大量採集が行われる危険がある。そこで本研究では、希少野生生物種の取引実態の一端を明らかにするために、個人間取引が盛んなインターネット・オークションに着目し、小型サンショウウオ類の取引状況を調べ、その課題を明らかにした。調査では、国内の各インターネットオークションサイトでの取引履歴(商品名、価格、落札日、商品画像や説明など)の情報を網羅的にアーカイブし、無償または有償で提供している企業の情報を用いて、2011 年 1 月から 2020 年 12 月までにオークションサイトの「ペット・生き物」カテゴリに出品、落札された小型サンショウウオ類(生体)を調べた。その結果、日本最大級のオークションサイトでは過去 10 年間で 28 種、計 4,105 件(落札総額 14,977,021 円)の取引が確認できた。種ごとの取引件数は、環境省のレッドリストで絶滅危惧 IB 類(EN)もしくは II 類(VU)に選定されているカスミサンショウウオ群が最も多く(962 件)、次いでクロサンショウウオ、ヒダサンショウウオ群、エゾサンショウウオの順に多かった。小型サンショウウオ類全体での年間の取引件数は、当初は年 200 件ほどで推移していたものの、近年、急激に増加し、2020 年は年 1,117 件(合計落札額 5,282,518 円)を超えていた。この急増は、出品回数の特に多い数人の個人によるものであった。また分類学的研究が進み、それまで隠ぺい種だった地域個体群が新種として記載された後には、それらの種の取引件数が 2 倍以上に増えることがわかった。それゆえ、希少種や地域個体群保全の観点から早急な対策が求められる。なお本調査手法は、他の動植物の取引実態調査にも容易に適用可能である。
著者
山口 真一
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.53-65, 2015

本稿では、近年多く発生している炎上の実態と、炎上に加担している人の属性について、実証分析によって以下6つの仮説検証を行う。①炎上件数は近年増加している。②企業に関連する炎上が多く発生している。③炎上加担者は少ない。④炎上加担者はインターネットヘビーユーザである。⑤炎上加担者は年収が少ない。⑥炎上加担者はインターネット上で非難しあって良いと考えている。<br>まず、記述統計量分析の結果、仮説①-③はいずれも支持された。つまり、近年多く炎上が発生しており、心理的・金銭的被害が出ているが、実際に炎上に加担している人は非常に少なく、具体的には約1.5%であった。また、2011年-2014年にかけての炎上件数は、いずれも年間200件程度であった。次に、計量経済学的分析の結果、炎上加担行動に対して、「男性」「年収」「子持ち」「インターネット上でいやな思いをしたことがある」「インターネット上では非難しあって良いと思う」等の変数が有意に正の影響を与えていた一方、「学歴」や「インターネット利用時間」等の変数は有意な影響を与えていなかった。このことから、仮説⑥は支持された一方で、④、⑤は棄却され、炎上加担者は社会的弱者、バカ等としている先行研究と実態が乖離していることが確認された。

184 0 0 0 OA 川柳語彙

著者
宮武外骨 著
出版者
半狂堂
巻号頁・発行日
1923
著者
鳥居 淳 石川 仁 木村 耕行 齊藤 元章
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J100-C, no.11, pp.537-544, 2017-11-01

ExaScaler社では,省電力スーパーコンピュータZettaScalerシリーズを開発,展開している.最初の世代であるZettaScaler-1.xでは,PEZY Computing社が開発したMIMDメニーコアプロセッサPEZY-SCを採用し,高密度実装を図ったBrickと呼ばれるサーバ集合体を,フッ化炭素系不活性液体をもちいて液浸冷却を行い,高性能,低消費電力,小型化を実現した.本論文では,このZettaScaler-1.xで開発した独自のハードウェア技術とプログラミングに関して解説する.また,現在構築中のZettaScaler-2.0について,磁界結合TCI (ThruChip Interface)によるDRAMとの3次元実装技術や,新たなBrick構造,冷却システムについて言及する.更に,エクサスケールコンピューティングに向けた今後の方向性について展望する.
著者
伊藤 大幸 浜田 恵 村山 恭朗 髙柳 伸哉 野村 和代 明翫 光宜 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.451-465, 2017 (Released:2018-02-21)
参考文献数
37
被引用文献数
5 9

クラスサイズ(学級の人数)が学業成績および情緒的・行動的問題に及ぼす影響について,要因の交絡とデータの階層性という2つの方法論的問題に対処した上で検証した。第1に,学年ごとの人数によってのみクラスサイズが決定されている学校を調査対象とする自然実験デザインにより,学校の裁量に起因する要因の交絡や逆方向の影響の発生を防いだ。第2に,マルチレベルモデルの一種である交差分類(cross-classified)モデルを用いて,データの特殊な階層性を適切にモデル化した。第3に,学校内中心化によって学校間変動を除外することで,クラスサイズの純粋な学校内効果を検証するとともに,学校規模との交絡を回避した。9回の縦断調査で得られた小学4年生から中学3年生のデータ(11,702名,のべ45,694名,1,308クラス)に基づく分析の結果,クラスサイズの拡大は,(a)学業成績を低下させること,(b)教師からのサポートを減少させること,(c)友人からのサポートや向社会的行動の減少をもたらすこと,(d)抑うつを高めることが示された。こうした影響の広さから,クラスサイズは学級運営上,重大な意味を持つ変数であることが示された。
著者
石川 寛子
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.200-208, 2000-12-31 (Released:2011-01-31)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1
著者
韓 東賢
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.109-129, 2015-05-29 (Released:2016-07-19)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

ヤング(Young 訳書,2007)は,欧米におけるポスト工業化社会への変化が,同化と結合を基調とする「包摂型社会」から分離と排除を基調とする「排除型社会」への移行でもあったと指摘する。一方,敗戦後,米軍の占領期を経て厳格なエスニック・ネイションとして再出発した日本では多文化主義的な社会統合政策が取られたことはなく,そのような意味での「包摂型社会」になったことはないと言えよう。にもかかわらず,日本でも1990年代から徐々に始まっていたヤングのいう意味での「排除型社会」化の進行は見られる。つまり,「包摂型社会」を中途半端にしか経由せず,そのためそこでの同化主義への処方箋である多文化主義も経由せずに,にもかかわらず「バックラッシュ」が来ている,というかたちで,だ。 本稿ではこうした流れを,朝鮮学校の制度的位置づけ,処遇問題からあとづけていく。そこから見えてきたものは次の3 点であると言える。①仮に戦後の日本がヤングのいう意味での包摂型社会だったとしても,その基調は同化と結合ではなく,「排除/同化」――排除と同化の二者択一を迫るもの――であった。②2000年代には,このような「排除/同化」の基調を引き継ぎながら,にもかかわらず,「多文化主義へのバックラッシュ」としての排除を露骨化,先鋭化させた排除型社会になった。③そのような「排除/同化」,また2000年代以降の排除の露骨化,先鋭化において,朝鮮学校の処遇はつねにその先鞭,象徴だった。