著者
本岡 拓哉
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.25-48, 2015-01-01 (Released:2019-10-05)
参考文献数
41
被引用文献数
1 1

第二次世界大戦後,日本の都市には住宅難によって公有地を「不法占拠」した居住地区が数多く存在した.本稿の目的は1950年代後半の東京における「不法占拠」地区の社会・空間的特性とその後の変容過程を明らかにすることである.前者については,都市の不便な場所にあること,居住環境が劣悪であること,貧困層や社会的に排除された社会集団が暮らしていたことの三点に集約でき,当時の不良環境地区の中でもその特徴は際立っていた.また,「不法占拠」地区の住宅や居住者は住宅市場や労働市場に組み込まれており,都市において孤立しておらず,周囲の地域と関係を有していたことも考えられる.後者の変容過程については,1960年以降,多くの「不法占拠」地区が住宅地ではない土地利用に変化し,消滅する一方で,残存する場合もあった.また,地区の変容の時期や過程は一様ではなく,それぞれの地区の実態や都市における位置づけによって規定されていた.
著者
高橋 規郎 大石 和佳 丹羽 保晴 並河 徹 稲葉 俊哉
出版者
公益財団法人放射線影響研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

原爆被爆者等を対象とした疫学調査は循環器系疾患のリスクが放射線被曝線量に相関して上昇することを示している。本計画では、この事象を動物実験で検証し、循環器疾患リスクがどのようにして生じるかの作用機序を明らかにすることを目的とした。放射線を照射した脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP)を用いた実験では、寿命の有意な短縮、および、脳出血等の重篤度に顕著なる亢進が認められた。一方、高血圧自然発症ラット(SHR)では、収縮期血圧値は線量に比例して高値を示した。また、種々の血液マーカーにも線量に比例した増減が観察された。我々の実験が作用機序の解明に重要な役割を果たすことが示された。
著者
小田 雅子 古戸 友里恵 市村 祐一 森 亨 高橋 満里 齊藤 浩司
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.606-612, 2020-10-10 (Released:2021-10-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1

One-dose packaging improves the convenience of patients in drug therapy and is useful for securing medication adherence. As psychiatric patients take plural, sometimes many, drugs before bedtime, there are increasing demands for utilizing one-dose packaging in dispensing drugs for these patients. Suvorexant is a potent and selective antagonist against orexin 1 and 2 receptors and its use as an insomnia remedy is rising rapidly. On the package insert of suvorexant (Belsomra®) tablets, there is a description "Store in the press through package (PTP) until use to protect from light and moisture". So far, however, little information has been available about the correct storage conditions regarding the one-dose packaging of Belsomra® tablets. In this study, we investigated the stability of one-dose packaged Belsomra® tablets, which were preserved for 30 days at room temperature or at room temperature under 85% relative high humidity (high humidity), with a focus on the changes in appearance, hardness, mass, disintegration, content, and dissolution. Suvorexant content and the appearance of one-dose packaged Belsomra® tablets did not change even after 30 days. However, the tablets greatly lost hardness and showed an increase in mass, possibly due to the hygroscopicity of this formulation. These changes resulted in the prolonged disintegration time of one-dose packaged Belsomra® tablets and in the retarded dissolution of suvorexant from the tablets. These results suggest that Belsomra® tablets are hygroscopic and less stable. It is, therefore, desirable to avoid long-term, one-dose packaging of this formulation.
著者
功刀 浩 古賀 賀恵 小川 眞太郎
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.54-58, 2015 (Released:2017-02-16)
参考文献数
12
被引用文献数
1

海外では,うつ病患者において肥満,脂質異常,n-3 系多価不飽和脂肪酸,ビタミン B12 や葉酸,鉄,亜鉛などにおける栄養学的異常が発症や再発のリスクと関連するという報告が増えている。しかし,わが国におけるエビデンスは今のところ乏しい。特に精神科受診患者を対象とした研究はほとんどない。そこでわれわれは,うつ病患者と健常者における栄養素・食生活について調査し,予備的結果を得た。末梢血を採取し,アミノ酸・脂肪酸・ビタミン濃度等について詳細に測定した。食生活調査は食事歴法質問紙を使用した。うつ病群は健常者群と比較して肥満,脂質異常が多かった。脂肪酸では,エイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸濃度について両群間で有意差は見られなかった。ビタミンでは葉酸が低値を示す者がうつ病群に有意に多かった。アミノ酸では,うつ病群で血漿トリプトファン値が有意に低下していた。鉄や亜鉛などのミネラルの血清中濃度に関しては,欠乏を示す者は患者と健常者の両群に高頻度でみられたが,両群の間で有意差は見られなかった。嗜好品では,うつ病患者は緑茶を飲む頻度が低い傾向がみられた。以上から,海外での先行研究と必ずしも一致しないものの,日本のうつ病患者においても栄養学的問題が多数みられることが明らかになり,うつ病患者に対する栄養学的アプローチの重要性が明らかになった。
著者
宇野 彰
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.170-176, 2016-06-30 (Released:2017-07-03)
参考文献数
30
被引用文献数
2 1

発達性読み書き障害 (Developmental Dyslexia: DD) は, 直訳すると発達性読み障害だが後天性のdyslexia とは異なり, 読めなければ書けないので, 発達性読み書き障害と翻訳されることが多い。DD は, (知能や) 年齢から推定される読み書きの習得度と乖離がある低さが認められ, 環境要因では説明ができない障害である。すなわち, 診断評価としては, 知能検査, 読み書きの学習到達度, および文字習得にかかわる認知能力の3 種類が必要となる。出現頻度は言語の種類によって影響され, 「読み」に関しては文字列から音韻列への変換の規則性が不規則な英語では出現頻度が高いと考えられる。すなわち, 同じ能力であってもどの言語を用いるかによって, 読み書きに関する習得度が変化することになる。DD の生物学的な原因としては, 異所性灰白質や小脳回などが観察されていることから, 細胞遊走の異常が仮説としては有力である。これら生物学的原因によって, 音韻, 視覚認知, 自動化, などの認知障害が生じ文字習得に困難さを生じると考えられる。訓練法については, 日本語では症例シリーズ研究法により科学的根拠にもとづいた効果のある方法が2 種報告されている。
著者
鳥海 不二夫
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.19-32, 2021-03-31 (Released:2021-03-31)
参考文献数
17

ネット上で大きな話題が生じた場合,現実社会にも影響を与えることも多い。例えば正の側面として「バズり」があり,負の側面として「炎上」がある。現代社会においては,マーケティングを考える上でネット上の社会現象を無視することはできない。一方で,ネット上での大規模な拡散事象が実社会の現象を反映していないこともある。すなわち,ネット世論と実際の世論との間に隔離が存在していることがある。そのためネット上で生じた現象を正しく理解するために,データから全体像を把握し,ネット上の現象が何なのかを正確に把握することが望まれる。本論文では検察庁法改正案を巡るツイッターデモを対象として,データを用いたバースト現象の詳細分析を行った。その結果,2%のアカウントが50%の投稿を行っていたことが分かり,一部のユーザによって拡散が水増しされた事実はあるものの,多様な人々によって支持されており,単なるノイジーマイノリティ現象でもなかったことが明らかとなった。本論文で紹介した分析は,炎上やバズりといったバースト現象においても応用可能であり,マーケティング分野における口コミの効果を分析する上で有用であると考えられる。
著者
増井 啓太 田村 紋女 マーチ エヴィータ
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.89.17229, (Released:2018-11-15)
参考文献数
35
被引用文献数
2 2

The Global Assessment of Internet Trolling- Revised (GAIT-R) has been developed to assess internet trolling. We developed the Japanese version of GAIT-R (J-GAIT-R). First, the eight items of GAIT-R were translated into Japanese. Then, we conducted an online survey of Japanese people (N = 535). In Study 1, exploratory and confirmatory factor analyses indicated that J-GAIT-R had a unidimensional structure. The internal consistency of J-GAIT-R was adequate. Moreover, partial correlation coefficients indicated adequate concurrent validity of the scale. In Study 2, we confirmed a good test-retest reliability for J-GAIT-R. It was concluded that J-GAIT-R was suitable for assessing internet trolling in Japan.
著者
南 学
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.4, pp.718-724, 2017-04-10 (Released:2018-04-10)
参考文献数
10

冠動脈疾患など心血管病の予防にスタチンを中心とした脂質低下療法が重要であることはいうまでもない.積極的脂質低下療法による,より大きなイベント抑制効果やプラーク退縮効果が報告され,特に高リスク群でベネフィットが大きいと考えられる.スタチン治療後の残存リスクやスタチン不耐性の高リスク症例は,既存治療におけるアンメット・メディカル・ニーズであり,PCSK9(proprotein convertase subtilisin/kexin type 9)阻害薬などによる今後のエビデンスが期待される.
著者
藤本 眞一 加藤 巳佐子 石川 貴美子 原岡 智子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.544-556, 2012 (Released:2014-04-24)
参考文献数
12

目的 保健所は,公衆衛生活動の中心的機関として地域住民の生活と健康に極めて重要な役割をもっている。平成 5(1993)年度に広島県において,全国で初めて保健所と福祉事務所が統合され「総合福祉保健センター」が設置されて以降,「平成の大合併」などにより都道府県立統合組織が構築されてきた。そこで,その組織と権限の実態を明らかにした上で,今後のあり方を考察することを目的とした。方法 インターネットにより都道府県ポータル•サイト等から平成23(2011)年度当初の保健所や福祉事務所の組織実態を都道府県保健所単位で抽出•分類し主な保健•衛生に関する権限について調査した。さらに町村部において,保健所と福祉事務所から提供されるサービスが,いずれの機関から提供されているかを調査した。結果 全国373都道府県立保健所が存在し,単独組織はその僅か 1/4 であった。統合形態としては,福祉事務所と保健所が一旦結び付いた上で総合事務所に統合される形態が約 4 割を占め,中には 3 つの保健所がひとつの総合事務所に統合されている例もあった。統合組織を構築しても,権限をその長に委任し直したところは約 1/4 であった。法令上福祉事務所ではないのに「保健福祉事務所」等の名称である統合組織は,保健所の統合組織の 1/3 を占めていた。福祉事務所に関しては中国地方を中心に町村自らの設置が進んでおり,道府県において福祉事務所と統合する理由がなくなってきている。また福祉事務所の社会福祉法上•名目上の位置付けと,実質上の福祉事務部門との位置付けの差異が目だった。結論 保健所を含めた組織統合理由は行政改革として組織数を減少させるためと推測された。道府県が,福祉事務所ではないのに,福祉事務所を想像させる紛らわしい名称の統合組織を作ったり,本来の福祉事務所でない場所にある統合組織そのものを法令上,福祉事務所と位置付けることは,住民に無用の混乱を生じさせる恐れのある対応であると考えられた。組織統合しても権限が保健所長に放置されたままであることは,保健•福祉サービスの一体的提供を理念としていない証拠であり,権限委任の見直しができないような統合組織の構築は無意味である。今後は,健康危機に関係する生活衛生関係業務などにも着目して統合を実施すべきである。
著者
松本 良 青山 千春
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.129, no.1, pp.141-146, 2020-02-25 (Released:2020-03-17)
参考文献数
5
被引用文献数
3 5

An initial estimate of the amount of methane carried by a single methane plume was calculated to be 4 × 109 g (4,000 ton CH4) to 2 × 109 g (2,000 ton CH4) per year (Aoyama and Matsumoto, 2009), based on quantitative echo sounder measurements of the methane plume and bubble capture and release experiments. The estimate generated considerable interest because it suggested the potential importance of plumes as natural gas resources. However, a critical mistake in the calculations was found in converting mole amounts to weight of methane. Revised and corrected estimates of annual methane transported by a single plume are between 2.63 × 106 g (2.63 ton CH4) to 1.60 × 106 g (1.60 ton CH4), which are only 0.07% to 0.08% of the original estimates. For comparison, the revised amount of methane discharged from an individual methane seep is estimated based on direct measurements of gas bubbles from seep sites at Joetsu Knoll and Umitaka Spur, Joetsu basin. A total of 200 ml to 1,150 ml of bubbles were captured within 642 to 481 seconds. Total gas flux depends on the composition of the bubbles. Assuming pure gas, the annual discharge is estimated to be 0.71 ton to 4.84 ton CH4. If the bubbles consist of pure hydrate, the seepage is slightly higher at 1.15 ton to 8.83 ton CH4 per year.

26 0 0 0 米国の警察

著者
上野治男著
出版者
良書普及会
巻号頁・発行日
1981