著者
青木 久美子 ブレイ エリック キムラ バート リム ロン ユー キムラ メアリ 石橋 嘉一 宮添 輝美 モルナー パル
出版者
独立行政法人メディア教育開発センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

この研究においては、最近インターネット上で無料で使用可能となっている様々なコミュニケーションツールを用いて、国境を隔てて繋ぐクラスベースの遠隔教育に焦点をおいて、実際にそういったツールを活用して実験授業を行うことにより、課題等の認識、及び、解決策を見出すといったアクションリサーチ研究方法により、その可能性を追求した。また、授業方式として、従来の講義中心の授業ではなく、学生に主体性を持たせるプロジェクト型授業による遠隔教育の学習デザインを探求した。
著者
KUONG TEILEE
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

「カンボジア王国における21世紀の財産権概念の変化とその展開」という文脈で2001年土地法と2007年民法典との関係を検討し、分譲マンションの建設や外国国籍を持つ住民の住宅購入を規制する新しい法制度の設立に関する調査を行った。従って、近年カンボジア国内で進行している立法整備に基づき、とりわけ不動産に対する所有権概念の展開とその新しい動向が理解することができ、今後の研究課題も一層に明らかにすることができた。1993年以降の憲法規定によって土地に対する私的所有権はカンボジア国籍を持つものに限られるため、外国国籍を持つ長期居住者は住宅の購入ができなかった。それは、不動産売買業界や金融機関及び外資企業を含める分譲マンションを建設している企業の事業展開に不利を与えると同時に長期滞在の外国人にとっても多少生活上の支障に導くことになった。この状況を改善するために、2007年民法典に規定する「土地の構成部分」に対する例外条項(123条)及び「共有」(202条)という規定を利用し、国会は2010年に「外国人が共有する建設物の私的部分に対する所有権法」(以下「共有建設物法」)を採択した。従って、外国国籍を持つものに不動産の所持・売買と処分に関する権利を部分的に認める方向になっている。この配慮は、憲法の国益重視原則と市場経済のグローバル化の現実との関係を見直すようにも理解することができる。しかし、2001年の土地法と2007年民法典との関係については曖昧な論点を残したまま2010年の「共有建設物法」が採択されたことに法的な問題があると言わざるをいない。例えば、土地の構成部分の例外として認められる住宅を外国人が購入する場合、その付着する土地にまで外国人の共有を認める形で土地所有権を与える傾向についてはどのように理解すべきかなど、引き続き検討する必要がある課題が若干残っている。
著者
安藤 馨
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

規範的排除的法実証主義と記述的源泉準拠的包含的法実証主義を法体系の命令説モデルに基づき擁護し、更に権利概念のホーフェルド分析と法命令説を結合することによって、ある法的権利(すなわちそれらに相関的な法的責務)を定める法規範の帰結主義的道徳的正当化の条件を、法規範がそれらの名宛人に対して有する行為指導性の様態に応じて分類・同定した。
著者
有光 秀行
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

フェリックス・リーバアマンの旧蔵書で、東京大学図書館のオンラインカタログ上で「リーバアマン文庫」としては未登録の文献100点あまりを発見した。それらとあわせ、上記オンラインカタログで登録済みの文献すべてについて、献辞の有無や、書き込みの状況を調査した。ハインリッヒ・ブルンナーやヒューバート・ホールといった著名な学者たちとの知的交流や、中世史研究のみならず、第一次世界大戦など同時代の世界情勢に寄せる深い関心が明らかになった。
著者
若林 緑 MCKENZIE COLIN ROSS 菅 万理 坂田 圭 玉田 桂子 吉田 恵子 梶谷 真也 暮石 渉 関田 静香
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、われわれは家計行動や家計の労働供給行動に関して家計全体ではなく家計のそれぞれの行動を考慮に入れて分析を行った(たとえば親子同居や家族の金銭的、被金銭的援助について分析を行った。われわれは理論モデルを構築しそれに関して日本のマイクロデータを用いて議論した。われわれは家計のメンバーそれぞれの行動について分析することがunitary modelよりも重要であることを発見した。
著者
早川 誠
出版者
立正大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

討議民主主義の実践の度合いを見るため、品川区議会の議事録を材料に、発言の内容の検討・評価を行った。基準としては、海外の研究者によって提唱されている「討議の質指標」(DQI:Discourse Quality Index)を用い、発言内容を主観的に評価するのではなく、客観的に評価することにつとめた。その過程で、本会議と委員会での討議の質が異なることが判明し、広範な政策分野に関連する予算委員会審議での指標の検討が有意義であるとの結論が得られた。
著者
日置 弘一郎 波積 真理 大木 裕子 王 英燕 関 千里
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

景徳鎮の現況は活性化しているものの、クラスターとしての機能は低いことが確認された。現在の活況は文革期に多くの磁器製品が壊され、それを再度求めることによって引き起こされたもので、製品としては古典的な作品の写しが大半である。つまり、クラスター内で製品を作る技能や起業への志向は強いものの、どのような製品を作るべきかを指示するプロデューサーが不在である。現在の状態で需要が飽和すると、作るべき製品についての方向を示すことができなくなる。現在、技能と人件費の安さで海外ブランドのOEMを行うというオファーが多く寄せられ、その意味では中国の他産業と同様の道を歩むものと思われる。
著者
長崎 励朗
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

日本学術振興会特別研究員(DC1)として最後の年度となった本年は、これまでに調査を重ねてきた大阪労音に関する研究をまとまった形の論文に仕上げる作業に集中することとなった。その過程で、理論装置として機能させるべく考察を重ねていた「キッチュ」というテーマについて、国際学会AMIC(Asian Media Information and Commumcation Centre)で発表したことで、国際的に通用する研究へと育てるためのヒントを得られたことも大きい。元来、ドイツ語であった「キッチュ」が英語圏の人間にとってどのような意味を持つのか、という点は今後の課題ともなった。調査の進展としては、二点が挙げられる。まず第一点として、大阪労音の前史としての宝塚についてより詳細に分析したことを挙げておきたい。大阪労音の初代会長であった須藤五郎という人物は元・宝塚の指揮者であり、実際に数えてみたところ、戦前・戦後を通じてちょうど100の公演に関与していることがわかった。さらに、宝塚に関する先行研究を調べる中で、宝塚が人々の西洋イメージを反映した「イメージの西洋」によって大衆性と教育性を両立していたという事実も明らかになった。このことは「イメージの教養」たるジャズ・ミュージックによって会員層を拡大した労音の手法と相似的である。このメカニズムこそ、「イメージの〇〇」という形で人々の共同主観に訴えかける「キッチュ」のそれであった。本研究で追求してきた文化的共通基盤のよりどころとは、動員力と教育力を兼ね備えたこの「キッチュ」であったと結論づけられよう。調査の進展における二点目は朝日会館に関するものである。朝日会館には大阪労音設立における影の立役者として以前から注目していたが、朝日会館のオーナーである朝日新聞社に足を運び、実際にその通史や機関誌を閲覧することで、大阪労音との協力関係の実態を知ることができた。意外なことに、朝日会館の公式記録を見る限り、少なくとも1950年代前半において大阪労音の公演は一度としておこなわれていない。これは、大阪労音の公演に際しての賃館が、十河巌という当時の会館長の権限によって私的なものとして行われていたためである。『大阪労音十年史』に記されていた「好意的賃館」の意味がここで明らかになった。すなわち、初期における大阪労音は会員集めを含め、すべてが個人的つながり(あるいは社会関係資本といっても良い)によって運営されていたことが明らかになった。以上のような新たな研究成果を盛り込みつつ完成した集大成としての論文は、京都大学教育学研究科において審査され、結果として博士論文として認定された。また、この成果を著書として出版するため、某出版社とも企画の段階に入っている。その意味で本年は日本学術振興会特別研究員としての研究を締めくくる集大成となった年度であったといえる。
著者
坂田 清美 吉村 典子 森岡 聖次
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

近年わが国における児童の肥満傾向の者や高脂血症が増加を続けているため、児童を対象とした高脂血症、肥満予防を主な目的とした教材を開発した。教材の開発にあたっては単に知識を与えるだけでなく、自ら考え判断できるスキルを身に付けるよう工夫した。教師の使いやすさや、保護者に対しても教育効果が上がるように配慮した。和歌山県中部の一地域において、小学4年生を対象に教材を用いて教育を実施した結果、「コレステロール」の言葉の認知度は、1年間で61%から79%まで上昇した。「食物繊維」という言葉の認知度は59%から78%まで上昇した。油、塩、砂糖に関する正解率では、15問中13問以上正解した者の割合は、38%から49%まで上昇した。お菓子の材料が記載されていることを知っている者は73%から85%まで上昇した。肉・魚を同じくらい食べると答えた者は51%から54%まで上昇した。野菜を毎日食べる者は、37%から42%と増加した。朝ご飯を毎日食べる者は、78%から81%と増加した。運動をほとんど毎日する者は、41%から43%へと微増した。健康教育教材を使用することにより、健康に関する知識の向上がもたらされた。運動については、今後さらにプログラムを充実させる必要がある。今後は、血清脂質等に与える影響を評価し、さらに健康教育プログラムを他の学年にも実施し、こころと体、健康と病気についての段階的で、包括的な学習プログラムへ発展させる予定である。
著者
花崎 憲子
出版者
武庫川女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

パラチノースは非う蝕性で、甘さ控えめの機能性糖質甘味料である。パラチノースと砂糖の配合比を代えて焼菓子を調製し、品質と嗜好性を検討した。パラチノースクッキーの形状は横広がりがなく、大きく膨張した。パラチノースクッキーは破断試験や官能評価でかたいと評価された。パラチノースクッキーは咀嚼時間、咀嚼回数、筋活動量が他に比べて有意に大きく、歯がため菓子として利用できると考えられる。
著者
松村 良之
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

北海道大学教育学部附属乳幼児臨床発達センターの5、6歳児5名を対象にインタービューを行い、子供の所有権の概念の獲得について、以下のような知見を得た。(1)5、6歳の幼児といえども、所有権の概念(,..は誰のもの)が存在する。(ii)客体の支配可能性が所有の条件であることは被験者すべての発言が一致している。(iii)家のものと自分のものとの区別ははっきりとは存在していないように思われる。(iv)子供の理解では、所有権の始期あるいは発生原因の重要なものとして、売買があるように思われる。(v)売買の理解が所有権の概念の獲得に結びつくと仮定した場合、その理由は現実の所持の移転ではなく、売買の対価性にあるように思われる。そして、対価性に所有権の獲得の根拠があるとするならば、この問題はアダムスらに始まる分配の公正の心理学と結びつくであろう。実際、被験者の幼児は公正ではない分配を受けると(例えば友達はお菓子1つで自分は2つ先生から分配を受ける)、所有についてとまどいを感じているのである。(vi)売買に加えて、贈与という概念も理解されていて、それも所有権の根拠になっている。ただし、それは家族間など特定の人間関係に限られているように思われる。(vii)所有権の消滅については子供がどのように考えているかはよくわからない。ただし、占有(現実の所持)を失っているだけでは所有権は消滅しないと考えているらしい。(viii)貸す、借りるという概念も子供に理解されている。長く貸したり、借りたりしていることにより、所有権が消滅したり、移転することはないということは理解されている。
著者
栗原 堅三 庄司 隆行 柏柳 誠 松岡 一郎 桂木 能久
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

大豆由来のホスファチジン酸と牛乳由来のβラクトグロブリンからなるリポ蛋白質は、味細胞の微絨毛膜に結合し、苦味物質が受容サイトに結合することを妨害することにより、苦味を選択的に抑制することがわっかた。この苦味抑制剤を実用化するためには、安定性やコストの面で、蛋白質を使うことに問題があった。そこで、蛋白質を含まない苦味抑制剤の開発を試みた。ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホファチジルイノシトールなどに苦味抑制作用があったが、ホセファチジン酸の作用は、他のリン脂質よりはるかに強力であった。ホォスファチジン酸を苦味抑制剤として使用する場合、これを純品にする必要があるかどうかを検討した。ホスファチジン酸に他のリン脂質が共存した場合でも、その苦味抑制作用は妨害を受けなっかた。そこで、大豆レスチンから、ホスファチジン酸を高含量含む分画を作成し、苦味抑制効果を調べた。この結果、このレシチン分画は、各種の物質の苦味を十分抑制することがわかった。このレシチン分画を各種の薬物と混合し、苦味抑制効果を調べたところ、苦味を十分抑制することがわかった。また、このレシチン分画で、錠剤や顆粒剤をコートすると、苦味が効率的に抑制された。また、食品の苦味成分に対する苦味抑制効果を調べた。蛋白質加水分解物のあるものは、機能性食品として注目されているが、一般に強い苦味がある。レスチン分画は、蛋白質加水分解物の苦味を抑制した。ポリフェノールは、活性酸素の作用を抑制する物質として注目を集めているが、非常に強い渋味と苦味を有する。レシチン分画は、ポリフェノールの渋味と苦味を抑制することがわかった。チョコレートには、ポリフェノールが多量に含まれているが、その渋味と苦味のため、従来はこの含量を減少させていた。レシチン分画をチョコレートに入れると、ポリフェノールを高含量含んでいても、良好な味になる。
著者
月田 承一郎 月田 早智子
出版者
岡崎国立共同研究機構
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

初年度においてケ-ジド化合物を用いた凍結システムが完成したので、2年度は、このシステムの評価も兼ねて、2種類の実験を行った。第一の実験は、ATP非存在下でアクチンフィラメントにフルデコレ-ションしたミオシンサブフラグメント1(S1)がATP濃度の急激な上昇に伴い、どのようにしてアクチンフィラメントから離れていくかを追跡しようというものである。ケ-ジドATP存在下でS1のアクチンフィラメントへの結合様式があまり変わらないのを確認したのち、このようなサンプルに光を照射し、その後の変化をディ-プエッチングレプリカ像のコマ取り写真として解析した。その結果、S1が光照射後15ミリ秒あたりからアクチンフィラメントから離脱しはじめ、その結合様式を大きく変えていく様子を初めて捉えることに成功した。得られた像が持つ意味を正確に理解するためには、まだ、多くの実験を進めなくてはならないと思われるが、少なくともこの実験によって、我々の開発したシステムにより、滑り運動系における蛋白質相互作用をきわめて高時間分解能の電子顕微鏡像として追跡できるという確信が得られた。第二の実験は、無負荷の状態で最高速度で収縮している瞬間の単離筋原線維を急速凍結し、そのクロスブリッジの様子を観察しようとするものである。この収縮は極めて短時間で終わってしまうため、ケ-ジド化合物のシステムを用いる必要がある。現在、光照射後最大収縮速度で短縮中の筋原線維の急速凍結に成功し、そのディ-プエッチングレプリカ像を得つつある。このような方法により得られる像が筋収縮の分子機構を考えるうえで重要な情報を与えてくれるものと期持出来る。以上、我々が開発したケ-ジド化合物を利用した急速凍結システムは、ほぼ完成しており、このシステムがきわめて強力な研究手段となりうることが証明された。
著者
山岸 敬和
出版者
南山大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、アメリカ合衆国の医療保険が1950年代から1960年代にかけて医療保険分野で、どのように政治的ダイナミズムが変化し、1960年代にメディケア(高齢者向け公的保険)とメディケイド(貧困層向け公的保険)が成立したのかを明らかにすることである。より具体的には、退役軍人向けの医療プログラムと、福祉政策の発展がどのように利益集団政治を変容させていったのかに焦点を当てる。平成20年度は国内外で主に資料の収集を行った。特にワシントンDCでの資料調査では退役軍人団体であるAmerican Legionに関する古い資料を入手することができた。本研究の最終年度に当たる平成21年度は主に前年度に収集した資料を使いながら論文執筆を行い三本の論文を執筆した。
著者
澤田 紘次
出版者
八戸工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

本研究は、結露に関するアンケート調査、結露被害の実地調査、室内の温湿度の測定調査からなっている。第1章では、アンケート調査結果について報告した。公営集合住宅約1000戸を対象とし、回収率は61%である。調査した住棟は建設年次により、平面タイプ、断熱仕様が異なり、6種類に分類される。アンケート調査結果によると、押入に被害の多い平面タイプと壁に被害の多い断熱仕様の住棟があった。アンケート項目で、結露に関係が深いのは、建物の種別、住戸位置、家族数などである。使用暖房器具と結露との関係は明確ではなかった。結露で困っていることの内容の記述では、73%もの住戸が切々と訴えている。窓が凍って開かない、窓からの流下水で畳が濡れる(33%)、押入の湿気・カビ(15%)、壁のカビ(17%)などが多い。第2章では結露被害の実地調査結果について撮影した写真を中心にして報告した。被害を訴えている住戸では、いずれも黒いカビが発生しており、生活に支障をきたすものであった。調査した住戸に共通していることは、換気に対する意識の低さである。第3章では、室内の温湿度の測定結果について報告した。昭和63年1月から2月にかけて、6戸について各一週間測定した。6戸を通じて、室内が常識を越えた高湿度になっている例は無かった。窓上の壁・梁型部分が断熱されていないタイプの住戸の中で、結露・カビが発生している住戸と発生していない住戸があった。前者は、開放型ストーブを使っていた。室内の露点温度は他の住戸に比較して高くないが、室温が居間でも7〜15℃と低く、このことが結露の要因である。後者では、北和室の窓前にFF式ストーブを置き、襖・扉を全て開放して、北側の室温度を高く保ち、非暖房室となる場所を無くしていた。全体の調査を通じて、同種の住棟でも、住まい方により結露発生に差があることが分った。住まい方と結露との関係について分析を続けたい。
著者
竹内 康 久保 和幸 西澤 辰男 姫野 賢治 松井 邦人 丸山 暉彦 前川 亮太 神谷 恵三
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

高速で移動しながら連続的にたわみを計測する試験機は, 各国で開発が進められており,それを用いて舗装の支持性能を評価した結果は,舗装の維持管理に活用されつつある。 このような試験機の開発にあたり, 高速で移動する車両により計測されるたわみの特性を把握することを目的として,既存の車両に変位計を取り付け,いくつかの試験路において連続たわみの測定を行った。また,収集したデータを用いて舗装の健全性を評価する方法について検討を行った. 本研究では, 載荷位置直下のたわみと載荷位置から 45cm 離れた位置のたわみの差を用いて,舗装表面付近の健全性を評価する方法を提案し,比較的たわみの大きい健全な舗装に対して FWD 試験で得られるたわみと相関の高い結果が得られることを確認した。
著者
山田 悟郎
出版者
北海道開拓記念館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

14世紀から18世紀の、23個所の集落跡から検出された作物種子、17個所の畠跡、6遺跡から出土した鉄製農具の検討から、次のことが明らかになった。(1)14世紀から18世紀初頭の遺跡から鋤・鍬といった鉄製農具が出土しており、アイヌ民族は18世紀初頭まで鉄製農具を使用した広幅の畝からなる畠を造成していた。(2)該当期の畠跡は、アイヌ民族によったことが明らかな土地の傾斜に関係なく各方向に畝を造り、同じ台地上で場所を変えながら小規模な畠を継続していたものと、東北地方のアラキ型焼畑との関係を示す、傾斜地に火入れを行い傾斜に沿って縦畝を造成したものや、溝だけの畠を造った二つのグループに区分でき、後者はアイヌ民族によったものではなく、東北地方北部から渡道もしくは季節的に渡道した和人によったものと考えられる。(3)炭化種子が出土した大部分の遺跡からヒエとアワを主とした14種類の作物種子が出土しており、特にヒエが多く出土し、アイヌ民族の伝承にもあるようにヒエとアワが重要な作物であったことが判明した。(4)擦文文化期にはアワとキビが主要作物であったが、14世紀以降主要作物からキビが脱落して、ヒエとアワが主要作物となるが、その背景には気候の悪化があったものと考えられる。(5)18世紀末には川原端で、農具を使用せず木の股や刀子で土を耕して畠を造った姿が描かれているが、その要因として「シャクシャインの戦い」以後の松前藩によった刀狩り、鉄の供給制限、鉄製品の粗製化と、交易形態が「場所請負制度」に変わり、アイヌ民族の労働力の収奪が行われた結果と考えられる。
著者
米田 文孝 中谷 伸生 長谷 洋一 木庭 元晴 原田 正俊
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

従来, インド国内の石窟寺院の造営時期は前期石窟と後期石窟とに明確に区分され, その間に造営中断期を設定して論説されてきました。しかし, 本研究で造営中断期に塔院(礼拝堂)と僧院を同一窟内に造営する事例を確認し, 5世紀以降の後期石窟で主流となる先駆的形態の出現確認と, その結果として造営中断期の設定自体の再検討という, 重要な成果を獲得しました。あわせて, 看過されていた中小石窟の現状報告が保存・修復の必要性を提起し, 保存修復や復元事業の契機になることも期待できます。
著者
奥谷 昌之 村上 健司
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

近年、製膜技術は様々な方式が開発・実用化されているが、その多くは高温加熱や真空を要する。最近は低融点材料基板上への製膜の需要が多く、本研究グループでは沿面放電技術に着目した。沿面放電は誘電体バリア放電に分類され、常温・大気圧下で高エネルギープラズマが平面上に発生することが特徴である。本研究では、この技術を酸化亜鉛の製膜へ応用するとともに、ダイレクトパターニングへの利用を試みた。
著者
小川 侃
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

今年度においては,前年度の成果を踏まえて,さらに諸科学のなかで機能している構造や機能の概念を探究した。1)諸科学に分化している構造理論を全体として可能にしている構造概念がどのような哲学的・存在論的意味をもつかを検討した。とくに構造主義的な方向の今世紀最大の言語学者,ロマン・ヤコブソンや,構造人類学者レヴィ・ストロースなどの言語学・民族学の領域での構造概念を取り上げ,さらにル-マンなどの新しい構造論的社会科学理論のうちの構造概念を批判的に洗いなおし,存在論的に構築しなおすことを試みた。とりわけ記号や構造の概念のもつ存在論的な基本的な意味を吟味した。これは,アリストテレス的な「質量と形式からの構成」という存在の見方が構造理論のなかでどこまで維持されえ,また解体されるべきかという問いにかかわったのである。2)次いで,構造の存在論にかかわる本研究は,さらに,政治体制一般についての研究に具体化の道を見出し,その手始めとして幕末における「後期水戸学」の大義名分論が構造論的な思想に近いことを発見した。3)最後に,初年度および2年度の研究の成果にもとづいて,構造論的存在論としての現象学の体系化を企てている。さしあたり部分と全体や,接近と遠隔,対峙性と背馳性などの構造論的な諸概念をそれらを可能にする「基底づけ」の概念とともに再構成している。