著者
志村 仁 片野 良平 関口 梨果 南山 治美
出版者
群馬県畜産試験場
雑誌
群馬県畜産試験場研究報告 (ISSN:13409514)
巻号頁・発行日
no.19, pp.40-44, 2012-12

非接触で、体表温度を測定することができるサーモグラフィを用い、豚における発情期および分娩期予測への利用を検討した。実験期間は2011年5月から12月の任意な97日間とした。測定対象として繁殖雌豚純粋種15頭および交雑種2頭を用い、一頭ごとに全身を観察した後、交巣周囲、陰門周囲、側腹周囲、乳房周囲、乳頭、き甲周囲および耳根周囲の特定部位の体表温度を測定した。その結果、発情期への温度変化は大きくなかったが、外陰部の温度が発情に向け1.6℃上昇した。また、発情期への温度変化は次の4型に分類された。I型:各部位の温度が上昇した発情、II型:発情期前に各部位の温度が上昇した発情、III型:陰部のみ温度が上昇した発情、IV型:変化が見られない、または不明な発情であった。全発情25例中の各型の割合は、I型:13例(52%)、II型:3例(12%)、III型:4例(16%)およびIV型5例(20%)と、発情予測が可能な温度上昇がI型・II型・III型の80%で認められた。分娩前後の体温変化では、分娩前9日頃から乳房・乳頭の温度が上昇する傾向が見られ、陰部では、分娩6日前から陰門周囲に収束した低温境域が見られる個体が見られた。
著者
鈴木 正男 鎮西 清高
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.8, pp.173-182, 1973-03-31

黒曜石は,ガラス質であるから,フィッション・トラック法による年代測定の試料として,実験操作,計数操作が容易で測定しやすい試料の一つである。これまで当研究室で得られた測定値の多くは,K-Ar法による測定値とよい一致を示す(KANEOKA and SUZUKI, 1970)けれども,中には,他の地質学的データと矛盾する値も測定されている。このような測定値の得られた試料は,黒曜石噴出後の熱的影響あるいは二次的影響が考えられる(KANEOKA and SUZUKI, 1970)。今回,新潟油田地帯で採取された黒曜石は,地質学的にみて,新第三系に由来する地層に含まれていたものである。これらの試料では,自発核分裂飛跡の部分的消失がみられ,この結果,自発核分裂飛跡の計数効率が大幅に減少して,若い年代が得られた。こうした若すぎる年代を補正するため,加熱による誘発核分裂飛跡の消失実験を行ない,補正曲線を各個試料について作成した。フィッション・トラック法による年代測定と,核分裂飛跡消失実験とを通じて以下のような結論を得た。i)自発核分裂飛跡の大きさの分布が単峰性であり,平均径が,誘発核分裂のそれと均しい場合(U1),測定された年代は,黒曜石が噴出した年代,または,臨界温度・熱条件以上に加熱された年代を意味する。ii)自発核分裂飛跡の大きさの分布が単峰性であり,平均径が,誘発核分裂のそれより小さい場合(U2),測定された年代は,黒曜石が噴出した年代,または,加熱された年代より著い年代を示すことになる。この場合,加熱実験により待られた補正曲線を用いて補正された年代が真の年代を示す。この際の加熱は,臨界温度・熱条件以下の加熱を意味する。FT 405,406,407MSの試料から得られたデータによれば,これらの試料は,30〜40℃/10^6yearsのthermal historyをもつと判断され,単に熱的影響だけでなく,二次的加水や,再結晶等の影響による自発核分裂飛跡の部分的消失も考えられる。iii)自発核分裂飛跡の大きさの分布が二峰性の場合(B),大きい飛跡の分布の平均径に基づいて得られる年代は,加熱された時から現在までの時間を示し,小さい飛跡の分布の平均径に基づいて得られる年代は,噴出から加熱までの時間の縮小された時間を示す。後者の年代をii)で述べた補正をほどこして得られる年代が,およその噴出した時から加熱された時までの時間を示す。結局,加熱から現在までの年代と,補正された噴出から加熱までの年代とを合計した年代が噴出年代を示すことになる。この場合の加熱もii)と同様,臨界温度一時間条件以下である。iv)核分裂飛跡の平均径の減少とそれに由来する飛跡密度の減少は一次関係ではない。この事実は,二次的(熱,加水等による)影響が単に,飛跡距離の一次関数的減少に帰結するのではなく,飛跡の三次元的な物理化学的変性に帰結することを意味する。この現象を他の天然鉱物・ガラスについて検討する必要がある。v)核分裂飛跡の二次的変性を厳密に究明することによって,その試料の経てきたthemal historyを解明することが可能である。そのためには,長期的な加熱による飛跡消失実験を行なう必要がある。
著者
川原 信夫 酒井 英二 糸数 七重 佐竹 元吉 合田 幸広
出版者
日本生薬学会
雑誌
生薬學雜誌 (ISSN:13499114)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.39-50, 2006-02-20
被引用文献数
4

本研究は食肉の風味を形成する食感, 味, 香りについて次の新知見を加えたものである。食肉の熟成による軟化の主原因の一つとみられるアクチン・ミオシン構造体のゆるみ現象が, 筋原線維のMg-ATPase 活性のKCl濃度依存性と最大活性値の増大となって観察されることを示し, おのおのが筋肉酵素カテプシンB, D, H, L, の共同作用とグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素の筋原線維への不可逆的結合で起こることを明らかにした。これに際し, 骨格筋カテプシンB, D, Hの高純度精製法を確立した。カテプシンLは新規酵素として発見したもので, 他所で同時期に発見された肝臓の新規酵素との類似性から, 両酵素はカテプシンLと命名された。食肉の熟成中に遊離アミノ酸が増加し, 味と加熱香気の向上に寄与する。この遊離アミノ酸の増加はおもに筋肉中性アミノペプチダーゼ類の作用によることを示し, 4個以上のアミノ酸からなるペプチドはおもに新たに発見したアミノペプチダーゼCとHの共同作用によって分解されることを明らかにした。わが国では黒毛和牛の脂肪が赤身によく交雑した霜降り肉が最もおいしいと評価されている。その主原因は該牛肉を酸素共存下で熟成後, 加熱することで生成する脂っぽい甘い芳香 (和牛香と命名) であることを示し, 本香を構成する香気成分を明らかにした。各種の食肉を食したときの畜種の判別に寄与する官能的主因子は香りであり, 味の寄与はきわめて小さいことを示した。
著者
佐藤 佳淑
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.237-246, 2016-03-31

Deciding not to have a child leads to childless status throughout the life span. However, relatively little is known about the long-term women's experience of being childless after the choice. The present paper aimed to report a brief review of research that explored how women's experience of being childless affects their psychological aspects, throughout the life. First, the article reviews the process of becoming childless, focusing on women during and a few years after their infertility treatment. Next, it presents of the review of empirical research on psychological well-being outcomes and its factors, among childless women at middle age and beyond. Finally, after pointing out the issues of previous research, it provides new directions for future research, especially, in Japan.
著者
赤塚 伊三武
出版者
日本高専学会
雑誌
高等専門学校の教育と研究 : 日本高専学会誌 (ISSN:1343456X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.7-10, 2002-04-20
被引用文献数
1

まず新聞や雑誌から選んだ日本語の悪文を学生に分析させて構造と文法規約とが壊れている個所を抽出する実習を課し,感想文系の文章に潜む論理破綻の危険性に気づかせる.つぎに,筆者が翻訳して出版した,科学系院生向けの文章執筆訓練用の実習式教科書を使って科学論文における誤りを見つける練習を行なわせて科学論文の必要条件を会得させる.さらに,工学系国際誌の原著論文を材料として,論理性に注意する和訳の実習を課する.最後の段階として短い和文論文を用いて英訳訓練をも行なうことによって,理系大学の学部卒業生よりは高い総合的な科学・技術系の英語能力が身に付くのである.以上の訓練に加えて,時間が許し,かつ教員に能力があれば発音訓練も行なわせる.
著者
村井 源 松原 仁
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.28, 2014

本論文では将来的な人工知能による自動的な物語生成のために,機械可読な形式での物語構造のデータベース化のためのデータ構造とその活用法について検討する.データの構造化にあたっては,物語の展開の巧みさによって面白さを感じさせる,物語構造を活用したオチの記述とデータ化を中心とする.ケーススタディとして星新一のいくつかのショートショートの物語構造を記述し,アルゴリズムでのオチ抽出が可能か検討する.
著者
宮部 滋樹 猿渡 洋 鹿野 清宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.246, pp.19-24, 2004-08-12
被引用文献数
1

本稿では,制御点で出力音を相殺するマルチチャネル音場制御とマイクロホンアレーを併用した,新たな小規模バージインフリー音声対話インタフェースを提案する.従来手法は,無音信号を再現するマイクロホン素子位置以外に応答音の再現点を制御点として設けているため,ユーザの位置を拘束していた.しかし提案手法は応答音を厳密に再現する制御点を設けないため,ユーザの移動を許容する.更に,応答音再現の制御点を設けないことにより,従来法では安定に動作させることができない少数のラウドスピーカ数でも安定なシステムを設計できる.実験により,従来法では安定に動作しない少ないラウドスピーカ数でも安定な制御が行えるということを示す.
著者
佐々木 久美子 辰濃 隆 中村 宗知 金子 正堅 後藤 修宏 近藤 安昭 高畑 薫 三浦 嘉巳 豊田 正武
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.210-214, 2001-06-25
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

殺ダニ剤酸化フェンブタスズ(FBTO)及びシヘキサチン(CHT)の告示試験法評価のために6分析機関で共同実験を行った.玄米など6作物からのFBTO回収率の平均値は85.2~96.5%,CHTのそれは大豆を除いて83.5~89.2%であった.FBTO回収率の併行再現性及び室間再現性の相対標準偏差はそれぞれ2.3~9.4%,3.9~12.6%,CHTのそれらは3.2~6.3%,8.3~12.9%であった.検出限界は0.015~0.05μg/g(FBTO),0.005~0.02μg/g(CHT)であった.
著者
絹巻 康史
出版者
拓殖大学
雑誌
経営経理研究 (ISSN:02878836)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.19-42, 2003-02-15

国際ビジネスやグローバル・エコノミーを論ずる際に,安易に「グローバル化」とか「グローバル・スタンダード」と云う言葉が使われている。言葉の定義付けないし概念規定を行わないままに,それらの言葉を使用することは論述の曖昧さに繋がり,社会科学としての存在理由が問われる。本橋では「グローバル・スタンダード」の意義を,その形成面と機能面から考察し,その結果として規範概念と事実概念とに分けて規定することで,実践と理論の分野に神益しようとするものである。
著者
川口 弘一 河村 章人
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:18847374)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.169-170, 1981

南鳥島の東北東500kmの海域で獲れたニタリクジラの胃内よリハダカイワシ科ハダカイワシ属の稀種<I>Diaphus bertelseni</I>の雄の1成熟個体が得られた.本種は大西洋の熱帯亜熱帯海域から報告があるが, 太平洋からはハワイ沖の報告があるのみである.とくに親魚の採集例が極めて少なく, 地理分布, 形態変異の幅等の知見が限られている.そこで従来の報告と比較しつつ記載を行い, 従来報告のなかった特徴についても言及した.