著者
上條 正義 西松 豊典 佐渡山 亜兵 清水 義雄 眞野 倖一
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

[目的と内容]本研究では、衣服の着心地の快適性の一要因である服地の肌触りを評価するための肌触り計測装置を構築し、着衣時における衣服と人体との接触に伴う着心地が評価できるシステムの開発を目的として、圧力分布センサと3軸加速度センサを指先に装着したグローブ型センサを作成して指先の触診動作の特定と3次元力覚センサアレーによる接触子の試作を行った。布の風合い評価時における指先の圧力と加速度を計測し、弁別能力に優れた人間の接触動作から材料特性を検知評価するための特有の触診動作を特定した。力覚センサを2次元に配列し、紙やすりやRTVゴムを試料として摩擦特性、圧縮特性、やわらかさについて測定可能であるか調査した。[成果]触診動作の特定について、下記の知見が得られた。加速度センサを触診動作特徴検出に利用した場合の出力特性を捉え、触診動作を細かく分類し、規定した基本動作と加速度、荷重の変化パターンを対応づけることができた。風合いの評価項目及び被験者ごとの触診動作の違いが指先の総荷重、荷重中心総移動距離を定量的指標として比較することによって明らかになった。接触子の試作実験において、摩擦試験では、試料に3種類の粗さのヤスリを用いて行い、平均摩擦係数、摩擦係数の平均偏差を算出することができた。圧縮試験では、RTVゴムを試料として用い、加圧時と除圧時の荷重値を測定した。相対的な指標として、圧縮エネルギ、圧縮特性による線形性、圧縮のレジリエンスを導出した。やわらかさ試験では、圧縮試験と同様にRTVゴムを試料として用い、センサに加わる摩擦力と圧縮反力の合力をやわらかさの指標として、市販の硬度計で測定したやわらかさの数値と比較した。結果、高い相関関係が得られ、この指標は材料のやわらかさを評価する上で有効であることが分かった。こうした一連の動作をセンサ、もしくは試料にさせることによって、1つのセンサによって、風合いに関する複数の情報を測定できる性能を得た。
著者
西本 昌弘
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

藤原行成撰『新撰年中行事』は多数の行事項目を掲載し、未知の関係史料を引用しているため、既知の年中行事書と対比検討することによって、日本古代の年中行事研究に新たな手がかりを提供する可能性を秘めている。本研究では、『新撰年中行事』と『小野宮年中行事』の記載を比較する対照一覧表を作成し、検討を進めた。両書の類似点はともに『九条年中行事』を踏まえていることに求められよう。『新撰年中行事』は弘仁式など古くに遡る史料を博捜して、行事の淵源を探る視点が強いため、『小野宮年中行事』とは大きく異なる本文をもっているものと考えられる。
著者
藤本 岳洋
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

構造物の破壊事故等では、き裂の進展は工業部材の変形とともに生じる。特に工業部材の顕著な永久変形を伴って生じる破壊を弾塑性破壊とよぶ。弾塑性破壊の様相は複雑なため、従来の破壊力学の知見を用いることができないケースも少なくない。本研究では、この弾塑性破壊の発生条件を評価するための力学的な指標(クライテリオン)の確立を目指し、実験や数値シミュレーションの結果を交えて、破壊発生時にき裂先端近傍に生じる材料の挙動の評価を行っている。
著者
松下 大介 藤野 修 川北 真之 高木 寛道
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

穴あき円盤の上の滑らかなアーベル多様体の族, あるいは底空間を高次元化した多重円盤から座標軸にあたる超平面を除いたものの上の滑らかなアーベル多様体の族を底空間の穴あるいは除いた超平面の上まで延長した族を構成することに成功した. この問題は1980年代には考察されていた問題ではあったが, 満足出来る証明がこれまで与えられてこなかったため, 関連する問題に不自然な技術的な仮定を付けざるをえないものが多くあり, この成果を利用することで, 関連するいくつかの結果を改良することが見込まる.
著者
吉本 富士市 原田 利宣 高木 佐恵子 岩崎 慶
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

描画の素人にとって,高品質な絵を描くことは容易ではない.コンピュータの支援により,素人が高品質な作品を容易に製作できれば,多くの人にとって福音となる.しかし,絵の一般的な評価基準を作り,それに基づいて素人の絵を評価・修正することは極めてむずかしい.そこで本研究では描画の初心者が,コンピュータを用いて心地よい手描き風曲線を生成するための支援システムと,それらの周辺の研究を行った.その成果の要点は以下のとおりである.まず,手描き風曲線の形とともに太さを玄人風に表現する,手描き風曲線の生成支援システムを研究した.手描き曲線の輪郭線の骨格から手描きの概形的特徴をフラクタル次元と曲率の符号変化数で抽出する.骨格線から輪郭線の縁までの距離をフーリエ変換して,そのスペクトルの高周波領域から太さの特徴を抽出する.それらについて,素人の特徴を玄人の特徴に近づけることにより,高品質な手描き風曲線を生成する.プロトタイプシステムを開発して評価実験を行った.その結果,玄人が描いた手描き曲線の特徴を用いて,素人が描いたぎこちない手描き曲線の概形的特徴を残しつつ,高品質な手描き風曲線を生成できることがわかった.また,周辺研究として以下の研究を行った.1.モバイル環境で素人が手軽に美しいイラストを作成するシステムを開発した.2.曲率半径と周波数分析を用いた人形の顔を構成する曲線の特徴解析3.VRシステムを用いた自動車コンフィギュレーション印象評価4.日本刀の曲線の性質を解析し,どのような共通点があるかを調べた.5.カーナビの情報デザインを構成する要素とユーザが持つ印象との関係を明確化した.
著者
井上 聡
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

私はこれまでに、二座配位可能な2-ピリジルメチルアミノ基を配向基とする芳香族オルト位炭素-水素結合の触媒的なカルボニル化を見出し、すでに報告している。具体的には、ルテニウム触媒による2-ピリジルメチル安息香酸アミドと一酸化炭素からのフタルイミド誘導体生成反応である(J.Am.Chem.Soc.2009, 131, 6898)。この研究途上で、芳香環上に置換基を有する基質を用いた場合、目的生成物の他に、別の位置異性体も生成していることがわかった。例えば、パラ位にメチル基を有する基質を用いた場合、本来の目的生成物である5-メチルフタルイミド誘導体に加えて、4-メチル体も生成した。両化合物の生成比は温度によって異なり、125℃で24時間反応させた場合、5-メチル体:4-メチル体=12:1であったのに対し、180℃ではほぼ1:1となった。さらに興味深いことに、メタ位およびオルト位にメチル基を持つ基質をそれぞれ180℃で24時間反応させても、生成物の比はほぼ1:1となった。この生成比は両化合物の熱力学的安定性によるものと考えられる。以上の現象は、いったん生成したフタルイミドのカルボニル炭素-芳香族炭素結合がルテニウム触媒により切断されていると考えることで説明できる。実際、単離した5-メチル体を反応系に入れたところ、この場合もやはり4-メチル体が生成し、その比はほぼ1:1であった。本研究によりピリジルメチルアミノ基は炭素-水素結合切断のための配向基として作用するだけでなく、炭素-炭素結合切断にも有効であることを明らかにした。
著者
平野 裕子 小川 玲子 川口 貞親 大野 俊 大野 俊
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

2008年より日本インドネシア経済連携協定(以下「JIEPA」)に基づき、インドネシア人看護師らが来日したのを皮切りに、2009年からは、日本フィリピン経済連携協定(以下「JPEPA」)に基づくフィリピン人看護師らが来日した。本制度における外国人看護師の導入は、国が公的な形で導入した最初の医療福祉専門職の受入れにあたり、今後の日本の受入れ態勢を整備すると同時に、国際化社会における看護師の移住の観点から起こりうる様々な問題を抱えていた。本研究では、JIEPA,JPEPA制度に基づく外国人看護師の移住のパターンの比較を行う。本研究の研究成果の概要は以下のとおりである。1.JIEPA、JPEPAでは、看護師の受入れスキームは一部を除き、ほぼ共通していたが、実際に来日する看護師たちの社会的人口学的特徴及び来日動機は、インドネシア人、フィリピン人の間でかなり異なっていた。2.看護師の国籍によってかなり特徴は見られたにもかかわらず、日本の病院側は、「学習意欲がある者」「患者に対する接遇態度がよい者」を高く評価する傾向があり、その傾向には国籍別に差は見られなかった。3.病院側は、外国人看護師を受入れた後に職場が活性化したことを高く評価しており、その傾向には、受入れた看護師の国籍別に差は見られなかった。
著者
阿草 清滋 落水 浩一郎 片山 卓也 中田 育男 佐伯 元司 鯵坂 恒夫
出版者
名古屋大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

阿草は、既存ソースプログラムを解析しその結果を蓄積するために、細粒度のリポジトリを開発した。CASEツール作成者は、このリポジトリを使うことにより、構文解析や依存解析などのモジュールを作成する手間を省くことができる。ソースプログラムの解析によりライブラリの典型的な利用パターンを発見した。片山は、要求仕様変更とプログラム変更の関係を代数束により形式化し、ソフトウェア発展関係の理論的基礎を与えた。ソフトウェアの段階的詳細化において各段階でプログラムテストを可能とする方式として、抽象実行に基づくソフトウェア構成法を開発した。また、オブジェクト指向開発法の形式化を試み、分析モデルの統合と分析モデルの検証法を与えた。落水は、近年のソフトウェア開発は、分散環境における共同作業であることに注目し、このような環境下でのソフトウェア開発支援のために、開発状況を保持する情報リポジトリを用いて漸進的に情報の矛盾や不確実さの解消を行うモデルを提案し、それに基づく支援環境を構築した。中田は、スライディングウィンドウを持つ計算機の命令レベルの並列化のために、ループのソフトウェアパイプライニングのレジスタ割付方式としてスパイラルグラフを提案した。また、コメントの処理などに必要とされる字句解析器の最短一致法を開発した。佐伯は、再利用プロセスの形式化をユースケースのパターン化とその構造変換規則として行った。分析パターンや設計パターンの構造をパターン化し、必要に応じてホットスポットを埋める手法を提案した。また、ソフトウェアアーキテクチャをカラーペトリネットで形式化し、非機能要求の検証を可能とした。
著者
木村 昭郎 兵頭 英出夫
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

セミパラチンスク旧ソ連核実験場周辺住民の被曝様式は、広島の被爆様式とはまったく異なっていることから、悪性腫瘍の発生様式も異なっている可能性がある。本研究では、セミパラチンスク核実験場周辺住民のMDS・白血病の症例数をさらに増加させ分子遺伝学的特徴を明らかにする。特にAML1/RUNX1遺伝子変異、及びAML1/RUNX1変異と協調してMDS・白血病発症に関与していると考えられるN-RAS,SHP-2,NF1,FLT3の遺伝子変異、さらにP53変異について解析する。次に被曝線量を導入して、線量、性別、被曝時年齢等の効果について原爆被爆者との比較を行い、被爆様式の違いによる差異を明らかにすることを目的としている。そこでセミパラチンスク市のカザフ放射線医学環境研究所、市診断センター、市救急病院と連携して、セミパラチンスク核実験場周辺住民のMDS・白血病症例のスライド標本と患者情報収集を継続している。一方原爆被爆者のMSD・白血病については、MDS/白血病(芽球が5%以上認められるMDSと三血球系統の異形成を伴った白血病が含まれる)の遺伝子解析が進んでいる。最近集計したMDS/白血病248例にしめるAML1/RUNX1点変異陽性率は、原爆被爆者13/36(36%)に対して非被爆者35/212(17%)と、被爆者では有意に高頻度であった。このことからAML1/RUNX1の点変異は放射線誘発のMDS/白血病にかなり特徴的な遺伝子変異であることが明らかになった。この点からはセミパラチンスク周辺の被ばく住民と広島の原爆被爆者では被爆様式は異なっているが、MDS/白血病を発症する主要な分子遺伝学的メカニズムは共通していると言える。
著者
井田 茂 佐藤 文衛 渡部 潤一 河合 誠之 玄田 英典
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

太陽系外の惑星(系外惑星)の発見数は750個以上、ケプラー衛星望遠鏡による候補天体も2300個以上となり、惑星および惑星系の性質についての統計的議論が始まっている。本研究では主星の組成(重元素比)によって惑星系がどう変わるのかを調べた。惑星軌道進化のN体シミュレーションおよび惑星の衝突流体シミュレーションを行う一方で、その結果を組み合わせたモンテカルロ計算を行なった。重元素比が高い主星のまわりでは重元素が多いので、巨大ガス惑星が複数形成され、軌道不安定をおこして、軌道離心率が跳ね上げられることがわかった。また、視線速度法サーベイ観測を推進する一方で、アマチュアや学生を巻き込んだトランジット・フォローアップ観測ネットワークを組織し、理論・観測の両面から追及した。
著者
齋藤 慈子 中村 克樹
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、家族で群を形成し、母親だけでなく、父親、兄姉個体も子育てに参加する、小型霊長類のコモンマーモセットを対象に、子の新奇な餌に対する反応が、家族内の個体の存在によりどのように影響を受けるか、内分泌学的側面も同時に調べようと試みた。行動実験から、両親、特に母親は子の新奇餌への接近と摂食を促していることが示唆された。また、オキシトシという神経伝達物質を、マーモセットの尿から測定する方法を確立した。今後この方法を用いて、子が新奇餌に接する場面における家族の影響を、尿中オキシトシンの側面からも検討したい。
著者
大西 尚樹 玉手 英利 岡 輝樹 石橋 靖幸 鵜野 レイナ
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

日本のツキノワグマはアジア大陸から日本に渡来してきた後に、3つの遺伝グループに分岐し、各地域で遺伝的な分化が進んでいることが示唆された。こうした遺伝構造は、近年の大量出没においては一時的に崩れるものの、すぐに回復し維持されることが明らかになり、各地域の遺伝的なまとまりを保護管理ユニットとして適応出来ると考えられた。九州では1987年に捕獲された個体が本州由来であることが明らかになり、1957年以降捕獲がないことから絶滅の可能性が強くなった。
著者
鈴木 和夫 奈良 一秀 山田 利博 宝月 岱造 坂上 大翼 松下 範久
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

マツ材線虫病の病徴発現原因物質と宿主細胞との相互関係を明らかにする目的で、材線虫-宿主細胞間で引き起こされる反応について調べた結果、以下の諸点が明らかにされた。(1)感受性の異なる針葉樹5樹種を用いて、宿主の病徴進展とキャビテーション発生との関連についてみると、マツ材線虫病感受性が高い樹種ほど病徴進展にともなって、表面張力が大きく低下することが明らかにされた。このことは、表面張力に関与する物質が病徴進展と密接な関係にあることを示唆している。(2)感染後に産生される異常代謝産物の樹体に及ぼす影響についてみると、材線虫感染によって表面活性物質および蓚酸が産生され、これらの物質によってキャビネテーションの発生が促進されるものと考えられた。(3)表面張力の低下に関与する物質として蓚酸およびエタノール投与では、顕著な影響が認められずエスレル投与によって表面張力は低下した。このことから、病徴進展とエチレン生成が密生な関係にあることが示唆された。(4)キャビテーションの発生は、70%の壁孔閉塞が木部含水率の著しい低下を引き起こすことから、このことが樹体内のランナウェイエンボリズムの発生と密接な関係にあるものと考えられた。(5)光合成阻害処理によって、当年生葉の黄化・萎凋が他処理に比べて促進されたことから、光合成阻害による低糖類の減少が材線虫病の病徴進展と密接な関係にあるものと考えられた。以上の結果から、いままでブラックボックスとされてきた病徴発現原因物質と宿主細胞の相互関係が、病徴進展やキャビテーション発生の観点から明らかにされた。
著者
田中 剛
出版者
独立行政法人農業生物資源研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ゲノム配列情報が明らかになった真核生物種間で代謝経路比較を行い、系統ごとに特徴的な代謝経路進化を明らかにすることを本課題の研究目的とする。本年度は、植物の代謝経路情報の抽出及びデータ解析を中心に解析を行った。イネ・シロイヌナズナの代謝データはKEGGやAraCyc(TAIR),RiceCyc(Gramene)などのデータベース(DB)より公開されているが、必須代謝経路に関連する酵素情報が欠落していることが分かった。そこで、遺伝子機能の記載より遺伝子と酵素反応を対応付ける作業を行い(データマイニング)、新規に代謝経路情報を作成した。まず、データマイニングに必要なプログラムを自作し、KEGGより取得した酵素反応情報に基づき作成した酵素反応名とEC番号の対応リストをリファレンスとして、RAP及びTAIRより二公開されている遺伝子機能情報より網羅的に遺伝子とEC番号の対応付けを行った。その結果、イネではKEGG・RiceCycに登録されていない344のEC番号を新たに遺伝子と対応付けることができた。同様に、シロイヌナズナにおいてもKEGG・AraCycにない448件のEC番号を遺伝子と対応付けた。これらの結果を用いて植物2種におけるEC番号の右無を比較したところ、いずれの植物でめみ見つかったEC番号はイネで85、シロイヌチズナで258ど後者が3倍近く多いことがわかった。これらの結果を公開することで研究者が効率よく代謝経路と遺伝子の対応関係を推測することが可能になることが期待される。また、本プログラムを利用して、ヒト・マウスのデータに関してもデータ作成・解析を実行した。一方、これらのデータの中で、イネに関しては現在GrameneのDB担当者とデータ公開に関して協議をしている。互いのデータを精査した後、最終的には同一データを公開するため、先方と同様のDB構築を行っている。
著者
宇野 英満 山田 容子 奥島 鉄雄 小林 長夫 森 重樹 KIM DongHo
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

申請者は、高共役π電子系化合物の合成法として、前駆体を最終段階で熱逆Diels-Alder反応や光脱硫化カルボニル反応などのペリ環状分解反応によりπ電子系を融合する方法を開発した。これらの前駆体化合物は、通常の溶媒によく溶けて酸化されにくく、精製が簡単な化合物である。前駆体で精製しておけば、目的の高共役化合物を高純度で得ることができる。この方法を発展させ、高純度の様々なπ電子系の融合した化合物群を合成し、その基本的な諸物性を明らかにした。
著者
堤 拓哉
出版者
地方独立行政法人北海道立総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、雪国に建つ建築物を対象に、稀に起きる豪雪による被害と毎年のように繰り返し起きる日常的な雪の問題の二つを合わせて「建築物の雪害によるリスク」と捉え、雪害の発生確率と発生による損失を統計データの分析から定量化することにより、建築物の雪害によるリスクの評価手法を提案し、これまで検討されていない雪害リスクマネジメントを体系化することを目的とする。研究では、アンケート調査により豪雪地帯で起きている雪害内容を把握した。特に北海道では、敷地内の雪の問題、吹雪による問題が大きなリスク要因となっていることが明らかになった。雪害のリスクを評価する手法として、多変量解析に基づく雪害発生の判別、損失期待値に基づくリスク評価法を検討し、雪害リスクマネジメントのフローを提案した。
著者
落合 理 LEMMA Francesco
出版者
大阪大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

今年度は,GSp(4)の肥田変形においてオイラー系からp進L関数をつくるColeman写像理論について取り組んだ.成果として,適当な条件下で,ほぼ予想した結果を得た.現在結果の細部をタイプしている最中である.GSp(4)のnearly ordinaryな肥田変形は3変数の岩澤代数の上のランクが4のガロア表現である.以前,申請者はGL(2)の肥田変形におけるColeman写像を構成した.GL(2)のnearly ordinaryな肥田変形は2変数の岩澤代数の上のランクが2のガロア表現である.Coleman写像とはこのようなガロア表現の族においてBloch-Katoのdual exponential mapと呼ばれるp進ホッジ理論で大事な写像をp進補間することである.今回得たGSp(4)における結果はこのGL(2)のときの結果の一般化である.その際の手法やアイデアが部分的には使えたが,一方で新しい困難もいくつかある.ランクが大きくなる困難や様々な表現が入り混じる困難があり,また,素朴な概念で切り抜けることができたGL(2)に比べて,代数群や保型表現の一般理論に通じている必要がある.最後に今回の仕事の意義について述べたい.もともと今回の仕事は描いているもう少し大きな岩澤理論の一般化のプロジェクトの一部である.今まで代数群GL(2)に関連した岩澤理論しかなかったので,高次の代数群で岩澤理論を展開していき様々な新しい世界が広がることを期待している.今回の仕事だけ見ても手法的に面白い発展がいろいろ得られたと思っている.
著者
佐藤 慶太
出版者
上智大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本年度は、カントの概念論の固有性を明らかにするために、「概念」の取り扱いに関してカントがカント以前の哲学者とどのように対決し、どのようにそれを乗り越えていったのかを検証した。研究は、『純粋理性批判』の「純粋理性の誤謬推理について」、および「純粋悟性概念の図式論について」に焦点を絞って行った。「誤謬推理」章を取り上げた研究に関しては、『哲学』第60号掲載の論文と、11月に行われた日本カント協会第34回学会のワークショップでの発表において、その成果をまとめている。この研究において明らかとなったのは、カントの概念論における「徴表(Merkmal)」の重要性である。上記の論文および研究発表において示されたのは、「徴表」という概念に着目して「誤謬推理」章を読解すると、カントの「概念論」の固有性のみならず、カントの形而上学構想の変遷の意味を理解する手掛かりも得られる、ということである。そのほか、カントの論理学講義の内容と、『純粋理性批判』との関連の明確化も併せて行ったが、この点でも意義があったといえる。「図式論」を取り上げた研究の成果は、9月に行われた実存思想協会・ドイツ観念論研究会共催シンポジウムにおいて発表することができた。この発表においては、カントの「図式」がデカルト以来の近世哲学における「観念」をめぐる論争の系譜に位置づけられること、またこのような系譜への位置づけおこなうことではじめて、「図式論」章の役割が明確になることを示した。また上記の二つの研究を含む課程博士論文「カント『純粋理性批判』における概念の問題」を京都大学に提出し、11月24日付で学位を取得した。
著者
鈴木 誠
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

平成21年度は平成20年度の検討をさらに推し進めるとともに,時刻同期機構の開発,無線センサノード向けマルチコアCPUの設計,地震モニタリングシステムの開発を行った.1.時刻同期機構の開発これまでの無線センサネットワーク向けの時刻同期機構は,時刻同期誤差の確率的な相関を考慮しておらず,誤差がホップ数に対して指数関数的に増大してしまうという問題があった.本研究では,時刻同期補正手法をFIRフィルタとしてモデル化し,誤差を増幅させる原因を特定し,新たな誤差補正手法を開発することで,ホップ数に対する誤差の増大を線形に抑えることを可能とした.また,誤差分布について検討を行い,ホップ数と時刻同期間隔の情報のみから時刻同期誤差を推定する手法を開発した.2.無線センサノード向けマルチコアCPUの設計現存する無線センサノードは,無線通信,計算処理,サンプリングなど,複数のタスクを1つのCPUで並列実行しており,スケジューリングの不確定性に伴う測定誤差の増大,パケットロスの発生などの問題が生じる.この問題の解決に向けてはマルチコアCPUによってタスクを分散させることが必要となる.本年度はマルチコアCPUの設計において重要となるコア間通信アーキテクチャの初期的設計を行い,無線センサネットワークの実際のアプリケーションにおいてコア間のデータ通信量を評価することで,設計の妥当性を示した.3. 地震モニタリングシステムの開発平成20年度および今年度に開発したネットワーク基盤技術を利用して,地震モニタリングシステムの開発を行った.ルーティングプロトコルなどの実装を行い,秋葉原ダイビルに8台構成で設置し,20個程度の実地震の取得に成功した.
著者
加藤 雅人 川野邊 渉 高橋 裕次 稲葉 政満 半田 正博
出版者
独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

紙文化財の修理技術は、工程、手法、道具、材料が様々であり、同じ作業や材料、道具でさえ用語が異なっていることがある。本研究では、これらの用語を調査して分類することにより、紙文化財およびその修復技術という無形文化財に対する共通理解を深めることを目的として行った。最初に調査票の作製を行い、その後情報収集を行った。データベースの検討を行い、htmlの試作を行った。また蓄積した情報を修復用紙の選択に応用した。