著者
塚本 紀子 小嶋 秀幹
雑誌
福岡県立大学心理臨床研究 : 福岡県立大学大学院心理教育相談室紀要 (ISSN:18838375)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.85-91, 2014-03-31

福祉事務所で働く新人ケースワーカー(以下、CW)11名に対し、職務ストレスとその対処プロセスを半構造化面接法により調査した。結果は、質的に分析し、以下の仮説を生成した。CWは、配属直後から敬遠される職務であるという不安を抱く。実務により、訪問・対応の困難さや事務の煩雑さ、生活保護法や他法がわからないといったストレスを感じ、上司や家族の支援が十分でないと感じる。若い自分を意識し、自分だけではうまくいかないと感じ、仕事の悩みを一人で抱える。このような職務ストレスに対して、経験と共に対処スキルを向上させていくが、背景には、上司や同僚の支援、CW同士で辛さを共感できる職場環境がある。職務を継続するうち、徐々に自己内面が変化し、余裕ができ、価値観の違いを理解し受け止め、突き放した関心といった自己の変化も体験する。しかし、その過程で、プレ・バーンアウト状態に陥る者もいる。自己スタンスを確立できた者は、さらに自己バランスを構築しながら職務を継続する。
著者
宮下 智 和田 良広 鈴木 正則
出版者
日本橋学館大学
雑誌
紀要 (ISSN:13480154)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.41-51, 2012-03-01

近年、体幹筋に着目したトレーニング方法が注目されている。体幹筋をLocal muscles とGlobal muscles に分類し、Local muscles の活動性を高めるトレーニングが進められている。体幹の安定性を求める理由は、体幹安定が保証されることで、四肢に素早い正確な動きが期待でき、動作能力が向上すると考えられているからである。本研究は超音波診断装置を用い、腰部に違和感を経験し、腹横筋活動に何らかの影響があると考えられる8 名(年齢29.6±6.5 歳)を対象とし、4 つの運動課題下で、主要体幹筋である外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋、それぞれの筋厚を運動開始時と終了時に測定した。本研究で採用した4 つの運動課題のうち、double redcord training 課題の筋厚変化は、運動開始時には外腹斜筋よりも内腹斜筋の方が厚い傾向、運動終了時には腹横筋よりも内腹斜筋の方が厚くなることが認められた(p<0.05)。しかし個々の筋厚比率をdouble redcord training 運動課題の前後で検討すると、内腹斜筋は運動開始時より運動終了時に筋厚が減少する傾向があり、逆に腹横筋は運動開始時より運動終了時に筋厚が増加することが認められた(p<0.05)。このことからdouble redcord training 運動課題により、腹横筋の筋厚は増加し、内腹斜筋の筋厚は減少するというトレーニング効果を期待できる方法であると言える。他の運動課題では腹横筋の筋厚増加に伴い、内腹斜筋の筋厚も増加する(p<0.05)結果となった。運動により内腹斜筋厚が増加することは、Global muscles の活動量が上がることを示し、体幹トレーニングはLocal muscles の活性化が重要であることを考えると、従来の体幹筋トレーニングは、再検討が必要であると思われる。double redcord training 課題の特徴は、上下肢を共に吊り上げることにより、空中姿勢を保ち運動するのが特徴である。すなわち、不安定な運動環境の中で姿勢の安定性を求める高負荷な課題であると言える。この課題を正確に遂行するには、個々の筋肉は、速いスピードでの筋収縮が要求される上、関与する筋肉同士の協調ある筋収縮が求められる。Local Muscle である腹横筋が有効に働く、効果的な体幹トレーニングという観点から、double redcord training は画期的な体幹筋トレーニング方法であると結論づけた。
著者
増田 知子 佐野 智也 MASUDA Tomoko SANO Tomoya
出版者
名古屋大学大学院法学研究科
雑誌
名古屋大学法政論集 (ISSN:04395905)
巻号頁・発行日
no.275, pp.1-43, 2017-12

本論文については次の公的資金の一部を使わせていただいた。・平成28、29年度科学研究費補助金基盤研究(A)(研究課題番号16H01998)・平成27年度科学研究費補助金挑戦的萌芽研究(研究課題番号15K12160)・特別経費「電子立法支援システムを基盤とした法令情報の国際発信・共有のための法学・情報科学の融合研究の推進」(名古屋大学大学院法学研究科附属法情報研究センター)
著者
西谷 真人 宗清 芳美 杉野 友啓 梶本 修身
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.123-129, 2009
被引用文献数
6

先端的な疲労研究を行っている 7 大学をはじめ,食品メーカー,医薬品メーカーなど 19 社および大阪市で構成された産官学連携「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」において,抗疲労食品の開発が進められている.抗疲労食品とは,健常者が身体的あるいは精神的に負荷を与えられたときにみられる作業効率の低下ならびに休息欲求と不快感を伴った状態を軽減する食品と定義される.健常者の疲労においては,その発現に酸化ストレスが大きく関わっていることが分かってきており,抗酸化物質の疲労に対する効果について精力的に研究が進められている.中でも動物の骨格筋や脳に多く含まれるイミダゾールジペプチドは,その抗酸化作用により動物試験およびヒト試験で最も顕著な抗疲労効果が確認されている.本稿では新規抗疲労成分イミダゾールジペプチドについて詳細に述べることにする.<br>
著者
山内 健生 小原 真弓 渡辺 護 安藤 秀二 石倉 康宏 品川 保弘 長谷川 澄代 中村 一哉 岩井 雅恵 倉田 毅 滝澤 剛則
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.23-31, 2009
被引用文献数
1

1991-2007年に富山県においてフランネルによるマダニ採集を行い,3,562個体のマダニ類を採集した.これらのマダニ類は次の2属9種に分類された:キチマダニHaemaphysalis flava,ヤマトチマダニH.japonica,ヒゲナガチマダニH.kitaokai,フタトゲチマダニH.longicornis,オオトゲチマダニH.megaspinosa,ヒトツトゲマダニIxodes monospinosus,タネガタマダニI.nipponensis,ヤマトマダニI.ovatus,シュルツェマダニI.persulcatus.ヤマトマダニは標高401m以上の地域における最優占種で,それより低い標高域においても少なからぬ密度で分布することが示された.キチマダニは標高400m以下の地域における最優占種であった.ヒゲナガチマダニ,オオトゲチマダニ,およびヒトツトゲマダニを富山県から初めて記録した.ヒトツトゲマダニからRickettsia helveticaの近縁リケッチアが検出され,富山県における紅斑熱患者発生の可能性が示された.
著者
松山 圭子
出版者
青森公立大学
雑誌
青森公立大学紀要 (ISSN:13419412)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.47-61, 2003-09-30

Since Oct.15^<th>, 2002, newspapers have reported a number of deaths related to the adverse reaction to anti-lung cancer drug, "Irresa"(generic name: gefitinib, Asterazeneca). The reports described this drug-induced disaster as a result of irresponsibility of Japanese government, pharmaceutical company and medical professionals. However before the Oct.15-article, the newspapers had covered Irresa as a notable drug that has molecular targeting action pinpointing cancer growth mechanism. For a critical analysis of this new drug, more of the clinical evidence is needed than pharmacological mechanism. And yet pharmacological knowledge based analogy and metaphor is often used in clinical doctors' stories or narratives. And mass media make report without critically examining the medical knowledge. I would like to argue this drug-induced disaster as "failure of knowledge".
著者
宮本 栞 鶴田 貴子
出版者
広島大学
雑誌
広島大学大学院教育学研究科紀要. 第二部, 文化教育開発関連領域 (ISSN:13465554)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.295-299, 2004-03-28

The detergency, that is the effect on removal of particle soil, on soiling prevention and on deodorization etc., of the electrolyzed water was compared with that of the pure water. The electrolyzed water, i.e. the alkaline ion liquid and the acid ion liquid, was produced using an electricity resolution production device. The wet artificially soiled cloths were washed at 40? in each liquid for 10 minutes by a Terg-O-tometer. Sodium dodecyl sulfate (SDS) was used as detergent. The removal efficiency of carbon black was demanded by applying an expression of Kubelka-Munk on the basis of the surface reflection rates of the test cloths. The soiling rates of the test pieces of white polyester were calculated on the surface reflection rates after they were washed with the wet artificially soiled cloths. The smoke of a cigarette (tar 12 mg, nicotine 1.0 mg) was absorbed by the test cloths of wool muslin in a glass container sealed up for 24 hours, and they were washed only with water afterwards. The stench of the specimens was measured with a smell meter, and the deodorant efficiency of the stench was calculated afterwards. The detergency was all good in order of the alkaline ion liquid, the pure water, the acid ion liquid. The property of dispersing solid particles of each liquid was dependent on the ingredients included in each liquid, the pH of the liquid and the hardness of water. The power of dispersing particles of the alkaline ion liquid was the biggest in three kinds of liquids used.
著者
本間 周子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
体育研究所紀要 (ISSN:02866951)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-10, 1979-12

1. はじめ2. メイ・デイについて3. メイ・デイのダンスについて4. メイ・デイのダンスの歴史的考察5. むすび
著者
神末 武彦 加藤 彰
出版者
共栄大学
雑誌
共栄大学研究論集 (ISSN:13480596)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.101-118, 2014-03-31

2011 年に宮古空港にスカイマークが低価格運賃戦略を持って就航した。それまで既存の日本トランスオーシャン航空と全日本空輸の2 つの航空会社で高留まり傾向にあった航空運賃がこれを機に下落して低運賃競争に転じ、熾烈な戦いが繰り広げられるところとなった。この地域の入域者はほぼ航空輸送に頼っており、那覇・宮古の航空路線を検証することによって、運賃の低価格化が宮古島への航空需要喚起と観光客を増加させ、それら観光客がもたらす宮古島への経済波及効果が高まり地域経済の活性化をもたらしたのかを検証することができる。スカイマークの参入により航空機を利用する人数は総体で増加したものの、宮古地域に入域者する観光客数と経済波及効果について大きく影響したとはいえない。これらを検証するため、沖縄県、宮古島市や航空会社から集めた実績や予測と担当者へのインタビューを通して、総合的に集約・分析して研究をまとめた。
著者
古賀 義久 栗田 昌裕
出版者
国際生命情報科学会
雑誌
国際生命情報科学会誌 (ISSN:13419226)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.468-471, 2003

過去のわれわれの研究により裸眼立体視訓練による視力改善効果が示された。その訓練を5週間行った効果を検討した。【方法】対象は栗田式視力回復法講習の成人受講者9名。1週間に一度ずつ5回集まって訓練を行った。「裸眼3D視」(以下、3D訓練)を行い、訓練前後で視力を測定し、5週の平均値をデータとして使用した。【結果】以下平均値で示す。左右裸眼視力は、3D訓練では0.14→0.19で0.04増加(30%増加)。左右矯正視力は、3D訓練では0.79→0.94で0.15増加(19%増加)。5週間の長期効果は以下の通り。両裸眼視力は0.12→0.27と改善(0.14増加)。倍率の平均値は2.2倍。平均値相互の倍率は2.2倍。両矯正視力は0.71→0.94と改善(0.24増加)。倍率の平均値は1.34倍。平均値相互の倍率は1.43倍だった。【考察】3D訓練には即時視力改善効果があることが再確認できた。5週間訓練すると、視力が長期的に改善することが示された。
著者
釋 覺瑋
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.1148-1154, 2015

ブッダの誕生記念祭は,多くの仏教的祝祭の中でも最重要の祝祭の一つである.本論文は,外来宗教としての仏教が中国に受容された後に,主要な祝祭である仏誕祭が,いかにして国家的な認知を得るに至ったかを,今からおよそ1500年前の北魏時代と現代台湾における事例を比較しながら考察する.記録によれば,後漢時代に仏教が中国に伝わってからおよそ500年,6世紀初めの北魏では,陰暦4月8日,皇帝や多くの市民が,それぞれに仏像を安置した1000台の車列をもって仏誕祭パレードを行ったという.一方,台湾において仏教が広く知られるようになるのは17世紀の清朝においてであり,さらにまた仏教が台湾に根づくのは,多くの僧侶や僧尼が中国の東海岸から移り住むようになる1945年以後のことである.21世紀の台湾では,大統領府の前で10万人規模の仏誕記念式典が開かれることにもなった.相互に1500年の隔たりをもちながらも,いずれの祝祭も外来宗教としての仏教を受容し,ブッダの誕生を公共の空間において祝う祭典として文化史的,社会的,および政治的に重要な意味をもつことを具体例に即して考察した.
著者
十亀 好雄
出版者
甲子園短期大学
雑誌
甲子園短期大学紀要 (ISSN:0912506X)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-14, 1984-10-10

1.国内におけるイチョウの分布は、北海道及び南西諸島地区に少なく、これは、気温・水気・風などの重要な気候要素によって、山地や海岸(含離島)でのイチョウの生育が悪いためである。2.わが国でのイチョウは、神社・寺院での植樹(33.8%)が最も多く、海外では公園(31.5%)での植樹が最も多い。国内の神社・寺院にイチョウが多く植樹されているのは仏教の伝来にともなって中国から移入されたという説を実証している。3.世界におけるイチョウの地理的分布は、北半球での南限は中央アメリカのメキシコシティー(19°24'N)、北限はアラスカのアンカレッジ(61°10'N)であり、南半球では南アフリカ共和国のプレトリア(25°25'S)から、ニュージランドのダニーディン(45゜53'S)までの範囲に分布している。また、赤道地帯を含む南・北緯20°以内にはイチョウの栽植分布は認められず、北緯20゜〜60°、南緯20゜〜50°の範囲内において栽植の分布が確認できる。4.世界でのイチョウの分布と気候条件については、年平均気温がO゜〜20℃の範囲内で生育がみられ、植物分布と関係の深い低温の限界温度はO℃の等温線である。さらに、降水量については、今年500〜2000mmの地域に分布が認められる。本研究の一部は昭和58年度第22回下中科学研究助成金の交付によっておこなった。
著者
中尾 義則 平 知明 堀内 昭作 河瀬 憲次 向井 康比己
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.275-280, 2005-07-15
被引用文献数
1

イチョウは雌雄異株であるが, 現在, 雌雄の判別は生殖器官の観察によるしかない.そこで, 染色体における雌雄の違いについて調査した.染色体数は雌雄ともに24本(12対)であった.付随体を持つ染色体の数は, 雄株と雌株それぞれ3本と4本であった.これら付随体の2本はもっとも大きな中部動原体型染色体の短腕にあり, その他の雄株の1本と雌株の2本は次中部動原体型染色体の長腕にあった.CMA染色の結果, 雌雄ともに2本のもっとも大きな中部動原体型染色体の短腕と2本の次中部動原体型染色体の長腕のそれぞれの二次狭窄部に, 合計4か所の黄色いバンドが認められた.5S rDNAと26S-5.8S-18S rDNAをプローブとしたFISH解析で両領域ともに二次狭窄部に位置し, 雌雄間に違いはなかった.また, これらの位置はCMAバンドと同様の場所に検出された.したがって, イチョウの雌雄性の判別は付随体の数によって判別できるが, 5S rDNAと26S-5.8S-18S rDNAをプローブとしたFISHシグナルやCMA染色では判別できないことが明らかとなった.
著者
尹 性哲
出版者
芸術工学会
雑誌
芸術工学会誌 (ISSN:13423061)
巻号頁・発行日
no.56, pp.85-92, 2011-10-01

本研究は、韓国漫画史における「海賊版日本漫画」を対象として、海賊版日本漫画が韓国の漫画文化に与えた影響と日本から韓国へいかに漫画表現方法が移植されたかを明らかにし、海賊版漫画の存在にそのような文脈を与えることで漫画分野における著作権の在り方に新たな視点を提示することを最終的目的としている。ここで本研究が対象とする「海賊版日本漫画」の定義とは、著作権法に基づきながら、韓国初の海賊版日本漫画が出版された1952年から現在まで、日本漫画を無断で模倣・模作・翻案・複製し、韓国で出版された漫画とインターネットを通じて流通されているスキャン漫画を全て包括する。その上で、不法無断複製物の「海賊版日本漫画」に対して、「文化伝達」という新たな側面からアプローチすることが従来の研究や報告と異なる本研究の特徴である。既に1930年代の日本漫画にW・ディズニーの「ミッキーマウス」などのキャラクターを無断使用した海賊版が存在し、「ミッキーの書式」を採用することで田河水泡の「のらくろ」などのキャラクターが成立したことが指摘されている。また、戦後、手塚治虫が「ジャングル大帝」などで画面構成やストーリーをディズニーの「バンビ」から借用したことは広く知られるところである。しかしそのことは日本漫画の独自性を否定するものでなく、むしろその成立の一つのきっかけに「海賊版」や現在なら知的所有権の侵害とみなされかねない模倣作品が重要な役割を果たしていたことをふまえた時、筆者は韓国漫画史が独自性を模索する中で「日本漫画海賊版」がいかに機能したかという視点が不可欠である、と考える。本論文では、そのための基礎的な作業として、歴史的な背景からの影響と関係性に着目し、日本統治時代から現在までの韓国漫画史について概観する。次に、韓国の漫画関連書籍、漫画関連機関の報告書、著作権関連書籍などの文献を参照すると共に、韓国の漫画家、漫画研究者、そして漫画関連機関を訪問し、資料収集と聞き取り調査を行うことで文献資料を補った。そこから韓国漫画は漫画史の半分以上の約60年間、統治時代の日本と軍部政権から統制されたことと、軍部政権の統制によって海賊版日本漫画の出版・氾濫現象が起きたことを確認した。そして、(1)日本統治時代から現在までの日本と韓国の歴史的関係、(2)韓国内の歴史的事件と漫画史の関係について概観し、海賊版日本漫画が登場した要因や歴史的変遷について考察した。考察の結果、35年間の日本統治時代は日本漫画を受容しやすい環境を形成し、韓国政府の日本大衆文化に対する排斥行為と軍部政権による漫画に対する弾圧は、日本漫画が海賊版として登場できる環境を作り出したことが明らかになった。さらにまた海賊版日本漫画の出版によって韓国漫画の出版産業が発展したことと漫画出版ブームを呼び起こしたこと、低級文化と認識された漫画を大衆文化へ転換させ、消費パターンを「借りて読む漫画」から「買って読む漫画」へ転換させたことなど、海賊版日本漫画が韓国漫画発展に与えた影響についても明らかとなった。
著者
平井 雄一郎
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.792-819,856, 1996

By a notification in 1871, the Meiji Government contrived to establish a unified national system for the relief of abandoned children. The Tokyo area, however, had its own special system, "kunai-azukari", that had its origins in the Tokugawa Era. This relief system, financed by ku and gun as autonomous government units, is reputed to have played an important role in times of social upheaval, particularly during the period of the Matsukata Deflation. On the other hand, the fact that the system far exceeded the national one in the scale of expenditure and was subject to the arbitrary control of local officials, caused conflicts with the policy of the municipal government. Study of the shomu-ka (general affairs section) documents of the old government enable us to clarify both the structure of these conflicts and the concern of the authorities over the increases in expenditure which were due mainly to the participation of particular agents, "shusennin", in the kunai-azukari system. Eventually, the local autonomous system was dissolved. In 1885-1886, the municipal government ordered that all children under the care of kunai-azukari be accommodated in the Tokyo Yoikuin (the poorhouse). Once the order had been put into action, all the related expenditures were completely incorported into the accounts of the Yoikuin. Since it is obvious that the wishes of ku and gun offices were precluded, and since all remaining resources were appropriated as a new source of funds for the Yoikuin, I conclude that the order implied a solution favourable to the municipal government. Meanwhile, it should be pointed out in reference to further study that there might be the hopes for the rationalization of "society" and "culture" held by the chairman of the Yoikuin, Shibusawa Eiichi, and other "distinguished persons" in the city.