著者
根本 泰行
出版者
International Society of Life Information Science
雑誌
国際生命情報科学会誌 (ISSN:13419226)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.21, 2020 (Released:2020-04-01)

故・江本勝博士は、1999年に水の氷結結晶写真集『水からの伝言』を出版した。『水からの伝言』の真意は、水の結晶写真を通じて、一般の人々に「水は情報を記憶する」ということ、さらには「意識によって人は物質世界に影響を与えることができる」ということを伝えることにあった。 従来科学の枠組みにおいては、「水の情報記憶」について、なかなか認められなかったために、「『水からの伝言』は非科学的である」との批判を受けてきたものの、『水からの伝言』は様々な言語に翻訳されて世界各国に伝わっていき、多くの一般の人々が結晶写真について知ることとなった。 しかしながら、『水からの伝言』が世界中に広まっていったことに呼応するように、過去10年ほどの間に、世界のトップレベルの科学者たちから、「水は情報を記憶する」ということを示唆する―もしくは完全に証明する―証拠が提示されてきている。 ルパート・シェルドレイク博士の「形態場」仮説によれば、「多くの人々が何らかの事柄について学習すると、その効果は、形態共鳴を通して、それらの人々と直接的な接触のない人々に対しても、広がっていく」と考えられる。『水からの伝言』を知ることによって多くの人々が水の結晶写真を認知したことにより、「水は情報を記憶する」という可能性が人類の「形態場」にアップロードされ、さらには「形態共鳴」を通じて、人類全体の意識に広まった。最新の水の科学の世界において、「水は情報を記憶する」ということが実験的に示唆もしくは証明されるまでに至った理由として、そのような作用が働いたのではないか。その可能性について、議論する。
著者
永田 孝信
出版者
学校法⼈ 大阪音楽大学
雑誌
大阪音楽大学研究紀要 (ISSN:02862670)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.23-42, 2016-03-01 (Released:2021-04-01)

本稿は、ベートーヴェンのピアノソナタについて、使用される調の数、主調との近親関係の有無、転調の頻度及び和声の観点から、この作曲家のソナタ形式における展開部の発展的方向性の詳細を明らかにするものである。このため、ベートーヴェンの32のピアノソナタの中から異なる年代に作曲された8曲を選び、それぞれ第1楽章ソナタ形式の展開部における調と和声の特徴的な展開手法について説明する。その上で、展開部が調の流動性と安定性の対比に基づいて構成される状況、また、調的展開に対する考え方が展開部に留まらず、次第に提示部・再現部・コーダ等の各構成区分や主題間の移行部、さらには主題の内部にまで浸潤していく状況を明らかにし、その背後にあるベートーヴェンの表現的着想の解明を試みる。本稿の特徴は、展開部において使用される調の範囲と調の推移の状況を曲ごとに図式化し、その特徴点を列挙するミクロ的なアプローチと、各曲に使用される調の実数と延べ数を算出して、全般的な傾向を俯瞰するマクロ的なアプローチを併用したことにあり、両者が相まって各論点に着実な根拠が示されるように努めた点にある。
著者
福本 誠 今村 佑介 井上 誠 今井 順一
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第27回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.227, 2011 (Released:2012-02-15)

我々は先行研究において,進化計算の一つである差分進化アルゴリズムをもとに,対比較を続けることでユーザの好みや感性に適した香りを生成する技術を提案した.ユーザの評価方法としては,二台の香り発生器アロマジュールから提示される二種類の香りを嗅いで比較してもらい,好みの方を選択してもらうという単純な対比較を用いる.本研究では,この手法の収束効率や解探索を改善する手法を提案する.改善点として,効率の良いアルゴリズムの利用,粒度の粗い探索,を施した.実験を通じ,収束効率が高まることを示した.ただし,主観評価については一部の結果でよい結果が得られたものの,途中で評価値が低下した.これらの結果は,有効性を十分に示したわけではないが,提案手法の可能性を示すものであった.
著者
岡本 一輝 河本 敬子
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.373-374, 2019-02-28

近年、メガネのデザイン性が向上しており、ファッションアイテムとしても用いられている。しかし、ユーザ好みのメガネ選択のためには、多くの時間を要することが多い。 対話型進化計算(IEC)とは、人間の感性を最適化系に組み込み、ユーザの評価に基づいて最適解を得ることができる。そしてIECに差分進化(DE)を取り入れると、ユーザの操作時間と収束世代数を減少させることができる。 本研究では、このIECにDEを取り入れたメガネデザインシステムを提案する。DEは、スケーリングパラメータによって計算結果が異なってくる。今回は、この値を7つ用意し、最もユーザの評価を得られ、操作時間と収束世代数が削減できる値を検討することを目的とする。
著者
初田 香成
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.69, no.579, pp.105-110, 2004-05-30 (Released:2017-02-09)
参考文献数
33
被引用文献数
3 2

The purpose of this paper is to review the urban redevelopment history of postwar Tokyo from the view point of wooden barrack pub area. Wooden barrack pub area was rooted in postwar black market, and mainly transformed during postwar reconstruction and high growth. In former age it continued as same form, but in later age it changed in various elements such as trade style, institution of redevelopment, trend of business owners, and structure of land ownership. Consequently the urban space especially around the railroad station was transformed. Wooden barrack pub area functioned as an incubator through which newcomers assimilated into the big city, and walked ahead of new urban redevelopment and urban space.
著者
松尾 彰久
出版者
一般社団法人 埼玉県作業療法士会
雑誌
作業療法学芸雑誌 (ISSN:27585921)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.14-25, 2023-06-30 (Released:2023-07-12)
参考文献数
46

本研究ではKH Coderによる計量的分析を行い、得られたデータを対応分析と共起ネットワークを活用し図解化を実施することで分析し、作業療法の変遷を計量的に捉え分析する。以上より、1917年から2017年までの100年間の作業療法のパラダイムの変化から、今後の示唆を得ることを目的とした。方法:PubMedに掲載されている論文の情報から、“occupational therapy“を含む論文タイトルを抽出する。結果:論文タイトルは全部で22,681であった。年代と特徴語の関係では、1940年代、1950年代、1960年代、1970年代は、“hospital“と近い位置に布置されており、“role“が1980年代と近い位置に布置されていた。また、“intervention“は2010年代と近い位置に布置されていた。考察:1980年代から1990年代は「新たなモデルのパラダイム」、2000年代から2010年は「エビデンスのパラダイム」とすることができると考えた。
著者
山内 信義
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会誌 (ISSN:09120289)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.1281-1283, 1992-08-05 (Released:2009-10-08)
参考文献数
2
著者
西藤 清秀 吉村 和昭 岡崎 健治 篠田 謙一 米田 穣 吉村 和久 板橋 悠 阿部 善也
出版者
奈良県立橿原考古学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2022-04-01

2022年度から2025年度にマカバ1号墳のできるだけ多くの石室の調査を実施し、副葬品の考古学的分析、人骨の人類学的分析や理化学分析を通して被葬者の人体的特性や集団構成、食性、出生地の同定を行う。またマカバ第1号墳の被葬者との特性の比較を行うために、1号墳の隣接地に所在するマカバ古墳群東地区の古墳を調査し、1号墳と同様の分析を実施する。最終年度の2026年には補足調査・分析を行い、結果をまとめる。
著者
原口 公子 山下 俊郎 重森 伸康
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.407-415, 1985-12-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
17
被引用文献数
1

環境大気中に存在するリン酸トリエステル類について試料の採取方法並びに分析方法を検討した。試料の採取は, ハイボリウムエアサンプラーを用い, ガラス繊維ロ紙の下にXAD-7樹脂を入れたステソレス製円筒を取り付けて, 吸引流速700l/分で24時間行った。採取した試料は, ソックスレー抽出器で抽出後, 酸・アルカリで処理し, シリカゲルカラムを用いて分画する。各溶離液は濃縮後N-P検出器付ガスクロマトグラフで溶融シリカキャピラリーカラムを用いて定量した。添加回収実験は, 8種類の標準物質のアセトン溶液をロ紙上に添加して, 上記の操作を行い回収率を求めた。その結果, リソ酸トリジクロロプロピルとリン酸トリフェニルは, ロ紙上に捕集され, 沸点がそれ以下のリン酸トリブチルやリン酸トリクロロエチルは主に樹脂上に捕集されることがわかった。この方法を環境試料に適用しGC/MS-MFで同定した結果, 大気中には, リソ酸トリエチル, リソ酸トリプチル, リソ酸トリクロロェチル, リン酸トリクロロプロピル, リン酸トリジクロロプロピル, リン酸トリフェニルの存在が確認されその濃度は2~5ng/m3程度であった。
著者
木村 泰知 近藤 隆史 門脇 一真 加藤 誠
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.FIN-029, pp.32-38, 2022-10-08 (Released:2022-10-01)

This paper proposes an Understanding of non-Financial Objects in Financial Reports (UFO) task. The UFO task aims to develop techniques for extracting structured information from tabular data and documents, focusing on annual securities reports. We will provide a dataset based on annual securities reports and organize an evaluation-based workshop for participants. The UFO task consists of two subtasks: table data extraction (TDE) and text-to-table relationship extraction (TTRE). The table data extraction subtask aims to extract the correct entries and values in the tables of the annual securities reports. The text-to-table relationship extraction subtask aims to link the values contained in the tables with the relevant statements in the text. In this paper, we describe an overview of the UFO task.
著者
Peijian Zhang Kunfeng Zhu Wensuo Chen
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
IEICE Transactions on Electronics (ISSN:09168524)
巻号頁・発行日
pp.2022ECP5059, (Released:2023-07-04)

In this paper, a novel trench MOS barrier Schottky contact super barrier rectifier (TMB-SSBR) is proposed by combining the advantages of vertical SSBR and conventional TMBS. The operation mechanism and simulation verification are presented. TMB-SSBR consists of MOS trenches with a vertical SSBR grid which replaces the Schottky diode in the mesa of a TMBS. Due to the presence of top p-n junction in the proposed TMB-SSBR, the image force barrier lowering effect is eliminated, the pinching off electric field effect by MOS trenches is weakened, so that the mesa surface electric field is much larger than that in conventional TMBS. Therefore, the mesa width is enlarged and the n-drift concentration is slightly increased, which results in a low specific on-resistance and a good tradeoff between reverse leakage currents and forward voltages. Compared to a conventional TMBS, simulation results show that, with the same breakdown voltage of 124 V and the same reverse leakage current at room temperature, TMB-SSBR increases the figure of merit (FOM, equates to VB2/Ron,sp) by 25.5%, and decreases the reverse leakage by 33.3% at the temperature of 423 K. Just like the development from SBD to TMBS, from TMBS to TMB-SSBR also brings obvious improvement of performance.
著者
山崎 奈穂
出版者
国立研究開発法人国立国際医療研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

B細胞亜集団である制御性B細胞はIL-10産生を介して強い抗炎症機能を持つが、IL-10産生機構のその全貌は不明であった。申請者は、IL-10レポーターマウスを用いて、IgM+形質細胞がIL-10の主な産生源であることを見出した。また、B細胞におけるIl10の発現は形質細胞分化の必須分子であるBlimp1と強く相関し、遺伝子導入実験からBlimp1がIl10の発現を誘導することを明らかにした。また、IL-10産生性形質細胞は、B細胞が抗原刺激を受けた際にIgG+形質細胞へ分化する過程および抗原特異的IgGの産生をサポートする機能を持つことが示唆された。
著者
平野 勉
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.5, pp.1029-1036, 2017-05-10 (Released:2018-05-10)
参考文献数
22

糖尿病治療の目標は,合併症の発症・進展を阻止し,健康な人と変わらない日常生活の質の維持と寿命の確保である.しかし,糖尿病治療薬(血糖低下薬)の中には心血管疾患(cardiovascular disease:CVD)による死亡を増やしてしまうものもある.その中にあって,glucagon-like peptide(GLP)-1受容体作動薬とsodium glucose cotransporter 2(SGLT2)阻害薬には,CVDイベントや死亡を有意に低下させるものが報告され,大きな話題となっている.高血糖は血管内皮の傷害など,動脈硬化のプロセスを促進させるため,基本的に血糖低下薬は動脈硬化と,それに基づくCVDを抑制する.しかし,重症低血糖,体重の増加を伴うとむしろCVDを増加させてしまう.メトフォルミンや最近の糖尿病治療薬はこれらの懸念が少ない薬物である.高血圧や脂質異常症などに対する包括的なリスク管理がCVD予防には効果的であるが,糖尿病治療薬の特性を考慮して上手に使うこともさらなるCVD予防につながる.