著者
松原 隆彦
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

高赤方偏移宇宙の大規模構造からいかにダークエネルギーをはじめとする宇宙論的な情報を得るかについて、解析的な方法と数値的な方法の両面から詳細に研究した。とくにバリオン音響振動を用いてダークエネルギーの制限を得るために必要な理論的に強力な手法を開発した。そして実際のSDSSデータを解析した。さらに、宇宙初期状態を探るために重要な、ゆらぎの非ガウス性に関する情報を得るため、必要な理論的手法を確立した。その手法を用いて、宇宙マイクロ波背景放射温度ゆらぎのデータを解析した。
著者
石田 奈那 長谷川 雅美 尾崎 真澄
出版者
公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
雑誌
伊豆沼・内沼研究報告 (ISSN:18819559)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.91-102, 2020 (Released:2020-08-20)
参考文献数
19

東アジア原産のコウライギギTachysurus fulvidraco は2008 年に日本で初めて発見され, 2016 年に特定外来生物に指定された.本種による生態系や社会経済への影響が懸念されているが,その実態はいまだ明らかではない.そこで,本種の侵入が確認された印旛沼を対象に,その生息状況と水産業への影響について調査した.本研究では2018 年5 月から12 月に採捕された試料の生殖腺指数や体サイズの変動から,繁殖期が少なくとも5 月から7 月頃であると推定された.さらに漁業で混獲される個体の多くは,食品への混入リスクが高い当歳魚であることがわかった.また本種による水産業への被害の有無を明らかにするため,アンケート調査を行った.その結果,本種の鋭い棘条によって漁業者や水産加工業者が怪我をするほか,加工原料となる小魚に混入し仕分け作業が増加するといった被害が明らかになった.
著者
杉山 直 野尻 伸一 市來 淨與 辻川 信二 西澤 淳 松原 隆彦
出版者
名古屋大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-06-29

Planckを中心とする最新の天文観測データを用いてダークエネルギーモデルに対する制限を得た。理論的に動機づけされた様々なダークエネルギーモデルの提案を行うと共に、現在の観測を満足する理論のパラメータ領域を求めた。ダークエネルギーとダークマターが相互作用を持つモデルにおける宇宙論的摂動論を構築し、そのようなモデルは宇宙の構造形成を遅くすることを見出した。宇宙大規模構造に形どられたボイドの数密度やサイズに対するダークエネルギーの密度揺らぎの影響を定量的に明らかにし、Alcock-Pachinskyテストによりダダークエネルギーの密度と状態方程式への制限が偏り無く行えることを示した。
著者
松原 隆彦
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

宇宙論的な非線形摂動論における独創的な理論手法である「統合摂動論」の枠組みの中では天体のバイアスを一般的に扱うことができる。天体バイアスの具体形については不定性があるが、バイアス関数というものが重要な役割を果たす。本研究では、いくつかの異なるバイアスモデルについて具体的にバイアス関数を求めることに成功した。さらにそれを用いて最終的な観測可能量であるパワースペクトルや相関関数などがバイアスの違いによってどのような影響を受けるかを系統的に調べた。その結果、大スケールになるほど、また、高赤方偏移になるほど、バイアスモデルによる違いは小さくなることを明らかにした。
著者
林 洸太 原 由紀則 星川 慎弥 田尻 康人
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.631-634, 2016 (Released:2016-10-07)
参考文献数
13
被引用文献数
2

肩関節脱臼により障害される神経として腋窩神経以外の神経麻痺を合併することも稀ではない.今回,低エネルギーでの肩関節脱臼に伴う神経麻痺22例を対象として,麻痺発生頻度と各損傷神経の回復過程を検討した.損傷神経の発生頻度は肩甲上41%,腋窩73%,筋皮41%,橈骨59%,正中73%,尺骨64%であった.麻痺回復期間は,各神経の代表的支配筋間で有意差はなかったが,近位筋(三角筋;腋窩,上腕二頭筋;筋皮,橈側手根伸筋;橈骨)と遠位筋(小指外転筋;尺骨,示指深指屈筋;正中)と定義して比較すると,近位筋が3.6±1.8ヶ月,遠位筋が10.3±8.9ヶ月で,後者の回復が前者より有意に遅れていた.回復期間に影響を及ぼす可能性のある因子の比較において,軸索変性の有無を比較すると,遠位筋麻痺では軸索変性があると有意に回復が遅かった.遠位筋麻痺症例では軸索変性の有無の鑑別により回復時期の判断が可能であり電気生理学的検査を行うことが望ましい.
著者
松原 隆彦
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

宇宙の大規模構造という観測量から、初期宇宙の物理を探求するための手法を模索する。これまでに研究代表者は、大規模構造の統計量について準非線形領域で力学的な統計解析を系統的に行う手法である統合摂動論を確立した。この理論を初期宇宙における具体的な問題に応用することにより、独創的な成果を得ることができる。具体的な研究課題は2つある。ひとつめは、インフレーション理論において励起される可能性のある初期ゆらぎの非ガウス性を宇宙の大規模構造の統計解析によって制限することである。ふたつめは、初期宇宙に形成される可能性のある原始ブラックホールがどのような空間的分布をするのか調べることである。

1 0 0 0 OA 魚類胃ノ解剖

著者
岡本 規矩男
出版者
金澤醫學專門學校十全會
雑誌
金澤醫學專門學校十全會雜誌
巻号頁・発行日
vol.23, no.7, pp.1-12, 1918-07-01
著者
新谷 聡 末政 直晃 水谷 崇亮 西村 真二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00287, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
15

最近の港湾の基礎構造物では,大口径の鋼管杭が採用されているが,これには先端抵抗力の設計において閉塞の状況が影響を及ぼすため不確実性が高いという課題がある.そこで,鋼管杭に代わり杭先端から杭頭に向かい拡径する形状のテーパー杭に着目した.テーパー杭は,打込み過程において地盤を押し拡げ,周面摩擦力を増加させる効果が報告されている.しかしながら,大口径テーパー杭に関してはこれまで充分な知見がないため,その特性を把握するために載荷試験を実施した.その結果,大口径テーパー杭においても打込み過程において地盤を押し拡げ,周面摩擦力を増加させる効果があることが確かめられた.
著者
Yoshimune Nonomura Haruna Ogura Tatsunari Ueda Masashi Shibata Kousuke Hiromori Naomi Shibasaki-Kitakawa
出版者
Japan Oil Chemists' Society
雑誌
Journal of Oleo Science (ISSN:13458957)
巻号頁・発行日
pp.ess23023, (Released:2023-07-20)

Raw materials suitable for a sustainable society have attracted interest in the cosmetics industry. We focused on rice bran as a sustainable material and evaluated the gelation behavior of paraffin extracted from rice bran (rice paraffin) against liquid paraffin, squalane, jojoba oil, and silicone oil. In addition, the frictional properties of the prepared organogel on an artificial skin surface were evaluated using a sinusoidal motion friction evaluation system. Rice paraffin solidified all oils even at the lowest wax concentration of 5 wt%. The hardness and kinetic friction coefficient μk increased with an increase in the wax composition. The hardness and μk of organogels solidified with rice paraffin were smaller than those of gels solidified with petroleum-derived paraffin. These differences are caused by the smaller carbon amount of rice paraffin. The friction parameters depended on the type of oil: the μk of RLG composed of rice and liquid paraffin was greater than that of the other three oils (R, L, and G denote rice paraffin, liquid paraffin, and gel, respectively). These findings promote the development of lipsticks and cleansing gels consisting of sustainable development goal-responsive raw materials.
著者
川合 安
出版者
東洋史研究會
雑誌
東洋史研究 (ISSN:03869059)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.300-323, 1989-09-30

During the Six Dynasties period, District Governors monopolised local politics. This they did by concurrently holding the position of Governor in both the Military Government structure (junfu 軍府) and the Civilian Government structure (zhoujun 州郡). From the end of the Western Han through to the Wei jin 魏晉, the body guard units assigned to protect the District Governors were called the "House Guards" (zhangxia 帳下). The leaders of these units were called "House Guard Commanders" (zhangxia-du 帳下督). These House Guards belonged not to the civilian government but to the military government. However, during and after the Eastern Jin period, the function of the House Guard began to change and took on more the meaning of a service unit, providing food, etc. In the Eastern Jin, examples of the House Guard being used as body guards could still be seen. However in the Southern Dynasties they had completely lost their military character and had become purely service units. Accompanying this change in function, was the birth of various terms such as suishen 隨身, zhihe 直閤, fanghe 防閤 etc, all of which had the implied meaning of body guard. On the other hand, during the Wei jin period, when the House Guards had not yet become service units, the service units of the military organizations were called chu 廚. The House Guards as service units, in the military structure, are thought to have had the functions of procuring natural products from the surrounding mountains and valleys and to make a profit selling these. Also, in the Southern Dynasties, the House Guards played a central role in the management of special funds which were under the control of the District Governors.
著者
桂 昌司
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.117, no.3, pp.159-168, 2001 (Released:2002-09-27)
参考文献数
41
被引用文献数
1 2

依存性薬物による依存形成および退薬症候の発現機序の解明のために, 従来より諸種の実験モデル動物あるいは臨床症例を用いた薬理学的·神経化学的研究が数多く行われているが, 得られる成績には必ずしも統一した見解が得られていない.こうした見解の相違は, 主として実験に供される依存動物モデルの作製法およびその依存形成の判定法の違いなどに起因することから, 従来の方法を用いて薬物依存の成立機序を明らかにすることは困難が少なくないと考えられ, 薬物依存成立時あるいは退薬症候発現時に脳内で常に変化を来す機能性タンパクを見出し, 細胞レベル以下でのこれらタンパクの発現機序を解析することがこれらの研究のための1つの方法となり得ると考えられる.そこで, 著者らは諸種の薬物依存の成立過程ならびに退薬症候発現時に共通に認められる精神症状の1つとしての「不安」症状に着目し, 内在性不安誘発物質として同定されているdiazepam binding inhibitor(DBI)の脳内変化を測定することにより,「不安」の観点から薬物依存成立の機序との関連性とその機能的意義について, 代表的な依存性薬物であるアルコール(エタノール), ニコチンおよびモルヒネを用いて解析を試みた.その結果, 脳内DBI発現はこれら依存性薬物の連続投与に伴う依存形成時に有意に増加し, 依存性薬物の投与中止に認める禁断症状発現時にはさらに増加することが確認された.しかもこれらいずれのDBI発現の増加も, 使用した依存性薬物(ニコチンおよびモルヒネ)ではその特異的受容体拮抗薬の併用投与により消失した.したがって, 薬物依存の形成および禁断症状の発現に脳内DBIの発現変化が機能的に関与していること, およびこの現象は諸種の依存性薬物により誘発される薬物依存の形成に共通の生体内反応である可能性が強く示唆される.またDBIの発現機序の解析は, 今後薬物依存の形成過程ならびにその禁断症状発現の機序を明らかにする上で重要な役割を担う可能性があると考えられる.
著者
上野 耕平 里見 知昭 高橋 弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00251, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
16
被引用文献数
1

軟弱な災害発生土を被災地から搬出する際に,高吸水性ポリマーを添加して流動性を低減させる手法が注目されている.搬出された災害発生土は改良され地盤材料に再利用されることが望ましいが,内包される高吸水性ポリマーの吸水膨張が改良土の耐久性に及ぼす影響は明らかにされていない.本研究では,塩化鉄との反応によって高吸水性ポリマーの吸水膨張を抑制する手法を検証した.さらに,既存の軟弱土固化処理技術である「繊維質固化処理土工法」により得られた改良土を用いて乾湿繰返し試験を実施した結果,内包される高吸水性ポリマーの吸水膨張により改良土の耐久性が低下すること,また,塩化鉄の作用により高吸水性ポリマーの吸水膨張が抑制され,改良土の耐久性の低下を抑制できることを明らかにした.
著者
鵜川 信 藤澤 義武 大塚 次郎 近藤 禎二 生方 正俊
出版者
一般社団法人 日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.105, no.7, pp.239-244, 2023-07-01 (Released:2023-07-20)
参考文献数
33

ニホンノウサギが主軸を切断できるコウヨウザン植栽苗のサイズを明らかにすることを目的として,様々なサイズ(苗高82~197 cm)のコウヨウザン苗を鹿児島県垂水市のスギ皆伐地に60本植栽し,ノウサギによる主軸の切断を1年間にわたり観察した。実験中に15本の苗木が枯死したが,そのうちの1本は枯死前に主軸の食害を受けていた。生残苗では,25本の苗木で主軸の食害がみられた。苗木のサイズが大きくなるほど主軸の食害がみられなくなり,一般化線形モデルでは,植栽時の苗高が140 cm以上,または,高さ60 cmの幹直径が15 mmを超える苗木であれば主軸食害を受ける確率が10%まで低下することが推定された。したがって,植栽した苗木が成長し,苗高や幹直径がこれらの数値を上回れば,ノウサギによる主軸の切断を受けにくくなると考えられた。
著者
小林 真貴子 石井 裕泰 藤原 斉郁 笠間 清伸
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00246, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
16

セメント改良地盤の品質は地盤の不均質性や固化材の混合性などの影響を受けるため,適切な品質管理が求められる.一軸圧縮試験による現行の品質管理が,サンプリングされた供試体による標本調査に基づく強度把握であるのに対し,一軸圧縮試験では把握できない弱部の有無や連続的な強度分布を確認できる方法として針貫入試験がある.本研究では,針貫入抵抗値から一軸圧縮強さを推定する式に論理性を加えて,針貫入試験による強度推定精度の向上を目指している.本論文では,まず机上型装置での多点測定に基づく新たな推定の考え方を提案し,次にその検証のために,供試体作製法や強度の範囲が異なる種々のセメント改良土を対象に測定を行った.最後にその結果を用いて,具体的な推定式を提示し,提案推定方法の妥当性や推定精度の向上を確認した.
著者
渡辺 力
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.23-00050, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
21

本研究では,接着工法の構造解析における複合材料や等方性材料のモデル化ために,ハイアラーキ六面体要素の変位関数にZIG-ZAG項を付加したハイアラーキ異方性積層要素を開発する.ZIG-ZAG分布となる変位を効果的に表すためのZIG-ZAG関数には,Region-wise ZIG-ZAG理論の領域ZIG-ZAG関数を用いる.さらに,このハイアラーキ異方性積層要素を用いて,改良ZIG-ZAG理論,Region-wise ZIG-ZAG理論,Layer-wise理論,それぞれの数学モデルと同じ変位場を規定した複合材料解析モデルを構築する.異方性積層板,等方性平板,サンドイッチ板の三次元応力解析に用いて,精度と収束性,適用性が検証されている.

1 0 0 0 OA 天理教処分論

著者
池田良吉 著
出版者
護法書院
巻号頁・発行日
1896
著者
福井 篤
出版者
公益社団法人 日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.8-11, 1962 (Released:2009-09-04)

北海道宗谷本線の問寒別 (といかんべっ) と雄信内 (おのつぶない) との間に, 天塩川の屈曲にそってかなり長い鉄橋がある。下平陸橋と呼ばれ, 全長約140m, 河を越えているわけでないから陸橋と呼ばれている。この鉄橋が昨年 (昭和36年) 1月26日なだれのため一瞬にして破壊された記憶はまだ新しい。このときのなだれの状況や事故の経過については, 本誌のVol.23.No.2に旭川鉄道管理局保線課長の福山氏が詳しく報告されている。