著者
川手 圭一
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、国境変更後にポーランド国内に居住することになったドイツ人住民を主体・客体として展開した「国境を超える」「ホームランド・ナショナリズム」の実態を追った。そのさい、併せてドイツ国内のポーランド人住民、とりわけドイツ本土から「ポーランド回廊」によって切り離された東プロイセンのポーランド人を取り巻くナショナリズムの問題にも注目することで、「ホームランド・ナショナリズム」の客体として翻弄される国境地域の住民の社会的問題を明らかにした。
著者
日高 圭一郎
出版者
九州産業大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、福岡県福岡市において開催される「博多どんたく」及び「博多祇園山笠」を紹介した観光パンフレット(以下、観光情報媒体)を収集し、分析対象とした。収集した観光情報媒体から、「博多どんたく」及び「博多祇園山笠」を被写体とした観光写真を抽出し、それぞれについて写真枚数、写真面積、写真中における「祭り」部分の面積、「祭り」の前景・背景に撮影されている景観要素別の面積を計測した。前年度に実施した福岡県北九州市の4っの「祭り」の同様の計測結果とあわせて、計測結果の分析を実施した。その結果、各祭りとも写真中における「祭り」部分の面積は、70%前後であることがわかった。また、昨年度、北九州市の分析結果とほぽ同様の傾向が、福岡市における「祭り」においても見られることがわかった。つまり、第一に市街地の風景を前景・背景とする場合が少なく、観光情報媒体の製作者又は情報提供者は、市街地の風景は祭りの前景・背景としてふさわしくないと判断していること、第二に祭りの開催空間の景観整備が観光対象としての祭りの魅力向上に寄与する可能性があることが、北九州市の固有の特徴ではなく、「祭り」を被写体とした観光画像情報の一般性的特徴であることがわかった。以上の研究と並行し、「祭り」が多く行われる場所である神社の立地的特徴についても調査研究を実施した。具体的には明治期の観光画像情報として位置づけられる「名所図録図会」に掲載された名所といわれた神社の立地点について分析を行った。分析の結果、微地形の観点から、名所といわれた神社の立地点は3タイプ(微高地、平地、山頂)に分けられることなどが明らかになった。
著者
竹下 享典 沼口 靖 新谷 理 柴田 怜 室原 豊明
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

血管新生は既存の血管から新たな血管枝が分岐して血管網を構築する生理的現象であり、その制御は、虚血をきたした組織の血流の改善、あるいはがん細胞増殖の抑制のために重要な治療ポイントである。本研究では、受精卵から成体になる過程で重要な役割を果たすことで知られるNotchシグナルが、成体の虚血組織の血管新生においても重要であることを、細胞内シグナル解析および遺伝子改変マウスを用いて明らかにした。
著者
小林 聡 宮川 眞一 清水 明
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

癌細胞に特異的に結合するペプチドが同定できれば、そのペプチドで抗癌剤を修飾し、癌組織により高濃度に、また非癌部組織により低濃度に抗癌剤を分布させ、効果を高めつつ副作用の低減を図ることが可能となる。当研究では、ファージライブラリーを用いたバイオパンニング法という方法で、肝細胞癌に特異的に結合するペプチドを同定した。同ペプチドを提示したファージ、ならびにビオチン修飾した同合成ペプチドを用いて、各種悪性腫瘍由来細胞株ならびに肝細胞癌手術切除標本において、その肝細胞癌結合性を確認した。
著者
松永 達雄 幸池 浩子 務台 英樹
出版者
独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ミトコンドリアDNAのA1555G変異とA3243G変異およびGJB2遺伝子変異を除外した日本人の原因不明の両側性感音難聴患者(先天性難聴100家系および後天性難聴120家系)において、これまでに難聴遺伝子としての報告があるミトコンドリア遺伝子7種類(12SrRNA、tRNA Leu (UUR)、tRNA Ser (UCN)、tRNA Lys、tRNA His、tRNA Ser (AGY)、tRNA Glu)の変異をスクリーニングした。この結果、難聴者のみで同定される遺伝子変異が、12SrRNA遺伝子を含む2遺伝子に同定された。本研究成果は日本人難聴者の診断におけるミトコンドリア遺伝子変異解析の重要性を示すものである。
著者
張本 鉄雄
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は二ビーム励起およびアイドラ光の最適化制御による光パラメトリックチャープパルス増幅の超広帯域化と安定化の新しい方式を考案し、ペタワット(1PW=10^<15>W)・サイクル(数フェムト秒)パルスレーザー光の発生を目的とした。研究成果として、スペクトルバンド幅400nmを超えるレーザーパルスの増幅を実現した。また、光パラメトリックチャープパルス増幅に関する簡易な光学設計法を開発した。
著者
橋本 修 高橋 英則 本田 敏志 田口 光 衣笠 健三
出版者
群馬県立ぐんま天文台
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

恒星進化末期の漸近巨星枝(AGB)にある炭素星の形成とその進化シナリオを検討するため、炭素星の可視高分散分光観測を行い、炭素の同位体比^<12>C/^<13>Cを測定する。ぐんま天文台のGAOES分光器を用いることによって、高い波長分解能でありながら、かつ広い波長領域を網羅した高精度の可視分光データを大量のサンプルに対して取得した。この様な大型サンプルに対する高精度の炭素同位体比の測定はこれまでに類をみないものである。
著者
TRENSON Steven (2010) 西山 良平 (2008-2009) TRENSON Steven
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

平成22年度は、醍醐寺の龍神信仰の日本中世の宗教における意義についての研究をまとめる作業をした。本研究の主眼は、醍醐寺の龍神信仰の日本中世の宗教における重要性に光を当てることである。日本宗教史学では11世紀末~12世紀初めに真言密教思想を基層とする日本中世の宗教が確立したとされているが、この真言密教思想の内容と特徴が十分に理解されているとは限らない。というのは、中世の真言宗の神髄が宝珠信仰にあることはすでに先学の研究によって明らかにされたが、この宝珠信仰の内容、そしてその成立と展開については、なお検討する余地が多いのである。しかし、11世紀末~12世紀初めの醍醐寺(真言宗の主要寺院の一つ)では龍神信仰が発達し、その後、その信仰が醍醐寺を中心とする宗教ネットワークの中で広まった。それゆえに、龍神信仰が宝珠信仰と不可分であるので、日本中世の宗教の形成史と有様を解明するために、醍醐寺の龍神信仰とそれと直接にかかわると考えられる諸宗教形態(神道灌頂、玉女信仰、室生山や三輪山の龍神信仰、宇賀弁財天信仰など)について検討することにした。この研究の成果・意義として主に次の点があげられる。(1)真言宗の宝珠信仰(仏舎利と龍神の宝珠との同体説)が、まず真言宗の雨乞儀礼を背景に展開し、その後、醍醐寺の密教の根本教義として伝承されたという点。(2)中世の醍醐寺では、龍とその宝珠が、天地陰陽及び両部曼荼羅(胎蔵と金剛界)を一体化する霊物と見られたが、その化身がほとんど女性の密教の神(仏眼、愛染明王、ダキニ天)であるという点。(3)醍醐寺で葬られていた白河院の中宮賢子が"玉女"(女性として現れる宝珠)として崇敬され、その崇敬が宝珠を女性の神と見る観点を促した可能性。(4)神道・即位灌頂の本尊が宝珠の女性の化身であるという説、(4)醍醐寺の龍神・宝珠信仰が地方の霊場(伊勢神宮室、生山、三輪山)へ伝承され、この信仰こそがこれらの霊場と縁が深い両部神道の基盤となったと考えられる点である。
著者
福岡 万里子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本年度は、(1)幕末維新期における日独関係の基礎を築いたプロイセン東アジア遠征をテーマとする博士論文の執筆を進め、また(2)ドイツ・オランダにおいて短期の研究調査旅行を実施した。以下、(1)・(2)の具体的内容を略記し、(3)でその意義を述べる。(1)博士論文執筆:プロイセン東アジア遠征は、東アジアとドイツ諸国との間の通商関係樹立のため、プロイセン政府が1860〜62年にかけ日本・中国・シャムへ派遣した外交使節団である。博士論文は、(1)同遠征実施の誘因となった19世紀中期における東アジア・世界情勢の変容過程を明らかにした上で、(2)遠征が幕末動乱期の日本に英・米諸列強に遅れて到来するに当たって生じた諸問題を、マルチ・アーカイヴァルな手法に基づき、実証的に解明することをねらいとしている。この博士論文を構成する章として、本年度は一連の論考を執筆した。学会誌『洋学』17(2008年度)号(査読有・未公刊)への掲載が決定している論文「19世紀中期の東アジアとドイツ諸国」、及び後記「研究成果欄」に記載した、学会発表「日蘭追加条約をめぐる「誤解」に関する考察」は、その成果の一部である。(2)研究調査旅行:年度末にはベルリン・ライデンを計3週間の日程で訪問し、プロイセン枢密文書館、ベルリン国立図書館、ライデン大学図書館等で資料調査・収集を行った。その結果、19世紀中期の日本・東アジア情勢に関する欧米側理解、プロイセン東アジア遠征、及び幕末のオランダ対日政策に関する、一連の貴重な外交一次史料・文献を入手した。オランダでは加えて、幕末日蘭関係史の専門家であるヘルマン・ムースハルト博士を訪問し、研究上の指導を受けた。(3)意義:幕末の日本開国史については、国内的な政治・外交過程分析、及び日米・日英関係史などの観点から、多くの研究が蓄積されてきた。しかしそこでは、遅れた近代化過程の渦中にあったドイツが、プロイセン東アジア遠征によって日本・東アジアの開国過程に遅れて参と与した際、その「遅れ」の故に、どのような特徴的な諸問題に遭遇し、日本開国過程にいかなる影響を及ぼしたのか、といった問題は、全く考慮されてこなかった。本研究の意義は、プロイセン東アジア遠征の実施過程をこのような観点から分析することによって、日本近代化の出発点となった幕末史を、19世紀中期の世界史的潮流の中に置き直そうとする点にある。
著者
山形 英郎
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

住民保護責任を中心概念として、「人間の安全保障」と「国家の安全保障」の関係を研究した。人間の安全保障には、日本を中心とした平和的なアプローチとカナダを中心とした軍事的なアプローチがある。前者によれば、人間の安全保障は国家の安全保障と矛盾するものではなく、相互に補完的な関係を有している。その一方で、後者であれは、人間の安全保障の優位が認められ、国家の安全保障が毀損される場合がある。とりわけ、破綻国家のような場合には、国際社会の介入が許されるとされ、破綻国家の王権=安全保障が害される可能性があるめである。しかも、そうした介入の対象となるのは、破綻国家であり、途上国を中心として中小国である。しかも、そうした介入が、介入国にとって、テロ防止の名目で行われる場合があり、被介入国の主権=安全保障を犠牲にして、介入国の主権が強化されることになる。そうした一方性が存在していることを明らかにした。アフリカ連合では、住民保護責任概念の拡大傾向がある。また、国際司法裁判所のジェノサイド条約適用事件では、住民保護責任の影響が判決の中に出始めている。その一方、国連事務総長が作成した「住民保護責任の実施」文書によれば、国際社会が実施する住民保護責任は、国連の集団安全保障制度の枠内でのみ可能であるとされ、住民保護責任限定花が行われている。濫用を戒めているのである。住民保護責任が一般国際法上の概念として確立するまでには至っていないが、国際法上の主権概念に大きな変容をもたちす可能性をもっていることに注意が必要である。
著者
大野 旭
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は1966年から1976年にかけておこなわれた中国文化大革命の歴史的推移を少数民族の一つ、モンゴル族の視点から現地調査を実施し、文化大革命という政治運動の「民族問題的な側面と性質」を明らかにしようとするものである。中国の少数民族自治地域である内モンゴル自治区の場合、文化大革命運動の深化にともない、少数民族の自治権が剥奪された。また、内モンゴル自治区の固有の領土も約半分が漢族の省に分割され、その上、厳しい軍事管制制度が導入された。1966年から1970年の間、34万人が逮捕され、2万7000人以上ものモンゴル人たちが虐殺され、12万人に障害が残った。当時、モンゴル族の人口はわずか140万人だったことから、全モンゴル族を巻きこんだこの政治的な災禍をモンゴル人たちはジェノサイドだと理解している。本研究は、この隠蔽されつづけているジェノサイドこそ、文化大革命時における少数民族問題の本質だと位置づけている。
著者
稲山 円
出版者
東京外国語大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究は、イランの首都テヘランの宗教実践を事例として、イスラームとジェンダーの関係性を検証するものである。今年度は、前年度に引き続き、女性の性質、役割、義務、位置付けなどに関するペルシャ語の文献の分析、およびイランのジェンダーに関する先行研究の検証を進めた。また、12月下旬から約3週間、イランの首都・テヘランにおいてフィールドワークを実施した。イラン人の家庭に滞在し、日常生活を共にしながら宗教実践への参与観察や、家族の成員らへのインタビューを行った。特に調査の時期は、イランが国教とする12イマーム・シーア派の第3代イマームであるホセインが西暦680年にカルバラーで殺害されたこと哀悼する儀礼が行われるヒジュラ暦モハラム月が始まったところであり、今回のフィールドワークでは、この哀悼儀礼への関与に関して、男女によってどのような違いがあるのかに焦点を当てた。方法としては、モハラム月1目から哀悼儀礼がピークを迎える10日までの間の、滞在先の家族およびその親族の成員の行動について、誰とどこでどのように過ごしたかについてインタビューを行い、記録した。これにより、モハラム月に行われる様々な哀悼儀礼への関与に関して、男女という性別による違いだけでなく、世代による違いもあること、その違いは男性間の方が大きいことが明らかとなった。また、モハラム月の哀悼儀礼と親族間の紐帯が密接に関連していることも明らかとなった。帰国後は、これまでの研究成果をまとめ、博士論文の執筆を進めている。
著者
佐々木 智大
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

1995年兵庫県南部地震では,多数のRC橋脚に甚大な被害が生じたことから,あのような被害が生じた原因の究明,破壊メカニズムおよび現在の基準で設計されたRC橋脚の耐震性を明らかにするため,2007年に1体の,2008年に2体の,2009年に1体のRC橋脚の加震実験が(独)防災科学技術研究所が有する世界最大の震動台実験施設E-Defenseを用いて行われた.4体のうち2体は兵庫県南部地震で甚大な被害を受けた,1970年代の基準で設計された高さ7.5m,直径1.8mのRC橋脚(C1-1およびC1-2橋脚)であり,CH橋脚は橋脚基部での曲げ破壊を,C1-2橋脚は軸方向鉄筋が柱中央部で途中定着されており,橋脚中央部でのせん断破壊を想定した橋脚である.また,残り2体のうち1体は現在の基準で設計された高さ7,5m,直径2mのRC橋脚(C1-5橋脚)であり,最後の1体はポリプロピレン繊維補強セメント系複合材料(PFRCC)を橋脚基部に用いた次世代型RC橋脚(C1-6橋脚)である.本年度はこれらの実験結果を詳細の解析をすするとともに,C1-5およびC1-6橋脚の縮小模型の地震動を模擬した載荷実験を行い,寸法効果の評価を行った.また,C1-6橋脚に生じた軸方向鉄筋の抜け出し量を解析することにより,新材料を用いた場合の軸方向鉄筋の抜け出しの影響を評価した.この結果により,これまでの縮小模型実験の結果に基づき実橋脚の破壊特性を評価するために必要なデータを収集するとともに,PFRCCを用いたRC橋脚によって,構造物の耐震性を大きく向土させることが可能になると期待される.
著者
米田 真弓 (中川 真弓)
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究の柱の一つは、日本中世における願文執筆活動を明らかにすることである。その研究の始発として、中世菅家の礎を築いた菅原為長(1158~1246)に着目した。実用的・幼学書的性格を有するものが多く、作文集・作例集の存在も留意される為長の著作のうち、子孫・後世に影響を与えたと考えられる願文集である『菅芥集』(『続群書類従』所収「願文集」の本来の書名)を取り上げ、各願文を読み解くことによって為長の執筆活動を明らかにし、さらには願主ならびに供養対象者の伝記史料しての位置付けをおこなった。特に書写山円教寺関連の願文に着目し、為長による「性空上人伝」の文献的利用について明らかにして、これを論文にまとめた(「祖師の伝記-菅原為長と性空上人伝-」、阿部泰郎編中世文学と隣接諸学2『中世文学と寺院資料・聖教』竹林舎)。当論文によって、菅原為長の執筆活動だけではなく、中世初期における書写山円教寺の状況の一端が明らかになったと考える。また、研究のもう一つの柱としている寺院調査については、以前より参加している金剛寺科研調査(科研代表者:後藤昭雄氏成城大学)において、仁木夏実氏と共同で同寺所蔵の「無名仏教摘句抄」を閲覧・調査し、解題および影印と翻刻の紹介をおこなった(「金剛寺蔵『無名仏教摘句抄』-解題と影印・翻刻」)。さらに、岡山県倉敷市日差山宝泉寺の所蔵資料調査についても、引き続き現地での調査・検討をおこなった。今後も所蔵者の許可を得て、目録の作成作業を続ける予定である。
著者
木宮 正史
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

米韓両国政府外交文書などに依拠して、カーター政権の在韓米地上軍撤退が決定されることで米韓同盟関係が動揺し、朴正熙政権が核開発を試みるなど、自主国防政策に踏み切る過程を明らかにした。また、1975年ベトナム共産化統一、翌76年「ポプラの木」事件など、南北の緊張激化が、米国の対朝鮮半島政策を結局は転換させ、在韓米軍の撤退が撤回されることになる緊張緩和の逆流過程も合わせて明らかにした。最後に、韓国朴正熙政権は、1973年6・23平和統一外交に関する大統領特別声明にしたがって、対共産圏外交を積極的に進め、後の「北方外交」の原型とも言える外交が既に行われていたことを明らかにした。
著者
諸橋 憲一郎
出版者
岡崎国立共同研究機構
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本研究は生殖腺や副腎皮質などのステロイドホルモン産生組織の形成機構を明らかにすることを目的に行われた。主に核内レセプター型転写因子であるAd4BP/SF-1とDax-1の相互関係を明らかにすることに主眼をおいた。結果として、Dax-1遺伝子の転写がAd4BP/SF-1によって活性化されることが明らかになった。またこの活性化がDax-1遺伝子上に存在するAd4配列によるものであることが証明された。しかしながらこれらの結果はin vitro系で得られたものであったため、このような調節が生体内で機能していることを示すことが重要であると思われた。そこでAd4BP/SF-1遺伝子のハクアウトマウスを用い、Dax-1の発現を調べたところ脳下垂体と視床下部における発現は消失していた。この結果は生体内においてもAd4BP/SF-1はDax-1遺伝子の主要な転写因子として機能していることを示すものであった。一方、Dax-1はAd4BP/SF-1の転写活性に対し抑制的に働くことをP450SCCとP45011β遺伝子を用い明らかにしてきた。従って、Ad4BP/SF-1はステロイドホルモン産生に不可欠な遺伝子の転写を活性化するとともに、自らの転写抑制因子の転写を活性化していることになる。このような調節系は微妙な転写調節を可能にするものであると推測される。生体内においてAd4BP/SF-1により発現調節を受ける遺伝子はいずれも組織の特異性を規定するものが多く、その発現量は精密に調節される必要がある。Ad4BP/SF-1とDax-1による一見複雑とも思われる調節系が、このような精密な調節を可能にしているものと思われる。
著者
井上 博愛
出版者
東京大学
雑誌
環境科学特別研究
巻号頁・発行日
1985

本研究においては、空気、又は酸素のみを酸化剤として、熱・触媒電気あるいは光を利用して、排水中の汚染有機物質の効率よい酸化除去プロセスの確立をめざすもので、5つの分担課題により研究が行われた。1.触媒湿式酸化反応による難分解汚染物質の除去:難分解性物質の酸化コバルト触媒による酸化速度を解析し、総括の速度式を導いた。その速度と種々の物質の水素引き抜きの難易とが、よい対応を示すことを明らかにした。さらに、触媒充填における工学的課題についても検討を加え、装置内で効率よく反応を行わせるための触媒担持方式を明らかにした。2.湿式酸化反応による有機汚染物質の改質除去:湿式酸化処理による廃液の好気性生物処理実験を行い、湿式酸化によって、廃液の生物分解性が向上することを明らかにしたが、さらに生物処理の効率を高めるため、新たに開発した多孔質樹脂を利用した生物膜を用いた実験を行い、条件によっては可成りの効率の向上が認められた。3.電解酸化分解による廃液処理の高度化、過酸化水素生成条件および、分解に伴う廃液の酸化処理過程との効率よい結合をめざし、処理装置の設計と、その最適条件の検討が行われた。1段プロセスおよび2段プロセスの、両者の経済評価が行われた。4.高活性触媒を用いた廃液の常温処理:疎水性ポリマー担持白金触媒の調製法を改善し、高分散化をめざすことによって、アルコールの直接酸化活性を著しく向上することが出来た。さらに、二元金属化および分解促進機能を有する担体の利用が試みられた。5.光触媒を用いた廃液の常温処理、酸化チタンの光触媒作用、微量金属銅添加効果を明らかにし、トリハロメタン類の有機汚染物質の脱塩素分解反応を行わせ、その脱塩素速度、および分解速度の解析が行われ、光触媒が極めて優れた効果を与えることを見出した。
著者
番場 俊
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の成果は以下のようにまとめられる。(1)同時代の法的・宗教的言説を背景にドストエフスキーのテクストを分析することで、文学的言語行為としての「告白」の不安定さを浮き彫りにした。(2) 19世紀に引き起こされた視覚の再構成が文学に与えたインパクトを考察した。(3)精神分析と小説の関係の理論的再検討を通して、ドストエフスキーの小説における「突然と」「あとから」の時間構造の重要性を明らかにした。
著者
萩原 治夫 村上 徹
出版者
群馬大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

人の体のつくりについて学習する教材を制作した。本年度は、泌尿器、男の生殖器、女の生殖器、神経、感覚器、からだの中をのぞいてみようのぺ一ジを制作した。「泌尿器」のコンテンツとして、泌尿器のつくり、腎臓のつくりと働き、尿をつくるしくみ、尿管、ぽうこう、泌尿器の病気、エックス線で見る泌尿器を制作した。「男の生殖器」のコンテンツとして、男の生殖器のつくりと働き、精巣のつくりと働き、精子を制作した。「女の生殖器」のコンテンツとして、女の生殖器のつくり、卵巣、卵管、子宮、受精と妊娠、性の決定を制作した。「神経」のコンテンツとして、神経のつくり、神経細胞、中枢神経、大脳のつくりと働き、脊髄、脳神経、脊髄神経、自律神経、皮ふの感覚の伝わりかた、筋肉を動かす指令の伝わりかた、エックス線で見る脳、MRIで見る脳を制作した。「感覚器」のコンテンツとして、目、耳、鼻、舌、皮ふを制作した。「目」のコンテンツとして、目のつくり、ものが見えるしくみ、近視と遠視、盲点をさがそうなどを制作した。「耳」のコンテンツとして、耳のつくり、膜迷路、音を感じるつくり、体のバランスを感じるつくりなどを制作した。「鼻」のコンテンツとして、鼻のつくり、においを感じるつくりを制作した。「舌」のコンテンツとして、舌のつくり、味らい、味を制作した。「皮ふ」のコンテンツとして、手のひら型の皮ふのつくり、ふつうの皮ふのつくり、皮ふに見られるつくりを制作した。X線、CT、MRIなどによる医用画像を利用して、体の内部の様子をみることができる教材として、「からだの中をのぞいてみよう」を制作した。これらのコンテンツを、生き物探検センター(http://anatomy.dept.med.gunma-u.ac.jp/rika/):人の体のつくりとして、一般に公開した。
著者
櫻井 龍彦
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

今年度は5月6日〜13日に春季廟会、9月3,4日に秋季廟会の調査をした。(1)廟前にある歴代の石碑を調査し、撮影した碑文を解読し、データベース化した。→康煕・乾隆時代から残存するものを含め、現在45基の碑を確認した。碑の写真と碑文の内容、現在復活した香会との関係等についての詳細データは、2006年3月に出版した中国語による報告書(総490ページ)にまとめた。(2)日本で未見の資料を収集した。→関係者の協力をえて、民国時代の貴重な資料はもとより、雑誌、新聞記事などに掲載された断簡零墨に近い資料も網羅的に収集し、A4コピーで3,600ページの分量になった。(3)香会および香客(参拝者)の現地調査。→2年間で、これまでに復活した香会を完全に把握することはまず不可能であるが、少なくとも約80の存在は確認した。そのうち重要な香会については、個別に密着調査をはじめた。また廟会の当日だけではなく、その準備段階における香会の行程についても参与観察した。密着型の追跡調査と準備段階の調査は従来だれも行っていない。香客については、初年度にアンケート調査をし、275人から回答をえた。また個別の聞き取り調査もおこなった。その結果は報告書に入れてある。(4)秋季廟会の調査。→従来、全く報告のなかった秋の廟会について、ほぼ実態を知ることができた。これは妙峰山廟会研究史の空白を埋めるものである。参加した香会などのデータは報告書に記載してある。(5)碑文の分析から香会の成立背景及び現在の組織のあり方を探った。→報告書に中国側協力者を含めた調査報告、論文などを21本収めた。研究成果としては、上記の中国語による報告書とは別に、論文として「妙峰山における「香会」の復活と現代的意義」加地伸行先生古稀記念事業会編『中国思想の十字路』所収(研文出版、2006)を発表した。