著者
大谷 順子 大杉 卓三
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

中央アジアを調査地域として、社会開発の現状と課題の調査をおこなった。人間の安全保障の概念を取り入れ、特に、保健分野、教育分野、災害、ICT(情報通信技術)の利活用促進による社会開発、地域コミュニティ開発とマイクロファイナンスの取り組みについて調査をおこなった。これらは国連ミレニアム開発目標(MDGs)を達成するための課題でもある。本研究は、先行研究である九州大学教育研究プログラム・拠点形成プロジェクト(P & P)アジア総合研究「アジア地域における人間の安全保障の観点による社会開発に関する新たなフレームワークの研究(研究代表:大谷順子)」の成果を踏まえ発展させて調査をおこない、先行研究において調査が困難であった地域を中心に調査を実施した。
著者
丸 浩一 藤井 雄作 太田 直哉 上田 浩 吉浦 紀晃 田北 啓洋
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では, PCとカメラを活用して市民が身の回りを確実に見守る社会の実現を目指すコンセプトと,暗号化保存によりプライバシーの侵害を回避するためのコンセプトを合わせた新たな防犯カメラシステムのコンセプトの普及を目的とした技術開発および実験を行った.その成果として,プライバシー保護機能を付与した様々な防犯カメラシステムを開発し,本コンセプトの適用形態を大幅に拡大した.また,社会実験を通じた検証を行った.これらの活動により,本コンセプトの大規模な普及への足掛かりを得た.
著者
植松 光夫 河村 公隆 三浦 和彦 長田 和雄 鵜野 伊津志 向井 人史
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

大気・海洋表層の物質循環過程の定量的解析のため、海洋大気中の気体や粒子の分析法開発・観測・モデル計算を行った。陸起源大気粒子の沈着が含有鉄分により十分に植物プランクトンの大増殖を引き起こす可能性を観測から見出した。西部北太平洋の海洋大気粒子中の窒素や炭素の大部分は有機態であり、いずれも海洋起源であることを解明した。また、モデル、衛星データ等により黄砂が地球を一周半以上も輸送されることを発見した。
著者
矢野 真一郎
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

筑後川から有明海に流入した淡水の挙動を把握するために,GPS付き漂流ブイを利用したLagrange的観測を実施した.潮汐条件が中潮と大潮,筑後川の河川流量が平水時の55m^3/sから中規模出水時の1,678m^3/sまでの種々の組み合わせ条件下であった,2006年6/7と7/21,2007年7/17と7/28に現地観測を実施した.観測項目は,淡水塊の座標,流速,海洋構造(塩分・水温),水質(濁度・クロロフィルa・Ph),風向・風速である.観測は一潮汐(約13時間)もしくは半潮汐間(約8時間)に連続的に行った.観測結果より得られた主な知見は,以下の通りである.(1)風が弱い時,筑後川から有明海に流入した河川水の南北方向の運動に対しては圧力傾度力が,東西方向にはコリオリカが支配的である.(2)風が弱い時,筑後川から流入した河川水は一潮汐で西へ輸送され,移動距離は河川流量に依存する.特に,出水時は対岸の太良地先まで輸送され,一潮汐で諌早湾まで到達できる.(3)南風が強い場合,表層流が風の影響を強く受け,河川水が東岸に停滞する.次に,水平方向と鉛直方向の乱流拡散係数を推定するために,漂流ブイを複数浮かべる観測と乱流微細構造プロファイラーによる現地調査をそれぞれ4回と2回ずつ実施した.これらの観測結果より,水平乱流拡散係数は河川水の流入などの局所的な条件で異なり,1〜10^2m^2/sのオーダーをとることが分かった.さらに,鉛直乱流拡散係数は成層度,潮汐,潮時により大きく変動し,10^<-7>〜10^<-3>m^2/sのオーダーで変化していた.これらの成果は,有明海における流れの数値シミュレーションで未知のファクターである乱流粘性係数・拡散係数の評価と河川から流入する物質の湾内での輸送構造について,重要な知見を与えたものと考えられ,今後の計算精度の向上に寄与できる.
著者
仲山 英樹
出版者
神戸大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

【研究目的】植物の生産性を著しく減少させる塩ストレスの主要因であるNa^+毒性の分子機構を明らかにするために植物体内のK^+/Na^+輸送系の理解が必須である。本研究は、主要作物のイネに存在するHAK/HKT輸送体がK^+/Na^+輸送に果たしている役割を解明し、HAK/HKT輸送体を活用した耐塩性植物の分子育種を行うことを目的とする。【結果と考察】1. HAK輸送体ファミリーのクラスターIに属するイネHAK輸送体の解析HAK輸送体ファミリーのうち、高親和性のK^+輸送能を有すると推定されるクラスターIに属するOsHAK1, OsHAK5, OsHAK16, OsHAK20, OsHAK21, OsHAK22, OsHAK27の7つのHAK輸送体遺伝子の発現様式を解析した。その結果、OsHAK5は、K^+欠乏やNa^+ストレス下の根において恒常的に発現していたが、葉ではK^+欠乏により発現が上昇した。OsHAK1とOsHAK16はK^+欠乏やNa^+ストレス下の根において発現が上昇した。2. HKT/HAK導入による耐塩性植物の分子育種これまでに、OsHAK5を過剰発現したタバコ細胞の耐塩性が向上することが明らかとなったが、現在、形質転換イネの作製を進めている。Na^+輸送体OsHKT2 ; 1とK^+輸送能を獲得したその点変異体OsHKT2 ; 1S88G、K^+輸送体OsHKT2 ; 2をそれぞれ過剰発現する形質転換イネを作出した。各形質転換イネのT2個体で低K^+(0.3mM)、高Na^+条件(50mM)において水耕栽培を行い、生育を調査した。高Na^+条件では、OsHKT2 ; 1S88G系統とOsHKT2 ; 2系統で他の系統よりも生長率が高かった。このことから、高Na^+条件では、OsHKT2 ; 1S88GやOsHKT2 ; 2が、直接または間接的にイネの耐塩性向上に寄与していることが示唆された。
著者
大場 正昭 伊藤 一秀 小林 信行 倉渕 隆 菊池 世欧啓 菊地 世欧啓
出版者
東京工芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、様々な風向時における建物内外の乱流構造について風洞実験と数値シミュレーションにより検討し、局所相似モデルを提案し検証するとともに、開口部到達全圧の推定方法を提案した。得られた知見は次のとおりである。(1)アプローチフローが建物開口部に正対する条件では、建物前面下部に形成される循環流と開口部直上面を下降する気流との相互作用により、下向きの運動量輸送が開口部直前で増大し、流入気流が開口部を急激に下降しながら室内に流入した。開口部の圧力損失係数は流入角と風向角に依存した。(2)建物内外の乱流構造の把握を自的とした風向正面の場合の通風気流に関する乱流モデルの予測精度検証を行った。LKモデル,LK改モデルは、標準k-εモデルでは困難である建物前面下部の大きな循環と流入気流の下降をある程度再現し,流入乱流エネルギーの過大評価を緩和できた。LESモデルは通風量,風速ベクトル,乱流エネルギー,風圧係数等の統計量に関して風洞実験結果とよく対応し,k-εモデルに対し大きな改善が見られた。(3)開口部の流管形状解析から、開口部付近の短い区間での加減速の影響により,この区間の流管形状に大きな変化が生じていることが明らかになった。(4)様々な風向における通風時の乱流構造の把握において,風向角変化に伴う圧力変化について考察し,風向45゜まで全圧が概ね一定,以後低下する原因は風上コーナーでの気流の剥離に伴う乱流エネルギー生産でことが判った。(5)通風の局所相似性の仮定に基づく通風量予測モデルを提案し,妨害気流の横風成分が強い通風気流に対して.局所相似モデルは風向角に依らず一意的に開口部の流入特性を表現できることを示した。(6)壁面近傍の動圧測定値を風圧に加算して、開口部到達全圧を簡便に推定する方法を提案した。今回のケースでは開口部長辺の1/4程度壁面から離れた地点の動圧を用いることが適当であり,全圧の簡易測定結果は直接測定結果とよく対応した。
著者
坪郷 英彦
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

中国5県で活躍する草葺き屋根職人の所在調査と、地域ごとの屋根型、技術、道具の違いを調査した。その結果、環境と人の暮らしの立場から山地と平野部の屋根の屋根勾配の違い、千木の有無の違いを明らかにした。近代産業と在来技術の関わりの視点から芸州流と呼ばれる広島県の職人、出雲の職人について、技術の特徴と職人像を明らかにした。
著者
岡 泰資 須川 修身
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

横風の影響を受けた火炎形状,熱気流性状を把握するために,単一および複数火源を用いた模型実験を実施し,以下の事項が明らかとなった。(1)横風を受け下流側に傾斜した単一火源上の火炎の高さおよび傾斜角度を,発熱速度と横風速度の複合関数で表した関係式を導出した。さらに,火源規模および形状を変化させた実験結果を基に,無次元発熱速度で0.05<Q^*(Q^*rec)<12.75,さらに正方およびアスペクト比が1:6の矩形火源まで適用可能となった。(2)横風を受けた火災プリューム主軸の軌跡をロジスティック曲線で近似した予測式を提案した。さらに横風速度の影響を加味した形でこの軌跡に沿った移動距離と温度減衰の関係を表した関係式を提案するとともに,この温度上昇,外気速度および移動距離を変数として,主軸に沿った温度上昇と熱気流速度の関係式を導いた。(3)横風を受けた熱気流が作り出す温度場の結果を基に,温度で定義したプリューム幅を求め,火災プリュームの断面形状を実験的に明らかにした。さらにこの半値幅を用いて,火源から運ばれてきた熱と横風により上流側から運ばれてきた熱の和として火災プリューム内の温度分布が表現出来ることを示した。(4)2種類のCFDコードを用いて,有風下の火災プリューム性状の再現性を検討した結果,燃焼モデルの適用と火源への発熱速度の与え方を同時に工夫することで,連続火炎領域の高さや火災プリュームの主軸位置をある程度再現できたが,温度減衰性状は計算コードによる違いが著しく,また実測値と異なる結果となった。(5)有風下における複数火源からの火炎および熱気流性状に対して,模型実験の実験結果と比較することで,単一火源上に形成された火災プリューム性状に関する既存の予測式がどこまで適用可能であるかを検討した。
著者
金子 成彦
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

入眠予兆信号とは、人間が眠りに入る少し手前で観察される前兆信号のことで、本研究では、これまで行なってきた入眠予兆現象の研究内容を掘り下げて学理に繋げるための研究を行った。本研究は、センサーの精度に関係する、設計条件、使用条件、外乱要因の把握による設計方法の提案を目的とする部分と、カオス解析、ウェーブレット解析、ケプストラム解析の3つの手法による入眠予兆信号の抽出方法と発生時期の相互比較、および、入眠予兆現象の原理と測定原理を表すことが可能な数学モデルの提案の3つのパートによって構成される。平成20年度は、エアパックセンサーの精度に関する検討、平成21年度は、解析手法間の相関に関する検討、平成22年度は、測定原理を表すことが可能な数学モデルの検討と入眠予兆現象捕捉のための新たな手法の提案を行った。平成22年度の研究成果は、以下の通りである。本研究では、脈波の揺らぎから入眠予兆信号を取得している。ドライバーの邪魔にならない場所で非侵襲で脈波の情報を取得するために、運転席シートの背部に取り付けた空気圧の変化を利用したセンサーを使用している。本年度は、測定原理を明らかにする目的で、脈波伝達経路を表現することのできる伝達関数を求めことに成功した。心臓の拍動が背部大動脈血管伝わる仕組みについて解析可能な動脈網モデルによる脈波伝播シミュレーションを行い、血管内の圧力が筋肉、皮膚、衣服を経由してセンサーに到達するまでの経路について解明することができた。また、昨年度の研究で見つけた新たな処理方法である、「ヒトの眠気をスリープスコアという点数で表現する」方法を被験者数を増やして実施し、成果を論文発表した。
著者
小林 章夫 永富 友海 高橋 和久 高岸 冬詩
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

当研究の主たる目的は、文学と教育を関係づけ、文学教育の新しい可能性を探ることである。そのために次の2点の企画をおこなうことにカを注いだ。1.代表者の小林章夫がコーディネーターとなり、上智大学で翻訳の輪講授業を導入した。この授業では、プロの翻訳家の方々に順次講義をお願いし、現在、上智大学においてもっとも人気の高い授業のひとつとなっている。2.現在活躍中の若手作家を少人数のゼミにお招きし、読書をめぐる討論会をおこなった。うち2回についてはあらかじめテクストを決定し、それについての読書アンケートを作成、学生に回答させておいた。討論会の講師としてお招きした作家と議論の対象にした作品は以下のとおりである。 (1)2005年度恩田陸氏『夜のピクニック』 (2)2006年度宮部みゆき氏 (3)2007年度万城目学氏『鹿男あをによし』どの講演会も、学生からの活発な質問と、作家の方々の気さくな受け答えにより、盛況のうちに終わり、読書体験の少ない学生たちの、文学作品への関心を高めるという目的を、十二分に達成することができた。
著者
小沢田 正 中田 瑛浩 久保田 洋子
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

臓器の病変をいかに早期にかつ正確に把握するかは,今や医療診断の中心課題である.CTの発達した現在でも,高い信頼性を要求される臓器組織の確定診断においては生検またはポリペクトミ-による微小組織片の摘出とその組織病理検査に頼らざるを得ない.そこで本研究では,病理学とは全く異なる動力学の視点からの診断を考えた.すなわち摘出された微小組織の一部を用い,病変によって生じた力学特性の変化を検出することによって,その場で短時間に信頼性の高い臓器組織の病変情報を提供し得る新たな診断方法の開発を試みた.以下,本研究により新たに得られた知見の概要を述べる.1)ダイナミックダンパーの原理を応用し,臓器軟組織の動力学的な物性値測定を可能とする動的試験法を開発した.また,この手法を応用したヒト前立腺組織,ラット大動脈組織を始めとする泌尿器科臓器組織の迅速かつ高信頼性を有する新たな臨床病変診断システムの実現に一歩近づいた.2)ごく微小なはりに生体軟組織片をダイナミックダンパーとして作用させ,その振動吸収能を計測することにより逆問題的に生体軟組織の動的物性値評価を行う手法を初めて提示した.これにより,はり質量の百分の一以下,数mg大の超微小生体軟組織片の固有振動数,弾性係数,粘性減衰係数などの動的物性値測定が可能となった.3)シンプルな動的試験法であり大がかりな測定装置を必要とせず,その場で迅速な計画が可能なため,軟組織の臨床診断法として最適であることが分かった.
著者
山下 宏明 小川 正廣 神澤 榮三
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

前年度の成果を踏まえ、研究分担者各自の専攻領域の研究を改めて問いなおすことを課題とした。すなわち、山下は、改めて平家物語を内在的に規定している‘語り'の問題を物語と音曲の両面にわたって検討し、説話文学との差異を明らかにし、語り行為論的観点からする平家物語論に対して評価を加えた。音曲面については東京芸術大学を場とする共同研究グループとの音楽的成果を生かしたり、語り行為論的側面については、これも芸大での共同研究者の一人である兵藤裕己氏による肥後に伝わる座頭琵琶の語りの実情からする成果をめぐって、平家物語を口誦詩的観点のみに限定して論じきれないことを論じた。神澤はローランの歌との比較から口誦詩論的に平家物語を論じ、その成果を國文学者たちが企画した“あなたが読む平家物語"の1冊『芸能としての平曲』に求められて執筆、近く東京都内の出版書肆から刊行の予定である。なお山下の成果も、その企画の1冊『平家物語の受容』におさめ、すでに刊行ずみである。フランスの口誦詩との比較研究については先例もあるが、外国文学研究者が平家物語に即して検証したのは、佐藤輝夫氏以来の成果であろう。小川については専攻のギリシャ古典の関する学位論文の出版に従事し、その作業を進めるうえで本研究の成果を踏まえた。ギリシャの口誦詩は、世界のいわゆる叙事詩の原型をなすもので、平家物語を口誦詩論的に検討するうえでも有効なモデルであることを改めて確認した。
著者
渡辺 浩一 岡崎 敦 高橋 実 大友 一雄 臼井 佐知子 蔵持 重裕 林 佳世子 三浦 徹 丑木 幸男 須川 英徳
出版者
国文学研究資料館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

平成16年度は、11月に二日間にわたり、韓国国史編纂委員会の協力を得て、同委員会にて「近世東アジアにおける組織と文書」という国際研究会を開催した。日本側報告4本・韓国側報告4本・中国の報告1本を中央政府・地方行政組織・村落と家・商人の4つのセッションに編成した。参加者は約30名。平成17年度は、8月に二日間にわたり、復旦大学歴史地理研究所の協力を得て、上海において「東アジアにおける文書資料と家族・商業および社会」という国際研究会を開催した。日本側報告4本・中国側報告5本が行われたほか、韓国・トルコからのコメントも寄せられた。参加者は約30名。平成18年度は、9月に一日間で、アンカラ大学歴史地理言語学部の協力を得て、同大学において「オスマン朝と中近世日本における国家文書と社会動態」という国際研究会を開催した。日本側報告2本・トルコ側報告3本のほか、中国・韓国からのコメントも寄せられた。参加者は38名。平成19年度は、まず6月に、フランス国立古文書学校の協力のもとフランス国立文書館(パリ)において「アーカイヴズ、社会、権力(中世・近世の西欧と東アジア)文書管理働くさまざまな力」という国際研究会を行った。日本側報告4本・欧州側報告3本のほか世界各地からの多彩な比較コメント20本を、国家・都市・商人の3つのセッションと総合討論に配した。参加者は約40名。ついで、12月には本研究の総括として、立教大学において「近世アーカイブズの多国間比較」という国際シンポジウムを二日間にわたり開催した。日本側報告2本のほか、トルコ・西欧・中国・韓国から報告者を招聘し、「統治と社会」「実践」の二つのセッションに編成した。参加者は約100名。各研究会・シンポジウムの前後には国際共同史料調査を実施した。
著者
松沢 佑次 PARK Y.B. KOSTNER G.M FUJIMOTO W.Y 山下 静也 KYUNG Y.B.Park KOSTNER G.M.
出版者
大阪大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

最近、動脈硬化の最も大きな基盤である脂質代謝異常に人種的・地域的な特徴が存在することが明らかになった。本研究では、コレステロールエステル転送蛋白(CETP)の遺伝子異常と、LDL受容体の遺伝子異常の各タイプ別頻度を国内外で調査し、動脈硬化の国別の遺伝子基盤の相違を明らかにするために以下の検討をした。1.CETP欠損症CETP欠損症の変異は従来6種発見されているが、この中で比較的頻度が高いことが推察されるイントロン14の異常(IN14)及びエクソン14変異(EX15)を中心とする4変異について検討した。CETP欠損症の遺伝子異常としては、6種類発見されているが、IN14とEX15が大部分を占め、G181X変異も頻度は少ないながら、共通変異であった。IN14のホモ接合体は、全例がHDL-C100mg/dl以上を呈し、EX15のホモ接合体ではこれより低値を示す例が多かった。また、CETP遺伝子変異を有しても、HDL-C値が正常のものもあった。これに対して、国外ではCETP欠損症の頻度は極めて少なかった。日系米人の調査では、HDL-Cが90mg/dl以上のものが計27人あり、その中で、EX15のヘテロ接合体が4人、EX15とIN14の複合ヘテロ接合体が1人発見された。また、韓国においても日本人の共通変異が2種見出された。日系米人でも変異は日本人と共通していた。また、ドイツ人の高HDL血症例で新たな変異が見出され、これは日本人には存在しない変異であった。一方、米国及び欧州ではCETP活性の正常な高HDL血症例が存在し、そのリポ蛋白像はCETP欠損症と異なり、CETP欠損症以外の成因による高HDL血症の存在が示唆された。2.LDL受容体異常(家族性高コレステロール血症、FH)LDL受容体異常に関しては、我が国での遺伝子異常として見つかっているものには、約26種類の変異があったが、この中5つは共通変異で、日本人のFHの約1/3がこれらの変異で説明できた。これらの共通は日本全国で分布し、特定の地域への集積は認められていない。一方、欧米のFHではわが国で見出された変異は見つかっておらず、日本人の起源を推定する上で、アジア地区にも対象を広げて解析する必要がある。
著者
吉田 恭史
出版者
徳島県警察本部
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

徳島県在住の男性の特徴をY染色体で分類した後,表現型を組み合わせて考察できるように研究を行った。まず,Y染色体上のY-SNPを検出し分類を試みた。O系,C系,D系,N系,P系に分類し,さらにO系はO_2系とO_3系,C系はC_1系とC_3系のY-SNPを検出できるように,Cycling probe法を調製した。O_2系とO_3系はP31とMl22,C_1系とC_3系はM8とM217,N系とP系はM231,P228をマルチ検出した。マルチ化するにあたり,アニーリング温度は,RNase H活性のための至適温度である55℃を47℃まで引き下げて行った。そのため若干の非特異的な蛍光が観察されたが,検出結果に影響を及ぼすほどのものではなかった。Cycling probe法によるY-SNPs検出を行うことにより,操作の簡略化及び検出時間の短縮が可能となった。この手法により,血縁関係のない徳島県在住の男性172名の分類を試みた。結果,縄文系のC系とD系は46%,弥生系のO系は52%,N系は1%,P系は0.6%が観察された。特に,C系において,Nonakaら(2007)の報告による各県の比率より高い値を示した。C系をさらに詳細に観察すると,C_1系は58.3%,C_3系は37.5%とC_3系が高い値を示し,徳島県独特の傾向を示した。C_1・C_3系に当てはまらない検体は,C_2系と考えられ,過去に報告されていなかったものである。このことから,C系が徳島地域男性の特徴を持つものと推察された。このC系に対し,表現型(身長,顔貌等)の特徴を検討したが,本研究においては有意な差は認められなかった。この原因は,おそらく検体数によるものであると考えられ,今後検体数の増加を検討すると共に海外の人種との差を検討していく必要があると考えられた。
著者
丸山 真央
出版者
滋賀県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

「平成の大合併」で基礎自治体が合併して大規模化した地域では、自治体内分権や地域自治区制度を活用した新しい地域自治が試みられている。本研究ではこうした試みが効果的なローカルガバナンスにつながる条件を探った。地域自治区の全国的な動向調査や事例調査を通じて明らかになったのは次の 2 点である。第一に、地域自治区制度を活用した先進事例においては、法律上の地域協議会だけでなく、地域の公共サービス供給を担うNPOなどの新しい住民組織が必要とされ、実際に設立が進んでいるところがみられた。第二に、こうした新しい制度や組織が有効に機能するうえで、町内会・自治会等の既存の地域住民組織が、公共サービス供給でも地域の公共的な意思決定でも、またガバナンスのシステム自体の正統性の確保においても必要不可欠な役割を果たしているということである。
著者
向殿 政男
出版者
明治大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

“あいまい"なデ-タは、実社会では避けることができない,しかも人間にとって極めて本質的であり重要なものである。本研究では,あいまい(ファジィ)デ-タを処理するための研究に関して,次のような幾つかの研究成果を挙げることができた。(1)ファジィProloキ“PROFIL"によるオンライン文字認識システムの製作本研究で開発したファジィPrologのシステムであるPROFILを,オンライン文字認識システムの記述に用い,本システムがあいまいさの多い文字(手書き)に対しても,有動に認識できることを示した。(2)フィジィ・インタ-バル論理の提案あいまい情報の処理のための基礎理論であるフィジィ論理の一つとして,従来の無限多値論理と、L.A Fadehの提案しているファジィ論理との中間に位置するファジィ・インタ-バル論理を提案し,その基本的性質を明らかにした。この新しい論理は本質的には,真,偽,未知,矛盾の4値論理に等しいことを明らかにした。(3)修正原理に基づくファジィ推論法の提案あいまいな前提からとも,もっともらしい結論を導しファジィ推論法には、これまで多くの考え方が提案それている。本研究では、修正原理に基づく新しいファジィ推論法を提案し、従来の方法の欠点を補なうことを可能にしていることを示している。この新しいファジィ推論法により、あいまいなデ-タ及び、あいまいな要求に対しても文献検索ができる『ファジィ検索』法の基本が構成できると期待されている。
著者
植村 誠
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

矮新星のアウトバーストを可視光と近赤外線で同時に観測することによって、降着円盤の最外縁に起因する変動現象の機構を研究した。その結果、アウトバースト極大時に最外縁の低温部分が一部、縦方向に膨張し、非軸対称な形状に変化することがわかった。この変形は、おそらく伴星からの強い潮汐効果が原因と考えられる。また、アウトバースト終了後、円盤は即座には静穏状態に戻らず、中間的な状態が存在することも判明した。
著者
後藤 正道 圓 純一郎
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ブルーリ潰瘍は、抗酸菌M.ulcerans感染による痛みのない皮膚潰瘍であるが、病変に痛みがない原因は不明であった。M.ulceransが産生する毒性脂質mycolactoneをマウス足底に注射すると、局所に知覚過敏の後に知覚鈍麻がおき、末梢神経にシュワン細胞の膨化と壊死が起こった。また、培養シュワン細胞にmycolactoneを投与すると、シュワン細胞の壊死とアポトーシスが起こった。さらに、ヒトの治療前後の皮膚生検組織でも神経の変性所見を見出した。これらの研究結果から、ブルーリ潰瘍の無痛性はmycolactoneの細胞毒性に起因することが明らかになった。
著者
中沢 正治 小佐古 敏荘 高橋 浩之 持木 幸一 井口 哲夫 長谷川 賢一
出版者
東京大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1988

本研究は、CR-39固体飛跡検出器にポリエチレンなどの適当なラジエ-タを組み合わせ、ラジエ-タ物質と中性子の核反応で生じた荷重粒子CR-39への入射量を調整することで、全体として中性子感度曲線が、中性子線量当量換算係数のエネルギ-依存性をできるだけ再現するような最適ラジエ-タの組み合わせと飛跡計数方式を見出すことを目的としている。咋年度までに、標準的なラジエ-タ付きCR-39線量計および飛跡読み取りシステムの試作と予備的な中性子感度曲線の校正(検証)実験を行なった。本年度は、まず中性子検出効率の理論的検討を行ない、実験的に確証するため、東大原子力工学研究施設内の重照射設備およびブランケットにおいて中性子照射実験を行った。試料として、CR-39プラスチックに厚さがそれぞれ0.86,1.90,4.02mg/cm^2のポリエチレン、および厚さ5mmの^6Li_2CO_3を密着させたものを使用し、人体のアルベド効果を模擬するため、後方にポリエチレンブロックを置いて行なった。その結果、各ラジエ-タ厚で、中性子エネルギ-に依存する検出効率の実験値は、誤差の範囲内で比較的良く計算値と一致した。つぎに、これら4種の感度特性と、ラジエ-タ無しの特性からレムレスポンスを近似的に求めるため、重み係数を最小2乗法により求めた。これによると再現性は良好である。特に、中性子線量当量換算係数が大きく変化する100KeVから1MeVの中性子エネルギ-領域の再現性に優れていることが明らかとなった。しかし、10MeVを超えると、検出器感度が低下するため、レムレスポンスの再現性が悪くなる。この対策として、薄いアルミ板をCR-39プラスチックの前面に置くことのより、感度を高められることが確認されている。以上より、小型・計量で取り扱いが容易な中性子個人被爆線量計の実用化の見通しがついた。