著者
上坂 健一郎 時田 英夫 森 猛 内田 大介 島貫 広志 冨永 知徳 増井 隆
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.121-131, 2021 (Released:2021-02-20)
参考文献数
19

首都高速道路は50年以上に渡り重交通下で供用されており,鋼I桁橋の横構ガセットプレートまわし溶接部に多くの疲労き裂が発生している.それらのほとんどは止端に留まっており,バーグラインダで切削除去することで補修を行っている.UITはこれまで止端から発生する疲労き裂の予防保全対策として用いられており,施工が容易で高度な技能を必要としない.本研究では,鋼I桁橋の横構ガセットプレートを想定し,止端から発生した疲労き裂に対するUITの補修効果についてモデル試験体の疲労試験を行うことにより検討した.そして,作用する応力範囲が65N/mm2以下であれば,止端に留まるき裂に対して打撃痕の深さが0.23mm以上となるようにUITを施工することで,疲労寿命は溶接ままの継手の2倍以上になるという結果を得た.
著者
小澤 南 右田 王介 清水 直樹
出版者
学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会
雑誌
聖マリアンナ医科大学雑誌 (ISSN:03872289)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.163-172, 2023 (Released:2023-05-16)
参考文献数
20

緒言:日本においても2020年に6万人近い新生児が生殖補助医療(ART)の恩恵をうけて出生している。体外受精した胚の状態を評価する方法として,胚生検による着床前遺伝子検査が,すでに臨床応用されている。しかし,その侵襲が胚変性を惹起する可能性が残されている。培養液中に認められるcell free DNA(cfDNA)は生検にかわり着床前診断を行う胚の無侵襲な評価方法となりうる。今回,溶液中のcfDNAを回収し,定量することで解析の実用性を検討した。方法:マウス卵を体外受精させ,胚盤胞期胚を得るために5日間培養した。胚盤胞期胚に発育した胚の培養液のDNAの回収を試みた。マウス脳組織DNAをコントロールに用い,リアルタイムPCRを使用した検量線法による溶液中のDNA定量を行った。結果:個別の培養液のDNAは微量であった。5日目の培養液中に平均900 pg前後のDNAが含まれていると推定した。考察:エタノール沈殿処置を行い,マウスの培養液からcfDNAが回収可能となった。cfDNAは培養細胞の状態を無侵襲に評価でき,胚の評価に応用できる可能性がある。一方,胚培養液中のcfDNAはごく微量であり,その回収に当たっては,その後の解析に合わせた精製方法の選択が必要と考えられた。
著者
大竹 あすか
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2021年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.63, 2021 (Released:2021-03-29)

Ⅰ 研究の背景と目的 本発表では,行政機関や民間企業が着目する「ソフト面」における都市計画における課題を,経済地理学者ハーヴェイ(2013)が提示した「都市コモンズ」概念を対象に、スケール論の観点から分析することの意義を明らかにする. 高度経済成長期以降のモータリゼーションを基盤としたハード面重視の都市整備に対する批判として.住民参加の意識や地域ブランド創出など,「空間を利用する」人々を基盤としたソフトな都市計画が推進されるようになった.一方1970年代後半にイギリスで発祥した新自由主義を受けて,日本政府は2000年代以降,公共施設の民営化を推進した.また地方自治体も規制緩和を行い,都市公園の管理を民間企業に委託する事例が増加している. これまでの経済地理学では,民間企業による公的資本の独占が都市空間における公共性を源泉として利益を創出していることを「独占レント」にあたると批判してきた.これらの研究に対して,ハーヴェイ(2013)はコモンズの管理には地理的なスケール分析が必要だと指摘している.そのため,都市空間におけるコモンズが持つ公共性が,民間企業と一般市民の間で、「空間利用の私有化」をめぐるスケールの問題を引き起こしていることを、主に言説により明らかにする必要がある.Ⅱ 研究方法と背景 上記の課題について東京都渋谷区の宮下公園の指定管理者委託過程に関する論争について分析した.宮下公園に関する裁判の記録,宮下公園を管轄する渋谷区議会の議事録,宮下公園を特集した雑誌記事を対象に分析した.あわせて,宮下公園の観察調査を行った.分析するために利用するスケール観点は,地理学の研究を整理した上で,Smith(1984),Jones et al.(2017)が提唱したスケールの複層性とスケールの統合に関する議論を用いた. 宮下公園は,渋谷駅に隣接する都市公園である.2000年代から始まった渋谷駅周辺の再開発の一環として2度にわたり、空間利用が民営化され,現在は三井不動産株式会社が主な指定管理者として公園を管理している.しかし,1度目にナイキジャパンが指定管理者として登場したときに,公園の改修工事中にホームレスの強制排除が行われたこと,宮下公園の命名権に関する入札競争が不透明であったことが裁判や議会で論争となった.Ⅲ 考察 宮下公園の論争に関する分析を通して,地理学者スミス,N.が提示したスケールの複層性に関する理論によって,ある都市空間を形成する主体間の立場の違いを理解できることが可能となった.宮下公園を含む渋谷駅周辺地区は,都市社会学で“user”と定義される公園の利用者や都市住民が,ファッション街を中心としたクリエイティブ産業の拠点として発展させてきた.これは,「若者の街」としてのイメージや,パブリックアート活動などに表れている.宮下公園を媒介として,身体やコミュニティレベルの下位スケールが,都市空間や地域レベルの上位スケールを形成したといえる. しかし公園の管理権限が指定管理者へ移行することで,都市空間の利用のスケールを規定する主導権が都市整備を行う主体に移行することが明らかになった.さらに,公園を管理する民間企業が若者向けの店舗を設置し,宮下公園が持っている交通利便性や渋谷駅の拠点機能,宮下公園の個々の利用者が作り上げてきた場所イメージを利益の源泉としている.この現象は,ハーヴェイ,D.が提唱した「独占レント」とみなせるこの過程で,国や地域などの上位のスケールが,身体,コミュニティ,都市空間のスケールを包括する「スケールの統合」が起きていると捉えられる.表面的にはスケールの複層性が保たれ,都市空間の多様性が利益創出の源泉となっているも関わらず,民営化によりスケールを規定する主体から“user”が疎外されることが明らかになった.

1 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1912年07月09日, 1912-07-09
著者
Tingting Lu Lihong Li Yuwei Li Xianghui Li
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
The Journal of Poultry Science (ISSN:13467395)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.2023012, 2023 (Released:2023-05-19)
参考文献数
52

Egg production, an important economic trait in the poultry industry, is sensitive to heat stress. The hypothalamus is a crucial center for thermoregulation by detecting temperature changes and regulating the autonomic nervous system in poultry. Baihu decoction (BH), which contains four ingredients (Rhizoma Anemarrhenae, Gypsum Fibrosum, Radix Glycyrrhizae, and Semen Oryzae Nonglutinosae), is a traditional Chinese medicinal formula for clearing heat. Our study aimed to investigate the changes in gene transcription levels in the hypothalamus of laying hens treated with heat stress with and without BH using RNA sequencing. A total of 223 differentially expressed genes (DEGs) were identified in the heat-treated group compared with the control group and 613 DEGs were identified in the BH group compared with the heat-treated group. Heat shock led to significant changes in the expression of multiple genes involved in the “neuroactive ligand-receptor interaction” pathway. Moreover, feeding BH led to significant upregulation in the expression of eight genes encoding heat shock proteins (HSPs), which were highlighted as candidates to control the “protein processing in the endoplasmic reticulum (ER)” pathway. These results provide the novel insight that BH responds to heat stress by participating in regulation of the ER signaling pathway and HSPs expression.
著者
今村 祐志
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.1444-1449, 2018 (Released:2018-08-20)
参考文献数
31
被引用文献数
2

A型胃炎とは自己免疫性胃炎のことであり,自己免疫的機序により胃底腺領域の高度粘膜萎縮および化生を認め,ビタミンB12や鉄などの吸収障害が起こり,神経内分泌腫瘍や胃癌を合併しうる.特徴的な所見は,胃底腺領域の萎縮を内視鏡や生検組織などで認め,抗壁細胞抗体や抗内因子抗体が陽性となり,ガストリン値が高値,ビタミンB12が低値となる.治療法はなく,ビタミンB12や鉄などの補充を行うとともに,胃癌のサーベイランス,合併症の検索を行う.診断されていない症例が多いと考えられ,自己免疫性胃炎を鑑別に挙げることが大切である.
著者
原 豊二
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.28-38, 2016-05-10 (Released:2021-05-31)

古典文学の時代、一般に「記録」するとは筆で紙に書くことを意味する。けれども、「記録」というものを「戦略」の一つとして考えるならば、通常の筆記の方法から逸脱したものについても意識的であるべきだ。平安時代以降の歌集や物語では、特殊な筆記法が多く描かれている。小論では『伊勢物語』や『大和物語』などの歌物語の「特殊筆記」について考察を加え、それらが作品の構想や方法にも関わる重要な「記録の戦略」であることを提示する。
著者
柿沼 倫弘 大夛賀 政昭
出版者
特定非営利活動法人 日本介護経営学会
雑誌
介護経営 (ISSN:18813801)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.5-15, 2023 (Released:2023-04-04)
参考文献数
1

本研究ではサービス付き高齢者向け住宅の機能の実態を明らかにし、医療・介護ニーズへの対応との関連の検討を行った。 研究方法は、全国のサービス付き高齢者向け住宅から2000か所を無作為抽出した調査及び得られたデータの分析である。サービス付き高齢者向け住宅の機能についてMann-WhitneyのU検定、Kruskal-Wallis検定と有意差が認められた項目間のDunn-Bonferroniの方法を用いた多重比較を行った。 結果、サービス付き高齢者向け住宅の機能としての要介護3以上の入居者の割合、医療的処置が必要な入居者の割合、住宅内で看取りを実施している割合について、訪問看護事業所の併設群では要介護3以上の入居者の割合、医療的処置が必要な入居者の割合が高かった。また、病院内での付き添い、外出同行の実施群は未実施群よりも3つの機能が発揮されていた。今後これらの機能の評価方法の確立が求められる。
著者
長 知樹 鈴木 伸一 南 智行 益田 宗孝
出版者
特定非営利活動法人 日本血管外科学会
雑誌
日本血管外科学会雑誌 (ISSN:09186778)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.631-634, 2009-10-25 (Released:2009-11-06)
参考文献数
6

症例は75歳男性.6 年前にリウマチ性多発筋痛症と診断され,ステロイドが開始された.1 カ月後に突然の胸背部痛で来院しStanford B型急性大動脈解離と診断し,厳重な降圧治療を開始した.発熱,炎症反応の高度上昇,CT所見から感染性大動脈解離を疑い抗菌薬治療を同時に開始した.血液培養からSalmonellaが検出された.5 週間後,突然の腰背部痛が出現し,CTで再解離,右下肢虚血を認めたため,緊急右腋窩動脈-右大腿動脈バイパス術を行った.その後も抗菌薬治療を継続し独歩退院となった.感染性大動脈解離は比較的稀であるが,急激な経過をたどることがある.感染性B型解離に対しては,降圧保存治療と抗菌薬投与による感染の沈静化が重要である.しかし治療の急性期に大動脈の急速な拡大や再解離発生の危険は高く,厳重に経過観察し,合併症発生時には迅速に外科治療を施行する必要がある.
著者
杉浦 隆 Takashi SUGIURA
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 = Research Bulletin of Osaka Shoin Women's University
巻号頁・発行日
vol.8, pp.3-11, 2018-01-31

「仮定法現在」はイギリス英語よりもアメリカ英語での使用頻度が高いと言われることが多いが、コーパスデー タを見ると必ずしもそのようには言えない。本稿は、BNC を用いたデータを用いて、実例を採取することで、イギ リス英語における仮定法現在の実態について考察する。
著者
石井 辰典
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、他者の不幸を喜ぶという感情経験;シャーデンフロイデが、不公正な人物への罰達成に伴う快感情に由来するという仮説を実証的に示すことであった。不公正者に罰を与える動機はサンクション行動傾向尺度(森本他, 2006)や応報信念尺度(Gerber & Jackson, 2013)などで多角的に測定し、そして様々な不幸場面(就職活動での失敗、傷害事件で懲役刑を受けるなど)を用いてシャーデンフロイデの測定を行った。その結果、社会正義を目指す動機ではなく、不公正者を苦しめようとする動機の高さが一貫してシャーデンフロイデを予測することが示された。
著者
西島 千尋 Chihiro Nishijima
雑誌
現代と文化 : 日本福祉大学研究紀要 = Journal of culture in our time
巻号頁・発行日
vol.130, pp.175-191, 2014-09-30

近年,ドラムの音を声で真似ることを基本とするヒューマンビートボックスおよびボイスパーカッションが主に青壮年層を中心に広まっている.前者は,日本でも大会(Japan Beatbox Championship,日本ビートボックス協会)が行われるようになり,都市でも主にクラブやバーで「バトル」が開催されるなど知名度を増しつつある文化である.特に,インターネットの動画サイトやクラブカルチャーと結びついて発展しているという点で新しい音楽文化であると言えよう.しかし,ビートボックスおよびボイスパーカッションについての研究はごく少なく,その実態 ビートボクサーたちの動機,何に惹かれるか,どのように活動しているか は明らかではない.そこで,ヒューマンビートボックスおよびボイスパーカッションに携わる青年たちにインタビュー調査を試みた.その結果,彼らは必ずしも「インターネット」や「クラブカルチャー」に惹かれてビートボックスを行うのではないということ,むしろ,その手法を教え合ったり,日常生活のなかでの「遊び」として行ったりといった草の根的な要素が強いことが明らかになった.
著者
ハサンティカ ウィラシンハ ディリニ
出版者
首都大学東京
巻号頁・発行日
pp.1-221, 2017-03-25

首都大学東京, 2017-03-25, 博士(日本語教育学)