著者
遠藤 秀紀 佐々木 基樹
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.45-53, 2001 (Released:2018-05-04)
参考文献数
15
被引用文献数
1

哺乳類の科以上の高次分類群に関して,その和名を検討し,リストとして表現した。目レベルでは原義を尊重しながら実際の定着度を考慮して和名を提示し,科レベルでは代表的属名のラテン語綴りを片仮名表記する方針をとった。分類体系の議論は加えていないが,従来の食虫目において,第三紀初期の化石諸群および現生するクリソクロリス類などが目として独立したため,トガリネズミ類,モグラ類,テンレック類などを無盲腸目と呼称する必要が生じていることが特筆される。また,有袋類を複数の目に分割する必要性が生じ,新たな和名を提案することとなった。近年,行政や出版界から,学校教育・社会教育の現場に影響する形で,学術的検討成果を顧みない安易な目名の変更が提案された経緯があり,本結果が哺乳類の高次分類群の和名について,学界のみならず社会的にも有意義な示唆となることを期待する。
著者
木村 暁夫 犬塚 貴
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.8, pp.1564-1570, 2017-08-10 (Released:2018-08-10)
参考文献数
14

傍腫瘍性自己免疫性脳炎は,腫瘍の遠隔効果として発症する脳炎・脳症である.髄液検査や画像検査で異常を認めないこともあり,しばしば診断に難渋し治療開始が遅れることも少なくない.また,様々な精神・神経症状の出現が腫瘍の発見に先立つことも多く,常に腫瘍の合併を念頭に置き,診療を進める必要がある.時に,神経と腫瘍に共通する抗原を認識する特異的な自己抗体が,神経細胞内もしくは細胞膜・細胞外抗原に対する自己抗体として検出されることがあり,診断マーカーとして重要である.また,抗体と背景腫瘍の間には一定の傾向がみられることから,腫瘍マーカーとしても重要である.合併腫瘍に対する治療が自己免疫性脳炎の治療としても優先される.
著者
高橋 啓子 奥村 恭男 永嶋 孝一 園田 和正 古川 力丈 佐々木 直子 磯 一貴 黒川 早矢香 大久保 公恵 中井 俊子 渡辺 一郎 平山 篤志
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.SUPPL.2, pp.S2_6-S2_14, 2016-12-30 (Released:2018-08-15)
参考文献数
7

症例は41歳男性.B型WPW症候群に伴うwide QRS頻拍に対し,電気生理学的検査を施行した.心室連続刺激中の心房最早期興奮部位はHis束電位記録部位であったが,心室早期刺激で左側後壁副伝導路の存在が示唆された.心室早期刺激でclinical wide QRS頻拍(SVT1)が誘発され,右側側壁副伝導路を順行,房室結節を逆行する逆行性房室回帰性頻拍と診断した.SVT1は室房伝導時間が短縮し,His束電位が心室(V)波に重なるSVT2へと変化した.その間,His –心房(A)波間隔は一定であったことからSVT1の室房伝導は機能的右脚ブロックであったのに対し,SVT2ではそれが解除されたと考えられた.さらにその後の心室早期刺激でwide QRS頻拍SVT3が出現し,これは室房伝導の順序は変化しないまま,narrow QRS頻拍SVT4に変化した.これらは房室結節を順行,左房後壁副伝導路を逆行する順行性房室回帰性頻拍と診断した.wideからnarrowへの変化はCoumel現象による左脚ブロックが解除されたためと考えられた.さらに副伝導路間を旋回するSVT5と,通常型slow-fast房室結節回帰性頻拍(SVT6)も誘発された.以上より,順伝導のみの右側副伝導路,潜在性左側副伝導路,房室結節遅伝導路を焼灼し終了した.
著者
舘 知也 野口 義紘 寺町 ひとみ
出版者
Japanese Society of Drug Informatics
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1-11, 2018 (Released:2018-06-16)
参考文献数
68

Objective: A medication notebook is developed in order to unitedly manage medication information of patients and is used by writing medication information such as history of ethical drugs, over-the-counter drugs and health foods, anamnesis, history of adverse events and allergy.  Adverse events, interaction and duplication of drugs can be prevented by showing a medication notebook to doctors and pharmacists.Data Sources·Study Selection·Data Extraction: In this article, we reviewed literatures regarding preceding studies on the utilization of medication notebooks comprehensively.Results·Conclusion: In our review, we could comprehend literature on medication notebooks systematically and could summarize a lot of evidences that confirm the usefulness of medication notebooks.  We need to produce further evidences on medication notebooks to spread medication notebooks.
著者
平 朝彦 飯島 耕一 五十嵐 智秋 坂井 三郎 阪口 秀 坂口 有人 木川 栄一 金松 敏也 山本 由弦 東 垣 田中 智行 西村 征洋 鈴木 孝弘 木戸 芳樹 渡邊 直人 奥野 稔 井上 武 黛 廣志 小田 友也 濱田 泰治 室山 拓生 伊能 隆男 高階 實雄 勝又 英信 原田 直 西田 文明 南川 浩幸 金高 良尚
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.7, pp.410-418, 2012-07-15 (Released:2012-12-04)
参考文献数
20
被引用文献数
7 5

東北地方太平洋沖地震において関東地方を中心に前例のない広域的な液状化被害が報告されている.都市地盤における液状化現象を理解し,その対策を立てるには,液状化が地下のどこで起ったのかを同定することが極めて重要である.本報告では,千葉県浦安市舞浜3丁目のボーリングコア試料に対して,X線CTスキャン解析を実施し,非常に鮮明な地層のイメージの取得に成功した.この結果,地面下13 mまでの地層を5つのユニットに区分することができ,その中で6.15 mから8.85 mまでの間で地層のオリジナルな構造が破壊されており,液状化した層であると判定した.この手法は,今後の液状化研究に関して,大きな貢献が期待できる.
著者
大藪 泰
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.3-8, 2005 (Released:2007-02-23)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

人間の赤ちゃんは誕生直後から模倣を行う.この模倣行動の発達を,学習論の立場から「道具的学習論」と「連合学習論」に触れ,認知論の立場から「ピアジェの模倣論」を紹介する.「新生児模倣」の発見により,赤ちゃんの模倣行動は生得的な発現メカニズムを基盤にすることが想定されるようになった.人間の模倣行動の発達は,身体形態の模倣が巧緻化するだけではない.それは意図形態の模倣の発現をもたらし,心による同型的な世界の共有関係の高次化を目指している.本稿では,赤ちゃんの模倣行動の発達を「原初模倣」,「自己模倣」,「形態模倣」,「意図模倣」という観点から論じる.
著者
國方 敏夫 河野 恵三 牛尾 慎平 福田 恵温
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.131, no.11, pp.1667-1674, 2011-11-01 (Released:2011-11-01)
参考文献数
30
被引用文献数
1 1

We previously reported that oral administration of NK-4, a criptocyanine dye, enhances interleukin (IL)-12-depend- ent interferon (IFN)-γ production by lipopolysaccharide (LPS)-stimulated mouse splenocytes. These findings raised a possibility that NK-4 potentiated IFN-γ production by T cells, natural killer (NK) cells or natural killer T (NKT) cells in response to IL-12 produced by macrophage and dendritic cells. To explore this possibility, we first analyzed percentages of T, NK or NKT cells in splenocytes of mice that were administered NK-4 orally for three days. The percentage of NKT cells in splenocytes from NK-4-treated mice was significantly (p<0.05) increased compared to vehicle-treated mice. When splenocytes were stimulated with α-galactosylceramide (α-GalCer), an NKT cell ligand, IFN-γ production by splenocytes from NK-4-treated mice tended to increase, while no difference in the IL-4 production and proliferation were observed between the vehicle- and NK-4-treated mice. When IFN-γ/IL-4 ratios were calculated in individual mice, the ratios were significantly (p<0.05) elevated in NK-4-treated mice. Furthermore, IL-12 production by α-GalCer-stimulated splenocytes from NK-4-treated mice was also significantly (p<0.05) increased. These results suggest that oral administration of NK-4 increases the population of type I NKT cells with potent IFN-γ-producing activities. Since IL-12 and IFN-γ have been shown to play important roles in anti-tumor immunity as well as in the defence against bacterial infection, our results further imply that NK-4 may provide a potential therapeutic tool in cancer immunotherapy.
著者
神澤 孝宣
出版者
宝塚造形芸術大学
雑誌
宝塚造形芸術大学紀要 (ISSN:09147543)
巻号頁・発行日
no.20, pp.159-170, 2006

ポケットモンスター(ポケモン)」の爆発的ヒット以来、日本のキャラクターは、国内のみならず海外でも高い評価を受けている。しかし、ここ最近の消費者嗜好の多様化を主な要因として、キャラクター商品の小売市場規模は減少している。消費者のキャラクター消費行動はどのように推移しているのだろうか。特にキャラクターとの関わりの深いマンガ産業とアニメ産業から、また近年注目すべきオタク産業の3分野から、多様化するキャラクターの消費行動を考察する。
著者
三橋 順子 Mitsuhashi Junko
出版者
大阪府立大学女性学研究センター
雑誌
女性学連続講演会 (ISSN:18821162)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.101-132, 2010-03

第14期女性学連続講演会「ジェンダーを装う」の第5回講演
著者
山脇 望美 河野 荘子
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.99-109, 2020-03-31 (Released:2020-03-31)
参考文献数
43

In this study, we investigated the hypothesis that autistic traits associated with alexithymia, when related to aggressiveness, relate to aggressive behavior. For the purpose of this study, 208 students voluntarily participated in the experiment. Their autistic traits were measured using the Autism-Spectrum Quotient, their aggressiveness was examined using the Buss-Perry Aggression Questionnaire and the Implicit Association Test, and alexithymia traits were estimated using the 20-item Toronto Alexithymia Scale, while aggressive behavior was assessed using the Aggressive Behavior Scale and by measuring the intensity of unpleasant noise. The results revealed that all subscales of the autism traits have a positive relationship with the alexithymia traits. The results of covariance structure analysis revealed that participants’ difficulty performing attention switching and focusing on small details was related to aggressiveness and was thus positively related to aggressive behavior. In addition, poor communication was directly and positively related to aggressive behavior, while poor social skills were directly and negatively related to aggressive behavior. However, poor imagination did not relate to aggressiveness and aggressive behavior. The coefficient alpha of focusing on local details and poor imagination was low. The relation between autistic traits and aggressive behavior was then discussed.
著者
池上 将永 荒木 章子 増山 裕太郎 空間 美智子 佐伯 大輔 奥村 香澄 高橋 雅治
出版者
一般社団法人 日本小児精神神経学会
雑誌
小児の精神と神経 (ISSN:05599040)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.223-231, 2020 (Released:2020-10-01)
参考文献数
32

遅延時間に伴う報酬価値の割引を遅延割引と呼ぶ.遅延割引は即時小報酬への選好を予測することから,衝動性の指標とされている.本研究では,ADHD児およびASD児の衝動性を評価するために,児童用遅延割引質問紙を用いてADHD児とASD児の遅延割引率を測定した.また,得られた割引率の妥当性を確認するために,日常場面における自己制御質問紙と割引率の関連性を検討した.自己制御質問紙において即時小報酬を選択した参加児は遅延大報酬を選択した参加児よりも有意に高い割引率を示し,割引率の妥当性が確認された.ADHD群とASD群の割引率に有意な差はみられなかったが,定型発達児で報告されている値よりも大きいことから,ADHD児とASD児は衝動性が高い傾向があると考えられた.ADHD群において割引率は年齢と負の相関を示し,加齢とともに割引率が低下する可能性が示唆された.本研究の結果,ADHD児やASD児の衝動性を評価する際に,割引率が有用な指標となることが示唆された.
著者
森畑 明昌
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1_147-1_158, 2012-01-26 (Released:2012-02-26)
被引用文献数
1

正規表現はスクリプト言語などで広く使われているが,既存の処理系の多くはバックトラックを用いてこのマッチング処理を実装しており,最悪時の効率が悪い.実用的な様々な拡張を加えた正規表現に対するマッチングアルゴリズム,特に,文字列置換等の用途で用いられる「部分マッチの取り出し」を行えるアルゴリズムが望まれる.本論文では多くの処理系で利用可能な「先読み・否定先読み」をもつ正規表現の有限状態オートマトンへの変換を示す.まず,先読み・否定先読みを持つ大きさmの正規表現を状態数O(22m)の決定的有限オートマトンに変換する手法を示す.次に,部分マッチの取り出しを扱うため,重み付き正規表現を議論する.そして先読み・否定先読みを持つ大きさmの重み付き正規表現を状態数O(22m)の重み付き非決定的有限オートマトンに変換する手法を示す.これらのオートマトンにより効率の良いマッチングを達成できる.