著者
宮元 章
出版者
独立行政法人国立高等専門学校機構
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

全体的な「実験」の時間の減少から理科に興味・関心・学習意欲を持たない「理科離れ」の学生の増加が指摘され,大きな問題となっている。そこで,観察・実験などの体験的な学習を重視し,学生にわかりやすく理科を教えることができるようなデジタル教材を作る必要があると考えられる。そこで,本研究では星座観察に注目し,実際の夜空で観察した星の群れから星座を自動判別・観察・記録するアプリケーションを作成することを目的とする。アプリケーションの仕組みとしては,モバイル型小型ノートPCにCMOSカメラ,「実際に観察する星座」と「その星座の解説」を同時に見ることができる半透明のヘッドマウントディスプレイ,GPSレシーバ等を接続し,実際に観察した星座の上に星座線や解説を重ねて見ることができるようになっている。まず,星座の自動判別の方法としてOpenCVという画像処理ライブラリを用い,CMOSカメラで読み取った動画と星座の画像とのテンプレートマッチングを行った。はじめは全ピクセルを単純に捜査する方法でマッチングを行ったが,星座の画像は黒がほとんどを占めるため思ったような結果が得られなかった。そこで,SURFにより特徴量を比較するマッチング方法を採用した。その結果,マッチングの精度は格段に向上した。しかし,今回使用したWebカメラでは十分な量の光を感知することができず,星座を自動判別するには天候や周囲の暗さの面でかなりの好条件が必要となった。次に,GPSレシーバの情報をもとに観測場所の緯度・経度を求め,観測者がボタンーつでその情報と共に観察画像をキャプチャーし,その画像がPCに保存できるようにした。観察後,その記録を見ることで学習効果を上げる手助けとなる。このアプリケーションを使用して星座観察を行うことで天文分野の学習に興味・関心を持つことができ,少しでも理科離れを食い止めることができると考える。
著者
野原 稔弘 池田 剛 桜田 忍 金城 順英
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

Incarvillateine (INCA)に関するこれまでの構造活性相関試験より、鎮痛活性発現に必要な基本骨格が明らかとなった。本結果を礎に、芳香環部あるいはアルカロイド部を多彩に変換することに依り、さらに強力な活性物質に導くことができるものと予想される。特にアルカロイド部分単独で強力な活性を有する化合物を本構造に導入することで、さらに活性を増強させることも可能であると考えられる。鎮痛作用発現のために重要な因子の中で、INCAの前駆体と考えられるモノマーのIncarvine Cが殆ど活性を示さなかったことより、特に二量体構造が、その強力な鎮痛活性発現に対して重要な役割を担っていることが示唆された。そこで、INCAと同様の立体構造を有するα型ジフェニルシクロブタンジカルボン酸:α-truxillic acid (TA)、および4,4'-dihydroxy-α-truxillic acid (DHTA)の二種を合成して鎮痛活性を検討した結果、腹腔内投与において、これら両者がホルマリンテストの第二相目の炎症性の疼痛行動を強力に抑制することが明らかとなった。特にDHTAはINCA以上の鎮痛活性を示し、NSAIDsの一般的な投与方法である経口投与においても、市販薬として繁用査されるロキソニンとほぼ同等の鎮痛抗炎症活性を示した。さらに、尿酸結晶を用いたラットの痛風モデルにおける痛みに対しても強力な鎮痛効果を示した。また、DHTAの大量経口投与時における潰瘍の発生は全く認められなかった。さらに多種のTAおよびその誘導体を合成し、鎮痛効果の比較および検討を行なった結果、同二相目における疼痛行動の抑制効果は、シクロブタン環の存在、α型の立体構造、シクロブタン環の遊離カルボン酸の存在、ならびに芳香環上の置換基の種類が重要な因子であることが判明した。
著者
野村 信威
出版者
明治学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では施設入居高齢者を対象としたグループ回想法を実施し,回想法による認知機能の効果および認知症予防における有効性を検討するとともに,質問紙調査による縦断研究から日常場面で行われる回想が心理的適応に及ぼす影響の検討を試みた。グループ回想法は認知症の症状がない施設入居高齢者に対して週1回の頻度で8回実施した。認知機能への効果を検討した結果,約半数の参加者では改訂長谷川式簡易知能評価スケールの得点の上昇が認められたものの統計的には有意な効果は認められなかった。質問紙調査の結果からは,過去を想起することと想起した過去を語ることに異なる心理的意義が認められた。
著者
入谷 明 森 誠 東篠 英昭 山村 研一 山田 淳三 内海 恭三 辻 荘一
出版者
京都大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

個体レベルで生体の機能との関連において遺伝子の発現機構を研究する手段として外来遺伝子を受精卵に導入する技術が開発されている。この技術を家畜家禽の受精卵に利用し、育種的改良技術への応用をも期待されるようになった。本研究では、外来遺伝子導入の為の発生学的手法の開発、遺伝子のクローニングとマッピング及び導入遺伝子による発現機構の解析を哺乳動物と家禽を用いて行なう。材料としての卵子の供給を円滑にする為に豚卵母細胞の冷却保存法を試みたが、20℃への感作でも発生能は著しく阻害された。牛や鶏の体外受精法によって、牛卵子では産仔まで発育することが、鶏卵子では精子の進入過程が詳細に明らかにされた。遺伝子導入実験の際の標識となる遺伝子の探索とクローニングが行なわれた。鳥類の性分化を司る遺伝子に焦点をあて、雌から雄への性転換を引き起こす因子の同定と発現を試みる為初期胚に精巣を移植した。その結果性腺は精巣に特有の構造を呈し、未分化性腺に作用して精巣化する未知の物質の存在が知られた。さらにラット肝臓のOTC遺伝子DNAをプローブとして鶏ヒナ肝臓DNAから2種のmRNAを得た。将来このOTC遺伝子を使って遺伝子導入制御機構の変異を解析する予定である。又、ラットを使ってアンギオテンシノーゲン遺伝子の多型の分析から3型の変化が第19染色体上にあることが同定されたので、今後の系統同定やモニタリングへの利用が期待される。ヒト成長ホルモン遺伝子DNAをプローブとしてヤギ下垂体よりcDNAを取り出し、MTプロモーターが置換された構造遺伝子を作り、マウス受精卵へ注入した。マウス卵子への遺伝子導入法を用いた発現機構の解析が、ヒトA-γ鎖とβ鎖の連結遺伝子とヒトプレアルブミン遺伝子で行なわれた。初期発生と成体ではγ遺伝子とβ遺伝子の発現時期が異なり、アルブミン構造遺伝子は肝臓や脳で特異的に発現した。
著者
亀井 豊永 家森 俊彦 能勢 正仁 竹田 雅彦 MCCREADIE Heather
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

平成17年度は非常に残念ながら研究代表者の病状悪化のため年度の延期を打診したが、だめだった。このため、1つの試作機を完成するのではなく、いろいろな部分性能評価を重視することとした。平成16年度で作成した、非磁性セオドライトの回転部分は磁場測定は1分1回転で予定通り1/30秒毎のAD測定に耐える、また、星座からの角度確定では、広角で角度1度以内から10分程度でに決められるがその磁場測定とのタイミングあわせは非常に難しい。望遠鏡を使用した侠角1分精度で星座を探すためには非常に高速のCPUが必要となり回転が安定しないと仮定した地上装置とノートPCではやはり無理がある。そのため、2つの予定外の方法を試すことにした。1つは値下がりした民生用ハイビジョンカメラと非常に高速のCPUと2GB高速大メモリーを備えたデスクトップPCを試した、しかしこれは非圧縮DVカメラ(3色約15MHz固定)と違い画像が25MHzMPEG圧縮のため画像が非常に荒く、しかも時間遅れが不安定で0,3-0.7秒遅れでPCに送り込まれるためHDV信号や圧縮デジタル機能を使用するのはこの角度測定用途にむかず、単純にHDVのアナログD3信号を直接ベースバンド(3色約150MHz)で映像取り込みして処理する必要がある。もう1つの方法は、余り早く回転させるとどのような狭角測定法でも無理がでるので、回転軸方向に侠角は星座判定をする方法にすることである。このためには望遠鏡方向に邪魔がないようにセオドライトの幾何学的配置を見直しセオドライトの支柱が望遠鏡とカメラを避けるように設計を工失する。なお、十分テストは出来ていないが、回転上の複数の星が明らかになった状態で複数の視野に連続に入ってくる明るい星や昼間の太陽タイミングを狙う場合にはやはり圧縮HDV信号は無理でD3信号を基準にHDVのベースバンドの信号を使用して角度の秒単位での角度測定は実用になると考える。このほかの、セオドライトの180度自動回転や気象条件や耐久性を試すテストは更に後ほど行うことになる。
著者
高倉 浩樹
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、シベリア・ヤクーチア地域の先住民社会を対象とし、歴史的・政治経済的条件のなかで、先住民の民俗環境知識の生成メカニズムの解明を目的としている。最終年度である2004年度においては、前年度までに収集してきたフィールド民族誌資料を整理すると共に、文献資料を行い、国内の専門家と意見交換を行いながら、研究を進めた。結論から言うならば、当該地域の先住民の民俗環境知識は、畜産学・家畜管理学的な知見に基づく農業政策の影響をうけながらも、放牧活動を実践する牧夫達の経験的知見の相続そして個人的な発見によって生成されている。ただし、その知識はいくつかの相に分類でき、そのことはヤクーチア地域の社会主義化=集団化・定住化と深く結びついている。知識は、(1)家畜の再生産、特に獣医学的な知識にかかわるもの、(2)家畜の群れとしての行動についての知識、(3)牧夫達が家畜管理を行う際の放牧地選定及び宿営地設営にかかわる知識である。類型的に述べると(1)から(3)の順で科学的知識の影響は弱くなり牧夫の経験的な知識が重要性を増すことになる。そのことは、これらの知識が共有される人々の量に関連する。つまり(1)に近いほど、この知識を共有する(あるいは蓄積しうる)社会的階層が人々が多く(3)については牧夫などに限られる。従来、科学的知見は専門家集団に限られ、経験的知識はより幅広い層に認められるという理解であるが、これは歴史的・政治経済的条件のなかで生業という活動に従事する人々自体が先住民コミュニティのなかで少数化していることを示している。主たる成果は、ソ連時代に科学的な畜産技術・家畜管理学的技術が導入されたトナカイ飼育のなかで、牧夫達の移動距離や行動パターンを質的・量的に把握し、群れ管理の技術と知識の位相について論考を出版したことである。第二に、その広い意味での歴史的背景を明らかにした。1920-30年代の初期ソビエト政権においてヤクーチアの民族知識人がみずからの生業の産業化の過程をどのように評価していたのか、民族学史・科学史という視点で考察した論考を出版した。さらに、上記にのべたメカニズムをより具体的な民族誌的文脈に即した論考の出版を計画している。
著者
吉村 正志
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本年度は3年計画の最終年度であった。3年間で国内所蔵の東南アジア雄アリコレクションの概要がほぼ明らかになったと言えるだろう。だが、同時に、さらなるインベントリー情報の整備が検索システム構築には不可欠な要素であることも明らかになった。東南アジアにおける雄アリ検索システムの完成には到らなかったものの、その基礎となる知見や環境整備は3年間で大きく前進したといえる。今年度はこうした研究成果を英・和文の論文5編、著作1編、雑誌記事1編、国際学会発表1編、国内学会発表3編として公表した。昨年より本格的にカリフォルニア科学アカデミーとの共同研究を行ない、インベントリー情報が整備されたマダガスカル地域の雄アリ検索システムを構築し、このうちハリアリ亜科については発表に至った。さらにカギバラアリ亜科の研究を進めており、亜科内の翅脈の比較形態について国際学会で発表した。また、日本産アリ類の分類学的な研究を進め、アギトアリ属とウロコアリ属について発表した。また、屋久島調査の過程でハリアリ属に新知見が見出されたため、屋久島の調査報告とともに発表した。今年度は分類学的な研究と並行して、これまで蓄積された学術的な情報を分類研究者以外の研究者や一般社会へ還元するための、Web公開型データベースの整備に力を入れた。日本産アリ類画像データベースの改訂については昨年から進めていたもので、これを7月に2007年ベータ版としてWeb上に公開した。また、Web公開情報の安定的な保存と普及をさらに進め、学術的な引用に耐える環境を整備するため、新たなコンテンツを加えたデータベースを2008年CD-ROM版として、3月に出版した。また、データベースの改訂と運営を通して、現在のWeb公開型データベースが抱える問題点と展望を発表した。
著者
緒方 一夫 多田内 修 粕谷 英一 矢田 脩
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、アリ類を生物多様性のバイオインディケーターとして用いることを上位の目的に、(1)調査方法の比較検討、(2)分類学的基盤、(3)分析評価方法などの諸問題を研究課題とした。(1)については様々な調査方法について比較し、採集種数、サンプリング特性、地域アリ群集特性の検出力等について検討した。その結果、単位時間調査法が限られた時間の中で比較的多くの種を収集できることが明らかとなった。ただし採集者の経験の違いによる調査結果の質に問題があり、その弱点は適切なインストラクションである程度補完できることが実証された。(2)については、日本産アリ類276種について、分布調査の取りまとめ等に活用できるようにエクセル形式でのダウンロード版チェックリストを公開した。このリストおよび世界のアリの学名についてとりまとめたものを携帯版の印刷物として準備した。この他、いくつかの分類群について整理しその成果を公表している。(3)については森林生態系や農業生態系のアリ群集を対象に、種数、種類組成、頻度、類似度などについて検討し、多変量解析による多様性の研究を実施した。その結果、連続林では森林の成長にかかわらずアリ群集の組成は変化が小さいこと、孤立林ではその成因や攪乱の程度によりアリ群集の組成は大きく異なることが示されてた。農業生態系では土壌の理化学的性質と種数について調査したが、有為な関係は示され得なかった。サトウキビ畑のような永年性作物圃場では、緯度傾斜と植え付け後徐々に種数が増加するパターンが見られた。また、アリ類の多様性と他の生物群との多様性の関連について、とくに知見が蓄積されているチョウ類との関連を検討した。その結果、局所的にアリの種数とチョウの種数が一致するような地域もあるけれども、この現象は必ずしも普遍的ではないことが示唆された。これらより、アリ群集のバイオインディケーターとしての価値は生態系指標にあること、すなわち攪乱や孤立性の程度を表す生物群としての利用可能性が示唆された。
著者
小川 晴久 吾妻 重二 柳沢 南 酒井 シヅ 壺井 秀生 末木 剛博 橋尾 四郎
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1990

初年度にひき続き『贅語』全六帙の原文の書き下し文作りと注釈(出典,語釈,難読箇所の解釈)の作業を鋭意進めてきたと言う以外に別に述べることも少ない。それを仕上げることが研究実績であるからである。『玄語』が形式上他人の引用がないのに比し(ただし実質的な引用があることは昨年度のこの欄で指摘した),『贅語』はまさに従来の諸見解の吟味の場という意味で引用の世界であると言ってよい。その引用の形式上の特徴は前回記したので再言はしない。ただ今回は天人帙,天命第二を例にとりあげ,引用の実質的な意味について考えてみたい。そこでは「五十にして天命を知る」という論語の命題の意味を『孔子家族』の文章をもとに考察し,「為不為者、在己者也、成不成者。有天者也。天者、無意而成、命者。無致而至。」という梅園の天命理解を孔子の天命観で論証する形をとっている。また論語の「夫子の性と天道を言ふは得て聞きくべからざるのみ」という子貢の言をもとに,性と天道を「聖門の第一義」となした後儒を厳しく批判している。荀子を引用して己れに在る側のもの(すなわち自分の意志で自由になるもの)を修める君子のあり方を強調している点も注目される。総じて先秦時代の遺産(とくに孔子を核とする)を重視し,それによって自説を根拠づけている形式が天命第二から確認できる。朱子学を絶対化せず孔子自身や先秦に帰ろうとする古学の傾向を梅園においても確認することができよう。『贅語』は学説史批判の書といってもよいが,より正格に言えば従来の見解を取舍して,自説を根拠づける作品であるのがその性格である。『贅語』が『玄語』の注であるとは,まさにこの意味である。そして注とは本来このような積極的な意味をもつべきものであろう。かくして『贅語』の各帙(各巻)の章別構成をながめると,ある共通の体系(構成)が看取できそうである。贅語は贅疣ならめ梅園の学問世界の論証の場であった。
著者
高山 成子 菊池 美香 半田 陽子 磯見 智恵 麻生 佳愛 吉川 日和子 高柳 智子
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

4〜8月に、倉敷市の老人保健施設で、入浴拒否4事例、俳徊2事例、収集癖2事例を調査した。その結果、累積事例は、入浴拒否13、俳徊10、収集癖7で、総計30となり、目標であった各問題行動別8事例、延べ24事例を達成できた。分析結果は以下のとおりである。1.入浴調査:(1)拒否の理由は、数回の調査によってほぼ同一で、本人にとり意味のある理由と考えられた。(2)軽度認知症は風邪等納得できる理由、中等度は失見当識による「金がない」等の理由であった。(3)攻撃性は80%が「脱衣時」「お湯をかけられた」で起こっていた。(4)脱衣時の攻撃性は、無理に引っ張る、脱がせるで生じていた。2.徘徊調査:(1)俳徊目的は4タイプに分類され、各人2〜5タイプを有し、バラエテイに富む生活の現われと考えられた。(2)俳徊時の気持は肯定的と否定的があり、介入の必要性の判断として有効であった。(3)「集中する」「精神的安寧をもつ」「他者と関わる」「生理的欲求を満たす」で俳徊を中止した。3.収集癖調査:(1)収集物品は「今の生活に必要な」「大事なもの」であった。(2)物品の所有認識は、認知症重傷度と関連していた。(3)物品管理は「自分で保管できる場所」で、認知症が重度になるにつれ身近となっていた。(4)返却は、納得すれば返し、無理に取られそうになると興奮していた。分析結果を、9月に第36回日本看護学会で2題(入浴、収集癖)、国際アルツハイマー協会国際会議2題(入浴、俳徊)発表した。また、本学学術雑誌に、2論文(俳徊、収集癖)投稿した。本研究最終目標は、分析結果より介入方法を策定し、実践的介入を行なうことであった。が、分析過程で、認知症レペルによる違いがあるなどで調査事例追加が必要であったこと、介入方法は、十分な分析が必要であったことにより、計画を変更した。結果として、2月に研究代表者が入浴1事例に対し、1回目部分的介入、2回目研究代表者のみの介入を実施した。
著者
田辺 國士 石黒 真木夫 土谷 隆
出版者
統計数理研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

1984年にカ-マ-カ-がシンプレックス法とは全く異なる線形計画の新解法を提案してセンセ-ションを巻起こして以来、これに触発されて内点法のアプロ-チによる様々な新解法が現れている。方法論的には、最近の動向はbarrier function法の復活であると一般には考えられているが、むしろNewton法への回帰であると見る考えからこの研究を進めている。Newton法が定めるベクトル場を解析すると自然に最適化問題の微分幾何学的構造に導かれる。「LagrangeとNewtonに帰ろう」という立場から、不等式制約条件下の最適化問題にも特殊な可微分構造を導入して、従来解析的に取り扱われてきた最適化の理論を微分幾何学的立場から再構成し、それを基に新しいアルゴリズムを開発しつつある。具体的には1.甘利氏によって提案されている「情報幾何」に射影幾何学的構造を加味した微分幾何学の構成2.新しい微分幾何学に基づく最適化問題の双対理論の再構成3.微分幾何学の立場からカ-マ-カ-法、伊理・今井法、山下法、Centered Newton法等の既存の解法の解析と関連性の解明4.数値的最適化の新しいアルゴリズムの開発5.アルゴリズムを実装化するために必要な数値線形代数等の数値計算法の研究6.実用化にむけてのプログラムの作成、数値実験を行なっている。
著者
千葉 恵
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究はアリストテレスの「分析論後書」の翻訳と註解からなる。この書物の詳しい説明は『序文』に譲るが、J.バーンズの印象的な表現を借りるなら、「この書物は、いかなる理由にせよ、哲学の歴史のなかで最も優れた、独創的で影響力のある作品のうちのひとつである。それは科学哲学のコースを--また或る程度科学そのもののコースを--千年間にわたり決定した」と形容されるものである。(J.Barnes,Aristotle Posterior Analytics,xiv,Clarendon Press Oxford 1994)今日は科学技術の時代であると言ってよく、生活のすみずみにいたるまで、その恩恵と制約のもとにある。科学そして科学的知識というものが、その起源において、いかなるものとして理解されたかを知ることは、今日の状況を作り上げているものをその源泉から理解し、省察することを促うように思われる。本研究においては「分析論後書」の全翻訳を提示し、註解としては私の「分析論後書」について研究である"Aristotle on Explanation ; Demonstrative Science and Scientific Inquiry Part I,II"(北海道大学文学部紀要 72号、pp.1-110、73号、pp.1-95)の関連箇所を指示する。詳細な註解の執筆は今後の課題としたい。
著者
不破 和彦
出版者
尚絅学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、東北地域で問題化している地域経済の後退に伴う雇用構造の大幅な変化との関連で、新規高校卒業者の就業動向の実状について統計的かつ個別的な事例調査手法による全体的な解明に取り組んだ。東北経済の後退は若年世代の労働市場を狭隘化させ、新規高校卒業者の就職に大きな制約を与え、さらに彼らの就業にも深刻な問題をもたらしている。特に、新規高卒就職者の多くは製造業、卸小売業、サービス業など単純労働に従事し、しかも労働条件も低下を期待し、地域労働市場の底辺に置かれている。このことは、若年世代の仕事および職場への定着を妨げる大きな要因となり、その解決が急がれる。一方、東北地域で就職志望する高校生を対象としたアンケート調査(今回は、宮城県11高校、約800名)からも、彼らの就職に対する不安が窺える。特に、職場の仕事への対応、人間関係への順応をめぐる不安が高くなっている。しかし、安定した職場への就職、仕事の継続などに対する願望は強くみられる点からも、就職に向けた高校での進路指導、たとえば働くことの社会的意義、事観の形成などをめぐる計画的、体系的な教育的指導法、カリキュラムの編成が改めて重要になってくる。さらには行政機関、企業はじめ地域全体として働く意欲をもつ若年世代の就業機会、安定した就業状況の構築に取り組むことが求められる。同時に、若年世代の安定した持続的な就業は地域経済とともに地域社会の発展に貢献するという観点からも急務な課題である。
著者
藤本 浩志 土井 幸輝 植松 美幸
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では高齢者・障害者配慮設計技術の開発の際に必要な触知覚特性(五感の1つ)のデータを収集することを目的として,図記号の識別容易性,指先の触覚の基本特性に着目して,それらと加齢の関係を調べた.その結果,図記号の識別容易性について図記号のサイズが小さい場合に加齢効果が見られることがわかった.指先の基本機能(空間分解能・触圧感度)に関しては,加齢効果が見られた.また,視覚障害者は日常的に触覚を活用していることが関係しているためか顕著な加齢効果は見られなかった.これらのデータは,今後触覚を活用した関連規格の作成の際に有用な知見となるであろう.
著者
今野 喜和人 田村 充正 南 富鎭 桑島 道夫 花方 寿行 山内 功一郎 トーマス エゲンベルク
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

異文化間に生じる「恋愛」「結婚」を扱った世界各国の近現代文学、および「恋愛」「結婚」を語る諸言語テクストの影響関係や翻訳において発生する文化衝突と誤解を多角的に分析し、現代におけるナショナリティ・文化・エスニックグループ、ジェンダー・世代・ミリュー等々の間の政治的・社会的支配/被支配の構造と歴史観を分析・検証することで、「異文化理解」にまつわる諸問題を明らかにした。
著者
高谷 康太郎
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

冬季東アジアモンスーンの経年変動に伴う偏西風変動には大まかに二つのパターンがあることを明らかにした。これらのパターンは冬季モンスーンの変動を考える際の「基本」となるものである。また、北日本の冬季気候に大きな影響を与える北極振動の時間発展の力学も明らかにした。さらに、熱帯海水温と冬季気候の関係を精密に解析し、今まであまり注目されてこなかった事実を明らかにした。これらの成果により、冬季東アジアモンスーンの経年変動の力学の理解および予測可能性の精度向上に貢献することができたと考えられる。
著者
小鹿 一 丸山 正 大場 裕一 吉国 通庸
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

沖縄産シャコ貝(ヒメジャコ、Tridacna crocea)の外套膜に共生する渦鞭毛藻(Symbiodinium属)の種類を明らかにするために、まず株化された渦鞭毛藻を用いて分子系統解析法の確立を行なった。藻体よりゲノムDNAを抽出後、5.8SrRNAのITS領域および18SrRNAのV1領域をPCRにより増幅し、ダイレクト・シークエンス法により配列を決定した。続いて、分子系統解析ソフトPhylipを使用して、近隣接合法(NJ)により渦鞭毛藻の系統関係を解析した。その結果、これまで未知であった株の系統が明かとなった。この方法を用いて、つぎに実際のシャコ貝にどのような種類の渦鞭毛藻が共生しているのかを調べた。これまで、シャコ貝には複数種の渦鞭毛藻が共生していることはわかっていたが、どのような種がどのくらいの割合で共生しているのかは不明であった。そこで、ヒメジャコの外套膜より取り出した藻体を用いてDNAを抽出し、PCRを行なった。続いて、このPCR産物をプラスミドベクターに組み込み、大腸菌にトランスフォーメーションした。現在は、得られてきたコロニーに対しコロニーPCRを行ない、ひとつひとつのコロニーがどの種類の渦鞭毛藻に由来したDNAを持っているかを制限酵素とシークエンスを併用して決定する方法を確立している。また、渦鞭毛藻の系統に対応して興味深い低分子化合物がさまざま産生されていることが明らかになってきた。その中には、新規化合物であるzooxanthellamide類やzooxanthellactoneなども含まれる。これらの化合物が共生過鞭毛藻に特異的であることから、何らかの共生現象に関わっている可能性が期待される。
著者
三瓶 良和
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

白亜系~新第三系の日本の代表的な付加体(四国南部・長野県南部・静岡県・千葉県房総半島)において,泥岩有機物の濃度・起源,最大古地温および堆積環境等の復元・検討を行った.その結果,有機炭素濃度が最大11%までの泥岩層が確認され,最大古地温は全域で60~270℃と推定され,100km幅で1000年間に約1ギガトンの炭化水素が発生していることが分かった.この値は,世界最大のガワール油田(サウジアラビア)の約10分の1弱の規模に相当する.付加体が「大規模な長期継続型炭化水素生成システム」として成り立つことが示唆された.