著者
福 知栄子 倉知 桂子 若林 敏子 内本 充統
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

岡山県内ファミリーサポートセンター依頼会員調査からセンター活動の活用状況や期待および課題を捉え、さらに全国アドバイザー調査からはセンター活動の支援状況や支援プロセスおよび今後の課題等を把握した。また、事例を通して地域子育て支援活動としてセンター活動が果たすコーディネート機能について検討した。依頼会員は、子育てへの安心感(緊急支援)を得ることやワークライフバランスを図るために登録をしている。提供会員には、子どものケア・ニーズへの対応とともに、親のニーズへの対応も期待している。地域住民参加型の子育て支援ネットワークづくりへの依頼会員の貢献が今後の課題である。アドバイザー調査からは、センター活動がひとり親、障害のある親、外国人の親等多様な家族を支援する実態がみえる。支援活動の質を左右するマッチング場面のアドバイザー同席は半数である。提供会員研修には、手どもの育ちや応急手当等と子育て不安への理解等親関連の内容も含まれる。センターが地域関連機関との間で情報交換をするのは、保健所や保育所が最も多く、次に子育て支援センターや主任児童委員等である。個別ケース支援の連携もあり、アドバイザーのコーディネート機能による地域連携活動として、くらしが不安になる離婚前後での支援や親の精神的不安が強い時期の支援等の事例がみられる。今後の課題は、提供会員の量的拡大と質的向上、関連機関との連携の充実、アドバイザーの知識・技術の向上等である。適切で柔軟なコーディネートができるアドバイザーの質的向上のための研修体制・スーパービジョン体制の確立が重要である。子育て家族が抱える課題を共通理解し、地域で子どもと家族を支援するチームとして支援者と親が協働で活動することが今後のセンター活動の展望を切り開く。
著者
石田 理永
出版者
千葉大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

平成12年度は、環境外乱による地盤震動特性のマスキング現象の解明に向け、実験的・解析的双方の側面からの検討を行った。実験的検討としては、平成11年度に構築したリアルタイムの交通流記録システム(池上通信機(株)・ZPC-104他)と、既存の地盤振動モニタリング・収録システムを連動させ、道路交通に起因する地盤振動と交通流との相関の抽出を試みた。その際に、補助的に騒音も計測するのが良いと考え、新たに積分形普通騒音計(リオン(株)・NL-06)を購入した。当初の研究計画では、数パターンの敷地と道路との取り合いをフィールド調査の上選択して、地盤振動・交通流同時計測を実施する予定であったが、振動・映像・騒音同時計測手法の工夫・習得にじっくりと時間を費やしたため、千葉市内の計155箇所においてフィールド調査は行ったものの、同時計測としては、今年度の段階では、千葉大学西千葉キャンパス南門付近の平面道路と敷地境界における検討のみとなった。交通外乱による地盤振動を適切に説明するためは振動源特性(走行速度・積載状況・車種・路面凹凸等)まで遡って一台一台の車両走行状況を精度良く把握することが鍵となるため、現在、同時刻における敷地境界での振動・騒音と映像のパターン分類と、波形・スペクトルの定常的、非定常的特性の考察を進めており、今後に繋がる成果が出つつ有る。解析的検討としては、平成11年度に地盤振動計測を実施した東京都墨田区鐘ヶ淵周辺の敷地の1つである、高架道路に面した公園について、既存の動的相互作用解析コードSASSIを使用し、高架道路の複数橋脚による伝播波動の重ね合わせに関する検討を行った。推定加振力による平行成層地盤上の複数橋脚基礎同時加振の結果は、橋軸直交測線上の地盤振動観測記録を定性的・定量的に説明しており、環境外乱による地盤震動特性のマスキング現象の一端を解明することができた。
著者
山本 伸一
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

当初の研究計画が、ゲルショム・ショーレムによる先行研究の批判的検討であったのに対して、以下に述べるように、当該年度の研究の過程において、より新規性に富む視点からシャブタイ派運動を分析することができた。そのなかで私が研究の目的として設定したのは、シャブタイ派思想における反律法主義の起源の解明であり、これはシャブタイ派思想のカバラーの性質を究明しようとした所期の目的をより厳密にしたテーマである。律法主義(nomism)を本質とするユダヤ教において、戒律の変更と更新を目指す反律法主義(antinomism)は、単に律法を副次的に理解する非律法主義(anomism)とは区別されねばならない。現段階の想定によれば、メシアの時代における救済の実現のために行われた祭日、慣習、戒律の大胆な変更は、(1)ツファット盛期のカバラー、及び(2)中世の占星術に影響されていた現象である。反律法主義の起源を研究するために、それぞれの点について以下のことを研究した。(1)ツファット盛期のカバラー(16世紀にパレスチナの小都市で起こったカバラーの復興運動)においては、神秘家によって伝統的な戒律や慣習がより厳密に規定され直したことが知られている。このカバラー的律法主義を終末論的に解釈したのが、シャブタイ派の反律法主義であることを立証する。(2)中世の占星術は、ユダヤ教徒、キリスト教徒、ムスリムなど宗教の枠組みを越え、多くの知識人が共有した普遍的な学問領域であった。すでにカバラーはその初期から占星術を採用しており、こうした言説のなかには、反律法主義的な性格のものが存在する。シャブタイ派文献のなかにもその影響が見られるため、その関連性を一次資料に依拠しながら研究する。現在のところ、研究成果の発表にはいたっていないが、以上の論点はシャブタイ派思想研究においては、極めて本質的かつ独創的な試みであると考える。
著者
平石 裕実
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、百台規模のクラスタシステム上での実行に適した並列分散型の形式的設計検証アルゴリズムの研究を行い、以下の成果を得た。1.二分決定グラフ(BDD)の並列処理:論理関数処理を進めていく過程で、動的に真理値を固定する変数を選択していくことによりBDDを分割して並列処理を行うアルゴリズムを提案し、このアルゴリズムにより並列度以上の高速化(スーパーリニア効果)が達成できることを示した。また、クラスタシステム上でこのアルゴリズムを実行することにより、1台の計算機上での逐次アルゴリズムではメモリ不足のために解くことが出来ないような問題でも、並列化により解くことが可能になった。2.探索処理の並列アルゴリズム:設計検証で用いられる探索問題に対して、探索処理中に動的に部分問題に分割し、分割した部分問題を各マシンに動的に割り当てて並列に探索を行うアルゴリズムを提案し、最適順序付け問題でスーパーリニア効果を達成できることを示した。3.並列システムの設計検証:多数の並行プロセスからなるシステムの検証に適した記号モデル検査アルゴリズムとデッドロックフリー性の検証手法を提案し、従来手法に比べて100倍以上高速化できることを示した。4.並列ソーティングアルゴリズム:クラスタシステムで並列バイトニックソートの有効性を検証した。複数のスイッチングハブを用いたイーサーネットワークを使用したクラスタシステムでは、予想通りスイッチングハブ間の通信がボトルネックになることが判明した。一方で、VIA方式によるcLANのフルバンド幅構成のネットワークを採用することにより、このようなボトルネックを解消できることを示した。
著者
笹川 千尋 冨田 敏夫 戸辺 亨 福田 一郎
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

赤痢菌は経口的にヒトへ感染後回腸に到達し、腸上皮細胞へ自ら食作用を誘発し細胞内へ侵入する。これには本菌の有する大プラスミド上のipaBCDから産生される侵入性蛋白(IpaB,IpaC,IpaD)が深く関っていることが知られているが、その機序は不明であった。そこで本研究ではIpa蛋白の性質と侵入に果す役割を理解する目的で、(i)Ipa蛋白の上皮細胞に対する作用、(ii)Ipa蛋白の菌体外論送機構、(iii)ipaBCD遺伝子の発現調節機構、の以上3つの研究を実施し、以下に列挙する知見を得ることができた。(1)Ipa蛋白は通常菌体表層に発現し結合状態にあるが、菌体から遊離することが細胞侵入に不可欠である。(2)Ipa蛋白の菌体からの遊離には、菌と上皮細胞との接解が必須である。(3)(2)の現像は、菌と細胞外マトリックス(フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲンIV)との接解により惹起される。(4)Ipa蛋白の遊離能には、大プラスミド上のSpa遺伝子の1つ、Spa32が関与している。(5)遊離したIpaBとIpaC蛋白は複合体を形成し、IpaDと共に上皮細胞上のレセプター(現在同定中)に結合する。(6)IpaB、IpaC、IpaDの菌体外論送には、大プラスミドのコードするmxi領域と共に、Spa領域が必要である。(7)Spa領域中には8つのSpa遺伝子が存在する。(8)Spa蛋白のアミノ酸一次構造は、動物・植物病原菌に広く存在する蛋白分泌系蛋白と著るしい(20〜45%)ホモロジーを示し、互いの遺伝子構成も類似している。(9)(8)で認められる蛋白による蛋白論送系は、Sec-依存的蛋白論送系あるいはヘモリジン蛋白論送系とも異なる、第3の蛋白論送系である。(10)ipaBCDの温度依存的な発現調節は、本遺伝子群の正の転写因子、virB、の転写段階で行なわれている。以上の成果は欧米でも注目され、平成6年にはゴ-ドン会議に於て招待講演として発表を行った。
著者
西岡 弘晶
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

グラム陰性菌は、呼吸器、消化器、尿路、皮膚・軟部組織など、様々な部位に感染し疾病を引き起こし、その予防、治療は大変重要な課題である。グラム陰性病原細菌の多くは、宿主細胞へ接触すると、特殊な分泌機構を通じて、一群の分泌性機能蛋白質(エフェクターと呼ばれる)を宿主細胞質へ注入し、感染に必要な機能を誘導する。そこでグラム陰性菌の一つである赤痢菌から、感染に不可欠なエフェクター蛋白質を、ネイティブな形で精製する方法を確立し、そのエフェクター蛋白質どうし、あるいはエフェクター蛋白質と宿主因子の相互作用を明らかにすることを試みた。赤痢菌が宿主細胞へ感染する際に不可欠なエフェクター蛋白質は、IpaB、IpaC、IpaDと呼ばれる3つの蛋白質であり、IpaBとIpaCは複合体を形成することが知られているが、その詳細は明らかではない。本研究により精製したネイティブな形のIpaB/IpaC複合体は、安定した水溶性の複合体を形成しており、分子量はおよそ200kDで、IpaB : IpaC=1:3-5で結合していることが示唆された。またIpaB/IpaC複合体は、高度な二次構造を形成し、複合体を形成することで安定した構造をとることも示唆された。この複合体の形態は直径10-20nmの球状であり、電子顕微鏡でも可視できた。IpaB/IpaC複合体は、赤血球膜にコレステロール依存的に結合し、真核細胞形質膜にはコレステロール及びCD44依存的に結合した。その際IpaB/IpaC複合体は、リピッドラフトに存在した。またIpaB/lpaC複合体はリボゾームと結合し、小孔を形成した。同様にIpaD蛋白は35kDの蛋白として精製された。またIpaDの部分変異株の解析により、IpaB/IpaC複合体の真核細胞形質膜への挿入に、IpaDが関与していることを見出した。
著者
吉水 千鶴子 佐久間 秀範 小野 基
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、チベット人シャン・タンサクパ著『中観明句論註釈』の写本解読により、インドからチベットへ、チャンドラキールティの帰謬論証を用いる中観思想がインドの仏教論理学と融合しながら伝承された11~12世紀の時代思潮を明らかにした。すなわちチャンドラキールティ自身が先行するディグナーガの論理学を取り入れており、中観派によって他者に真実を知らしめるための命題と論理の使用は是認される。この新しい知見により、本研究は中観仏教思想史を見直し、論理学との融合過程に焦点をあてて再構築した。
著者
園田 直子 日高 真吾 岡山 隆之 大谷 肇 増田 勝彦 青木 睦 近藤 正子 増田 勝彦 青木 睦 金山 正子 関 正純 村本 聡子 森田 恒之 大江 礼三郎
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

図書・文書資料に適用できる劣化度評価法のうち、ローリングテストはほぼ非破壊で実施でき、通常の物性試験では測定不可能なほど劣化の進んだ紙の劣化度評価に適用できる可能性を持つ。アコースティック・エミッションは最小限の破壊はあるものの、劣化度評価に有効である。極微量のサンプル量を必要とする熱分解分析法は劣化度評価だけでなく、これにより劣化機構の違いが解明できることが示唆された。紙の劣化度を考慮に入れながら強化処理法を検証した結果、セルロース誘導体による強化処理は状態の良い酸性紙に対する予防保存的措置として、ペーパースプリット法は対処療法という位置づけが明確になった。
著者
泉 武夫 長岡 龍作 シュワルツ・アレナレス ロール 井上 大樹
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

兜率天上の弥勒菩薩の造形について、インドから日本中世までの展開過程をおおよそ明らかにした。中国唐代までは持水瓶・交脚形が主流であるが、宋代およびその影響を受けた日本中世では持麈尾・趺坐形が浸透する。また兜率天浄土の表現についても、中央アジアから中国、日本に至る図様形成と変容状況を遺品から跡づけた。とくに日本中世の兜率天曼荼羅図のタイプを整理することができた。
著者
佐久間 秀範 吉水 千鶴子 ALBERT Muller 馬淵 昌也 吉村 誠 橘川 智昭 岡田 憲尚
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

研究期間内に以下の三つのプロジェクトを完成させた。1.『大乗荘厳経論』第三章、第六章、第十九章の偈頌(サンスクリット語、チベット語訳、漢訳)、世親釈(サンスクリット語、チベット語訳、漢訳)、無性釈(チベット語訳)、安慧釈(チベット語訳)の対照テキスト。2.研究チームで五姓各別のインド、中国、韓国、日本の総合研究。3.研究チームで玄奘訳『仏地経論』全体の日本語訳(日本初)の吟味。
著者
越智 保雄 松村 隆
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

各種熱産業,工場などから排出される大量で低温度レベルのエネルギの利用法の一つとして,形状記憶合金をエネルギ変換素子として利用する動力回収システムの開発のため,形状記憶合金の熱・機械的繰返し変形特性と疲労寿命評価に関して基礎的研究を行った。用いた形状記憶合金は安定性,耐食性,変態温度や疲労特性等の点で優れた性質を持つとされているTiNiCu系合金であり,Cu濃度を0〜13%に変化させたものと,形状記憶熱処理温度348K-363Kと変化させた7種類の合金を用いた。得られた主な結果をまとめると以下のようになった。1. マルテンサイト変態温度Ms点はCu濃度が増加するにつれて上昇し,逆変態温度As点はCu濃度の増加につれて低下するが,M相の結晶構造が単斜相M相から斜方相M相に変態する状態になると再び上昇した。2. 繰返しによる有効ひずみエネルギWaは,最大ひずみε_<FTBK>が3%の範囲ではCu濃度の増加とともに増大するが,高ひずみ範囲ではほぼ一定となった。3. 回復ひずみエネルギの1サイクル当たりの減少量で定義した散逸ひずみエネルギは,Cu濃度の増加とともに低下した。回復ひずみエネルギは高いCu濃度域においては試験サイクルによる差異は認められなかった。4. 繰返し応力-ひずみ曲線の面積で定義した回復ひずみエネルギと寿命の両対数関係から,最大ひずみが4%以上では熱処理温度が高いほど低寿命となったが,最大ひずみが3%以下では加熱温度の影響はなく両対数ほぼ一本の直線で評価できた。5. 散逸ひずみエネルギと疲労寿命の両対数関係から,加熱温度,最大ひずみによらず散逸エネルギが減少するほど長寿命となる一本の直線関係で評価できた。7. 超弾性サイクルにおける疲労寿命は,Cu濃度が5〜10%の領域で低寿命となった。一方,熱・力学的サイクル条件下ではCu濃度の増加にともない低寿命となった。
著者
小寺 栄子
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

現役の看護トップマネジャーへのインタビュー並びに病院管理者へのアンケート調査により、看護のトップマネジャーの役割と高業績特性として11のカテゴリー53の能力を抽出した。更に内外の文献資料を参考にしディクショナリーの内容に検討を加えて、5つのコンピテンシー領域、28の分野、217のコンピテンシー項目よりなる看護のトップマネジャーのコンピテンシーディクショナリーを作成し、これらの妥当性・有用性を確認するために、看護部長職にある看護管理者を対象に質問紙調査を行なった。その結果、「有益だが必要なし」、あるいは「必要でない」項目が明らかになり、これらは現在の看護部門のトップマネジャーの認識を表していると同時に、今後の取り組み課題であることも明らかになった。今後は、看護管理者より成るグループ・インタビューにより、各項目の表現や必要性のレベルを更に究明し、現実に看護管理者のコンピテンシー評価に用いることのできるモデルとする予定である。
著者
興津 征雄
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ドイツ法およびフランス法との比較において,2004年の行政事件訴訟法改正により新たに導入された義務付け訴訟と既存の取消訴訟との関係を分析することにより,行政訴訟において司法権と行政権が果たすべき役割について考察し,得られた視点を元に,改正行政事件訴訟法の解釈論と,さらなる立法論を探究した。
著者
小林 道生
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、わが国の保険契約法立法の審議過程における議論状況をふまえ、保険者・保険募集人の情報提供義務を保険契約法の枠組みのなかで規律していくべきか、あるいは、保険監督法における情報提供規制に委ねるべきかを主たる課題とし、前者の立法形式を採用するドイツ法との比較法研究も交えながら、保険契約者保護を図るうえでの望ましい立法や規制のあり方、関連する個々の論点について検討を行った。
著者
日暮 吉延
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、サンフランシスコ講和条約発効後から1958年の日本人戦犯完全釈放までを対象時期としたうえで、日本人戦犯釈放をめぐる国際関係と政治過程を実証的に分析するものであるその目的は、講和条約発効後の戦犯釈放に関する旧連合国側の政策決定過程を仔細に検討し、いまだ不分明な1950年代における日本人戦犯釈放の政治過程に関する諸事実を発掘、解明することにある。裁判後の戦犯処理は、従来の戦犯裁判研究において看過されてきた問題であり、本研究は、日本人戦犯釈放問題に内外で初めて本格的かつ総合的な分析を加えるものと位置づけられる本研究課題については、厳密な意味での先行研究は存在せず、1950年代の戦犯釈放問題という研究上の空白を埋める役割が認められる。研究期間を通じて多数の一次資料・情報の入手、系統的な分析作業を行ない、講和条約発効後の戦犯釈放に関する旧連合国諸政府の対応がかなりの程度、解明されたそれ以前の時期、すなわち占領期の戦犯釈放に関しては、本研究計画の開始前に連合国側の政策決定過程を中心に検討ずみであり、それを本研究の成果と接合することで、占領期から講和条約発効後を通じた連合国側の戦犯釈放政策が明らかとなった
著者
三井 誠 大澤 裕 田中 開 酒巻 匡 長沼 範良 井上 正仁
出版者
神戸大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

本研究は「1984年警察・刑事証拠法」および「1985年犯罪訴追法」の制定によってもたらされた、イギリスにおける刑事司法制度の大改革の全体像を分析するものである。両法典の制定前の状況、法改革の提言、圧力団体の動向、イギリス議会・委員会での審議過程、法律制定後の実務上の変化などの調査結果は、わが国刑事司法のあり方を再考するための重要な素材となろう。1.第1年度には、両法典を翻訳したうえこれを出版するとともに、上記の関連基礎資料・文献の収集・分析をひとわたり終えることができた。2.第2年度には、前年度の基礎作業をふまえて、両法典を6分野に別けて各担当者を定め、各担当者が、担当部分について従前の法と実務法改革の提案、同辺圧力団体・マスコミの動向、1984年法律審議過程と法律成文との関係、法律制定後の実務の様相、新しい判例の動きをふまえたうえで、その調査・分析結果を報告し、それを素材に全員で討議するという方法を数回繰り返した。3.また、両法典成立後、「刑事裁判法」の全面改正はじめ、いぜん刑事司法をめぐるイギリスの状況は流動的であるので、英国の諸機関や滞英中の研究者をとおして最新情報を逐次入手した。4.報告と全体討議が終了した部分については、担当者が論文を作成し、順次、法律雑誌『ジュリスト』に提起連載の形式で発表することとし、937号(1989年7月1日号)より隔号に連載予定である。5.わが国刑事司法制度への影響についてはなお検討を要するが、イギリスにおける捜査、訴追活動の改革は質量ともに重要な意義を有するだけに、日本刑事司法の改善に、制度面でも運用面でも、いくつかの貴重な示唆を与えるであろうことは疑いないといえる。
著者
川出 敏裕
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

研究期間の最終年度である本年度は,平成12年の6月に,いわゆる犯罪被害者保護のための二法が,同じく11月に,「少年法等の一部を改正する法律」が成立し,本研究の二つの対象分野それぞれについて,大きな動きがあった。犯罪被害者保護立法はもちろんのことであるが,今回の少年法の改正では,少年事件における被害者への配慮という要素が、その重要な背景をなしている。その意味で,これらの法律の制定は,本研究課題に直接関連するものであるため,本年度は,その内容を検討することを第一の課題とした。この間に公表した研究成果は,いずれもそれに関するものである。まず第一の「非行事実の認定手続の改善と被害者への配慮の充実」(ジュリスト1195号)は,改正少年法の内容のうち,少年審判における事実認定手続の改正に係る部分と,被害者保護のための措置として新たに導入された,審判結果の通知,審判記録の閲覧・謄写,被害者からの意見聴取を取り上げて,廃案となった旧改正法案と対比しつつ,検討を加えたものである。第二の「逆送規定の改正」は,被害者保護と結びついて主張された,少年犯罪に対するいわゆる厳罰化の象徴的な規定である逆送年齢の引下げと,原則逆送制度の導入につき,その内容と意義を分析したものである。最後に,椎橋教授,高橋教授との共著である『わかりやすい犯罪被害者保護制度』は,犯罪被害者保護のための二法の内容について,一問一答式で解説を行ったものである。それは幅広い内容を含むものであるが,筆者は,そのうちでも,少年事件にも同様に適用されることになる証人尋問の際の被害者保護の問題を中心に執筆している。このように,本年度は,新立法の検討が中心となったため,比較法的考察を踏まえた少年事件における犯罪被害者の法的地位に関する原理的な考察は,必ずしも十分になしえなかった。この点は,今後の課題としたい。
著者
福島 至
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

適切な公的検死(死因究明)制度を構築するためには、独立性・中立性、公開性、専門性、標準化の基本要素が不可欠であるとの結論に至った。独立性・中立性は、政府や自治体の各機関や当事者などの影響を受けないようにして、死因特定の結論が歪められないようにする。公開性とは、最低限のプライバシー保護をしつつも、得られた知見を事故等の再発防止に役立てる。専門性とは、法医学に精通した者が判断に関与することである。標準化は、全国的に等しいサービスを提供することである。
著者
小林 実夏 岩崎 基 堀口 美恵子
出版者
大妻女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

若年者から高齢者までを対象に調査研究を行い、詳細に検討した結果、いずれの年代でも摂取食品数が少ない群ではBMIが25以上の肥満者の割合、朝食を欠食する者の割合が高かった。中高年齢者を対象とした調査では、摂取食品数の少ない群では食事摂取基準の推定平均必要量を摂取していない者の割合が高かった。また、摂取食品数が多い群では血清β-カロテン値や総コレステロール、HLDコレステロールのレベルが高く、γ-GTPのレベルが低かった。本研究により、食事の多様性は生活習慣、栄養素摂取量、生体指標、臨床検査値と関連することが明らかになったことから、特に中高年齢者の健康維持、疾病予防に寄与することが示唆される
著者
間々田 孝夫 水原 俊博 寺島 拓幸 廣瀬 毅士 朝倉 真粧美 呉 金海 野尻 洋平 遠藤 智世
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は東アジアを調査地域として、グローバル化する消費文化についてアメリカ型への画一化と非アメリカ的な多様化の実相を理論的、実証的に明らかにしようとするものである。2007~2008年度の期間、将来的な東アジアでの本格調査を見据えて東アジア地域の消費文化について文献の検討をとおした理論研究をおこなった。また、こうした理論研究をふまえて国内(首都圏)では大規模質問紙調査を実施して一定の成果をあげた。