著者
鈴木 紀明 三宅 正武 西尾 昌治 下村 勝孝 石毛 和弘
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では互いに関連する3つの課題を取り扱った.(1)熱方程式の平均値の性質,(2)放物型ベルグマン空間の構造,(3)熱方程式の多項式解,である.(1)熱方程式の平均値の性質については,有界な密度関数の存在,ディリクレ正則性との関連などについて考察した.それらの結果はN.A.Watsonとの共著でColloq.Math.98(2003),87-98に発表した.(2)上半空間上の放物型作用素に関するベルグマン空間を定義し,Huygens property,基本解の評価,双対空間の特徴付け,再生核の具体的表示などの基本的結果をまとめた(Osaka Mathematical Journal,42(2005),106-133).また,空間次元が2以上という技術的な条件を調和測度の回転普遍性に注目して取り除くことに成功し,帯状領域におけるベルグマン核の評価を行った.それらの結果は2004年8月に島根大学で開かれたIWPT in Matueで講演発表するとともに,2006年に発行予定のASPMに寄稿した.最終年度は放物型ベルグマン空間におけるGleason問題およびCarleson測度とToeplitz作用素の有界性などについての結果を整理した.(3)熱方程式の境界値問題では多項式の解が常に存在する領域についての考察を進めた.2次元で境界が多項式によって定められている場合に,その多項式の次数が3以下の場合を解決し,次数が4以上の場合に,エルミート多項式の零点の分布との関係を調べた.この結果は2005年8月の第2回International Conference of Applied Mathematics (Plovdiv, Bulgaria)で講演発表し,講義録として出版もした.
著者
米田 力生
出版者
小樽商科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

一般的な空間である荷重付きディリクレ空間上の作用素、特に掛け算作用素、テープリッツ作用素、ハンケル作用素がいつ閉値域を持つのかを特徴付けを行った。ベルグマン空間上での掛け算作用素に関しては勿論、一般的な空間である荷重付きディリクレ空間上の掛け算作用素が閉値域を持つ必要条件に関する必要十分条件に関しては知られているが、テープリッツ作用素、ハンケル作用素がいつ閉値域を持つのかに関しては殆ど知られていない。そこで、シンボルを解析函数に限定して、サンプリング集合の特徴付けを行い、その解析結果を利用して、テープリッツ作用素及びハンケル作用素がいつ閉値域を持つかに関する結果を得た。
著者
綿谷 安男 幸崎 秀樹 濱地 敏弘 松井 卓 梶原 毅 中路 貴彦
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の目的は,多項式や有理関数の反復合成のつくる複素力学系からヒルベルト空間上の作用素のつくる特別なC^*環を構築し、異なる二つの分野の関係を考察することであった。Julia集合J_Rの連続関数環A=C(J_R)上のヒルベルト双加群X_RからToeplitz-Pimsner環T_X_Rとその商環であるCuntz-Pimsner O_R=O_R(J_R)を構成した。同様にしてC^*環O_R(C^^^)やO_R(F_R)も構成できた。Rが2次式R(z)=z^2+cの時でも、cがMandelbrot集合に属さない場合は、C^*環O_RはCuntz環O_2と同型になる。cがMandelbrot集合に属する場合は、c=0やテント写像を与えるc=-2のような特殊な時はその構造がわかった。今回の研究での最も大きな成果は、Rが2次以上の有理関数の時、C^*環O_Rはいつでも純無限の単純C^*環になることを証明できたことである。また、分岐点の構造がヒルベルト双加群X_R上のコンパクト作用素全体K(X_R)と、A=C(J_R)の作用の共通部分に対応するAのイデアルI_Xできっちり記述できることを示した。それにより、Fatou集合F_RとJulia集合J_Rによるリーマン球面の分解の対応物としてC^*環O_R(J_R)を大きい環C^*環O_R(C^^^)のFatou集合に対応するあるイデアルによる商環として実現した。さらに、有理関数Rのジュリア集合が縮小写像族の自己相似集合として実現できる場合を手がかりとして、コンパクト集合上の縮小写像族によるフラクタル図形での類似を研究した。特に重要な成果として、その開集合条件が対応するC^*環の純無限単純性を導くことを示した。またそのK群を計算し縮小写像族の言葉だけで書いた。テント写像やシェルピンスキーのギャスケットやコッホ曲線などの具体例についてもK群を計算したりそのtorsion要素を調べて、異なる縮小写像系が同じフラクタル図形を与えても、同型でないC^*環がでてくることもわかった。
著者
米田 力生
出版者
小樽商科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

ベルグマン空間は、複素平面上の開単位円板上のp乗可積分正則関数からなるバナッハ空間であり、複素平面上の単位円上のp乗可積分正則関数からなるバナッハ空間として定義されるハーディー空間とは密接な関係があり、p=2の場合、両空間とも荷重付きディリクレ空間とみなすことが出来る。本研究の目的は、一般的な空間である荷重付きディリクレ空間上のハンケル作用素及びテープリッツ作用素の有界性、コンパクト性、及び閉値域を持つ条件の特徴付けを行うことである。そこで先ず、荷重付きディリクレ空間上で定義される二つの特殊な積分作用素が、ハンケル作用素及びテープリッツ作用素とかなり似通った性質をもつということに着目し、それらの積分作用素の解析を行った。具体的には、荷重付きディリクレ空間上で定義される二つの積分作用素及び掛け算作用素の有界性、コンパクト性、及び閉値域を持つ必要十分条件を特徴付ける研究に着手し一定の成果を上げた。その結果は幾つかの研究集会において発表し、現在、専門雑誌に投稿中である。そして、それら二つの積分作用素及び掛け算作用素の特徴付けを応用し、荷重付きブロッホ空間上の合成作用素、掛け算作用素が閉値域を持っ必要十分条件に関する研究を行い、これまでには無かった新しい結果を得た。そこでまとめた結果は学術論文として現在投稿中である。また、その結果に関して更なる吟味を重ね、荷重付きディリクレ空間上における(ある特殊な条件の下で)合成作用素、テープリッツ作用素の閉値域を持つ新しい必要十分条件を得た。その結果に関しては幾つかの研究集会において発表を行い、現在、専門雑誌に投稿中である。更に、具体的な例の検証から、別の必要十分条件に関する研究に着手し、幾つかの成果が上がってきている。これらの結果は来年度、発表予定であり、吟味の上で、専門雑誌に投稿する予定である。
著者
阪田 省二郎 栗原 正純
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、本研究代表者が以前から行ってきた代数幾何符号の高速復号法の研究を発展させつつ、「与えられた入出力系列対を許容する線形帰還シフトレジスタの合成問題」を高速に解くアルゴリズムを確立することが最大の目的である。従来よく研究されてきた「与えられた系列を出力する線形帰還シフトレジスタの合成問題」は、代数的符号、特にReed-Solomon符号やBCH符号のような実用上も重要な誤り訂正符号、さらには、次世代誤り訂正符号として有望視されている代数幾何符号等の高速復号法と関係が深く、情報通信工学において重要な意味を有しているのに対し、本研究課題は、テプリッツ、および、ブロック・テプリッツ型の非同次連立1次方程式の高速解法に対応しており、拡張した問題を扱っている。これは、代数的符号の高速復号法と離れても、線形システムに対するWiener-Hoph方程式の高速解法として、それ自身、重要な意義を有する。本研究では、まず1次元入出力系列対の場合について、本問題を解く高速アルゴリズムを与え、実際に、その高速性を計算機シミュレーションにより確認した。このアルゴリズムの理論面については、2002年6月、スイスのLausanneにおいて開催されたISIT-2002(2002年IEEE国際情報理論Symposium)で発表した。次に、この結果を、Reed-Solomon符号やBCH符号のリスト復号の第2段階における有理関数体上での因数分解の高速解法に応用できることを明らかにした。さらに、多次元(2次元以上)の入出力系列対の場合にアルゴリズムを拡張し、それを代数幾何符号のリスト復号の第2段階における代数関数体上での因数分解の高速解法に応用可能であることを理論的に示した。これらの成果を、2002年6月末から7月初めに、安房鴨川と横浜において引き続き開催されたAEWIT-2003(2003年アジア・ヨーロッパ情報理論研究ワークショップ)、および、ISIT-2003(2003年IEEE国際情報理論Symposium)において発表した。当初、代数的誤り訂正符号のより高精度の復号という最終的な研究目標への前段階として、システム理論的な問題の形で本研究課題を設定したが、その目標にほぼ沿った形で、Reed-Solomon符号や代数幾何符号のリスト復号への応用が可能であることを明らかにした。また、関連する研究として、代数曲線符号の並列複号、複合誤り訂正符号についての成果を、電子情報通信学会論文誌に共著論文として出版した。
著者
三浦 宏之 吉田 恵一 栗山 實 真柳 昭紘 岡田 大蔵
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

歯は粘弾性体である歯根膜によって顎骨に植立されており,咀嚼時に機能力を受けると,歯槽骨の中に押し込まれて上顎臼歯部は口蓋側遠心歯根方向へ,下顎臼歯部は舌側方向へ変位して,歯および顎骨が受る咬合力を緩衝している.健常者の下顎第1大臼歯は,咬頭嵌合位での噛みしめ時に舌側方向へ50μm程度の回転成分の強い変位経路を示し,プリッツ咀嚼時にはプリッツが上下顎間に介在することによって下顎第1大臼歯は舌側方向のみならず頬側方向への力を受けるために頬側方向への変位を示すが,この頬側方向への変位は咀嚼の進行と共に減少し舌側方向の変位が増加する.一方,歯槽骨の吸収が認められる被験者の下顎第1大臼歯では噛みしめ時の変位量は50μm程度と正常者とほとんど変わらないものの,正常者とは逆方向の頬側方向に変位した.まだ,プリッツ咀嚼時に正常者に見られた咀嚼初期の頬側への変位が見られず,咀嚼初期より舌側方向に変位し,さらに健常者に比べて幅のある大きな動きを示していた.ブラックシリコーンにて記録した同症例の咬合接触像では,軽度,中等度噛みしめ時に遠心舌側咬頭内斜面に1点,強度噛みしめ時には遠心舌側咬頭内斜面,遠心咬頭外斜面,近心頬側咬頭頂の3点に穿孔が見られ,頬側咬頭内斜面のみに特に強い咬合接触像が見られるわけではなく,咬合接触像に特に異常は認められなかった.それにもかかわらず,正常者と異なる変位経路を示したのは歯槽骨の状態の変化によるものと考えられる.歯が機能時に正常時と異なる変位経路を示すと歯周組織の状態をさらに悪化させることも考えられる.したがって,歯槽骨の吸収を伴うような症例では歯周組織の破壊状態を適切に診査,診断を行うとともに,歯周処置を行い,補綴物製作時には補綴物に正常な変位経路をとるような咬合接触関係を付与する必要があることが明らかとなった.
著者
柿沢 佳秀
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究での主たる対象は時系列解析だが、ベルンシュタイン多項式に基づく関数推定問題は独立同一分布を想定した母集団分布(密度)関数や回帰モデルにおける回帰関数など、いわゆる「関数のノンパラメトリックな統計的推測」の中に位置づけられる。独立同一分布の密度関数推定(レフリー付きジャーナルJNSに掲載)との類似点に着目し時系列解析の典型例である定常過程のスペクトル密度推定問題への接近法としてベルンシュタイン多項式近似理論を応用(レフリー付きジャーナルJTSAに掲載)した。連続関数なスペクトル密度は周期関数で原点対称性をもつから、[0,π]上のベルンシュタイン近似が採用され、ベルンシュタイン多項式を重みとする推定量の属(古典的に議論されてきたダニエルによるスペクトル推定量の線形結合)を考察し、さらに、ダニエルウィンドウ関数を一般的なウィンドウ関数に替えることで、ダニエルウィンドウ関数の最適性がベルンシュタイン法の意味で示された。平滑化パラメータの選択に対するアイディアは「関数のノンパラメトリックな統計的推測」の枠の中で先行研究が多数存在しておりベルンシュタイン推定法を念頭に関連する文献研究をした。一方では、漸近的な分散の振る舞いは原点近傍と内点ではオーダーが違っており、特に、標本サイズに依存かつ原点に収束するような位置におけるベルンシュタイン関数推定漸近理論には注意を払う必要も示した。このことは、ベルンシュタインスペクトル推定量は原点付近にピークが現れる傾向(これはベルンシュタイン法に対して実施された大規模な数値実験からも確認されており、1つの欠点と判断される)をもつことに対応しており、局所的なベルンシュタイン多項式次数の選択法開発の必要性を認識した。
著者
清水 韶光 日笠 健一 林 青司 萩原 薫
出版者
高エネルギー物理学研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

1.弱電統一理論による輻射補正の計算が完成され、その総合報告が、Prog.Theor.Phys.誌に掲載された。2.弱電統一理論及び量子色力学のあらゆる反応の散乱振幅及び断面積を自動的に計算するコンピュ-タ-プログラムが完成され、その成果を国際会議に於いて報告、又、論文として発表した。3.本研究の最も重要な成果の一つである、量子色力学にもとずく、ジェット生成法の解説を現在準備している。これは今後のトリスタン実験に於いて最も重要な分野となるからである。4.トリスタン及びLEP領域におけるe^ーe^+消滅断面積に対する量子色力学による高次補正項の、定量的な解析を行なった。5.B中間子の準レプトン崩壊過程をモデルを用いて解析し、小林一益川の行列要素測定に含まれる誤差を評価した。6.トッポニウム等のカラ-自由度を持った粒子の束縛状態が生成される断面積を一般的に考察した。7.超対称性理論に現われるトップクォ-クのスカラ-対が、トリスタン領域で生成される可能性を考察した。8.トリスタン領域ではわずかに大きなハドロン生成比、LEP領域ではわずかに大きなZの崩壊比が観測されているが、これらが超対称性粒子による輻射補正の効果である可能性を考察した。
著者
松本 詔
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

今年度の主な結果は、コンパクト対称空間に対応するランダム行列に対して、その特性多項式の積の平均を計算したことである。それらの平均を、対称空間の制限ルート系に応じて、長方形ヤング図形に対応したジャック多項式または多変数ヤコビ多項式で表すことができた。特性多項式の平均をこのように一つの知られた直交多項式で表すことができたことは、ランダム行列の研究において、ジャックまたはヤコビ多項式が重要な役割を果たすことを示す。またこの結果に現れる直交多項式を見ると、特性多項式の平均について以下のようなことが考察される。すなわち、直交多項式のパラメータを見ると、ランダム行列の双対性が見える。というのは、円型のβアンサンブルを考えた場合、βに自然に対応するジャック多項式ではなく、4/βに対応したジャック関数が現れる。これは、βと4/βにそれぞれ対応するランダム行列間の双対性を示唆している。また、特性多項式平均が長方形のヤング図形で表されることは、前年度の研究代表者の研究結果から、それはさらにハイパー行列式で表されることも分かる。これは対応するランダム行列に対してハイパー行列式の理論を適用できる可能性を示唆している。
著者
米田 力生
出版者
愛知教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

複素平面上の開単位円板上において、p-乗可積分である正則関数によって作られるバナッハ空間をベルグマン空間という。本研究の目的は、このベルグマン空間を一般化した空間である荷重付きディリクレ空間上のマルティプライヤーにおけるシンボル空間がどの程度縮小するのかを解析し、荷重付きディリクレ空間上で定義された(ある特殊な二つの)積分作用素の性質を詳しく調べることである。一般に、その二つの作用素は、有名なテープリッツ作用素とハンケル作用素と呼ばれる二つの作用素と密接な関係がある。そのため、これら二つの作用素の性質を調べることは、テープリッツ作用素やハンケル作用素の新たな性質を導き出す鍵となる。そこで先ず、それらの作用素がいつ有界、コンパクトとなるのかに関しての研究を行った。これらに関する研究は、一定の成果を上げ、幾つかの研究集会において発表し、専門雑誌に受理され出版された。また更に吟味を重ね、別の幾つかの成果(有名な空間であるBMOA上での積分作用素及びマルティプライヤーに関する)を上げることに成功した。その結果は、専門雑誌に受理され、今年度出版予定である。また今年度は、荷重付きブロッホ空間上で定義される合成作用素及び積分作用素がいつ閉値域を持つのかに関する研究を行った。先ず、積分作用素がいつ閉値域を持つのかに関して研究を行い、これまでにはまったく知られていなかった必要十分条件を導き出すことに成功した。これらに関する成果は、幾つかの研究集会で発表し、更に吟味を重ね、現在、専門雑誌に投稿中である。更に、これらの結果を合成作用素に応用出来ないかという研究に着手し、幾つかの成果が上がってきている。これらの結果は来年度、発表予定であり、更なる吟味の上で、専門雑誌に投稿する予定である。
著者
山田 雅博 石渡 哲哉 愛木 豊彦 竹内 茂 米田 力生 下村 哲
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究では,テプリッツ作用素の有界性に関する研究を行った。特に,${\bf R}^{n}$の上半平面で定義された調和バーグマン空間におけるテープリッツ作用素の有界性に関連したカールソン不等式の解析を行った。テープリッツ作用素の可逆性に関する研究に関連して,調和ベルグマン空間における接導関数と非接導関数との関連性に関する研究を行い,それらの関数のノルムが同値となることを示した。また,カールソン不等式と呼ばれる積分不等式の性質の解析を行い,申請者が過去に行った研究結果を含んだより一般的な結果を得た。ここでは,考えるベルグマン空間も調和関数によって作られるバナッハ空間とし,そこにおける$(A_{p})$条件に相当する新しい概念を導入した。具体的には,$n-$次元ユークリッド空間の上半平面で$P-$乗可積分な調和ベルグマン空間を考える。一方の測度の任意の調和関数の$p-$乗積分が他方の測度の調和関数の$p-$乗積分で上から押さえられるための必要十分条件を,他方の測度が$(A_{p})_{\partial}$条件を満足するときに特徴付けた。$\alpha$--ベルグマン空間という新たな概念が提示され,通常のベルグマン空間を放物型作用素の解空間の一種と見なし,より統一的にベルグマン空間を研究するという方向が示された。これに関連して$\alpha$--ベルグマン空間上のカールソン不等式を考察し,カールソン不等式が成立するための特徴付けを行った。この特徴付けは,ある種の微分方程式の基本解をもとに構成した再生核を用いて行った。また,その際に必要十分条件を記述するため,$\alpha$--カールソンボックスという概念を導入し,再生核の境界挙動や評価を行い,その性質を明らかにした。
著者
熊代 克巳 建石 繁明
出版者
信州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

1.リンゴ、ナシ、モモ及びブドウに対して通常の防除暦に従って薬剤散布を行い、葉の純光合成速度(Pn)、蒸散速度(Tr)及び気孔拡散伝導度(Gs)の消長を調べた。その結果、Pn、Tr及びGs共に、薬剤散布直後には低下し、1日後にはかなり回復するという経過を繰返した。2.供試薬剤のうち最も顕著な抑制作用を示したのはビ-ナイン(主成分SADH)で、正常に回復するには約10日を要した。そして、その抑制は高濃度液ほど、また若齢葉ほど顕著であった。3.リンゴの収穫前落果防止の目的で散布するオ-キシン剤は、Pn、Tr及びGsに対する抑制は軽微で、散布後1日目にほとんど正常に回復した。4.殺虫剤スミチオンの粉剤、水和剤及ぴ乳剤をナシに散布して、Pn、Tr及びGsに及ぼす影響を比較したところ、乳剤の抑制作用が最も著しく、粉剤の影響が最も小かった。5.浸透性の強い展着剤に温州ミカンの葉を浸漬した後、徒手切片を作成して、落射蛍光顕微鏡で観察したところ、浸漬直後には気孔周辺に浸漬1日後には海綿状組織及び柵状組織に、自己蛍光を発生する細胞が認められた。このことから、たとえ肉眼的な薬害症状が認められない場合でも、細胞が何らかの生理的障害を受ていることが推察された。6.各種薬液に葉を浸漬した後に、走査型電子顕微鏡を用いて、気孔の開度を調べたところ、各薬液共に、浸漬直後には気孔の開度を低下させ、高濃度液ほど閉鎖作用が著しかった。ただし、ボルド-液に浸漬した場合には、開閉機能が失なわれて開いたままの気孔が散見された。
著者
軸屋 和明 立花 博之 平松 修 望月 精一 松本 健志 後藤 真己 OGASAWARA Yasuo KAJIYA Fumihiko
出版者
川崎医療短期大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

心筋内の血流分布は微小循環レベルで著しい空間的不均一性を示すことが知られ、冠微小循環障害発症メカニズムの関連因子として注目されている。本研究では、放射性分子血流トレーサ(トリチウム標識のデスメチルイミプラミン:^3H-DMI)を用い、従来にない高分解能(100サンプル/mm^2、最小サンプルサイズ0.lmm)で麻酔開胸家兎の心内膜側心筋と心外膜側心筋の血流分布の全体的および局所的不均一性を評価した。その結果、心内膜側では心外膜側に比して血流の全体的不均一性(global heterogeneity)は大きかったが、逆に近接サンプル間の血流相関性すなわち局所的な血流の一様性(local homogeneity)が高かった。また、フラクタル解析によって、血流分布のランダム性は心内膜側で小さく、クラスター様の分布パターンであることが明らかになった。以上より、心内膜側心筋は不均一な冠血管構造と心筋メカニカルストレスの影響下にあるために全体的な血流分布のバラツキは大きいが、高い心筋酸素需要に応じて局所血流調節が強く働き、血流分布を局所的に一様化していることが示された。また、サンプルサイズを変数とした近接サンプル間の血流相関値にあらわれる増加→プラトー関係から、血流調節ユニットが心外膜・内膜側ともに約400μmであった。この大きさは臨床的に知られる散在性の心筋虚血の個々の虚血領域の大きさに対応している。
著者
岩見 哲夫
出版者
東京家政学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

ナンキョクカジカ亜目8科56種について,閉顎筋および鰓弓周辺の一部の筋肉群について,詳細なアトラスを作製した。また,8科16種について,閉顎筋と関連の深い神経ramus mandibularis trigeminusの位置関係について明らかにした。これらの形質を解析した結果,ナンキョクカジカ科の中で従来の分類体系とは異なるクレードの設定が必要と思われる形質分布が確認された。特に,南極大陸沿岸域に分布の中心をもつトレマトムス亜科と外部形態では高い類似性を示すNototheniinaeの間では重要な差異が認められた。また,本科の中で原的なグループとされていたPatagonotothen属について,筋肉系からはその傾向を支持する形質が認められなかったことは,本属の系統的位置を推定する上で重要な新知見と判断された。カモグチウオ科とコオリウオ科の近縁性は従来の骨学的データおよび近年増加しつつある分子生物学的データからも支持されているが,筋肉系からも同様の結果が得られた。しかしながら,カモグチウオ科の一種キバゴチGymnodraco acuticepsについては,ナンキョクカジカ亜目全体の中でも極めて特異な形質状態を呈することが確認された。キバゴチに認められた形質を,稚魚期の個体の全身横断面切片を作製し解析したところ,閉顎筋1と2の融合は,稚魚期では認められず,成魚におけるこの形質は明らかに派生形質であることが確認できた。また,本種が内鼻腔構造を持つとされる問題についても,稚魚期には鼻腔と口腔が連絡していないことが確認され,この点についてはさらに検討を進めている。
著者
野口 博司
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

クズ培養細胞系より得られたカルコン合成酵素cDNAを用い,ゲノムDNAライブラリーを検索しクローン解析を行ない,独立と思われる2種の遺伝子を得て,この上流域について検討した。この遺伝子2,3とbのうち500bpについてはシークェンスが完了している。これをこれまで知られている主なプロモーター領域と比較すると,インゲンのエリシターによって発現する主要なCHSのプロモーターとは上流-380から-840までで高い相同性が見い出された。中でも-145のTATAboxと推定される配列のすぐ上流にコンセンサス領域が存在し,まだインゲンのboxIIIに相当する領域は見い出された。一般には転写開始点から-400bpまでにプロモーター活性が存在すると考えられるが得られた全領域について,プロモーター解析用のベクターとして著名なpBI121に組み込み解析しようとしている。現在これをトリペアレンタルメイティング法により,アブロバクテリウムを介してタバコ,エンドウに戻してプロモーター機能の解析を行なおうとしている。これはブドウ,クズ等のプロトプラストを生成させ,エレクトッポレーション等による形質転換が,良い結果が得られない為,確実に形質転換体を得る目的で行なっている。又現在知られているプロモーターの中ではダイズのプロモーターとはほとんど相同性が検出されていない。また現在ダイズ由来の環元酵素cDNAを用い,クズのゲノムDNAにおける生合成遺伝子のクラスターを調べる上で,CHSと協同する環元酵素の遺伝子を検索し,この上流域を得るべく検討している。現在までの所,いまだアントシアン合成系にかかわると思われるCHSについては得られていない。
著者
西尾 昌治 小松 孝 佐官 謙一 正岡 弘照 鈴木 紀明 下村 勝孝 竹内 敦司 山田 雅博 佐官 謙一 正岡 弘照 鈴木 紀明 下村 勝孝 竹内 敦司
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

熱方程式などの放物型方程式に対し,その解空間の構造および,底空間の幾何学的状況などとの関係を解の積分表示などポテンシャル論的手法を用いた詳細な解析を行った.方程式としては,ラプラシアンの分数ベキを含んだ微分積分方程式などを取り扱い,放物型ベルグマン空間の研究では,時間変数に関する分数ベキ微分を用いる新しい手法によって,トエプリッツ作用素や調和双対に関する結果が得られた.
著者
鈴木 紀明 西尾 昌治 下村 勝孝 山田 雅博 西尾 昌治 下村 勝孝 山田 雅博
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

Laplace作用素と熱作用素を統一的に取り扱う目的で,上半空間に放物型作用素を導入し,その作用素が作るBergman空間を定義した.この空間に作用する様々な線形作用素を解析し,特に,Carleson埋め込みとToeplitz作用素の有界性とコンパクト性を示した.
著者
遠藤 泰生 荒木 純子 増井 志津代 中野 勝郎 松原 宏之 平井 康大 山田 史郎 佐々木 弘通 田辺 千景 森 丈夫 矢口 祐人 高橋 均 橋川 健竜 岡山 裕
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

領土の拡大と大量移民の流入を規定条件に建国後の国民構成が多元性を増したアメリカ合衆国においては、社会文化的に様々の背景を持つ新たな国民を公民に束ねる公共規範の必要性が高まり、政治・宗教・経済・ジェンダーなどの植民地時代以来の社会諸規範が、汎用性を高める方向にその内実を変えた。18世紀と19世紀を架橋するそうした新たな視野から、合衆国における市民社会涵養の歴史を研究する必要性が強調されねばならない。
著者
三王 昌代
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

蘇禄(スールー)は東南アジア島嶼部に位置し、入手可能な資料が極めて少ないとれるだけでなく、中国との交渉において「外国文字」を用いていた地域でもあり、これまで当時の文書の内容に関する研究はほとんど行われていない。申請者は、東アジア・東南アジア世界に関する相互交渉・相互認識の実態や独自性を明らかにする必要があると考え、18世紀においてスールーと中国のあいだに交わされた国書に着目して研究を進めた。ジャウィの文書解読のため、マレーシア国民大学・マラヤ大学などを訪れて諸情報・資料収集を行った。スールーから中国に届けられた現地語の文書、すなわちジャウィの文書の解読を進め、漢訳されて上奏された文書などをはじめとする漢文資料との比較検討を行った。その結果、おもにマレー(ムラユ)語のジャウィが用いられていたことや、漢文になる段階で文言の置き換え・書き換えが行われたり、ジャウィの文書にはなかった皇帝賛美の文言が加えられていたりしたことなどが分かってきた。現在、このスールーと中国とのあいだの文書往来に関し、研究成果を纏める作業を行っている。また、中国福建省泉州でのフィールドワークの成果は、2008年度日本社会科教育学会で、「泉州(中国福建省)に残る文化交流・交渉の跡を辿る」(滋賀大学教育学部、10月11日、二谷貞夫先生と)と題して発表した(発表要旨は、『日本社会科教育学会全国大会発表論文集』第4号、2008年10月、88-89頁に掲載)。