著者
指宿 信 佐藤 達哉 渕野 貴生 堀田 秀吾 藤田 政博
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

取調べの録画におけるカメラ・アングルがもたらす偏見や、自白調書の三次元グラフィック・ツールによる表示、公判前報道が引き起こすバイアス、評議室における裁判員・裁判官の言語コミュニケーション等について、それらの適正化に向けた法学・心理学・言語学・情報工学等の技術や知見を組み合わせた"学融的"アプローチの有効性を検証できた。
著者
加古 敏之
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では政策評価を活用して地方自冶体の農林水産行政の改革について考察することを課題としている。兵庫県農政環境部は、農林水産ビジョンに掲げるめざす姿の実現に向けて、多様な行動主体と目標を共有化し、知恵や力を出しあい、適切な役割分担のもとに、ともに取り組んできた。ビジョンで目指す姿がどれだけ実現できたかを毎年評価し、県民に公表するという方法で、ダイナミック・マネジメント・システムを循環させる取組を7年間にわたり実施してきた。こうした取組は徐々にではあるが成果をあげている。より大きな成果を上げるためには、県民、納税者の視点からアウトカム指標に基づく評価をより一層推進することが必要であろう。事務事業評価は、行政機関に既に存在する事務や事業を取り出し、その効果、効率について「事務・事業」の品質チェックをするという特徴をもっており、「戦略」レベルの見直しからは、まだ距離がある。愛知県東海市では、このような状況の打開策としてベンチマーク方式の政策評価を導入した。しかし、住民のニーズを反映した指標は行政の事業から遠いので、住民のニーズと行政の事業を結びつけるロジックモデルを検討し、その後の政策形成につなげていくことが課題といえる。オレゴン州ティラムク郡は、社会指標型ベンチマーキングを活用して、高い成果をあげている。行政からは独立しているティラムク未来委員会は、地域住民から多くの意見・情報を集めて地域の問題を明らかにし、戦略ビジョンとコミュニティ・アクション・プランを策定した。また、達成度評価の結果を公表してきた。ティラムク郡の取組が高い成果を上げている理由として、困難であってもあきらめずに改革への取組を継続する未来委員会の能力、政策評価の実施に関する多くのノウハウを持つオレゴン大学CPWの協力、自分たちの住む地域をよくしたいという地域住民の強い意思と民主主義を実践する住民の能力、を指摘できる。
著者
高山 喜晴
出版者
独立行政法人農業技術研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ラクトフェリンは骨芽細胞の分化を促進する機能を持ち、骨形成を促進するサイトカインとして再生医療への利用が期待される。このためには、有効濃度のラクトフェリンを骨芽細胞に持続的に供給するドラッグ・デリバリー・システム(DDS)の開発が必要である。〓型コラーゲンは骨組織を構成する主要な細胞外マトリックスであると同時に、様々な細胞増殖因子を内包し、徐放する性質を持つことが知られている。そこで、〓型コラーゲンが骨芽細胞分化の過程において、ラクトフェリンの徐放担体として利用可能か検討するため、ウシラクトフェリンを含有する〓型コラーゲンゲル薄膜を作成した。この薄膜上でMG63 ヒト骨肉腫由来細胞を単層培養し、デキサメサゾン添加により骨芽細胞に分化誘導すると、ラクトフェリンを含まないコラーゲンゲル薄膜と比較してアルカリフォスファターゼの活性化・オステオカルシンの産生などの分化形質の発現とマトリックスの石灰化(カルシウムの沈着)が促進された。この結果より、〓型コラーゲンゲル薄膜がラクトフェリンの徐放担体として培養骨組織の形成に有用であることが示された。
著者
井上 宜裕
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究の第一義的な目的は、わが国における「刑事手続を利用した損害回復制度」の問題点を抽出、分析し、より被害者にとって利用しやすい損害回復制度を確立することであった。フランスの私訴制度及びドイツの付帯私訴制度と本制度を比較検討した結果、本制度には、無罪判決に際する民事賠償に何ら配慮されていないという決定的な問題が存することが明らかになった。上記の目的を達成するためにもこの点の修正が急務である。
著者
剣持 久木
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1930年代のフランスについては、ファシズムの浸透度をめぐる論争がある。その際の焦点は、退役軍人フランソワ・ド・ラロック中佐の政治的位置付けである。本研究は、ラロックをめぐる実像と集合的記憶の乖離に注目した。ラロックは、1934年2月6日の反議会騒擾事件の際に最大の動員力を誇ったため、その秩序正しい行動にも関わらず、ファシズムの脅威の象徴的存在となった。「人民戦線の父」と呼ばれるゆえんである。一方、反人民戦線派にとっても、ラロックは逆の意味で「人民戦線の父」であった。2月6日以降の人民戦線結成の流れに対抗した、保守派大同団結の呼びかけにことごとくラロックは応じなかった。ラロックは、極右という左翼によるレッテルとは裏腹に、中道志向だったのである。とりわけ、1937年春の、ジャック・ドリオ提唱の自由戦線結成を拒絶したことで、保守派全体にとってラロックは「裏切り者」になった。かくして、左翼からのファシズム批判に加えて、ラロックには保守派からの、誹謗中腸の集中砲火が浴びせられことになる。それでもラロックは、大衆的な支持を飛躍的に伸ばし、その党勢は、仮に(戦争によって実現しなかった)1940年に総選挙が実施されていれば、第一党を獲得する可能性があった。ドイツ占領下のヴィシー体制のもとでラロックは、ペタン元帥を支持するもレジスタンスに関与するというスタンスをとる。結局ゲシュタポに捕らえられるが、解放後もフランス当局によって拘留が継続される。2年以上の獄中生活がたたってラロックは、レジスタンスの実績も認定されず、ファシストの汚名を背負ったまま病死する。本研究は、ラロックのファシズムイメージの形成過程に注目すると同時に、彼の死後に根強く残る集合的記憶としてのラロック像の推移にも光をあてた.とりわけ、「反論権」行使という形で、名誉回復に長年奔走するラロックの遺族の戦後の戦いに注目した.
著者
鈴木 淳生
出版者
名城大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

売り手と買い手の両者が権利行使可能な金融派生商品のペイオフを一般化し、定式化および価格評価を行った。さらにいくつかの例として転換社債、仕組債(ダブルバリア型エクイティリンク債、パワー・リバース・デュアルカレンシー債)などを取り上げ、売り手および買い手が権利行使をすべき閾値(最適行使境界)の解析的な性質を導いた。
著者
安藤 哲夫
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

M町における252組の母児調査で児のメチル水銀曝露の成長・発達への影響を検討した。母の頭髪総水銀濃度の幾何平均濃度は1.60ppmであった。母乳を与えた期間が長いほど母の頭髪水銀濃度は低く、1ヶ月間の母乳の授乳によって1.065ppmの頭髪水銀濃度が低下したことが回帰係数から算出できた。出産間隔が短いと母の頭髪水銀濃度は高かった。母乳の授乳期間が長いほど児の独り歩きの時期が誕生日を含めてそれ以降の児が多くなる頻度が高かった。
著者
大原 興太郎 秋津 元輝 ビラス サロケ 田中 耕司 堀尾 尚志 タムロン プレンプリディ 法貴 誠 PREMPRIDI Thamrong SALOKHE Vilas M. ピラス サロケ
出版者
三重大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

本年度の研究はシンドシナ半島の国々の本来自足的・生態系保持的な在来農法がどのような形で存在しているか、また技術移転など外からのインパクトがどのような技術的、経済的、社会文化的影響と問題をもたらしたかを、適性技術、土地・水利用、在来農法(焼畑農業を含む)の生態学的特徴、農法展開のための普及組織の実態と問題点、近代化の進展による農作業の変化、伝統的農民の行動様式等の側面から明らかにしようとした。本年度の現地調査はヴェトナム社会主義共和国のメコンデルタ農業について、カント-大学の全面的な協力を得て包括的な概況調査を行うとともに、ラオスにおいてはメンバー各人の問題意識にしたがって個々に再調査を行った。以下、明らかになった事柄を摘記する。1)ベトナムの経済は1986年のドイモイ政策以来対外解放政策と市場経済を導入し、さまざまな規制を緩めてきた。その結果1986〜91年のGDPの平均成長率が5.2%、サービス部門の成長率は9.9%にも上った。農業部門では新土地政策、世帯別独立経済、農民の長期土地使用と土地の相続権及び取引権の授与(1988)、生産活動と売買の請負制は農業に劇的な変化と高成長をもたらした。2)農業基盤については道路などの整備がまだ不十分であるが、フランス植民地時代からの水路開発の結果、水運が発達している。そのため道路がないところでも、船による脱穀や籾摺の請負が発達しており、トラクターの移動も船で行っている地域がある。3)ベトナムの米生産1991年1940万トンの53%を占めるメコンデルタはメコン川の豊富な水量に恵まれ、近年二期作の面積が約70%(*)に拡大した。この稲作の発展には1988年に設立されたカント-大学のメコンデルタ農法研究開発センターが大きな役割を果たしている。4)メコンデルタの農法は地域の自然条件等によってバラエティにとんでおり、一般的なDONG XUN(冬春稲)+HETHU(夏秋稲)の二期作、DONG XUN(冬春稲)+HETHU(夏秋稲)+THU DONG(秋冬稲)の三期作、HETHU+LUA MOA、LUA NOI(浮稲)の一期作、LUA MOA(浮稲)+淡水エビ、HETHU+エビ、HETHU+サトウキビ、DONG XUN+HETHU+野菜等々の多くの組み合わせがみられる。5)また、播種なしい移植についても、乾田直播、湛水直播、催芽種直播、不耕起直播、混播、田植等が土地条件や営農条件によって使い分けられている。6)旧南ベトムでは比較的うまく存続しているのが珍しいDONG CAT国営農場では、肥料の購入、水利、耕耘などは国が管理し、あとの農作業は農民に任せている。興味深いのは国営農場内に森林が植林されており、酸性土壌に強いメラロイカが植えられ、とくに火災の管理などに工夫がされていることである。7)メコンデルタ農業発展の障害は農業基盤の整備の不十分性、資本の欠乏、農産物および生産資材の価格の不安定があげられる。8)ラオスにおいては1975年以前にアメリカにならった普及組織があったが、革命とともに無くなり、ようやく1991年になって農業普及庁が設立され、普及組織が再び整えられつつある。9)2代目長官ブリアップ氏は次のような普及目標を上げている。技術移転、農民への技術援助、他の省庁との調整、農民のニーズの把握、作物の病虫害防除、作付改良への理解、農業機械の管理、家政への参加等である。10)現在の普及上の問題点はまず第一に普及員の質の向上であり、第二に普及組織の確立、第三に予算の不足、第四に情報とりわけ市場情報の確保があげられる。とくに普及関係の予算は少なく、現在国際機関との共同事業もないが、農民が肥料や種子、さらには機械や農業雇用のための金を借りるための農業振興銀行(Agricultural Promotion Bank)が1993年に設立された。これには普及員の承認がいることになっている。借入金の利子は8〜12%であり、一般銀行のよりは数%低くなっている。11)ラオス北部の米作はなお焼畑が主体をなしているが、政府の森林伐採の禁止により、農民は新たな土地を確保できず、焼畑のロ-テーションが以前の10年前後から3〜4年と短くなって来ている。
著者
細野 薫
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、預金者による規律付けの理論分析と実証分析からなる。理論分析(第1部)では、預金保険のもとで、預金者による銀行の選別がどのような条件で起こりうるのか、また、預金者による銀行選別がどのように銀行経営者のリスクテークに影響を及ぼすかを解明した。とくに、政府による銀行救済政策が預金者による規律付けを無効にし、銀行のリスクテークを助長してしまうことが強調されている。実証分析は、90年代における日本の全国銀行のデータを用いた研究(第2部)と、世界63カ国の銀行のデータを用いた研究(第3部)からなる。まず、日本の実証結果によれば、預金増加率と預金金利はそれぞれ銀行のリスク指標との負、正の相関が見られ、預金者による選別行動が観察された。特に定期預金の増加率とリスク指標との相関は、ペイオフ解禁(2002年3月)の直前に高まっていた。次に、各国の実証分析をサーベイした上で、世界63カ国の約18,000に及ぶ銀行・年データと各国の銀行規制や法制度などのデータを整備して実証分析を行った(鶴光太郎氏、岩城裕子氏との共同研究)。この結果、銀行規制が甘いほど、また、法による統治の程度が低く、金融資本市場が未発達なほど、預金者のリスク感応度は高く、預金者による規律付けが機能していることがわかった。これは、規制当局が預金者の代表として銀行を監督するという「代表仮説」と整合的であり、政府による規制と市場規律が代替的に機能していることを示唆している。
著者
大西 正光
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

インフラプロジェクトでは、複数の(実際には多数の)リスク要因が存在していることが通常である。しかし、複数リスク下における、プロジェクトリスクの最適なリスク分担構造について、未だ理論的な裏付けによって導かれたものは存在しない。本研究では、インフラプロジェクトにおける複数リスクのアンバンドリングを考慮した最適リスク分担構造を、合理的意思決定モデルを用いることによって、演繹的に導き出した点に新たな貢献がある。
著者
三浦 良造 本多 俊毅 中村 信弘 大橋 和彦 長山 いづみ
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、電力・天候・保険事の新しいリスクの取引と管理を目標に、必要となる基礎理論の構築とその実務への応用のための基盤作りを行った。現在までに論文の形式とした成果は以下の通りである。第一の研究成果は、α-percentile barrier optionの一般化としての「江戸っ子オプション(Edokko Option)」の理論価格の導出である。(Fujita and Miura論文。)これは、基本的に一定の期間内において原資産の値がある閾値よりも小さくなる割合がα-percentile以下であるかどうかに依存してペイオフが定まるデリバティブの価格を求めるものであるが、ここで開発した理論を用いれば、例えばある一定期間に雨が降った日数(イベント日数)を原資産とする天候デリバティブの価格計算が可能になる。第二の成果は、ジャンプが加わった拡散過程に資産価格が従う非完備市場における、投資家の最適ポートフォリオ問題の解析である。(Nakamura論文)。スパイクと呼ばれるような不連続的な価格変化は電力価格の特徴であるので、この理論を用いれば、電力市場等における最適取引やリスク管理、それらのリスクをヘッジするための天候デリバティブや保険料の評価等を行うことができる。第三の成果は、取引の流動性の確保についての分析である。(Ohashi論文)ここでは保険デリバティブについて、情報の非対称性に基づく理論モデルを構築し保険デリバティブが取引される条件を分析したが、情報の非対称性による流動性の低下は、重要性を増しているMBSの取引においても重要な問題である。この他に天候や電力に関するデータを整えた。今後、これらの実データを利用して、以上の基礎理論を天候デリバティブの価格決定や、発電事業の価値評価、保険料率の決定等の分析を行う予定である。
著者
RICHARD Anton Braun
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

銀行取引とマクロ経済に関する私の研究は3つの研究テーマを完成させることに焦点が当てられてきた。第1のトピックは預金供給についてである。家計が預金の主な供給者であることは周知の事実であるが、この研究は人口統計の推移が家計の代替的資産区分需要、ひいては預金供給にどのように影響を与えるかということを調査するものである。Braun, Ikeda and Joines(2006、執筆中)では上記要素を盛り込んだコンピューターOLGモデルを発展させた。家計の有効期間は80年間あり、労働供給の決定をする。我々はこのモデルのパフォーマンスを1960年からのデータと、出生率、税、技術、死亡危険度、政府の負債における時間変化のモデルを用いて計測した。この論文では貯蓄率の年代別詳細情報を提供しているが、資産配分の決定については述べていないため、こちらは久保田敬一教授と和田賢治助教授との共同研究(2004)で家計の資産配分をモデル化を試みた。この研究は世紀の変わり目までさかのぼったデータを使い、人口統計の相互作用と各資産区分の超過収穫を調査した。これら2つの研究を組み合わせて、銀行預金の供給の構成と総体的なサイズに関する情報を供給した。第2のトピックはマネー・サプライの増加がゼロ金利下での経済にどのように影響を与えるか、ということである。Braun and Waki(2006)では硬直価格モデルを定式化し、1990年代の日本からの実質的・名目的事実を説明する規格を作り出した。金融政策が経済を安定させる力は名目金利がゼロの時は崩壊してしまうこと、そして名目ゼロ金利を強制されたことに対する福祉のコストは大きい、ということを発見した。Braun and Shioji(2006a,2006b)では日本の金融政策が利回り曲線に与える影響を調査し、日本、アメリカ、韓国の金融政策のクレジット・チャンネルの国際比較を行った。最後に3番目のトピックはこの3つの研究をひとまとめにし、金融政策の相互作用と銀行セクターの健全性を調査した。Braun and Gilman(2006)ではインフレの低下が銀行の健全性や家計の福祉に与えるであろう影響を調査した。また、家計の福祉と銀行セクターの収益性に与える影響に関する政府の代替政策の意味合いについても検討した。
著者
野間 幹晴
出版者
一橋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度は主に次の2つの研究を行った。第1の研究が多角化と株主資本コストに関連する実証研究であり、第2は経営者の業績予想と会計発生高に関する実証研究である。多角化と株主資本コストについては実証分析を行い、「証券アナリストジャーナル』に掲載した。本研究では、多角化戦略が株主資本コストに与える影響を実証的に検証した。多角化にともなう企業と投資家との情報格差の拡大によって、当該企業への投資に対するペイオフ推定のリスクが増大し、資本コストが上昇すると考えられる。先行研究の多くはコングロマリット・ディスカウントの要因として経営の非効率性を指摘するが、本稿では多角化戦略の採用自体がリスクプレミアムをもたらす要因となることを示した。実証分析から、多角化は資本コストに影響を与えるリスクファクターであり、その内容や実施形態に応じて資本コストに対して異なる影響を与えることが解明された。経営者の業績予想と会計発生高の関連についても日本企業のデータを用いて実証分析を行った。分析の結果、経営者予想の予測誤差と会計発生高、および経営者予想の予測誤差と正常会計発生高の間に統計的に有意な関連があることが明らかになった。また、経営者予想の改訂と会計発生高、および同改訂と正常会計発生高との間に関連があることを明らかにした。こうした分析結果は、経営者が発生主義会計を十分に理解していないことを示唆する。この研究については、マレーシアで開催された、"19^<th> Asian-Pacific Conference on International Accounting Issues"において発表を行った。
著者
神薗 健次
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

金融派生証券価格理論においては,まず原資産価格の変動を表すモデルとして,例えば対数正規過程などの確率過程が与えられる.次に派生証券は,ヨーロピアン型の場合では,派生証券満期におけるペイオフとして特徴付けられ,これはモデルの上では満期時点における原資産価格の関数として与えられる.そして,当該金融派生証券の現在時点における価格は,満期でのペイオフの割引現在価値の期待値を,いわゆるリスク中立確率測度のもとでとることによって得られる.これが,無裁定価格理論の概要である.本研究は,金融派生証券価格を非対称情報のもとで考察することを目標としてスタートした.平成19年度における本研究の研究実績の概要は以下の通りである.前年度までに Bikulov and Volovich(1997)によるBrown運動による対称確率積分を定義し,Malliavinの発散作用素との関連を論じたが,今年度には論文のさらなる改訂を行い,最終的に学術雑誌Stochastics第79巻・第6号に成果を発表するに至った.前年度より引き続き手がけていた,Donskerの不変原理に相当する定理の証明は未完であるが,p進時変数のDoobの不等式に相当するものを求めるということが新たな問題として浮かび上がった.また,前年度得られた成果であるρ進有理数全体を時変数にとるBrown運動をPaley-Winnerの方法によるBrown運動の構成について,The Third International Conference on p-Adic Mathematical Physicsにて成果報告を行った.
著者
内田 善彦
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2006

第一に、解析的な価格式を持たないヨーロピアン・オプションを対象にした並列化コードを実装し、並列化による計算速度の向上を確認した。ここでは、漸近展開を用いた分散減少法付きモンテカルロ法のアルゴリズムとしてTakahashi and Uchida(2006)で提案済みのものをアルゴリズム利用した。漸近展開や分散減少法を用いない既存アルゴリズムとしてオイラー・丸山法によるモンテカルロ法のアルゴリズムを利用した。並列・分散処理にかかる制御手法はsocketをもちいたサーバー・クライント型とした。数値実験の結果として、並列化手法を用いれば、一般的なモンテカルロ法では計算時間が長くて現実的でない「実用的な精度のキャリブレーション」が低次の漸近展開式を得るだけで可能になる、と考察した。第二に、漸近展開法とモンテカルロ法を組み合わせたアルゴリズムの応用範囲を広げることを目的として、漸近展開法を用いてヨーロピアン・オプションの初期値微分(グリース)を計算する計算式を導出した(Matsuoka, Takahashi and Uchida(2006))。この計算式を上記の並列化手法を用いて並列化することは容易である。第三に、アメリカン・オプションを対象にした漸近展開を用いたモンテカルロ法の開発を目的として、Rogers(2002)の方法に漸近展開法を組み合わせたアルゴリズムについて、基本的な数値実験を行った。この結果、単純なペイオフをもつアメリカン・オプションに対してはマルチンゲール項としてヨーロピアン・オプションの漸近展開式が有効であることが分かった。さらに、一般的なペイオフを持っアメリカン・オプションに対して有効なマルチンゲール項の計算を統一的な方法で行うことは必ずしも容易でないことが分かった。
著者
岡本 芳晴 畠 恵司 荻原 喜久美 南 三郎 柄 武志
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

今回の研究により、細胞レベルでのルパン型トリテルペン(ルペオール)のメラノーマ分化誘導の機序を解明することができた。また遺伝子解析により、細胞周期に影響を及ぼすことも判明した。マウスを用いたin vivo実験より、ルペオールを腫瘍局所あるいは全身に投与することにより、メラノーマの増殖を抑制することが明らかとなった。さらに犬の自然発症例メラノーマに対しても十分有効なことが示された。
著者
高松 良幸
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、戦前の美術品の売立目録のうち100冊について、所収の作品の写真・テキストをデジタルデータとして記録し、その各種データを所蔵履歴、活用履歴などさまざまな角度から検索可能なデータベース化を試みた。また入札会の実況を伝える書籍、新聞雑誌記事等の関連資料の検討を行なうことで、戦前のコレクターの美術作品の保存、活用に対する姿勢、美術観や美術作品の移動に関する戦前の社会的意識等を検証した。
著者
永田 雅輝 木下 統 辰巳 保夫
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

イチゴは収益性が高く営農上有利な作物であるが、果実が痛みやすいために省力化・機械化の開発が大幅に遅れている。特に、収穫以降のハンドリング作業(収穫、選果、出荷)は強度な労働負担であることから、早急な機械化の開発が望まれている。本研究は、特に選別機の開発研究を主として遂行するものであるが、イチゴ果実は痛みやすいので、品質保持を安定化・強化するために予冷を組み込んだ選果システムを提案するための基礎研究に研究に取り組んだものである。その結果、次の成果を得た。1.イチゴ選別機の研究(1)選別機構の開発 選別機構としてベルト式を開発した。本機構は直線的な搬送により選別速度の制御が容易で連続選別が可能となるように、イチゴが円形パンに載せられてベルト上を移動する間に、CCDカメラで画像入力して、コンピュータで階級と等級に選別するものである。区分けはエア-シリンダにより、イチゴをA.B.Cの3等級に区分するものである。(2)形状判別ソフトウェアの開発 コンピュータ画像処理によって階級と等級を判別するために、イチゴ果実の縦横比、輪郭線等を用いた形状特長抽出の演算手法を提案し、ニューラルネットワークによる判別プログラムを開発した。本プログラムによる判別性能は83〜95%が得られた。2.予冷による品質管理の研究イチゴの品質保持として果実硬度を増加するために、予冷とCO_2ガス処理の試験を行い、予冷温度は1℃が5℃より、CO_2処理では高CO_2貯蔵が、果実の硬化及び品質保持には有効であることを明らかにした。そのため、予冷とCO_2を併用した処理法は選別での損傷が少なくなり、出荷後の品質劣化も減少させ得ると言え、機械選果には有利と判断された。
著者
林部 敬吉 辻 敬一郎 中谷 広正 阿部 圭一 東山 篤規
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

研究成果は次の通りである。1.バーチャル・リアリティ空間における視覚特性について人工的に出現させたバーチャル・リアリティ空問の視覚特性が自然空間とどの程度類似しているかを、双曲空間特性、ホロプター特性、大きさ恒常性、奥行距離特性についてそれぞれ測定した。その結果、両眼視差、パースペクティブ、テクスチャ、陰影を奥行手がかりとした条件では、視覚特性で比較する限り、自然空間は限定的にしか再現されず、また個人差も大きいことが明らかにされた。2.バーチャル・リアリティ技術を応用した対象の3次元可視化についてVR技術を用い3次元可視化したときの視覚特性を考慮した次の3通りのシステム、すなわち人間の脳の3次元可視化システム、室内デザイン支援システム、初等プログラミング教育支援システムを開発した。人間の脳の3次元可視化システムでは、人間の脳の全体と部分が立体的に知覚できるようにし、同時に、脳の構造と機能とが理解できるように工夫された。室内デザイン支援システムでは、VR空間内に置かれた様々な対象(イス、机、棚など)をデータグローブを使用して仮想的に移動し配置(デザイン)させることができ、もし対象とデータグローブとが接触すれば、接触判定を行い、同時に接触したことをユーザーに視覚的、聴覚的信号で知らせて使用者の利便性を高めた。初等プログラミング教育支援システムでは、小学生や中学生等に対してバーチャル・リアリティの技術を利用することでプログラムするとはどういうことかを理解させ、同時にプログラムの結果を、ミニカーやミニロボットをプログラムに従って動かして確認することができるようにした。
著者
西村 一彦
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

農業用ため池の多面的価値を計測することを目的として、5択一式の調査票を設計し、西日本の16,000人に対してネットアンケートを実施した。データは離散選択モデルを基礎とする混合ロジットで分析を行い、ため池属性の限界価値を測定した。