著者
矢野 公士
出版者
独立行政法人国立病院機構(長崎医療センター臨床研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

近年,E型肝炎が先進国で土着していること,および人獣共通感染症であることが明らかとなり,その対策が社会問題となっている。本研究では主として野生イノシシを対象として,長崎地方におけるHEVの浸淫状況を明らかにすることを目標とした。平成16年度 24頭,17年度 43頭,18年度 53頭,19年度 68頭,合計188頭の野生イノシシの筋肉のサンプリングを行い,RT-PCR法でスクリーニングおよび遺伝子解析を行った。HEV RNA陽性は21頭(11.2%)であった。うち,7例において,HEV ORF-1領域281塩基の配列が決定できた。この配列を既報の株と比較,近隣結合法による系統樹解析を行ったところ,いずれもgenotype3型であった。系統樹上,長崎,佐賀地方で発生したE型急性肝炎から得られた株(E108-HSGO5,E110-NGSO5A,ETM-NGSO4,ENK-NGSO3等)と非常に近縁に位置し,この系統のE型肝炎株が長崎地方のヒトとイノシシの間で蔓延していることが示唆された。Genotype3型の中でも2系統が長崎地方特有の株として浮かび上がった。さらに興味深いことには,参考試料として得られた長崎地域のとある豚舎で得られたブタのサンプルから,付近のイノシシと非常に近縁な株(sw087-NGS07)が見出された。このことから,HEVがイノシシsブタのサイクルで伝播をきたしている可能性が示唆された。今回の研究結果は,感染対策上きわめて有用な情報となることが期待される。
著者
前田 健
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

1) CDVのレセプターSLAMを恒常的に発現する細胞を用いて、野外株とワクチン株の増殖性を比較した結果、ワクチン株はSLAM発現細胞で極端に増殖能力が落ちた。これはワクチン株がSLAM発現細胞すなわちリンパ系の細胞での増殖が抑制していることから、イヌでの病原性が低下していると推測された。2)世界で初めて100代以上継代が可能なウマ由来の培養細胞株を樹立した。この細胞でウマヘルペスウイルス2型は細胞変性効果を示して増殖するため、EHV-2を含むウマヘルペスウイルスに対する治療薬の効果の判定が可能となった。3)Fcwf-4細胞を用いたウイルス中和試験によりI型ネコ伝染性腹膜炎ウイルス(FTPV)はFIP発症ネコ血清により感染が増強されることが示されたが、I型ネココロナウイルス(FCoV)感染健常ネコ血清には感染増強作用が存在していなかった。これはFCoV感染による抗体ではなく、FIPV発症ネコ血清中に含まれる何らかの因子がfcwf-4細胞に対する感染増強に関与していることを示唆している。このin vitroにおける感染増強機構を指標にFIPに対する治療薬の開発が可能になると期待される。4)コウモリより新規細胞株の樹立と新規ヘルペスウイルスとアデノウイルスの分離に成功した。コウモリ由来の新興感染症は多く、これらの細胞はその診断に役立つものと期待される。
著者
中川 直子 奥野 良信 森川 佐依子 伊藤 正恵
出版者
大阪府立公衆衛生研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

1.AH9型およびAH5型インフルエンザウイルスの早期診断AH9型のインフルエンザウイルスは香港でヒトヘの感染例が報告されており、次の新型ウイルスの最有力候補といわれている。AH9型の流行に備えて、A/Duck/HongKong/702/79(H9N5)対するモノクローナル抗体を作製した。既にAH5型のインフルエンザウイルスに対するモノクローナル抗体を樹立しているので、これらの抗体をPAP法に応用することにより新型ウイルスの迅速診断を行いたい。2.新しいタイプのB型インフルエンザウイルス(山形タイプ)の早期発見従来のB型に中和活性を示すモノクローナル抗体5H4を用いて抗原性を調べたところ、大阪府で採取された1998/1999シーズンの株の6%にあたる株は5H4で中和されない新しい抗原性を有した株であった。HA1領域のDNAシークエンス解析の結果、149番目のアミノ酸がアルギニンよりリジンに変化していることが、原因であると示唆された。149番目のアミノ酸がアルギニンであることは、山形タイプに特徴的で、10年来変異がなく、この知見は特筆すべきものであると考えられる。1999/2000シーズンはB型の流行がなく2株のみ採取されたが、この2株とも新しい抗原性の株であった。新しい変異が見られたことで、2000/2001のB型の流行が以前より大きくなることを予想していたが、懸念通り、ワクチン株と抗原性の差異がみられるウイルス株が流行し、その流行が長引いた。今後はワクチン株の選定に貢献したい。3.AH1型インフルエンザウイルスの早期診断1999/2000シーズンには4年ぶりにAH1(Aソ連)型の流行があり、流行株に対するモノクローナル抗体を作製した。次の流行時には、これらの抗体をPAP法に応用することにより、迅速診断ができるだけでなく、今回の流行株との抗原変異の解析が可能となる。
著者
長尾 由実子 佐田 通夫 川口 巧
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

わが国における肝臓癌の95%以上は、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの持続感染が原因です。これらの肝炎ウイルスは、肝臓の病気だけではなく、さまざまな肝臓病以外の病気も起こしてくることがわかっています。皮膚や粘膜に現れる扁平苔癬もその一つです。本研究を通じて、C型肝炎ウイルスに感染している扁平苔癬患者はインスリン抵抗性が高いこと、インスリン抵抗性の高いC型肝炎ウイルス関連の口腔癌は重複癌を発症しやすいことがわかりました。インスリン抵抗性とは、インスリン濃度に見合った作用が得られない状態を指します。C型肝炎ウイルス感染者は、肝臓病だけでなく、扁平苔癬や口腔癌、そして重複癌について注意深く経過観察する必要があります。
著者
奥野 良信 伊藤 正恵 加瀬 哲男 中川 直子 前田 章子
出版者
大阪府立公衆衛生研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

インフルエンザウイルスのHA蛋白は構造的に頭部と幹部に分かれるが、我々は以前に幹部に共通中和エピトープの存在することを証明した。このエピトープを利用するために、幹部だけをコードするヘッドレスHAのcDNAを構築し、これを広域反応性のDNAワクチンとして活用することを考えた。昨年度までは、HA遺伝子を発現させるベクターにpEF-BOSを用いていたが、マウスに有効な免疫を賦与できなかった。そこで今年度は、高発現ベクターのpNOW-GKTに変更してDNAワクチンを作製し、マウスに免疫して抗体価の測定とチャレンジテストによりこのワクチンの有効性を検討した。フルサイズのHA、あるいはヘッドレスHAをコードするcDNAをベクターに挿入し、遺伝子銃を用いて3週間隔で2回マウスに免疫した。2回目の免疫から2週後にマウス肺に強い親和性を示すA/FM/1/47(H1N1)をマウスの鼻腔内に接種してチャレンジテストを行った。ベクターだけを接種したマウスは著明に体重減少し、半数のマウスが死亡した。一方、フルサイズのHAを免疫したマウスはすべて体重減少を示すことなく生存した。ヘッドレスHAを免疫したマウスの20%は死亡したが、生存したマウスは体重減少を起こさなかった。経時的にマウスより採血し、血清抗体価をELISAと中和試験で調べた。フルサイズのHAを免疫したマウスは有意な抗体上昇を示したが、ヘッドレスHAを免疫したマウスは抗体価の上昇を認めなかった。以上の結果より、ヘッドレスHAを免疫したマウスがコントロールのマウスよりも生存率が高かったのは、液性抗体よりも細胞性免疫が働いているためだと推測された。今後は、ヘッドレスHAの免疫方法を変え、抗体価の測定だけでなく細胞性免疫も調べてヘッドレスHAのDNAワクチンとしての有用性を検討したい。
著者
岡田 全司 吉田 栄人 大原 直也 鈴木 克洋 井上 義一 露口 一成
出版者
独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

(1)新しい結核治療ワクチンの開発:HVJ-エンベロープ/HSP65 DNA+IL-12 DNAワクチンはマウス及びヒト結核感染に最も近いカニクイザルを用い、多剤耐性結核や超薬剤耐性結核に対し、治療効果(結核菌数減少及び延命効果)を発揮する画期的なワクチンであることを発見。(2)この抗結核効果がキラーT細胞分化誘導と関係。(3)15K granulysinタンパクが結核菌に対するキラーT細胞分化誘導活性を示すことを発見。IL-6 やIL-2と相乗的なキラーT分化誘導を示した。(4)granulysin Tgマウスを作製した。
著者
立野 淳子
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

CNS-FACEによって算出した家族のニーズとインタビューによって見出した家族のニーズの一致度を検討したところ、「保証」のニーズは8割以上とらえられていることがわかった。一方、「安寧・安楽」のニードは約3割と低い割合であった。
著者
飛田 良文 鈴木 庸子 ベデル ジョージ
出版者
国際基督教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1.明治・大正・昭和の約100年にわたる日本語の近代化する現象を、外来語を対照として考察した。そのため、作品数1000の外来語を採取し、約14万用例をデータベースに入力した。この用例集をもとに、時代的変化を計量的に分析し、また、語形や煮味の変化した外来語の語史を解明した。2.第一に、研究方法を検討し、外来語とは何か、定義が時代によって変っていることを明らかにした。「外来語研究の方法」である。外来語を借用語と日本人の造語した外来語とに分類し、比較した。この点が本研究の独創的な点である。3.第二に、用例の確認作業の完了した40作品約1万用例について計量的分析を行った。「明治大正昭和期における40作品の外来語」である。原語別にみると、明治期から英語からの借用語が圧倒的で、ポルトガル語とオランダ語がこれにつづく。ドイツ語・フランス語がその存在を示すのは大正期からである。また、和製洋語が出現するのは、原語により異なるが、外来語と日本語の混種語の誕生後であることを発見した。固有名詞の外来語は地名、人名が圧倒的であるが、漢字表記の地名、人名は、漢訳洋書からの借用が多いことを発見した。4.語史については、和製外来語リヤカーの誕生、語形の統一されるヒステリックとヒステリカルの語史、漢字表記からカタカナ表記へと移り変わるタバコの歴史、イメージの変化するデリケートの語史、学術用語として問題のある考古学の石器用語について考察した。5.索引には、作品別五十音順用例集と、語別年代順用例集を作成した。これは日本最初の外来語用例集である。
著者
小笠原 直人
出版者
岩手県立大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は,ユーザがリソースの質を理解することを可能とする,空間に基づくメタファーを提供するユーザインタフェースを構築することである.そのために本年度は以下の研究を実施した.1.モデルに基づく空間メタファーUIの実装前年度の研究成果である空間メタファーのモデルを,システムとして容易に設計,実装するための空間メタファーUI記述言語を開発した.前年度実装したプロトタイプシステムはVRMLをベースとした物であり,空間比喩写像の記述能力が低い物であったため,Javaを基本にした記述言語として設計した.この空間メタファー記述言語により,前年度のプロトタイプと同性能のシステムを容易に実装できたことにより,記述言語の実用性が確認された.2.空間メタファーUIの認知科学的評価1で実装したシステムを用いてユーザによる利用実験をおこなった.実験結果として,距離比喩写像,空間比喩写像空間メタファーがサービスのリソースの質の理解に有効であることを確認した.具体的には比喩写像に写像される目標領域と規定領域の組合せとして,1:サービスに関する距離比喩写像,2:ユーザに関する距離比喩写像,3:サービスに関する空間比喩写像の3つの比喩写像において,分散環境独特の情報の理解のに及ぼす効果があることが確認された.また,コミュニケーションを行う相手のユーザとサービス間に関する距離比喩写像を提供することにより,ユーザ間の総合的な距離がわかるが,実験システムではこの距離をユーザに提示できないという問題点があることが解った.3.サービス選択支援エージェントのモデルの設計2で得られた結果に基づいて,サービス空間に存在するユーザを各々のサービスのアドレス情報,TPOの情報の2つの情報を管理するエージェントとして実現し,サービス選択時に,エージェントの持つ情報と,両者のユーザの距離比喩写像で表現される距離に基づいて最適な選択を支援するエージェントモデルを設計した.
著者
片山 薫
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

大規模グラフ集合を効率的に検索するため, 数値的方法と組み合わせ的方法による部分グラフ同型性判定(あるグラフが別のグラフに含まれるかどうか判定すること)手法を開発した.行列の固有値に関するInterlace 定理に基づいたグラフ索引手法とグラフフィルタリング手法を提案すると共に, Messmer らの提案したグラフ分解に基づく部分グラフ同型探索アルゴリズムの改良を行った.これらの提案手法について人工的に生成したデータや実際のデータを利用して評価実験を行い, その有効性を検証した
著者
近山 隆 湯淺 太一 上田 和紀 田浦 健次朗 遠藤 敏夫 横山 大作 田浦 健次朗 遠藤 敏夫 横山 大作 馬谷 誠二
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

爆発的に増加する大量の情報を効率的に扱うソフトウェアの構成には、広域に分散配置した高度な並列性を持つ情報システムを柔軟に記述できるソフトウェアの枠組が基本技術として必要となる。このためのプログラミング言語やミドルウェアのシステムと、複雑なソフトウェアの正当性を検証するためのシステムを対象に研究を進め、具体的なシステムを提案、設計、実装し、その性能を検証した。代表的成果ソフトウェアは公開している。
著者
植田 和弘 森田 恒幸 仲上 健一 佐和 隆光
出版者
京都大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
1991

発展途上国における環境保全型経済発展のあり方とその可能性に関する分析をすすめた。アジア諸国においては、日本における公害対策の進展が経済成長をしながらすすめられたことをもって、日本を持続可能な発展のモデルとみる傾向がある。そこで、日本の公害対策のうち最も成功したと言われている硫黄酸化物対策に焦点をあてて、中国および韓国を対象として環境政策の発展過程に関する基礎的データを収集・分析するとともに、政策の発展経緯をその経済性に着目して詳細に比較分析した。その結果、その同質性と特異性が明らかになり、後発性の利益を実現するための条件を解明した。開発プロジェクトの持続可能性の条件について、流域開発事業を事例に、環境費用・環境便益の社会的評価方法と開発プロジェクトの環境配慮の評価システムに着目して分析を加えた。その結果、開発インパクトと流域管理の国際比較に関する体系的なデータベースの構築が不可欠であることが確認された。環境政策の経済的手段について、ドイツ排水課徴金、公害健康被害補償制度賦課金、環境補助金、排出許可証取引制度、デポジット・リファンド制度、ごみ有料化、直接規制を取り上げ、その理論と実際の乖離とその原因について、理論の通説的理解の再検討と実証分析を行うことで検討をすすめた。その結果、これまでの経済理論の想定が非現実的であること、通常のミクロ経済理論が集合的意思決定の要素を十分に考慮できていないために、実際に導入されている経済的手段の合理性を説明できないことを論証した。また、財政学的な検討を加えることで、実際に導入されている経済的手段を費用負担のあり方の一形態として理解できることも明らかにした。
著者
井上 創造 久住 憲嗣
出版者
九州工業大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2009

本研究では,行動センシング,つまり各種センサ機器を用いて現実世界における人間の行動を理解する技術において,1.人間の行動を高精度に判別し,有用な客観的知識を得ること,および2.要求される程度に応じて対象者の個人情報を保護すること,を両立するための基盤技術を研究する.今年度は,グローバル行動情報収集システム「ALKAN」を開発し、実際に運用して大量のデータを集めた.ALKANは,スマートフォン上のソフトウェアおよび、サーバソフトウェアからなり,参加者はスマートフォンを用いて行動を行い加速度センサ情報を蓄積し、ネットワークにつながった時点で行動情報収集サーバに送信します。サーバは、行動情報を蓄積するとともに、参加者の履歴と、被験者全体におけるランキングを作成し参加者に提示する.参加者は、スマートフォンからこれらの情報を閲覧することができ、一日の行動履歴やカロリー消費といった付加機能をサーバ側で追加することもできる。このため、参加者への様々なフィードバックを動的に追加することができ、参加の意欲も高めることができる。我々はALKANをおよそ一年間運用し、約200人から3万件を越す行動データを得ることができた。このデータを用いて行動認識など種々のデータマイニングを行った。既存の行動認識の研究は被験者が多くても数十人程度というのが多いが、人数が増えると既存の手法では精度が悪くなる現象も見られており、行動認識における新たな研究チャレンジをALKANによって開拓できつつある.ALKANシステムを応用し、振り付けやお辞儀の採点システムや、看護士の行動識別、在宅見まもり、農作業自動記録と言った応用分野への適用も始めており、「行動」をキーワードとした幅広い応用が期待できる。さらに、動画との連携機能を付加した、ALKAN2も開発しており、動画と行動情報を同時に共有する新たなWebサービスも開始する予定である。
著者
上田 豊 中尾 正義 ADHIKARY S.P 大畑 哲夫 藤井 理行 飯田 肇 章 新平 山田 知充 BAJRACHARYA オー アール 姚 檀棟 蒲 建辰 知北 和久 POKHREL A.P. 樋口 敬二 上野 健一 青木 輝夫 窪田 順平 幸島 司郎 末田 達彦 瀬古 勝基 増澤 敏行 中尾 正義 ZHANG Xinping BAJRACHARYA オー.アール SHANKAR K. BAJRACHARYA オー 伏見 碩二 岩田 修二
出版者
名古屋大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

1.自動観測装置の設置と維持予備調査の結果に基づき、平成6年度にヒマラヤ南面と北面に各々2カ所設置したが、各地域におけるプロセス研究が終了し、最終的には南面のクンブ地域と北面のタングラ地域で長期モニタリング態勢を維持している装置はおおむね良好に稼働し、近年の地球温暖化の影響が観測点の乏しいヒマラヤ高所にいかに現れるかの貴重なデータが得られている。2.氷河変動の実態観測1970年代に観測した氷河を測量し、ヒマラヤ南面では顕著な氷河縮小が観測された。その西部のヒドン・バレーのリカサンバ氷河では過去20年に約200mの氷河末端後退、東部のショロン地域のAX010氷河では、ここ17年で約20mの氷厚減少、またクンブ氷河下流部の氷厚減少も顕著であった。地球温暖化による氷河融解の促進は氷河湖の拡大を招き、その決壊による洪水災害の危険度を増やしている。3.氷河変動過程とその機構に関する観測氷河質量収支と熱収支・アルビードとの関係、氷河表面の厚い岩屑堆積物や池が氷河融解に与える効果などを、地上での雪氷・気象・水文観測、航空機によるリモート・センシング、衛星データ解析などから研究した。氷河表面の微生物がアルビードを低下させて氷河融解を促進する効果、従来確立されていなかった岩屑被覆下の氷河融解量の算定手法の開発、氷河湖・氷河池の氷河変動への影響など、ヒマラヤ雪氷圏特有の現象について、新たに貴重な知見が得られた。4.降水など水・物質循環試料の採取・分析・解析ヒマラヤ南北面で、水蒸気や化学物質の循環に関する試料を採取し、現在分析・解析中であるが、南からのモンスーンの影響の地域特性が水の安定同位体の分析結果から検出されている。5.衛星データ解析アルゴリズムの開発衛星データの地上検証観測に基づき、可視光とマイクロ波の組み合わせによる氷河融解に関わる微物理過程に関するアルゴリズムの開発、SPOT衛星データからのマッピングによる雪氷圏の縮小把握、LANDSAT衛星TM画像による氷河融解への堆積物効果の算定手法の確立などの成果を得た。6.最近の気候変化解析ヒマラヤ南面のヒドン・バレーとランタン地域で氷河積雪試料、ランタン周辺で年輪試料を採取し、過去数十年の地球温暖化に関わる気候変化を解析中である。7.最近数十年間の氷河変動解析最近の航空写真・地形図をもとに過去の資料と対比して氷河をマッピングし、広域的な氷河変動の分布を解析中である。8.地球温暖化の影響の広域解析北半球規模の気候変化にインド・モンスーンが重要な役割を果たしており、モンスーンの消長に関与するヒマラヤ雪氷圏の効果の基礎資料が得られた。
著者
石原 盛男 豊田 岐聡 植田 千秋 内野 喜一郎 圦本 尚義 倉本 圭 松本 拓也
出版者
大阪大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2004

まず新規に開発する超高感度極微量質量分析システムの構想決定を行い,その検討結果をもとに装置の製作を行った。その後,質量分析部,1次イオン照射系,レーザーイオン化について,それぞれ装置性能評価を行った。
著者
藤田 貢崇
出版者
法政大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、かつての足尾銅山における世界屈指の採掘・精錬技術や、住民の生活、周辺環境に関する未整理の写真資料をデータベース化した。このデータベースを用いて、当時の足尾銅山に働く人々や住民の科学技術や公害事件に対する認識を考察し、小中高校の環境教育における、人間活動と自然環境との関わりを学ぶための教材を作成した。また、広く社会人を対象として「社会と共存する科学技術」の考えを深めるための写真展を開催した。
著者
喜多 千草 出口 康夫
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、コンピュータの導入によって科学的方法に変化のみられた具体的な事例に関する歴史研究から、哲学的考察に進める手順をとった。まず、1940年代に行われていたパンチカード式計算機の天文学分野での科学計算への応用、また、医学分野におけるEBMの普及の課程、全国共同利用機関としての大型計算機センターで行われた初期の科学計算などを取り上げた。このうち、初期の科学計算に関してはウェブサイトにデータを公開した
著者
今 尚之 馬渕 浩一 早川 渡
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,科学史,技術史研究における建設記録映画の史料的価値を見いだし,さらに映像シーン毎に視聴を可能とするデータベースシステムのプロトタイプを作成することで,建設記録映像の史料的価値をより見いだすことを目的とするものである。本研究では,建設記録映画の内容情報データベースを作成する過程から,土木建設の分野における細部の施工の機械化および施工機械の変遷および技術を取り巻く社会の変化に関する知見を多数得ることができ,建設記録映画が持つ史料的価値の大きさを確認することができた。さらに,シーン毎に視聴を可能とするデータベースの構築手法ならびに視聴するためのシステムのあり方を提供することが可能となった。
著者
鈴木 祐介
出版者
広島市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は,地図や罫線文書などの平面上に描画可能な構造を持つ平面データを対象としたマイニング手法の開発,及びそのための理論的基盤についての確立である.TTSPグラフ,外平面的グラフ,順序グラフでモデル化される平面データを対象に,それらの特徴を表現するグラフパターンの提案を行った.さらに,それらのグラフパターンに対する多項式時間機械学習アルゴリズムを提案した.またその結果を応用したグラフマイニング手法について考察した.