著者
濱口 由美
出版者
福井大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要編集委員会
雑誌
福井大学教育実践研究 (ISSN:13427261)
巻号頁・発行日
no.45, pp.11-22, 2021-03-26

「高田博厚のえらべる鑑賞シート」は,多様な市民の教育参画を促す生涯学習教材として,福井市美術館と福井大学の共同研究によって開発されたものである。幅広い学習層を常設展「高田博厚の世界」へ誘うために,MI理論に基づくエントリーポイントの考え方を参考にして,4つの異なる学習のとびら(学習の入り口)を設けられるようにした。本研究では,複数の学習のとびらをもつ「高田博厚のえらべる鑑賞シート」を用いることで,どのような教育的可能性をもつ生涯学習の場が提案できるのか,教材の内容や実践事例の検討を通して考察する。
著者
山路 敦
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.107, no.7, pp.461-479, 2001-07-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
107
被引用文献数
10 8

地殻応力の評価は, テクトニクスを理解するうえで鍵になる.また, 応用地質的な価値も高い.ところが, その手法として普及している共役断層による小断層解析は, 間違った答えをだすことが多い.それにかわって, 3次元的応力歪みを許容する小断層解析法がここ30年間に幾つも開発されてきた.新手法の開発とともに適用可能な野外の対象も拡大するので, フィールド調査と方法論的な研究が両輪をなして進んできたわけである.代表的な方法がインバージョンによる応力推定である.しかし, それは複数の応力を記録しているデータセットからそれらの応力を分離する能力にとぼしいが, その能力のある方法の開発も試みられている.未解決の方法論的問題が少なからずあるので, 今後も手法の開発とフィールドへの適用という2面で研究が進展していくだろう.
著者
小畠 かな子 有馬 正和
出版者
公益社団法人 日本船舶海洋工学会
雑誌
日本船舶海洋工学会論文集 (ISSN:18803717)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.115-122, 2021 (Released:2022-02-28)
参考文献数
7
被引用文献数
1

The ocean absorbs heat and carbon dioxide from the atmosphere and serves to mitigate rapid climate change caused by human activities. The ocean also has the function of maintaining natural cycles such as the oceanic general circulation, carbon cycle and providing us with fishery resources. A healthy, pollution-free marine environment is essential for the sustainable development of human society. However, global warming, ocean acidification, oxygen depletion, and accumulation of marine plastic waste are now facing serious threats to marine ecosystems. In order to conserve the abundant sea, it is very important to have a correct understanding of the ocean environment and marine ecosystem conditions over a long term and wide area. In this research, the authors assume the underwater glider with independently controllable main wings, SOARER developed at Osaka Prefecture University, and propose a threedimensional wide-area ocean observation strategy for Japan's Exclusive Economic Zone (EEZ). Several cases of underwater cruise simulation with swarm intelligent autonomous underwater gliders were carried out to estimate the required number of underwater gliders which cover the Japan's EEZ and to consider its validity and effectiveness.
著者
佐藤 隆広 福味 敦
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1_17-1_29, 2019 (Released:2019-03-08)
参考文献数
20

本研究は,石油価格の上昇がもたらすマクロ経済への影響を,石油輸出国であるロシアと石油輸入国である中国とインドのユーラシア地域大国3カ国で定量的に比較した.ベクトル自己回帰(VAR)モデルを用いた分析結果によると,石油価格ショックと石油への投機的需要ショックの2つのケースで,中国とロシアで対照的な結果が得られた.すなわち,中国ではこれらのショックは物価を高めるのに対して,ロシアでは生産を拡大させる.また,世界景気のプラスのショックを意味する石油需要ショックは,中国においてもロシアにおいても生産を拡大させる.ロシアでは,それはさらに物価も高める.これに対して,インドでは石油ショックについて統計的に有意な結果が得られなかった.
著者
多賀 優 河野 俊夫 中野 聰志
出版者
日本地学教育学会
雑誌
地学教育 (ISSN:00093831)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.1-12, 2015-05-31 (Released:2016-07-20)
参考文献数
30
被引用文献数
2

紫色レーザーポインターからの光線(405 nm)を照射することによって蛍光を発するコナラの枝を浸した水(コナラ水と呼ぶ)やウランガラスプリズムをそれぞれ方解石と組み合わせて方解石の複屈折現象を教材化した.本教材では,方解石への入射光路,方解石中の光路,方解石からの出射光路のすべてを紫色レーザー光励起による蛍光の輝線として連続して観察できる.開発したコナラ水やウランガラスプリズムを用いて,高校で光の性質(直進,反射,屈折)を示す演示実験を行った.その結果,光の性質についての認識が深まった.
著者
永島 利明
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.27-35, 1972-12-01 (Released:2017-07-28)

Before modern society the handicapped was often confined in the room or watch by people. The midget was worked for the governing class as comedian in ancient China and Japan. Some Chinese philosopher, for example, Confucius blamed dwarf for reason why politician was corupted by them. As a result, shogun or the military caste could not go to show-booth during Tokugawa period which was greatly influenced by Confucian scholar. It was specially in the later fudal society when there were many handicapped who were played as actor for citizen. They had 74 kind of the handicapped showman. Why did they bocome showman? For the first place, they were sold and bought by merchant of person. Secondly, the sin of their father are visited on the children. The retribution was a kind of moral educatin in Japan. Meiji Goverment often prohibited peopile to watch cripple showman after 1868 in order to reform unequal treaty between foreign countries and the Tokugawa Shogunate, but had no policy of social welfare for the handicapped. So they had to continue working as a player. They were not actor and actress until goverment gave pulic support to them after the Second World War. Owing to the Law of Social Welfare for Child in 1947, for The Physically Handicapped in 1949 and The Livelihood Protection Law in 1950, they can manage to keep without playing.
著者
根来 龍之 足代 訓史
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会 全国研究発表大会要旨集 2008年秋季全国研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.94, 2008 (Released:2009-01-07)

本稿は,因果連鎖の網の目構造論の立場(根来, 2008)から,意図せざる結果の類型化とそれへの対処について考えることを目的とする.意図せざる結果に関する議論は,基本的にはいかなる行為も,意図した結果のみならず,多かれ少なかれ意図せざる結果をも産むという問題認識に立っている.本稿では,行為者が自らの置かれている因果連鎖環境をどこまで読みきれているかどうかによって,意図せざる結果を5つのパターンに類型化する.類型化によって意図せざる結果の議論を網羅的に理解するとともに,避けることのできない宿命にある意図せざる結果への一定の対処方法として,因果連鎖の読みのパターンを広げることを提案する.
著者
山影 進 田中 明彦 鈴木 一敏 阪本 拓人 山本 和也 保城 広至 服部 正太 木村 香代子 森 俊勝 光辻 克馬
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

国際関係論の重要分野である秩序変動の研究を、近年世界的に注目を集めているマルチエージェント技法を用いて行った。理論的観念的なレベルにとどまらず、政府内、住民集団間、国家間等さまざまなレベルの国際関係の事例についての実証研究に用いるためにモデル構築をおこなった。構築したモデルは、具体的な事象について高い再現性を示すことに成功し、それらの成果を書籍や論文のかたちで公表できた。
著者
中野 孝司 藤岡 洋 前田 重一郎 山口 桂 岩橋 徳明 田村 伸介 波田 寿一 東野 一彌
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.327-332, 1990-06-20 (Released:2011-08-10)
参考文献数
16

悪性胸膜中皮腫と肺癌胸水貯留例との鑑別にCEAが役立つか否か検討した. 悪性胸膜中皮腫 (11例) の胸水CEAは低値であり, 結核性胸膜炎 (18例) 及び他の良性疾患 (21例) のそれとに差はなかった. 又, 肺癌各組織型 (腺癌34例, 小細胞癌18例, 扁平上皮癌8例, 大細胞癌5例) 及び転移性悪性胸膜腫瘍 (13例) のそれは中皮腫よりも有意に高値を示していた. 胸水CEAのcut-off valueを5.0ng/mlとすると腺癌でのpositive rateは82.4%, 小細胞癌28.6%, 扁平上皮癌62.5%, 大細胞癌83.3%, 転移性胸膜腫瘍43.8%であったのに比べ, 中皮腫は全例ともにcut-off level以下であった. 又, 悪性胸膜中皮腫の腫瘍組織CEA染色は全例陰性であり, 血清CEAは病期が進行しても全例ともに正常値内にあった. 以上の結果より, 本疾患のCEAは胸水及び血清ともに上昇しないと考えられ, この点が肺癌胸水貯留例, 殊に問題となる肺腺癌との鑑別に役立つと考えられる.
著者
菊池 哲平
出版者
熊本大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
熊本大学教育実践研究
巻号頁・発行日
vol.28, pp.57-63, 2011-02-28

本研究では教育学部教員養成課程に所属する学生に対して発達障害についてのイメージ調査を実施し、教員養成カリキュラムにおいて発達障害をどのように理解させる必要があるかについて検討することを目的としている。その中で、本研究は発達障害児との接触経験や既学習済みの知識が、発達障害のイメージにどのように影響を及ぼしているのかについても検討を行う。
出版者
King International
巻号頁・発行日
2009
著者
吉田 恵子 飯村 裕子 野口 元子 石島 恵美子 荒田 玲子 渡辺 敦子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.99-106, 2021

<p> 茨城県では家庭料理として,けんちん汁をそばやうどんにかけたり,つけたりして食べることが知られているが,その詳細は明らかではない。そこで,「過去」(昭和30~40年代)と「現在」(2016年)とのけんちん汁の食べ方の変化を明らかにすることを目的とし,茨城県食生活改善推進員を対象に,喫食状況,具,だし汁,調理方法についてアンケート調査を行った。さらに,けんちんそば・うどんについては食べる機会や喫食形態,頻度についても比較した。その結果,「過去」ではけんちんうどんで食べた人が多かったが,「現在」はけんちんそばで食べる人が増加した。使用する具材やだし汁も変化し,「現在」では,作り方が簡便化し調味も多様化していた。また,日常食としても行事食としてもけんちんそば,うどんを食べる人は減少した。以上より,けんちん汁の食べ方や調理方法が,現在の食習慣に影響を受けて変化していることが明らかとなった。</p>

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1940年03月25日, 1940-03-25
著者
増本 英男 賀来 満夫 荒木 潤 浅井 貞宏 高田 俊夫 窪田 芙佐雄 松尾 武 池田 高良
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.27, no.9, pp.1087-1091, 1989-09-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
12

症例は66歳, 男性. 胸部X線上, 縦隔腫瘤影の増大を指摘され, 来院. 手術にて右心縁に接する15cm大の胸腺嚢腫が摘出された. 嚢胞液の性状は灰白色混濁した, 蛋白0.5g/dlの漏出液であった. 本例において最も興味深いのは血清CEAが2.1ng/mlに対し, 嚢胞液中のCEAが223.2ng/mlと異常高値を示したことであった. 免疫組織化学による検討では, 嚢胞内腔を被う上皮細胞及びハッサール小体の一部にCEA陽性細胞が認められた. 今後の症例の集積が必要であるが, 少なくとも嚢胞液中のCEAが高値でも悪性を示唆する所見はみられないことより, このCEAはCEA関連抗原の可能性もあるように思われた.