著者
井上 剛男
雑誌
鈴鹿大学・鈴鹿大学短期大学部紀要 人文科学・社会科学編 = Journal of Suzuka University and Suzuka Junior College Humanities and Social Sciences (ISSN:24339180)
巻号頁・発行日
no.2, pp.207-227, 2019-03-29

本稿の目的は、非認知的能力を育成する上で、子どもの主体性を重視するこれまでの保育・幼児教育のあり方に、どのような課題があるのかを明らかにすることである。そのために、E.デュルケムの教育論を手掛かりに、非認知的能力の意味を捉えなおすことで、課題を照射させることを試みる。その結果、子どもの主体性をめぐる2つの課題を明らかにした。1つは、子どもの主体性の尊重と、教育という行為との区別ができていないことである。教育という行為は、どれほど子どもの主体性を尊重した方法を用いたとしても、価値を押し付ける行為であることは否めない。そのため、子どもの主体性をいくら尊重しても、学ぶことに頑なに応じない子どもが現れる可能性がある。もう1つは、子どもの主体性と、子どもの意志の自律性の違いに無自覚だったことである。自ら進んで規則に従うことが、主体性を示すものであっても、意志の自律性を示すものでは必ずしもない。ある活動に主体的に取り組む子どもの中には、その活動の意味や重要性を理解している子どもと、それらを理解していない子どもが併存し、両者の間で、その活動での学びにかなりの開きが出る蓋然性が高いからである。これらの課題が生じたのは、子どもの主体性を尊重すれば、どの子どももしっかり学べるはずであるといった考えを無批判に信じ、その成長スピードの差を個人差に還元して理解する傾向があったからだと考えられる。
著者
清水 眞澄
出版者
成城大学文芸学部
雑誌
成城文芸 (ISSN:02865718)
巻号頁・発行日
no.188, pp.1-13, 2004-09
著者
上里 隆史
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.114, no.7, pp.1179-1211, 2005

This article investigates the migration of Japanese in the China Sea region, especially in and around Naha, the capital of the Kingdom of Ryukyu, between the 16th and 17th centuries. Previous research on the Japan-Ryukyu relations during medieval times has chiefly focused on the diplomatic relations between the Muromachi government, the Shimazu family of Satsuma, and the Ryukyus. It goes without saying, however, that the focus on state trade alone does not fully explain the historical relations between the two states. It is also necessary for us to consider such private aspects of trade as the activities of people who participated as well as recent findings on medieval maritime trade for a proper understanding of the relationship between medieval Japan and the Ryukyus. The migration of people from Japan to the Ryukyu Islands dates back to the 15th century. The "Ryukyu Kokuzu 琉球国図", a map of the Kingdom in those days depicts Japanese and Ryukyuans living together in Naha. According to the genealogical data on the Ryukyus, Japanese who had emigrated there during the 16th and 17th centuries through the transportation mode which had evolved at that time, can be divided into three groups, based on their places of origin: Kinai, Hokuriku, Kyushu groups. Those people were probably maritime merchants who commuted between the Ryukyus and Japan, but resided permanently in the Ryukyus and engaged in certain occupations, such as the administration of Naha, foreign affairs, medicine, and the tea ceremony. As for the structure of the port city of Naha, Naha-Yomachi 那覇四町, literally, the four townships of Naha, had developed on the fringe of the Chinese settlement of Kumemura 久米村, which was the core of Naha. The fact that Japanese institutions, such as a Shinto shrine, were located on the periphery of Naha-Yomachi shows that, like the goddess Mazu 媽祖 for the Chinese people, Naha was one of the overseas territories of Japanese merchants. Japanese immigrants resided together with Ryukyuans in Naha-Yomachi. During the 16th century, wajin (倭人), or armed Japanese merchants would throng into Naha in quest of the Chinese goods when ever Chinese envoys visited the Ryukyus. The Ryukyu royal government tried to restrict armaments, but failed. Japanese trading facilities called Nihon Kan 日本館 were set up in Naha. During the latter half of the 16th century, Kumemura, the center of Naha and the Chinese settlement, declined, while Naha-Yomachi prospered. During this period, the trade route between Japan and Fujian via Manila was established based on the active circulation of Japanese and new continental silver and Chinese raw silk. The Ryukyus functioned in it as an entrepot between Japan and Manila. It has been thought that the route from the Ryukyus to Southeast Asia was completely abolished in 1570, however, this is not true, for the Ryukyus changed its form of trade from state-sponsored trade to private trade carried out by wajin maritime merchants. The Ryukyus thus become a node connecting East to Southeast Asia.
著者
チャン ティ ミン ハオ 富山 栄子
出版者
事業創造大学院大学
雑誌
事業創造大学院大学紀要 (ISSN:21854769)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.203-219, 2018-04

日本の外食企業は海外へ進出しており、ベトナムのような新興国に参入しているのも日系外食企業のグローバル市場戦略の特徴の一つである。発展途上国のベトナムは人口が増加しており、外食市場が大きく、将来性もあると言われている。特に、2015年1 月から外国投資者に対する規制が緩和され、外資100%による外食店経営企業の設立が可能となった。複数店舗を持つチェーン店を開店できるようになり、飲食サービスにおいて日系企業に注目されており、日系外食大手チェーンは次々にベトナムへ参入している。本稿では主要な日系外食企業のベトナム市場参入の動向を概観し、事例として株式会社トリドールの丸亀製麺を取り上げ、その参入様式とマーケティング戦略について明らかにする。そのために、国際フランチャイジングとマーケティング戦略の標準化・現地適応化の理論レビューを行い、参入の際の参入様式やマーケティング戦略の成功の要素を明確にする。
著者
甲能 直樹 長谷川 善和
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.162, pp.801-805, 1991-06-28
被引用文献数
3

埼玉県東松山市付近に分布する中部中新統神戸層下部の礫岩層より, イマゴタリア亜科に属する鰭脚類の臼歯化石が発見された。当該標本は歯冠高が低く, 歯冠の遠位舌側に極めて発達のよい歯帯を持つことなどから, セイウチ科のイマゴタリア亜科に属する鰭脚類の, 左上顎第2もしくは第3前臼歯と判断される。北太平洋沿岸域におけるこの仲間の記録としては, これまでに知られる限り最も古いものの一つとなる。当該標本は, 単離した1個の臼歯であるため属種を決定できないが, プロトコーンシェルフがよく発達していることや, 2歯根であるなど原始的特徴を保持しており, ほぼ同時代から知られているセイウチ類の祖先とされる, ネオテリウム類の臼歯に最もよく類似している。このことから, 当該標本は最古の鰭脚類であるエナリアルクトス類から, セイウチの系統に分かれた初期の仲間のひとつであったろうと思われる。
著者
山田 隆治 福満 智代 黒木 祐輝 園田 睦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】中枢神経障害である脳卒中患者では自覚的視性垂直位(subjective visual vertical)が真の重力方向から偏位していることが多く,臨床的バランス指標の低下やプッシャー症状といったバランス障害との関連が指摘されている。脳卒中患者の立位姿勢は姿勢の動揺や,より非麻痺側下肢に体重が乗った非対称な荷重に特徴づけられる。この不安定な立位姿勢に影響するものとして運動麻痺,体性感覚障害,非対称な筋緊張,空間認知の変化などがいわれている。臨床において視覚のフィードバックを利用した立位姿勢や歩行の獲得,矯正を行う際に姿勢鏡をよく用いるが,垂直指標の条件を変えることで脳卒中片麻痺患者の自覚的姿勢垂直位と下肢荷重量がどのような関係にあるか検討することを目的とした。【方法】対象は発症から6カ月以上経過している慢性脳卒中外来患者12名(男:女=7:5),年齢68.4±8.3歳,身長160.5±11.9 cm,体重62.9±13.4 kg,疾患は脳梗塞9名,脳出血3名,左麻痺8名,右麻痺4名,罹病期間62.0±50.1カ月,下肢のBr. StageはIII:5名,IV:1名,V:1名,VI:5名,表在・深部感覚障害は軽度鈍麻3名,重度鈍麻3名,短下肢装具使用は6名であった。なお,骨折等の既往により運動機能障害を有する者,および半側空間無視などの高次脳機能障害を有する者は除外した。測定は外部刺激の影響を考慮し個室を利用し行った。測定条件は壁,壁に垂直線を引いたもの(以下:壁line),姿勢鏡,姿勢鏡に垂直線を引いたもの(以下:姿勢鏡line)の計4条件とした。壁の条件は部屋を横断的に白い布を貼り視覚に垂直線が入らないよう設定した。姿勢鏡を利用した条件では視覚的垂直指標を可能な限り削除するために,姿勢鏡(高さ192cm,鏡面150×90cm)の枠に曲線のフレームを取り付け,その上から白い布を貼り鏡面を8の字にくり抜き垂直となるものが視覚に入らないよう配慮し作成した。姿勢鏡に映る被験者の後方にはバックスクリーンを貼り垂直なものが映りこまないよう配慮した。また垂直の指標とならないよう上着前面にファスナー,ボタンを有するものを着用の場合はプルオーバーのジャージを重ね実験を行った。下肢荷重量の計測には足圧分布計(PDM-S,zebris Medical社)を使用し,各条件における静止立位を30秒間計測した。壁から足圧分布計までの距離は110cmとし,姿勢鏡からの距離はバックスクリーン以外の物が映らないよう各被験者の視野に合わせ微調整した。静止立位は裸足で装具や杖などを使用せず実施した。学習効果の影響を避けるために測定はランダムに実施し各条件1回とした。立位姿勢は上肢を下垂し,足部を肩幅に開き目線の高さを直視し姿勢保持するよう指示した。得られた下肢荷重量30秒間の平均値から,麻痺側下肢荷重率を求め,左右対称の指標となる50%に対する乖離率を算出し比較を行った。統計処理には統計ソフトR version2.8.1を使用し,反復測定の一元配置分散分析を用いて有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は対象患者に主旨および測定方法を説明し同意が得られた上で実施した。【結果】各患者データから麻痺側下肢荷重率50%に対する乖離率を求め,各条件における平均値は壁15.0±8.4%,壁line12.9±10.1%,姿勢鏡11.42±9.2%,姿勢鏡line7.3±5.8%であった。得られた結果から反復測定の一元配置分散分析において有意差(P=0.0408)を認めたが多重比較においては各条件間に有意差は認められなかった。【考察】今回の研究において,各患者の麻痺側下肢荷重率50%に対する乖離率を求め,各条件における平均値は姿勢鏡line,姿勢鏡,壁line,壁の順に低かった。これらの結果から今回の対象患者では姿勢鏡の垂直指標を無くした条件でも視覚フィードバックによる姿勢調整が行え,さらに垂直線を入れることにより下肢荷重量の左右差を減少させる傾向を示すことがわかった。脳卒中後の非対称な下肢荷重に関連する因子として運動麻痺,感覚障害,痙縮,発症後期間,半側空間無視などが関係しているといわれている。本研究では関連因子との分析は行っていないが,今回は自覚的姿勢垂直位がどの程度下肢荷重量に影響を及ぼしているかについて研究を行い視覚フィードバックに必要な要素が増えることで,より垂直認知が高まることがわかった。脳卒中における下肢荷重量の違いは,立ち上がりや歩行等の動作獲得に影響を及ぼすと考え,姿勢鏡を用いて垂直認知を高めた運動学習が効果的になると思われた。【理学療法学研究としての意義】脳卒中患者において姿勢鏡や垂直指標などの視覚フィードバックを用いることで下肢荷重量を左右対称に近づける傾向があり,これらを用いた運動学習が効果的であると考える。
著者
樅木 麻奈 西村 勇也
出版者
電気・情報関係学会九州支部連合大会委員会
雑誌
電気関係学会九州支部連合大会講演論文集 平成27年度電気・情報関係学会九州支部連合大会(第68回連合大会)講演論文集
巻号頁・発行日
pp.211, 2015-09-10 (Released:2018-02-16)

ティンパニは,太鼓のようにヘッドを持つ楽器でありながら半球状の胴(ケトル)を持ち,音高感のある音を出すことができる有音打楽器である.ティンパニ奏者は叩く位置を微妙に変化させることでその曲に適した音色を表現している.しかし,一般的なティンパニの指書者には,その打撃位置は「外側から中心に向かってヘッドの半径3分の1から4分の1の点」という曖昧な記載がされている.よって,本研究ではティンパニの周波数特性を調べ,打撃位置における音色の違いを固有モードの観点から解明を行う.またこの結果を基に,プロのティンパニ奏者を交え打撃位置における音色の指標を作り,教則本への記載や初等教育での部活動指導に貢献する.
著者
栗田 貴也
出版者
日経BP
雑誌
日経ビジネス = Nikkei business (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.2027, pp.66-69, 2020-02-03

丸亀製麺は約20年ほど前に香川で製麺所を見て、「これ再現したら成功するんちゃうか」と思って、2000年11月に始めたんです。正味な話、当初はここまで大きくなると思って始めたわけやないんです。 丸亀製麺の売りである「店内製麺」も、みんなに「無理無理」…
著者
大隈 一裕
出版者
日本応用糖質科学会
雑誌
応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌 (ISSN:21856427)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.34-38, 2011
参考文献数
27
被引用文献数
3

本稿では,澱粉糖である,ぶどう糖や異性化糖,水あめ,マルトデキストリン,更に,加工澱粉の製造方法について述べるとともに,我が国における,それらの利用の現状について述べる。また, 澱粉は,ヒトにとって重要なエネルギ-源であるが,近年,特に,糖類をはじめとした栄養素の過剰摂取がもたらす把満がメタボリツクシンドロームの引き金となることが明らかにされ,国をあげて,その対策が採られている。そんな中,抗肥満素材も,また,澱粉から生産されようとしている。今,注目される澱粉由来の低カロリー素材や抗肥満機能を有する素材についても解説する。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1556, pp.98-100, 2010-09-06

店内に一歩入ると三角巾を着け、白い仕事着を着用した女性たちの元気な声が耳に届く。大なべからは湯気が立ち上り、次々とうどんが茹で上がる。 うどん専門店「丸亀製麺」の自慢は、店舗でうどんから作り、調理しているところだ。冷凍うどんは一切使わない。毎朝粉から製麺している。うどんだけでなく、てんぷらもできるだけ揚げたてを提供する。