著者
田中 良樹 河野 広隆 渡辺 博志
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集E (ISSN:18806066)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.739-756, 2006 (Released:2006-11-20)
参考文献数
53

実構造物におけるエポキシ樹脂塗装鉄筋(ECR)の防食性能を把握するため,発錆限界塩化物イオン量の視点から,北米の各州で実施された実態調査の結果を収集,再分析した.凍結防止剤散布による床版中のECRの腐食は,コンクリートのひび割れ,ECRの塗膜剥離の有無にかかわらず,ECR周囲の塩化物イオン量にある程度依存すること,ECRの発錆限界塩化物イオン量は普通鉄筋よりも大きいことがわかった.また,フロリダ沿岸部で早期劣化が見られた橋脚群におけるECRの腐食事例でも,かぶりコンクリートの低い塩分浸透抵抗性などの理由によりECRの周囲に多量の塩化物イオンが存在していた.ECR周囲のコンクリート中の塩化物イオン量をECRの発錆限界値以下に抑制することによって,沿岸部橋脚にもECRを効果的に適用できることがわかった.
著者
Mitsuhide NAKAGAWA Kenji TSUKANO Yoshiki MURAKAMI Marina OTSUKA Kazuyuki SUZUKI Hiroetsu SUZUKI
出版者
JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
雑誌
Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.82, no.11, pp.1585-1588, 2020 (Released:2020-11-12)
参考文献数
30
被引用文献数
1

The aim of this study was to examine whether 2.16% hypertonic saline solution (HSS) is useful for the treatment of diarrheic calves with hyponatremia. Eleven of 13 female Holstein calves exhibiting moderate diarrhea and hyponatremia received 1,250 ml of 2.16% HSS over 15 min regardless of body weight. The remaining two calves that were unable to stand and had severe hyponatremia received 2,500 ml of 2.16% HSS intravenously over 30 min. As a result, hyponatremia in all diarrheic calves was significantly improved by the administration of 2.16% HSS from 122.2 ± 7.0 mEq/l at pre to 134.8 ± 3.7 mEq/l at post, which was above the threshold of 132 mEq/l for hyponatremia. Therefore, 2.16% HSS may be useful for hyponatremia in calves with diarrhea.
出版者
統監府
巻号頁・発行日
vol.第1次, 1908
著者
Masahiro SHINOHARA
出版者
中央大学経済研究所
雑誌
経済研究所 Discussion Paper = IERCU Discussion Paper
巻号頁・発行日
vol.338, 2021-01-09

ニュージーランドの付加価値税であるGST(Goods and Services Tax:財・サービス税)は、単⼀税率(2010 年10 ⽉以降15%)で課税ベースが広く、経済活動に対して中⽴的な税制として国際的に⾼く評価されている。本稿の課題は、ロジャーノミクス(Rogernomics)における税制改⾰に注⽬し、GST 導⼊の背景を明らかにすることである。そのために、①税制改⾰前の租税構造の推移および国際的視点からの特徴、②税制改⾰の背景にある当時の経済状況および改⾰前の税制の問題点、③労働党政権での税制改⾰の意義および改⾰の概要、④消費課税改⾰に関する諸議論に注⽬し、論点を整理する。 1980 年代の労働党政権下における税制改⾰を論じたわが国の先⾏研究として、⼤浦(1995)、松岡(1999a;1999b)、渡辺(2011)がある。⼤浦(1995)は、税制改⾰に限定せず、労働党政権の⾏財政改⾰に焦点を当て論じている。また、松岡(1999a;1999b)は、税制改⾰の意義、内容、問題点を探っている。渡辺(2011)は、GST 導⼊から2010 年税制改⾰に⾄るまで、GST の変遷を概観している。いずれにおいてもGST が取り上げられているが、本稿ではGST 導⼊の背景の議論に焦点を絞り、これらの先⾏研究よりも詳細に論ずる。 GST の導⼊は、ロジャーノミクスの経済改⾰の⼀環として実施された税制改⾰の⽬⽟であった。個⼈所得税に依存した税制によって発⽣する不公平や効率性の低下の是正、卸売売上税の抱える問題点の解決、財政⾚字削減といった事柄に対応するために導⼊された。税制改⾰とセットで給付制度の⾒直しも実施されたが、これは単にGST の逆進性を緩和する⼿段としてではなく、低中所得階層の⼦育てを経済⽀援することが⽬的であった。残された課題として、GST の制度設計を巡る議論およびGST 導⼊による経済効果の考察があるが、これらは別稿に委ねる。
著者
池 玉杰
出版者
長崎外国語大学・長崎外国語短期大学
雑誌
長崎外大論叢 (ISSN:13464981)
巻号頁・発行日
no.8, pp.75-81, 2004

孔子は世界的に有名な思想家であり教育家である。孔子が二千五百年程前に唱えた教育思想、教育理念と教育方法は後世の人々に敬い仰がれている。孔子の儒家思想と理念は世に広く崇拝されている。一人の中国人として、儒家思想と伝統文化に満ちた家庭に生まれた私は、こうした雰囲気に包まれた社会環境の中で成長してきた。孔子の儒家思想は目に見えない形で私の人生観、道徳観および教育観に感化作用を及ぼしているのである。私はいつも道徳意識に基づいて物事を考え、仕事に対して責任感と職業道徳をもって行動する。それがゆえに、外国語教師として、私は授業中、当たり前のように孔子の「教学相長」(教えることと学ぶことが相まって学業の進歩を促すものである)という教育理念と教育方法を運用し、またそれを自分の仕事の理念とするのである。「教学相長」という言葉の出典は『礼記・学記』である。「学然後知不足,教然後知困。知不足,然後能自反;知困,然後能自強也。故曰教学相長也。」(学んでみて、始めて我が知恵の貧しさを知り、教えてみて、始めて我が学問のつたなさに悩む-不足に気が付いて、始めて真に反省することができ、自ら進んで勉強することができる。だから昔から、「教と学とは互いに助長する」と言われている。)「教学相長」は孔子の教育思想と教育理念の中核である。その内容は次のような幾つかの「内核」によって構成されている。すなわち「有教無類」(いかなる人にも等しく教育を与える)、「因材施教」(その人に適した教育をする)と「学而不厭、海人不倦」(学んで厭きない、人を教え導いて倦むことない)の三点である。本稿は主にこの三つの「内核」、即ち「教学相長」に基づいて、自分の仕事経験を生かして、私見を述べたい。
著者
石川 時子
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.5-16, 2007

本稿は,従来社会福祉においてパターナリズムという語が,自律を抑圧すると否定的に集約されがちなことから,その概念と正当化基準を検討し再考したものである.先行研究からは5つの正当化基準を導き,近年は抑圧を回避すると考えられている「自律を尊重するパターナリズム」が論じられる傾向にあることを明らかにした.この基準は,被干渉者の個別性や自律を重視する社会福祉においても,親和性の高い基準といえる.しかし,通常パターナリズムとは批判的に扱われるため,その批判がどのような思想に基づいているのかを3点に要約した.パターナリズムを必要と考える場合と批判的にとらえる場合の相違点は自律の解釈にあるといえる.最後に,自律を尊重するパターナリズムの論には,自律概念の多義性と自律概念に内在しうる価値判断によって,抑圧的に作用する場合もあり,パターナリズムの正当化基準においては十分とはいえないことを明らかにした.
著者
河野 稔明
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

精神保健福祉法に基づき警察官などから通報された事例について、通報への対応や通報対象者への事後支援の振り返りと方針の検討を定期的に行っている、一政令指定都市の取り組みをベースにした研究である。記録の分析と取り扱う情報の検証を踏まえて、通報事例データベースの構築を目指す。これを活用することで、地域で精神保健の支援ニーズを抱えた人々に、自治体がより適切な支援を届けることが可能になると期待される。
著者
平良 昌彦
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.461-489, 1975-10-28 (Released:2009-02-17)
参考文献数
45
被引用文献数
4 4

水俣病の原因物質は熊大の研究でメチル水銀と断定された。その後の日本全土にわたる水銀汚染調査の過程でこのメチル水銀は, 水銀の人為的汚染のない一般魚類や一般人毛髪中にも見出された。とくに外洋のマグロに含まれる水銀の60∼70%がメチル水銀であり, またスエーデンでは, 魚類の水銀含量が異常に高いことも報告され, このような自然界に見出されるメチル水銀の由来と人類への影響を公衆衛生学的な見地より解明する目的で微生物による無機水銀の有機化の機序と生物濃縮の過程を微生物学的, 生態学的両面から検討した。すなわち, 水銀耐性の Psedomonas 属の菌を下水より分離し, この細菌による有機水銀の生合成, 分解について検討し, ついで水銀鉱床地帯, 土壌, 河川, 海水中の微生物, ある種の真菌類も有機水銀の生合成能を有することをみつけ自然界における無機水銀の有機化の可能性を肯定した。さらに有機水銀の生成度の検討と生合成メチル水銀がどの程度生物濃縮の過程を介して魚類に蓄積するのか生態学的手段を導入して検討し, 生合成メチル水銀が, 食物連鎖により濃縮が行われ, 魚類に高い水銀値を示すことはあるが, 水俣病の場合のように異常量のメチル水銀の持続的流出のないかぎり中毒 (水俣病) を起こすほどのメチル水銀が魚類に蓄積することはない。だから異常に高い水銀を魚介類から検出したときはなんらかの人工的汚染を疑い対策を講じる必要がある。
著者
舩田 淳一
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学総合研究所紀要 (ISSN:13405942)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.359-380, 2009-03-25

近年,中世の律宗・律僧に対する関心は高く,多くの研究が蓄積されているものの,いまだそれらの中心は叡尊・覚盛ら南都の戒律復興僧が占めていると言って良い状況にある。そこで本稿では,叡山の戒律復興運動に対する一考察を試みる。具体的には叡山における律僧集団である「戒家」の劈頭をなす,恵尋を主たる対象に据えるものであり,特に戒家の戒律思想が国家観念と結合していた点に注目したい。これは叡山の戒律復興運動を中世思想史の中に位置づけるための基礎作業である。
著者
幕内 忠夫 宇野 則男
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.483, 2011

当院における東日本大震災の被害と対策平成23年3月11日に起きた東北、関東地方を含む「東日本大震災」は、甚大な被害のあった東北三県とは比較にはならないが、茨城県内でも多数の被害が発生し、地域によっては現在も被災が継続している状況である。当院もまた少なからず影響を受けた。今回は震災当日の当院の被害と避難状況、ライフラインの確保への経緯、そして震災後の事後対策について報告する。震災当日は平日であったので午後とはいえ、入院患者のみならず外来診察者も多数院内に滞在していた。発生当時は停電もあり多少パニック気味であったが揺れが収まりしだい、災害対策本部が立ち上がり指令系統により職員各自は冷静に対応していたと思える。本館を含む建物が老朽化しているため患者方は院外へ避難誘導、身体不自由者は人力による車いすあるいはベッド毎の運搬。エレベーターは使用出来ないので階段を使用した。自家発電装置への人力での燃料運搬。停電が長く続くと燃料不足が懸念されたが、土浦消防署を通して、ようやく配達してもらうことが出来た。また非常食の炊事用のプロパンガスの確保も同時に進行した。当日午後10時を過ぎた頃に漸く電気が復旧した。何度か大きな余震が続いたため、非常時に備えて職員の多くは院内に待機宿泊の形となった。その後、被害箇所の確認、通行禁止区域の表示、不足が予想された飲料水、非常食の他施設からの援助による確保等が行なわれ、徐々に修繕作業も進行し現在に至っているが、未だ手つかずの状態の箇所も少なくない。今回の過去に類を見ないほどの震災を経験して、普段からの準備と人のつながりがいかに大切か痛感させられた。今後の対策として、充分な飲料水、非常食の確保、燃料の備蓄、災害時のみではない近隣の施設や業者との連携の強化を進めることが肝要である。
著者
石山 雄貴
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究の特徴は、「受益者負担論」を打破し「社会教育の無償性」を実現する社会教育財政の骨格を提示することである。全ての住民に社会教育の自由を保障するためには、社会教育に関わる費用が無償であることが不可欠である。一方で、全国の公民館において、使用料の有料化が進められている現状がある。本研究では、そうした有料化の実態分析を行うとともに、教育法学や地方財政論、図書館情報学における「無償性」の議論を手がかりとする包括的視点から「社会教育の無償性」を検討する。それらの作業を通して、「社会教育の無償性」の実現には、どういった社会教育財政が求められるのかを明らかにする。
著者
下村 孝 山本 祐子
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.109-114, 2008 (Released:2009-04-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

キンモクセイに2度の開花ピークが見られるとの伝聞にもとづき,その実態を科学的に解明するために,京都北区の住宅地域内に植栽されているキンモクセイを対象に形成花芽数と開花花芽数,開花小花数を経時的に計測した。その結果,キンモクセイは,2007年10月11日の開花ピークの後,10月23日に2度目の開花ピークを迎え,二度咲き現象が見られることが明らかになった。2度目のピークでは,開花小花数が1度目に比べると極端に少なく,全体の香りも弱いため,一部の人々にしか認知されていなかったともの理解された。当年生枝と前年生枝の花芽の種類と数,および開花小花数の測定から,キンモクセイでは,当年生枝と前年生枝の葉腋に形成される定芽以外に不定芽にも花芽が形成され,それらが開花することが分かった。さらに2度目の開花ピークには,当年生枝の花芽より前年生枝の花芽が,定芽より不定芽が大きく寄与することも明らかになった。前年生枝が当年生枝より不定芽を形成しやすく,キンモクセイ二度咲き現象には,前年生枝不定芽の関与が大きいと考えられる。
著者
中田 行重 小野 真由子 構 美穂 中野 紗樹 並木 崇浩 本田 孝彰 松本 理沙
出版者
関西大学臨床心理専門職大学院 心理臨床センター
雑誌
関西大学心理臨床センター紀要
巻号頁・発行日
no.6, pp.89-96, 2015-03-15

古典的クライエント中心派の論客Freire, E. による無条件の肯定的配慮についての考え(2001)を紹介し、それについての考察を行った。Freire は、セラピストが自己を出来るだけ脇に置くほどプレゼンスを提供するという彼女独自の理論を基盤に、無条件の肯定的配慮が中核条件のうち最も重要であり、共感的理解と同じであるという、古典的クライエント中心派の考え方を解説している。その他、ここに紹介する論文は2 つの事例を掲載しており、無条件の肯定的配慮を具体的に考える上で刺激となる論文である。
著者
前田 学 藤沢 智美 日置 加奈 永井 美貴
出版者
Western Division of Japanese Dermatological Association
雑誌
西日本皮膚科 = The Nishinihon journal of dermatology (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.7-10, 2005-02-01
参考文献数
24

症例は両下腿の丘疹・紅斑及び紫斑などを主訴とする16歳の女学生。2001年8月より両下腿に痒みを伴った丘疹及び紫斑が出現し,上肢にも拡大した。初診の1週間前より再燃し,2002年5月7日当科を受診した。既往歴・家族歴には特記すべきことはなかった。血液検査ではWBC 10300/mm<SUP>3</SUP>とやや上昇,赤血球528万/mm<SUP>3</SUP>とやや多血症傾向で,IgE上昇(950IU/ml)以外は異常所見はなかった。左下腿部の病変から皮膚生検を施行したところ,表皮は不規則に延長肥大し,表皮内に海綿状変化を認め,真皮には上層に限局して好酸球を混じた単核球の細胞浸潤が目立った。自験例が使用していた靴下止め糊(ソックタッチ<SUP>®</SUP>)の皮膚貼布試験は48,72時間共に小水疱を伴う紅斑を形成し,本邦判定基準で陽性(+++)と判定したが,各成分別の同試験は患者の同意が得られなかったために未施行。躯幹の皮疹は自家感作性皮膚炎(イド反応)として矛盾しないものと考えられた。ソックタッチ<SUP>®</SUP>は白元(株)製のアクリル系粘着剤の液体靴下止めで,スティックのり状になっており,接着剤成分としてポリアクリル酸ナトリウム・トリエタノールアミン塩の混合物(CH<SUB>2</SUB>・CH・COONa)n,(CH<SUB>2</SUB>・CH・COON(C<SUB>2</SUB>H<SUB>4</SUB>OH)<SUB>3</SUB>)nのジュリマーを5~15%含有し,局方エチルアルコール10~30%,グリセリン15%以下,香料微量,精製水残量から構成されていた。
出版者
巻号頁・発行日
vol.[1] 第壱番長持 山城・大和・和泉・摂津・伊賀・伊勢・三河・遠江・駿河・甲斐・伊豆,