著者
北岡 元
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.583-588, 2017-11-01 (Released:2017-11-01)
参考文献数
6

インターネットという情報の巨大な伝送装置を得,おびただしい量の情報に囲まれることになった現代。実体をもつものの価値や実在するもの同士の交流のありようにも,これまで世界が経験したことのない変化が訪れている。本連載では哲学,デジタル・デバイド,サイバーフィジカルなどの諸観点からこのテーマをとらえることを試みたい。「情報」の本質を再定義し,情報を送ることや受けることの意味,情報を伝える「言葉」の役割や受け手としてのリテラシーについて再考する。第6回は,インフォメーションからインテリジェンスをつくり出すための「分析」に的を絞り,分析が失敗する原因にも着眼しながら,広がりゆくインテリジェンス研究の実際を追う。
著者
田村 正人
出版者
都市有害生物管理学会
雑誌
家屋害虫 (ISSN:0912974X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.111-120, 2003-11-29

広義の食用昆虫には家屋害虫も少なくない.昆虫を適正に食べることは,動物性たんぱく(蛋白)資源の有効利用や害虫防除にもなるので,日本の代表的な食用昆虫,コバネイナゴ・クロスズメバチ・タマムシ・シロスジカミキリおよびアブラゼミ等の生態について述べた.三宅(1919)によると,日本の食用昆虫は8目55種で,最も多かったのはハチ目の14種,次いでチョウ目の11種,バッタ目の9種,甲虫目の8種などが多かった.薬用昆虫は10目123種にのぼり,最も多かったのは甲虫目の32種で,次いでチョウ目の26種,以下,順にカメムシ目の12種,ハチ目の9種,トンボ目の7種,バッタ目とハエ目の各6種,カマキリ目の4種などへと続く.いなご(蝗)は,全国の都府県で等しく食べられる国民的な食用昆虫で,かつては農村における秋の風物誌であった「いなごとり」も,強力な殺虫剤等の出現によって1950年代以降激減したが,1980年頃より水田をとり巻く環境の変化によってコバネイナゴが全国的に再び大発生の傾向にある.その後,飽食の時代を迎えた日本国民の関心は次第に「医食同源」に向いつつあるように思われる.いなごに次いで「蜂の子」が過半数の都道府県で食べられているのは,蜂類は社会性昆虫で,一度に大量入手が可能なためと思われる。昆虫は栄養価が高く,強壮剤として用いられるほか,薬用としては小児の疳(かん)に効くのが最も多い.現在,各地で人が食べている昆虫は,長い間の経験に基づいて伝承されて来たものであるからまずは食べられる昆虫と言えるが,できるだけ新鮮なものを食べ,安全性には充分配慮する必要がある.
著者
根ケ山 光一 篠原 一之
出版者
早稲田大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

思春期の親子関係と匂いの関係を直接的に調べるため,質問紙を用いて,小学生から大学生までの男女(1047名)と高校までの子の父母(162名)に対し,相互の体臭をどの程度快・不快に感じているか尋ねた。その結果,親の様々な身体部位の中で特に口・脇の下・足の裏・頭の臭いが嫌悪され,その傾向は男子に強く,かつ父親がより嫌悪された。しかしながら,子どもの年齢によって親の体臭への嫌悪が顕著に増減する傾向は認められなかった。一方,親から子の体臭に関しては,足の裏や口,頭,脇の下の匂いが嫌悪され,父親からの不快感情が母親よりも有意に強かったが,ここでもやはり予想に反して子の年齢と体臭への嫌悪の対応は明瞭ではなかった。このように子の年齢よりは親・子の性が体臭への嫌悪のより大きな要因であることがわかった。20代、30代、40〜50代の男性の匂いの思春期前・後の女性の情動に及ぼす影響を調べた。思春期前は時期を選ばず一回、思春期後は卵胞期と排卵期に,男性の匂い(腋下、乳首周囲、会陰部、背中)を嗅いでもらい、その匂いに対する印象をSexy、男性的、快、強い、Happyの項目について評価してもらった。その結果、排卵期思春期後女性は思春期前女性と卵胞期思春期後女性に比べ男性の匂いに対しよりSexyに感じることが分かった。そこで、年齢別にSexyさを調べたところ、思春期前女性と卵胞期思春期後女性ではどの年代の男性の匂いにもSexyさは感ぜず、排卵期思春期後女性は20代の男性の匂いにSexyさを感じることが分かった。以上のことから、女性は、生殖可能な年齢しかも生殖可能な時期でのみ、男性の匂いにSexyさを感じることが分かった。さらに、生殖可能な年齢・時期であっても、自分の父親に相当する年齢にはSexyさを感じないことから、匂いによる近親相姦回避の可能性も考えられた。
著者
秋谷 直矩 佐藤 貴宣 吉村 雅樹
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.207-275, 2014-06-01 (Released:2015-02-10)
参考文献数
19
被引用文献数
1

This study examines street-walking training sessions by orientation and mobility spe-cialists for people who are visually impaired. We determine the professional methods used by orientation and mobility specialists to support the spatial perception of people who are visually impaired. Based on the above, when we study the street-walking of people who are visually impaired, we argue the important viewpoint that in this case,walking should be considered “a social action.” We videotape street-walking training sessions and describe the ethno-methods of orientation and mobility specialists. Results indicate that when orientation and mobility specialists describe the surrounding envi-ronment, they highlight spatial arrangements with regard to the boundaries of objects in the street.Through touching and hearing, these objects ’intelligibility is achieved by linking the orientation and mobility specialist’s description of the environment and the spatial perception of the person who is visually impaired. These results suggest walking in the street is a social action, which is related to various configurations of common sense. This research is important to advancing studies on the “order of perception.”
著者
河井 大介 天野 美穂子 小笠原 盛浩 橋元 良明 小室 広佐子 大野 志郎 堀川 裕介
出版者
日本社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会全国大会研究発表論文集 日本社会情報学会 第26回全国大会
巻号頁・発行日
pp.265-270, 2011 (Released:2012-03-20)
被引用文献数
1

This paper shows actual use of Social Networking Service(SNS) and its effects with SNS addiction. SNS user is over 70 million, and we can see a topic about internet or SNS addiction on mass media and internet homepage. However there are few paper about SNS addiction. Thus we present this paper about how long, how often, what kind of service, and what kind of scene SNS addicted user use SNS, and what kind of burden and sacrifice SNS addicted felt by using SNS, and change and effects by SNS use.
著者
天児 和暢
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.315-330, 2014 (Released:2014-03-28)
参考文献数
4
被引用文献数
1 5

レーウェンフックは細菌の発見者であるが,その名があまり知られていない。何故だろうか。その疑問を解くため,私はイギリスの原虫学者C. Dobell の書いたレーウェンフックの本を読み,次のようなことを知った。彼は研究者ではなくデルフトで衣類の販売をしていた一介の市民であった。彼は自分で作った顕微鏡を使い観察し,その結果を手紙でロンドン王立協会へ送っていたが,論文は書いていない。自分の顕微鏡の作成法や観察法を公表しなかったので,彼の死後再現実験が為されることはなく,やがて忘れ去られていった。この総説では,未だ細菌という言葉もなくその様な微細な生物が居ることさえ知られていなかった時代に,彼が細菌の発見をどの様に記述していたか,また,この様な目に見えない生物の存在を初めて知った彼が,それをどう考えていたのかなどを,Dobellの翻訳した彼の王立協会宛の記述を引用し,彼の観察とその考えを紹介する。彼がどのような人物であったか,各自で想像して頂きたい。
著者
Taiga Kato Takafumi Nakano
出版者
The Japanese Society of Systematic Zoology
雑誌
Species Diversity (ISSN:13421670)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.133-140, 2023-04-26 (Released:2023-04-26)
参考文献数
11

A subterranean millipede species, Antrokoreana gujoensis Masuda, 2010, is redescribed based on specimens newly collected around its type locality, in the limestone area of Mino Terrane on Honshu Island, Japan. Males of A. gujoensis were originally described as having no penes, but nonetheless, the examined specimens clearly demonstrate that this species possesses the penes behind leg-pair 2. An emended diagnosis of this species and a key to all eight currently recognized species of Antrokoreana is provided.
著者
野村 貴郎 Kiro NOMURA
出版者
武庫川女子大学学校教育センター
雑誌
学校教育センター年報 (ISSN:2432258X)
巻号頁・発行日
no.4, pp.1-11, 2019-03-25

助動詞「です」の使用状況を,18 歳~24 歳の377 名に対するアンケートをもとに考察した。その結果,(1)動詞に接続する「です」の用法で,よく普及しているのは「~ませんでした」の形だけであるが,「~でしょう」の形に定着の傾向が見られること。それに対して「~です」や「~たです」の形は認められておらず,その他の形は,まだ“ゆれ”ていること。 (2) 形容詞に接続する「です」の用法は比較的よく普及しており,「~です」「~ですか」「~たです」の形は,ほぼ完全に定着していること。しかし,その他の形は,なお“ゆれ”ていること。 (3) 格助詞(準体助詞も含む)「の」「ん」に接続する「です」の用法は,少なくともこの調査からは徐々に衰退しつつあることなどがわかった。 また,1999 年のデータを用いて,この18 年間の使用率の変化も考察し,(4)形容詞に接続する「です」「~たです」の用法が,ほぼ定着していること。(5)動詞に接続する「~でしょう」の用法や,用言に接続する 「~ないです」の用法が,しだいに定着してきていることなどを確認した。
著者
原戸 喜代里 木口 なつみ 大場 修
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.121-132, 2015 (Released:2017-08-10)

本研究は,第二次大戦後の占領期,,京都において将校用家族住宅として接収された住宅を取り上げ,京都府立総合資料館所蔵の連合軍接収住宅関連史料を中心とする史料調査と,現存する遺構調査及び接収住宅の所有者に対し聞き取り調査を行った。京都における接収住宅は,その約半数が占領軍将校家族と日本人家族の同居という形態をとり,接収された住宅は洋風住宅だけでなく和風住宅も含まれていた。これらの住宅が連合軍将校の家族住宅として転用される際,接収住宅の間取りは変更されなかったが,住宅設備については大きく改変された。接収期,日本の住宅に持ち込まれた住生活に対する意識や西洋の生活様式は,接収解除後の日本人の住生活に影響をもたらした。
著者
三上 純
出版者
日本女性学会
雑誌
女性学 (ISSN:1343697X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.76-104, 2022-03-31 (Released:2023-04-01)
参考文献数
19

本稿の目的は、グループ・インタビューとアンケート調査の分析を通じて、運動部活動におけるミソジニスティック/ホモフォビックな会話の実態と、それが性差別意識といかに関連しているのかを明らかにすることである。 グループ・インタビューでは、男性のみの運動部集団において女性を性的客体とみなすミソジスティックな会話と、同性愛をタブー視するホモフォビックな会話があったことが語られた。アンケート調査の分析では、女性を性的客体、男性を性的主体とする意識と、ゲイに対する態度を従属変数とする重回帰分析を行った。その結果、性的マジョリティ男性は非対称な性的関係を肯定する傾向がみられたが、それは運動部活動におけるミソジニスティック/ホモフォビックな会話に媒介されたものであることが明らかになった。しかし、ゲイに対する態度についてはそうした会話に十分な媒介効果がみられなかった。なお、いずれの従属変数についても男女が生まれつき異なる存在であるとする考え方が強く関連していることが明らかとなった。 本稿の分析から、性差別を助長すると考えられる運動部活動におけるミソジニーやホモフォビアに対処するためには、生物学的な男女の差異を自然とみなす状況を問い直すことが必要であると考えられる。
著者
大竹 伸郎
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.81, no.8, pp.615-637, 2008-11-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
33
被引用文献数
4 5

衰退を続ける日本の水田稲作の再生をめざして, 政府は生産性の向上を可能にする大規模経営体を中心とした担い手の育成を進めている. しかし, 伝統的な村落社会に根ざした水田稲作地域は, 担い手農家や農外就業に依存した兼業農家, 自らは農業を行わない土地持ち非農家など多様な農家からなっている. したがって, 持続可能な水田稲作を実現するためには, 担い手農家以外の農家をも視野に入れた地域農業の再編が必要である. 本研究では, 第二種兼業農家率が高く, 小規模農家の割合が高い富山県砺波平野において生産の組織化を図りながら, 大規模水田稲作経営を展開している農業生産法人を事例にして, 持続可能な水田稲作の実現に向けた考察を行った. その結果, 持続可能な水田稲作を実現するためには, 地域の実情に即した経営戦略を有する農業生産法人を育成し, 地域内の余剰労働力や農地などの有効活用を実現する地域農業の形成が鍵となることが明らかとなった.
著者
橋本 俊哉
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.101-104,a1, 2002-02-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
3
被引用文献数
1

農業関連施設におけるゴミ問題において, どのような対策が有効と考えられるか, その考え方を示した。その出発点は「ゴミが捨てられているのは, そこにゴミを捨てた人がいるからである」という視点である。それによって地域住民や観光目的の利用者に禁止や強制を強いる性格の対策ではない, 人びとの自発性に基づいたゴミ対策を講じることが可能となろう。そこでまず, 人びとのゴミ捨て行動の規則性とゴミを捨てる際の心理について述べ, ゴミを投棄させないためには, また回収容器にきちんと捨てさせるためにはどうすればよいか, 6つの誘導原則に整理して述べた。